Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

CD: ARIA CANTILENA - ELINA GARANCA

2008-02-08 | 家で聴くオペラ
昨日、デッセイのDVD付きCDを買いに、メトのギフト・ショップにひとっ走りしてきた私ですが、
デッセイのCDだけで済むわけはないのでした。

あれこれ見始めると、どれもこれもほしくなって、それこそ、お金を山ほどもっていたなら、
ショップごと買い占めたい気分ですが、もちろんそうもいかず、、。

特に、一人の歌手がいろんなアリアを歌うアリア集の類では、私は何度も失敗を犯していて、
それこそ全アルバム通しで聴いた後はほとんど手をつけることのなくなったCDがごっそり我が家にはあるのです。
正直、聴いた回数から買った甲斐あり、と思うのは、マリア・カラスのそれくらいで、
どちらかというと、全曲盤の方が失敗率は少ないくらいなのです。

理由は大きくわけて二つ。
一つ目は、ある役では非常に魅力的な歌を聴かせる歌手も、アリア集でいろいろな曲を歌うと、
どうしても、何度も聴きたいとは思えない歌も入ってきてしまうという、アリア集の性質上避けられない理由。
もう一つは、歌手の力量とレコード会社の企画力が揃わない限り、
オケの演奏がいまいちの場合が、アリア集には多い。
例えば、上でふれたデッセイのイタリア・アリア集。
せっかく、私好みの選曲であり、デッセイも健闘しているのに、CDの方のオケの演奏がダルでがっかり、、。

というわけで、アリア集は最近何か強い理由がない限り(例えば、デッセイの場合は、
ひたすらメトの公演の映像がついていたから。CDだけなら、多分買ってないと思います。)
買わないことにしているのです。

しかし、昨日、メトのギフト・ショップの入り口で、ガランチャのCDが陳列されているのを見てしまい、
どうしても、強く心魅かれるものがあったのです。
”だめだめ。アリア集は買っちゃいけないでしょ!”と自分を叱責するも、なぜだか気になってしようがない。
一度店内をぐるっとまわってから、やっぱり、その陳列台に戻ってきてしまいました。
それは、あの、『セビリア~』で聴いた彼女の歌声が心に引っかかっていたからであり、
また、私、彼女のルックスが好きなのかもしれません。
シャーリー・マクレーンが極度に美人になったような(シャーリーさん、すみません。)、
綺麗だけど、どこか愛嬌を感じさせるところがよいのです。
”本当にいいの?本当にいいの?”と脳の片側が詰問する中、逆側の脳が言ってしまいました。
”えーい。買っちまえ。”

というわけで、はい、お買い上げ。ちーん。

しかし、今日、このCDを聴いて、確信しました。それは、彼女のルックスだけじゃなかった、
これは、何か、第六感のようなものが働いたのだと。
オペラヘッドの守護霊が耳元で囁いた、と言ってもいいかもしれません。
買って、大正解!!
というか、これほど、これから聴きこみたい、と思わされたアリア集は、
本当に、本当に久しぶりかもしれません。

まず、選曲がいい。
彼女の歌の長所が生きるような、それでいて、聴いているほうが決して退屈しない、
美しい曲の数々、、。
唯一、一曲目のチャピーのサルスエラからの曲が、
一歩間違えると、彼女の欠点としてとられかねない、年齢のわりにおばさん臭い声に聴こえるという
一線上をうろうろしているのと、
(これは、シリウスでセヴィリアを聴いたときの感じに似ている)
六曲目のオッフェンバックの曲で、少し高音がフラットしているように感じますが
(こちらはセヴィリアの舞台の方の前半と共通した点。他のアリアでもどんぴしゃのところから
ほんの少し外れて聴こえる箇所があり、これからの彼女の課題になっていくのかもしれません。)
それ以外の曲はほとんどパーフェクトといってもいい選曲で、
私が舞台で彼女を聴いたときの印象を本当にうまくこのCDはとらえていると思います。
特に私が素晴らしいと思ったのは、マスネの『ウェルテル』の”手紙の歌”、
このアリア集のタイトルとなったのもむべなるかなと思わせる、ヴィラ=ロボスのアリア・カンティレーナ、
そして、白眉はR.シュトラウスの『ばらの騎士』からのラストのシーン。
『ばらの騎士』からの抜粋では、今シーズン、メトで『魔笛』に登場したダムローがゾフィーを、
そして、私が見に行ったのとは別の日の『ワルキューレ』でジークリンデを演じたピエチョンカがマルシャリン(元帥夫人)、
そして、ガランチャがオクタヴィアンを歌っているのですが、
時に耳ざわりな声に私には思えるダムローもここでは素晴らしい歌唱を聴かせていて、
三人ともに拍手を送りたい。
こんなキャストで、『ばらの騎士』を聴いてみたい!と思わせる録音になっています。
三人ともまだまだ若手で、十分実演で聴ける可能性もありそうなので本当に楽しみ。
他の曲も本当に耳に心地よく、何度も聴きたいアリア集です。

彼女の歌唱もさることながら、それと同等、いやもしかしたらそれ以上に素晴らしいのが、
ファビオ・ルイージ率いるバックのオケ。
ドレスデン国立歌劇場管弦楽団が演奏しているのですが、この優雅で豊かな音はどうでしょう!
『ばらの騎士』なんて、本当にうっとりしてしまいます。
メトの昨シーズンの『トゥーランドット』ではいまいちルイージの良さがわからなかったのですが、
こんな演奏を聴かせてくださることがあるなら、早く帰ってきてほしい!!!!

これから、メトでのオペラ鑑賞のない夜に我が家で大活躍しそうなCDです。
目に嬉しいものをeye candyといいますが、まさにear candyと呼べる一枚。

曲目

1.チャピー:サルスエラ《セベデオの娘たち》から『とらわれ人の歌』
2.マスネ:歌劇《ウェルテル》から『手紙の場』 「ウェルテル…ウェルテル…だれに言い当てることができたでしょう」
3.オッフェンバック:歌劇《ホフマン物語》からロマンス「見たまえ、わななく弓の下で―それが愛かい、愛の勝利かい!」
4.ロッシーニ:歌劇《シンデレラ(チェネレントラ)》から「私は苦しみと涙のために生まれ」
5.ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第5番から アリア
6.オッフェンバック:喜歌劇《ジェロルスタイン女大公殿下》から「担え銃!」―「皆さんは危険がお好きで―ああ、私、軍人さんが好きなのよ」
7.ロッシーニ:歌劇《アルジェのイタリア女》から「愛する彼のために」
8.モンサルバーチェ:カタロニア民謡によるマドリガル『鳥の歌』
9~10.シュトラウス:楽劇《ばらの騎士》から「マリー・テレーズ!」~「私が誓ったことは」~「夢なのでしょう」

エリーナ・ガランチャ(メッゾ・ソプラノ)
ドレスデン国立歌劇場管弦楽団&合唱団、指揮:ファビオ・ルイジ
録音:2006年7月、ドレスデン 〈デジタル録音〉
ドイツ・グラモフォン

***エリーナ・ガランチャ アリア・カンティレーナ Elina Garanca Aria Cantilena***

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4 コメント

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これも (yol)
2008-02-16 11:29:10
実はね、これも買ったの。
仕事をしながらの「ながら」聴きだったけどよかったわ。

ついでにお薦めの「蝶々さん」とカラスの「トラヴィアータ」1955年も購入。

あとでレポあげるわ~。

ついでに、見られるかどうかわからないけど、バレエのDVDとオペラのDVD計8枚が本日到着予定。

いつになったら見られるのだろう?
計8枚って! (Madokakip)
2008-02-16 12:05:30
yol嬢、

そうなの?!嬉しいわ!!
個別メールでお勧めしようかとも思ったのだけど、
もうデッセイのCDを頼んだ後のようだったし、あまりにもお忙しそうだったから、
少し落ち着いてからにしようと思ってたの。
しかも、蝶々さん(これは浮世絵カラヤン盤?それとも、偽浮世絵バルビローリ盤?)に、
トラヴィアータまで?!
しかも、DVD計8枚って、、、。
好きでなければ、拷問かと勘違いするような枚数だわね。

しかも、
>あとでレポあげるわ~。

そんなに忙しそうなのに、すごすぎる!
でも、ちゃんと体は休めてね!
浮世絵カラヤン版 (yol)
2008-02-16 13:21:20
カラヤンよー。
これはね、私オムニバスのオペラCDでパヴァとフレーニの歌は持っていたのだけれど、いずれにしても蝶々さんは全幕通しで聴いた事がないのでいずれにせよ何か欲しいと思っていたところだったのよ。

私のオペラ・ライブラリーはあなたの「家聴く」で成り立っていますわ。

今晩は1ヶ月遅れの私のお誕生日パーティーをしてもらうのだけれど、その前にマリンスキー・ニュー・いやー・ガラ(DVD)を見たいのよねー。

バレエはロパートキナの「瀕死の白鳥」やら「Sleeping beauty」がはいってて、オペラはゲルギー指揮の「Il Viaggio A Reims」。これ「ランス」への旅」よね?そのフィナーレ部分。
浮世絵版なら間違いなし! (Madokakip)
2008-02-19 10:58:06
yol嬢、

浮世絵版は、初めて全幕を聴くのには一番いいかもしれないわー。
ちょっと音がきんきらだけど、でも素晴らしい録音です。
一ヶ月前がお誕生日だったのね。あらためておめでとう。
でも、もしかして、一番忙しかった頃よね、きっと、、。
ゆっくりお祝いも出来なかったのでは、、?
週末はDVDを3本見たとレポにあったので、きっとマリインスキーも見れたのよね?
そう、il viaggio~、それはランスだわ。
ゲルギーの指揮はどうだった?

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