Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

IL BARBIERE DI SIVIGLIA (Fri, Nov 24, 2006)

2006-11-24 | メトロポリタン・オペラ
蝶々夫人に続いて、今シーズン、新支配人ゲルプ氏がはげしく売り込みをかけたのが、このセビリアの理髪師。
なんといっても、David Letterman Showに歌手とオケを持ち込んで、
抜粋を演奏してみせる力の入れよう。
(しかし、これは、内容、長さともに、ちょっと中途半端で、メトファンの失望、ブーイングを買いました。レターマン、メトがオペラハウスの外で演奏することなんて、まずありえません!って連呼してたけど、そのわりにはソリストの紹介もなければ、抜粋の箇所の背景の説明もなし。失礼千万!という意見が多かった。しかし、それは、番組最後の、いつもはロックバンドやらが生演奏をする枠で、まあ、考えてみれば、バンドについてもいつも説明はないから、オペラだからといって、特別扱いはしない!という意味では一貫してるのかもしれません。メトファンの方が期待のしすぎだったのかも。しかし、あれを見て、オペラ初心者の方が、そっか、理髪師、行ってみようか!とはとても思えないであろうこともまた事実。。)
それ以外にも、まるでセレブかロックスターか、のような扱いで、
フローレスのポスターが貼られるなど、相当な力の入り具合。
バートレット・シャーといえば、ミュージカル The Light in the Piazzaで、
高い評価を受けた演出家で、その演出もセールスポイントの一つ。
蝶々夫人で苦い失敗を食らった(一般的には失敗ではなかったかも知れませんが)私としては、この理髪師、少し、冷めた目で見ることに。

まず、オペラハウスに入ってびっくり仰天なのは、
オーケストラピットの1/3以上が、板でカバーされてしまっていること。
口の字に花道(?)が組まれていて、それがピットを覆う形に。

やはり、これはまずい展開でした。
確かにバルコニーの前列は、音響がいまいちで、もともとデメリットがあるのですが、
それを割り引いても、オケの音が抜けてこなくて、とても小さく聞こえます。

フローレスは、日本の東京文化会館(2002年のボローニャ歌劇場引越し公演の
『セヴィリヤの理髪師』)で聞いたとき、なんて美しい声なんだ!と感動した覚えがありますが、
去年のドン・パスクワーレに続き、メトでは、
若干声のサイズのわりに箱が大きいせいで、苦労しているような印象を受けます。
(注:東京文化会館大ホールの座席数は2,303席で、メトの約半分)
この方の持ち味は、繊細な歌いまわしにあるので、メトではいまいち本領を発揮しきれていないようで残念。



ダムローのロジーナは、好き嫌いのわかれるところ?
彼女の歌い癖なのかもしれませんが、アリアの中の一番美しい部分や音を
あまりにあっさり歌いながしてしまうところが、私的にはがっくり。
よくあることではあるのですが、後半声がこなれて柔軟な温かみのある声になったのに対し、少し前半に声がかたすぎるきらいもあります。



理髪師で今まで見て印象に残っている演奏といえば、レオ・ヌッチがフィガロを歌った公演。その、酸いも甘いも経験した頼りになるおやじフィガロ像にたいして、マッテイのフィガロはちょっと若輩過ぎる感じ。(見た目はもちろんなんですが、歌唱、演技ともに。。。)若ければ若いなりに説得力を持たせることも可能だとは思うのですが、まだ役の開発がそこまで行っていないように感じられました。



デル・カルロのバルトロは、演技もうまくて、なかなか好演。
バジリオにレイミーを持ってくるサービスはメトらしくて心憎い限り。



しかし、私が最も心をひきつけられたのは、
歌わない役ですが、バルトロの家来。
ものすごくゆるい、生きているのか死んでいるのかわからない家来を
Rob Bessererという俳優が大怪演!
もう、歌手よりも、この人に目がひきつけられます!!!

さて、シャーの演出は、実は懐疑的な期待を裏切って、なかなかよかったと思います。むしろ、歌手陣がもっとがんばってくれたなら、もっともっといい公演になったかも、と思えるくらい。ただし、2,3苦言をいうなら、
1)あまりにどたばたすぎる場面が数箇所あったこと。ドリフじゃあるまいし!
たとえば、フィガロの仕事道具をのせた馬車の中でレズビアンが抱き合っているところとか、荷車に向かって大きなおもりが落ちてくるシーンとか、正直、一体それが筋や役柄を描くにあたって何の意味があるのか不明。
2)非常に練れていて感心させられる箇所と、時間がなかったか、ネタがなかったか、舞台上の人物が手持ち無沙汰に感じられる箇所との差が大きい。ある箇所など、文字通り、3,4人の登場人物がお互いにくるくる追い掛け回しているだけのシーンがありました。あれはないでしょう。。。
3)上の方から演出家は舞台を見たことがあったのかな?と思わせる箇所が数箇所。飛び散った紙切れやらオレンジやらが散乱したまま相当長時間放置されるシーンなど、そちらに気が散りました。あと、人の配置や動きなど、2とも関係がありますが、オーケストラ(一階席)から見ていたらそう気にならないかもしれない部分が上からみていると、あまり美しく見えない部分があり。

しかし、これらを差し引いても、なかなか魅力的な舞台です。



舞台装置がミニマムなのは蝶々夫人と似ているのですが、
工夫だけに終わらずに、しっかりと機能しているあたりはさすがでした。
見に行って損なし。

Juan Diego Florez (Count Almaviva)
Diana Damrau (Rosina)
Peter Mattei (Figaro)
John Del Carlo (Dr. Bartolo)
Samuel Ramey (Don Basilio)
Conductor: Maurizio Benini
Production: Bartlett Sher
Balcony A odd
OFF
***ロッシーニ セビリヤの理髪師 Rossini Il Barbiere di Siviglia***

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