Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

では、自分で歌わせてもらいます~ 『アドリアナ・ルクヴルール』交代劇の結末

2008-08-20 | お知らせ・その他
こう来ましたか!

メト新シーズンの『トロヴァトーレ』マンリーコ役に予定されていたサルヴァトーレ・リチトラが降板、
代わりに同シーズン『アドリアナ・ルクヴルール』のマウリツィオ役を歌うはずだった
マルセロ・アルヴァレスがマンリーコ役に入ることになったのは先日の記事であげたとおり。

リチトラの降板の理由ですが、プレイビルのサイトには
”個人的な理由により”という記述になっているし、
リチトラのオフィシャル・サイトにいたっては、”今年はメトでマンリーコ役を歌う予定”と
書かれたままなのを見ると、もしかすると、リチトラの降板が先にありき、ではなく、
恐怖の演目乗り換え常習男アルヴァレスの、
”やっぱり、俺、マウリツィオ役、無理かも。マンリーコなら歌えるよん。”
というわがままが先にあったのではないか、との疑惑が募ります。

メトの方がリチトラにお願いして降りてもらった、という可能性もあります。
(翌シーズンなどに埋め合わせをする、という交換条件で、こういった交渉が行われることがあるのは、
『マリア・ストゥアルダ』の記事のアントナッチの例にもある通り。)

私が実際に被害にあったアルヴァレスの演目乗り換えは、
メト昨シーズンの『ホフマン物語』→『カルメン』しかありませんが、
もう、決め付けの独断で、”常習”ということにさせていただきました。
もし今回も彼のわがままが原因だとしたら、私は言いたい。
いつからそんな王様テノールになったんだ?!と。
一旦コミットしたら、死んでも決められた時期までに役をものにしろ!!(『アドリアナ・ルクヴルール』)、
勝手に役から卒業するんじゃない!(これは『ホフマン物語』)

さて、交代劇といえば思い出されるのが、昨シーズンの『ロミオとジュリエット』。
こちらはアルヴァレスのわがままとは少し状況が違いますが、
ヴィラゾンが体調不良により全公演日からのキャンセルをシーズン直前に発表。
ネトレプコは一度もキャンセルをせずに頑張ってくれましたが、
急な交代劇のため、4人のテノールが公演日を分割して歌ってくれて何とかしのいだのでした。
この時の『ロミオとジュリエット』のメインの指揮者がドミンゴ。

そして、新シーズンの『トロヴァトーレ』交代劇のあおりをくった形の『アドリアナ・ルクヴルール』、
こちらも指揮はドミンゴの予定でした。
おそるべし、、、ドミンゴが指揮をすると何かが起こる!!呪われた指揮者?!

しかし、彼はオペラ界できわめて信望が厚い人なので、彼にお願いされたテノールで、
この役を歌えて、かつ、スケジュールに都合のつく人なら、喜んで引き受けてくれるはずなので、
ドミンゴ、誰を連れてきてくれるのかしら?と楽しみにしていたらば、

彼が連れてきたその人は、、、なんと、”自分”でした!!!
そう、マウリツィオ役の代役は、プラシド・ドミンゴに決定です!!
そっかー、この手がありましたねー。
これなら、チケットはむしろ売り上げが伸びそうだし、メトも”うはうは状態”でしょう。

1968年にドミンゴが、フランコ・コレッリの代役として入り、
レナータ・テバルディの相手役という重責を果たしつつ、
メトでセンセーショナルなデビューを飾ったのが、
まさにこの『アドリアナ・ルクヴルール』のマウリツィオ役で、
彼にとってもメトと縁深く、かつ思い出のある役、ということで、話題性も十分です。
あまりにも全てがはまりすぎで、もしや、この交代劇全てが最初から
仕組まれていたのではないか?という気がするほど、、。
ただし、2/17の公演だけはドミンゴではなく、他のテノールがカバーに入る予定ですが、
誰になるかはまだ発表されていません。


(その1968年の公演からのテバルディとドミンゴ。)

さすがにドミンゴが指揮をしながら歌うわけにはいかない、というわけで、
指揮の方も代役が決定しました。
メトの苦境を救えるのはこの人しかいない!!というわけで、マルコ・アルミリアートです。
やった!よくぞ、スケジュールが空いていてくれたものです。
彼はメトで振る指揮者の中で最も好きな人の一人で、
かつ、ドミンゴの指揮には、普段からちょっと???な私なので、
『アドリアナ・ルクヴルール』単体で見ると、この交代劇は、全ての面で、喜ばしい変更です。