道路破損や災害情報、速く細かく 市民の通報を活用
2016/2/18 15:30 日経夕刊
スマートフォン(スマホ)を使って住民から地域の情報を集め、自治体が課題解決につなげる動きが広がっている。住民をネットワーク化し、道路などインフラの破損状況を収集するほか、災害情報の早期把握に役立てる。高齢者の見守り実験でも活用する。行政ニーズが多様化するなか、普及率が6割を超えるスマホが、きめ細かい情報を迅速に集める手段になってきた。
相模原市はスマホを使って道路陥没など地域のインフラの危険情報を市民が通報するシステムを導入した。専用アプリで現場の写真を撮り、スマホの全地球測位システム(GPS)機能で場所を知らせる仕組み。従来は電話や面会による通報が多かったが、スマホの活用で破損箇所の画像や位置を簡単に確認できるという。住民の参加を促し、行政コストを抑えるのが狙いだ。
いち早く地域情報の収集にスマホを活用したのが千葉市で、市民リポーターとして約3600人を登録している。2014年秋から本格運用し、「公園のベンチが壊れている」「側溝蓋が破損している」「街路灯が消えている」など約2000件の報告を受け、8割以上で修繕などを済ませた。
16年度末までに登録者を5千人に増やす計画。千葉銀行、JFEスチールなど地元の有力企業と連携協定を結んだ。落書き、ゴミの散乱などに気づいた人が自分で解決して市役所に報告するサポーターを募る活動にも力を入れる。
減災に生かす試みもある。名古屋市、京都市、福島県郡山市などはそれぞれ、気象情報会社のウェザーニューズと連携。被害場所の迅速な把握や早期の避難誘導に備え、豪雨や台風など気象災害に関する住民情報をインターネット上に示す。
自然保護、高齢者対策でも利用が進む。岡山県倉敷市はスマホなどで撮影した動植物の画像を寄せてくれるよう呼びかけている。地域の自然情報を把握し、保存計画づくりに役立てる。集めた画像をデータベース化し、希少種など一部を除いてネット上で公開している。
富山県南砺市や群馬県下仁田町など全国約70の市町村は自治体スマホ連絡協議会を立ち上げた。民間企業と連携し、GPSや歩数計の機能が付いたスマホで高齢者を見守る実験に着手する。
北九州市は祭りなど地域の魅力を発信できる情報を市民がサイトに登録する。サイトに集まった情報をスマホ経由で広く募る。その地域ならではの情報を集め、地域コミュニティーを活性化するとともに、旅行者増につなげる。
総務省によるとスマホの世帯普及率は14年末時点で64.2%と、10年末に比べ約55ポイント上昇した。高齢者を含めて広く利用が広がってきたため、各地の自治体が住民の行政参加の手段として注目している。