Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

ライブ・イン・HD DVD いよいよ店頭に (2)

2008-09-26 | お知らせ・その他
2007-8年シーズンのライブ・イン・HD(ライブ・ビューイング)のDVD、
全6作品発売のうち、4演目しかかき集められなかった日から、
残りの2演目のことが気になって気になって仕方がなかったのですが、
ようやくヴァージン・メガストアに入荷いたしました。
感想の続き、行きます。

 ドゥン 『ファースト・エンペラー(始皇帝)』



ドミンゴをはじめとする歌手、合唱、オケの努力と、
一生懸命に作品を支えようとしているスタッフ、関係者のがんばりを、
作品そのものが支えきれていない。
音楽的に面白い個所はスポットであるにはあるのですが、それがつながっていかないのと、
何よりも台本のつまらなさが止めを刺している。
というか、、、このオペラの筋立てに興味を持てる人っているんでしょうか、、?
どんなに凝ったことをトッピングしようとも、土台がしっかりしていないと、
絶対に素晴らしい公演にはなりえないということを実証してしまった。
そのうえに大作なので、かなり辛抱強い人向き。我慢大会のマテリアルに最適。
むしろ、付録でついてくる”メイキング・オブ”映像(映画"The Audition"
スーザン・フロムケが監督してます)の方が舞台の映像よりも面白い、という事実が悲しすぎる。


 ブリテン 『ピーター・グライムズ』



このDVDにおさめられた公演をオペラハウスで観たときも、
素晴らしいものを見た!と大興奮してましたが、このDVDを見て、あらためてそのすごさを実感。

とにかく、どこかの国の皇帝についてのオペラとは違って、こちらは作品そのもののが素晴らしく、
その上に演出、セット、ソリストの歌唱、合唱、そしてオケの演奏と、
全てが有機的にかみ合っているため、
作品そのものを、何層ものしっかりしたレイヤーが固めているような、
力強くてゆるぎない公演になっています。
観客の盛り上がりぶりもすごいです。

どんなシーンでも、絶対に基調にある一定の上品さが失われない演出家のジョン・ドイルと、
彼のアイディアを巧みにセット・デザインに移したスコット・パスクの手腕が光ります。
この二人への同時インタビューの様子からも、息の合ったコラボレーションであったことが、
良く伝わってきます。
(ちなみに、この公演のライブ・イン・HDのホスト役は、ナタリー・デッセイが担当しています。)
ラニクルズの指揮が引き出した、作品の舞台となっている
漁村の空気すら感じさせるようなオケの音といい、
これほど魅力的なライブの映像はそうはないと思います。
DVDのフォーマットになっても、いささかも舞台の輝きが失われていない。
今回リリースされた6作品中、DVDでみる映像としての完成度が最も高いのは、
この『ピーター・グライムズ』であることに間違いないと思います。
他に選択肢はなし。買うしかありません。