Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

2008年 タッカー・ガラの出演者決定

2008-09-01 | お知らせ・その他
NYエリアで行われるオペラ・ガラのうち、メトロポリタン・オペラで行われるものを除いては、
毎年、クオリティーの高さと豪華さで一ん出ている感のあるタッカー・ガラ。

手堅い、いや、はっきり言ってかなり豪華なソリスト陣に、
メトなどでの指揮経験がある指揮者、
(だからと言って一概に素晴らしい指揮者とは限っていないが)、
そして、伴奏がメト・オケであるというこの三本柱が、
NYで行われる他のオペラ・ガラとは一線を画する一因になっっている。

メト主催のガラではない、ということを強調するためか、
例年、タッカー・ガラのプログラムには、”メトロポリタン・オペラ・オーケストラ”とははっきり記載されず、
”メトロポリタン・オペラ・オーケストラの団員たち”による演奏、という
極めて微妙な表現になっていますが、何を言葉遊びしているんだか。
タッカー・ガラのバックは、全くのメト・オケなのです。

去年はかなり強力なソリスト陣だったので、
今年のラインナップが楽しみと心待ちにしていたところ、
今日、案内状が送られてきましたので、リチャード・タッカー・ファンデーションの
サイトにもアップされることと思いますが、このブログにてご紹介。

まず、指揮者は、去年の熊男、アッシャー・フィッシュから、パトリック・サマーズに交代。
サマーズ、、、どこかで聞いたことがあるような、、。
そう、この指揮者、なんだかいつも影が薄いですが、
ネトレプコらが出演し、DVD化もされた2006-7年シーズンのメトの、『清教徒』で、
指揮をしていた人です。

あまりに影が薄く、他に語ることもないので、ソリストに移りましょう。

 まずは、テノールのピョートル・ベチャーラ。
メトの2008年シーズンでは、『ランメルモールのルチア』のエドガルド役と、
『エフゲニー・オネーギン』のレンスキー役のダブルで登場予定。
今まで一度も生で聴く機会がなかったので、とっても楽しみ。
しかし、彼のサイトを見ると、写真によって随分顔が違って見える。
どれが真実に近いかわからないので、とりあえず、
このウォール街にある会社に転職するために準備された履歴書のような写真を。



 続いて同じくテノールの、ローレンス・ブラウンリー。
メトの新シーズンでは、ガランチャのチェネレントラ(シンデレラ)を相手に、
ドン・ラミロを歌う予定。
2007年の『セヴィリヤの理髪師』のアルマヴィーヴァ伯爵役でのデビューも記憶に新しい若手。
ロッシーニ作品のテノール・ロールをメジャーな歌劇場で歌える黒人テノールというのは、
今まで非常に珍しかったように思うので、ユニークな存在です。
ガラではどんな歌を聴かせてくれるでしょう。


(写真はそのメトでのアルマヴィーヴァ・デビューの際のもの。)

 メゾに移って、ルクサンドラ・ドノーズ。
(案内状には、Dunoseという綴りになっており、ドゥノーズに近いかと思うのですが、
彼女のオフィシャル・サイトはDonoseという綴りになっています。)
ルーマニア出身の彼女は、活躍の場がヨーロッパが中心ということもあって、
メトに登場したこともなく、NYではまだノー・マーク状態。
こういう、メトでまだ聴けない歌手が時に含まれているのも、タッカー・ガラの楽しいところ。
『ファウストの劫罰』のマルグリートなんかがレパートリーに入っているので、
このガラの出来次第では、メトの11月の『ファウスト~』に飛び入り出演してほしい。
他には、『ばらの騎士』とか、『ナクソス島のアリアドネ』といったシュトラウスもの、
そして、ロッシーニもの(『アルジェのイタリア女』、『チェネレントラ』)に、
『ノルマ』のアダルジーザ、しまいには『カルメン』なども歌ってしまうかなりの雑食ぶりを見せています。



 そして、NYで開催されるオペラ・ガラといえば、必ずこの男!の感がある、
マルチェッロ・ジョルダーニ。



こんなにガラに登場して、他のオペラハウスで歌う予定は入っていないのか?とこちらが心配してしまうほどです。
今年は、パヴァロッティ追悼のヴェルディの『レクイエム』の演奏会に始まり、
『ファウストの劫罰』、『蝶々夫人』、125周年記念ガラ、と、
メトだけでもこんなに来るの?というほどの頻繁な登場ぶり。
OONYのガラといい、メトでの本公演といい、NYでは、最近やや不本意な歌唱が続いており、
私の中ではかなり評価が落ち始めているので、そろそろ本領発揮してほしいところ。
(写真は2006年のメトでの『蝶々夫人』ピンカートン役)

 再びメゾに戻って、スーザン・グラハム。



去年のタッカー・ガラにもキャスティングされながら、アッシャー・フィッシュの指揮が気に入らない、
と言って、リハーサル後にドタキャンを食らわせた、という噂のある彼女。
(そして、代わりにヨーロッパからの当日のフライトでカバーに入った、
ディドナートが素晴らしい歌唱を聴かせてくれた。)
なのに、その彼女をまたキャスティングとは、、。
それというのも、得意にしていたシュトラウスものあたりのタイプ・キャスティングから脱皮し、
最近は、グルックの作品など、独自のレパートリーを開拓、
ここNYでは、ほとんどカリスマティックな人気を勝ち取りつつある彼女だからこそ、
なせる技、か、、。
とりあえず、きちんと来て、歌ってください。お願いします。
メトの新シーズンでは、『ドン・ジョヴァンニ』のエルヴィーラ役と、
『ファウストの劫罰』のマルグリート役で登場。

 いよいよ、ソプラノの登場です。まずは、ヘイ・キョン・ホン姉さん!!
まじですか!?



長年、地道にメトを支える中堅ソリストとして頑張ってきたのに、いきなり、
ゲルプ氏に見捨てられてしまった姉さんは、今シーズンどこで何を歌うのか?と
私は心配しておりました。その彼女の歌が久々に聴ける!
彼女のリュー(『トゥーランドット』)は絶品。
去年のタッカー・ガラでは、観客席で鑑賞していたゲルプ氏。
今年も現れたら、”あたしはまだこんなに歌えんのよ!”というド根性を見せていただきたい。
ゲルプ氏との事情も顧みず、彼女をキャスティングしたタッカー・ファンデーションの英断にも拍手!
(写真は、2005年のメトの『フィガロの結婚』で伯爵夫人を演じる姉さん。)

 もしかして、ガラ中、ただ一人のバリトンでは?のジェリコ・ルチーチ。



彼に関しては、昨シーズンの『マクベス』DVD化もされます!)での大活躍ぶりに、
口を極めて誉めそやしましたので、もう何もいいますまい。
地味ですが、実力のある、いいバリトンです。
今年、メトでは、『リゴレット』の表題役、そして、『トロヴァトーレ』のルーナ伯爵、
『椿姫』のジェルモン父という、ビッグ・ロールが控えています。


 今年はややテノールが多い気がするのですが、4人目。
ディミトリ・ピッタス。



ルチーチと同じく、2007-8年シーズンの『マクベス』組出身。
あの公演では、素晴らしいマクダフ役を聞かせたのに、メトの新シーズンでは、
英語版『魔笛』にしか登場する予定がないとはどういうこと!?
若手の中では、おおいに期待しているテノール。
このガラで、観客をぎゃふんと言わせて、2009-10年シーズンに食い込め!
(写真は2007年の、そのメト『マクベス』の公演から。)

 テノールが多いかわりに、ソプラノがたった二人というのはちょっと寂しい。
そのもう一人、が、ソンドラ・ラドヴァノフスキー。



メトでは、ほとんど毎年のように、結構大きく、かつ大事な役をもらっていて、
たたずまいも美しいし、顔が少し長いですが、どちらかというと美人だし、
歌も悪くはない、、、のに、なぜか、ブレークしきれない、という不遇なソプラノ。
何が足りないんだろう、、。
その答えを見つけるべく、このガラでの彼女の歌をしっかり聴いてきたいと思います。
(写真はメト2005年シーズン、ドミンゴのシラノ役に対する、ロクサンヌ役で
『シラノ・ド・ベルジュラック』に出演中の彼女。)

 リストの最後はバス/バス・バリトンの、サミュエル・レイミー。



この写真の真ん中がレイミー。って、扮装が激しすぎて、地の顔がさっぱりわかりません。
でも、最近の彼は、まさにこういった、登場場面は多くないものの、ピリリと作品を締める!という
役でメトに登場し続けています。
写真は、2006年シーズンの『セヴィリヤの理髪師』のドン・バジリオ役ですが、
同シーズンには、『ドン・カルロ』の宗教裁判長、
2007年シーズンの『戦争と平和』のクトゥーゾフ元帥、なんていうのもありました。

ちなみに、メトのプロフィール写真には、こんなのが使われていて、いつの写真?って感じですが、
今も、頭がグレーになっただけで、基本はこの顔です。



今シーズンは、『ドン・ジョヴァンニ』に出演の予定。

というわけで、今年は少し女性陣が弱い気もしますが、逆に男性陣の方は、
なかなか魅力的な顔ぶれになっています。

さて、以上の歌手たちに加え、今年はスペシャル・ゲストとして、
ミュージカル『南太平洋』のケリ・オハラとパウロ・ゾットが登場します。
パウロ・ゾットは2008年のトニー賞の主演男優賞を受賞、
ケリ・オハラも、同賞の主演女優賞にノミネートされ、
下馬評は非常に高かった女優さんです。
(結局、賞は『ジプシー』のパティ・ルポーンが獲得しました。)
ミュージカルに出演中の歌手がこのタッカー・ガラでオペラ歌手に混じって歌う、というのは、
非常に面白い試みだと思います。

ガラは、10/26の日曜日、夜の6時から、エイヴリー・フィッシャー・ホールで行われます。
(冒頭の写真は、『ファウスト』からのリチャード・タッカー。)