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Double Rainbow

2009-07-20 18:06:51 | Scene いつか見た遠い空
日曜、うちであれこれ作業した後、スカパーで『喜劇 駅前団地』(‘61年)を観る。
その辺の時代の原稿を書いていたこともあり、当時の東京にぜひタイムトリップしてみたいなー
と思いつつ窓外を見やると、夕空が妙に美しい。そこでルヴァンに買い物がてら散歩することに。

外に出ると むわっとした空気を縫って、ぽつんぽつんと少々間延びした間隔で雨雫が。
傘を取りに戻ろうか否か逡巡しつつ振り向くと、天空にぎょっとするほど巨きなダブルレインボウ!
足もとからくっきり架かった二筋の虹は思いのほか空に長く留まり続け、
ほーっ..と立ち止まって眺める人々はみな 少し夢のなかにいるみたいな表情をしていた。

東の空に虹が融けた後、夕暮れの精が西の空を速やかに席捲した。
ジョビンの「Double Rainbow」を鼻ずさみながら井の頭通りをてくてく。
虹の後のマジックタイムは熟れた夏の果実のように濃く澄んでいた。




先週末は池袋での取材後、せっかくサンシャインに来たのだし、とプラネタリウムに寄り道。
私が見た回のプログラムは、皆既日食のスペシャル番組と夏の夜空を彩る天の川についてだった。

天の川が東京で見えなくなってから、36年経つそう。
高度成長期の頃を境に空が濁り、街が不夜城化したことがその一因のよう。
人工的な夜景も面白いけど、天の川に勝る煌きはないなあ…と、CGの天の川を眺めつ溜息。
しかし、天の川って銀河系を真横から見た図なんだと初めて知った!


プラネタリウムといえば、今はなき東急文化会館の五島プラネタリウムが懐かしい。
初めて見たのはまだ幼稚園の頃だったが、天球に煌く無数の星たちの棲む世界にいたく心酔し、
自分もそこの住人であることにわくわく心ときめかせた。と同時に、
自分という存在など星屑よりもちっぽけな宇宙のアクタなのだと幼心に思い知った瞬間でもあった。



週末から弟の竜ちゃんが研究会で泊まりに来ており、岡山名産の白桃をお土産にくれた。
普段食べている桃を遥かに凌ぐ甘美な香りに、またたびを嗅いだ猫みたいなうっとり貌に。。
糖度センサーで選別されたものらしく、頬張るとコクのある果汁の甘みがただちに全身に行き渡る。
ありがとう!

ピーチつながりで、Natural Calamityのアルバム“PEACH HEAD”の
とろーんとしたメロディを久々に聴きたくなった。


最近は ひとりでぼーっとするとき、昔のミニマルミュージックをよく聴いている。


テリー・ライリーの「A Rainbow in Curved Air」は、以前も書いたことがあるような気がするけど
雪の日にむしょうに聴きたくなる。昨日虹をみたせいか久々にかけてみた。
同じくライリーの「Last Camel in Paris」は夜明け前あたりになるとなぜか聴きたくなる。
ジョン・ハッセルの「Power Spot」は、学生時代から真夏の夜になると辿り着いてしまう音楽のひとつ。
どこか深い深い深いところへと連れていかれる感じがたまらないのだ。



今日明日は家でゆっくり原稿書きの予定。22日朝は太陽の下でスタンバるつもり。
皆既日食はさすがに経験ないけど、部分日食は子ども時代に校庭で下敷き越しに見たことがある。
でもあれって目を傷めるからしちゃいけないことだったのね。いまさら知りました。
だから視力が悪くなっちゃったのかなああ?

皆既日食デイ、天気予報に反してどうか晴れますように。


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鬼灯、ロータス、木版画展

2009-07-17 03:00:44 | Scene いつか見た遠い空
鬼灯(ほおずき)は旧盆に死者を導く提灯ともいわれる。
先週土曜、キムリエさんのお誘いで芋洗い坂の途上にある朝日神社のほおずき市へ。
前日には軽い脱水症状で近所の病院で点滴をしていたというのに、この日は嘘のようにけろりと回復。
というかむしろ前より元気に。ヒトの身体って、つくづく丈夫にできているものだなあと妙に感心。

神社では宮崎県日之影町直送の鬼灯を入手。南国育ちは実が大きい! 思わず一個、剥いてみた。
――幼い頃、高い木の枝に巣を張っている鬼蜘蛛が、何かの拍子で地面に落下し、
蜘蛛の腹からこんな朱い珠ともう少し小さな緑色の珠がとろんと流れ出てくるのを見たことがある。
長い間、いきものの魂とは、こんな朱い珠なんだと信じていた。



芋洗い坂を下り、キムリエさん&レイちゃんと麻布十番でおいしいパンを買い食いしたりしながら
古河橋まで歩いてクーリーズ・クリークへ。この日は昨年末のアダン・オハナ以来の
ドイス・マパスLIVE(正確にはユニット名が「木下ときわ」名義に)。
8/9日発売される新作アルバム「海へ来なさい」の曲を中心に、ボッサでもフォークでもない
独特の音楽世界を楽しませてくれた。井上陽水や矢野顕子などのカバー曲もある中、
「団塊少女」というオリジナル曲がなんともアイロニカルかつチャーミングで、らしいなあと。


♪犬の散歩をしませた後に テレビ見て 戦争の国を 心配してた
 いつかつつまれる 世界がキノコ雲に 私 気にしないわ あなただけ ずっと一緒
 定年になれば 熱帯だね サルバドール マニラ メコンリバー
 定年になれば 熱帯だね ここにはもう戻ってこない... ♪ 「団塊少女」より  

 ね、いろんなイミですごいでしょ(笑)


翌日曜、都議選に行った後、自転車で駅前の商店街に出ると、
あろうことかヤギやら羊やら兎やら鶏やらポニーやら! 
夏祭り企画とか。しかし川崎の牧場からやって来たという動物くんたち、少々面食らいぎみだった。
駅前牧場。

人垣の中でぽつねんとしていた亀さんの周りだけ、違う時間が流れていた。ちょっと気の毒。。


商店街のスーパーの軒先では、ここ最近売り出し中の鈴虫に、クワガタムシも加わっていた。
しかし、ペナペナのお惣菜用の容器におが屑を詰めて売られたクワガタは、
まるでキナコに埋もれて潰れた小豆おはぎみたいで、こちらも気の毒。。



商店街を抜けて代々木公園の遊歩道を自転車で疾走中にすれ違った眩しい金色のハンゴンソウ。


数頭のアオスジアゲハが乱舞しているのにも遭遇。恐ろしくすばしっこくて
一瞬のうちに視界から消えてしまうけれど、昔からこの蝶に出逢うとむしょうに嬉しくなる。


代々木公園から表参道を抜け、麻布にあるスタジオトリコの側に越したキムリエさんの新居へ。
マンションの下にツバメの巣があり、ふわふわの雛鳥たちがすごくかわいかった。
寺山修司の「天井桟敷館」跡地にも至近の地で、界隈は独特の雰囲気がある。
そこからキムリエさん、レイちゃん、カッシーと暗闇坂を上って、5月に[ROSALBAvol.15] で取材した
桐島かれんさんの期間限定(7/1~20)ショップ「ハウス オブ ロータスに。
今回のテーマはバリだそうで、その名も「BALI BALI LOTUS」。
築約80年近い洋館にバリ直送のユニークな雑貨が集い、かれんさん自らが蓮の蕾を
手作りで加工したディスプレイなど、相変わらず随所に独特の美意識が。


あれこれ迷った挙句、蓮の蕾のような小さな籠に入ったガムランボールのペンダントヘッドを入手。
唐草模様が彫られたシルバーの珠を揺らすと、しゃららん…と世にも涼しげな音が鳴る。


ハウス オブ ロータスを出て狸坂に出ると、坂の向こうに鬼灯の実のような色の夕陽が見えた。
夜は海の家みたいなゆるゆる心地よいキムリエさん&キムナオさんの新居で、
ベランダからちょこっと覗く東京タワーの先っぽと月を眺めながらわいわいゴハン(愉!)。
付近で見た変り種の紫陽花?

余談ながら、麻布というのは、江戸川乱歩の少年探偵団ものに頻出する場所。
「麻布の、とあるやしき町に、百メートル四方もあるような大邸宅があります。
四メートルぐらいもありそうな、高い高いコンクリートべいが、ずうっと、目もはるかにつづいています。いかめしいとびらの門をはいると、大きなそてつが、どっかりと植わっていて、そのしげった葉のむこうに、りっぱな玄関が見えています。」
――『怪人二重面相』より


麻布の大きな洋館から純情可憐な子息や令嬢が誘拐されるというのは、乱歩の常套句。
松山巌は『乱歩と東京 1920都市の貌』で、開放的な下町に比べ、隣人が何を生業にしているか
不明な山の手の閉鎖性の怖さと、そこに勉強部屋を与えられて囚われる少年たちの怯えを、
麻布に代表される寂しい屋敷町に跋扈する怪人への恐怖に共鳴させていると指摘している。
今では○○ヒルズ的なタワーがキノコの如く乱立しつつある界隈だが、
それでも細い坂の途上に、乱歩的風景の名残がふと垣間見えた。



月、火はこもって旅関係の原稿と水関係の原稿書き。
水曜は表参道で取材後、NODE編集者さとうさんとランチ。トニー・レオン好き同士で盛り上がる。

午後は銀座界隈のギャラリー巡り。まずはINAX GALLERYの「考えるキノコ展」へ。
その不思議な造形に魅かれてやまない輩にはユートピアのような空間。キノコは存在自体がアート。
さらにボザールミューで開催の「元祖ふとねこ堂個展 猫世草子」へ。江戸をテーマに擬人化された
猫画がいとをかし。ギャラリーの案内版下では、看板猫のシーちゃんが爆睡していた。

これは先月、谷中の猫町ギャラリーで入手したふとねこ堂さんの団扇。今夏、大活躍です。

さらに並木通りから細い通路にスッと入った所にある「ギャラリーGK」で
7/18まで開催中の本多廣美 「木版画展」へ。


本多氏は近年愛飲している やなか珈琲店のパーッケージ画で知った作家さん。
デ・シーカやフェリーニ、アントニオーニなどの旧いイタリア映画に、レイ・ブラッドベリや夢野久作などの
幻想小説が大好きだそうで、初対面だったのにいきなりその辺の話でどっぷり盛上がってしまった。
私が彼の作品に魅かれるのは、そうしたものに通じる匂いがあったからだったんだと妙に納得。
ただし、本多氏はそうしたものを直接の題材にして描くことはしないという。
いわく「既成の創作物はその人が既に作った世界だから、それを題材にしたら僕の創作じゃない」。
あくまでも独自の創作世界へのこだわりを 飾らない言葉で誠実に話してくれて、非常に鼓舞された。
本多廣美画伯
「猫と女学生」

展示作品の中でもとくに魅かれてやまなかった版画「猫と女学生」を連れて帰ることに決めた。
ちょっとレトロな匂いもするこの画、実は「今から2,3千年先の未来人が、《21世紀初頭の人々は
ケータイとかいうものを使って交信していたらしい》..という伝承を元に描いた想像画」という
コンセプトらしい(!)。ゆえに携帯も怪しい古代昆虫の姿をした黒電話にすり替わっている。

彼の作品によく登場する猫や月、星、蝶などは、“日常の中に潜む 非日常へと誘う存在”なのだそう。
私にとっても猫や蝶や月や星は、夢の此岸と彼岸を行き交うとくべつな存在だ。


帰宅後、本多氏の木版画がデザインされたやなか珈琲店の缶に入ったコーヒーを淹れる。
しみじみ、おいしい。
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菖蒲、薔薇の名前、ミルキーウェイ

2009-06-28 17:26:38 | Scene いつか見た遠い空
視界を斬る 一瞬の翼。あるいは翅。
梅雨の晴れ間の夕暮れ前、飛来するカラスやカラスアゲハが
いつまでもぬるい空に ひらり 帳を下ろしていく。


先日、菖蒲もそろそろ終わりというので、原稿の小休止に明治神宮御苑へ自転車でぴゅう。
参道から庭園に入ると、ここは上高地?みたいな巨木と熊笹に覆われた森閑たる小径がうねうね。
睡蓮がわずかに浮かぶ大きな池伝いにてくてく行くと、さまざまな紫のグラデーションを湛えた
菖蒲田が見えてくる。盛りは過ぎていたけど、その分ヒトもまばらでのんびり観照。
さらに進むと、こんこんと清水が湧き出ている清正井に行き着く。
絶句。水が生きている。しばし呆然と佇む視界に まるい夕陽が見えた。



御苑を出た後、本殿をひと巡り。耳に入ってくるのは中国語、韓国語、英語、タガログ語…。
唯一聞こえた日本語は、境内に響き渡る大声で携帯を片手に商談している人の声だけだった。
それが止むと、御神木の楠の大木から さらさらさらさら…と快い葉擦れの音が聴こえてきた。
楠の足下には赫い葉がちらほら。小さな女の子がとびきり綺麗な葉をそっと拾って駆けていった。



さらに代々木公園を自転車でゆるゆる散歩。ゴンズイの実はまだ青く、
クローバーの原っぱには、ミモザの黒い鞘がふかふか落ちていた。



薔薇の園には、5月に見たのとはまた違う薔薇たちが咲きほこっていた。
黄昏空にぽっと灯った黄色い薔薇の名前は [かぐや姫]。
クリスマスローズの中では、ハナムグリが静かにディナー中だった。


こちらの乙女な2カットは、 [ダイアナ プリンセス オブ ウェールズ](上)と [恋心](下)。
香りも濃縮乙女。しかし もしこれが[西太后]とか[邪心]という名だったら、印象も違いそう。


帰りに、羽ペンみたいなカラスの置き土産を拾った。




金曜はレイちゃんのお誘いで 夜の銀座のギャラリーを巡る[TOKYO MiLKY WAY]に参加。
「東京で銀河を見る」を標榜したキャンドルナイトの一環で、日没直後から
キャンドルを携え、銀座界隈のギャラリーツアーを楽しむという企画だ。
1丁目から8丁目まで小さな画廊をつぶさに回るにはそれなりに気合がいるし、
自発的にはあまり観ないタイプの作品にも触れることができ 有意義だった。


蝋燭の灯のみに頼る鑑賞には不向きな展示もあったけど、
Gallery art pointで開催していた「Naruhitoガラス展-共鳴する視覚―」は、
企業の廃棄物のみを利用したガラスオブジェとキャンドルのインスタレーションで、
まさに趣旨に合致した出色の作品だった。作家のNaruhitoさんによると、光学メーカーなどに
自ら廃材提供を申し出、賛同してくれた企業から地道に素材を蒐集してきたそう。
ある意味、ジャンクアートの進化形。


奥にいる方がNaruhitoさん↑

2時間たっぷり練り歩いてお腹ぺこぺこになったので、レイちゃんと新橋に流れてゴハン。
夜銀座とは一転、夏の夜の週末シンバシは焼鳥の煙もうもうたるディープな路地に簡易テーブルが
ずらり並び、そこに顔の赤い“おとうさんたち”がぎっしり。ザ・アジアな光景が妙に新鮮だった。


☆THE OMIYAGE

明治神宮に行った折、文化館のお土産店に物見遊山で立ち寄り、
昭和初期の復刻版「小學国語讀本」と、明治神宮参拝記念ココナッツマカロンをお土産に。


土曜からうちに泊まりに来ている母に見せたら、母の小学時代よりさらに古いものらしい。
ナショナリズム色もそれほど激しくなく、ときどき中原中也の詩みたいに思えるものもある。
外国語訛り風に音読すると、意外とはまって面白かった(笑)




夏至の翌朝、ベランダの朝顔が咲いた。
宿根なので数年前に苗を植えて以来、弦のおもむくまま好きにさせているだけなのだが、
毎年 この時季の夜明けに、最初の花が思い出したようにひらく。
夜明け空に染まったみたいな 夜明け色の花。

当然、太陽に顔を向けるので、部屋からは100%後ろ姿しか拝めないのだけど。
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雨のプール、北欧、屋上ジャングル、熊谷守一美術館

2009-06-07 13:13:49 | Scene いつか見た遠い空
梅雨入り目前。しかしいいお天気。
昨日は雨予報だったのに晴れて逆に拍子抜け。
前夜の雨音があまりに心地よかったから。

金曜、10年前に棲んでいた池袋モンパルナス界隈へふらりと。懐かしい“プール小路”にも寄り道。
かつて、ここで出逢った白猫の白玉さんとその仔猫たちは、あれからどうしたかなあ。
白玉さんとその子供たちの幻影も、降りしきる雨粒の彼方に。。。

―そういえば、こんなアングルのプールの大きな油絵を17歳のときに描いたことがある。
水の無いプールの中から、カメラを持ったセーラーカラーの男の子がこちらを撮影しているという。
青臭いシュールな画は今思うと恥ずかしい限りだけど、プール好きは昔も今も変わっていない。
子供のころからプールは眺めるのも泳ぐのも大好き。そろそろ泳ぎに行こうかな。


雨が降る直前の水曜。Gallery五峯(杉並区下井草2-40-16 tel03・3395・9956)を運営する
大村陽子さんのご紹介で、浩江グンナーソンさんの北欧アンティーク初夏のフェアへ。
スウェーデン在住のグンナーソンさんは北欧アンティークというサイトを主宰しており、
20年以上前から現地の骨董店を自ら歩き回って見つけたアイテムを展示販売しているそう。


この前、パークタワーのOZONEでも「北欧の生活デザインと文化展」を見たけど
北欧デザインにある種共通するチャーミングなぬくもりは、しみじみ心を豊かにしてくれる。

この掌サイズの硝子の小鳥オブジェは 迷わず連れて帰った。
1930年頃のものとか。塩入れだそう。柚子胡椒とかを入れてもいいかも。


やはり1930年代に作られたスウェーデンのホウロウメーカー コックムスのお鍋も入手。
「ミッドサマー」という名も気に入った。卵を茹でるだけでも楽しくなるデザイン!


スウェーデンの森に咲くハーブが描かれたStig Lindbergのディナープレートと
硝子のミルクピッチャーも入手。ピッチャーに挿したミントは
大村さんの弟さんにいただいたもの。



大村さんはいつお会いしても美しい色彩の装い。この日は目の醒めるようなオレンジと朱のスカート。
Gallery五峯は彼女の弟の大村龍一氏の設計だそうで、屋上庭園があるというので見せていただいた。
窓辺も緑豊富で、ビルの側面からも生い茂った藤の木がぶわっと。
そして屋上に昇ると…ジャングル! 先日までは枇杷やさくらんぼもなっていたのだとか。
ちまちました家庭菜園とは全然違うこのワイルドさ、猛烈にシンパシーを覚える!

あらゆるハーブが繁茂した一角から、大村氏がスペアミントやペパーミントを根っこごと抜いて
たくさんおすそわけしてくださった。スーッと快い香りごと家に連れ帰って鉢に植え、
部屋のあちこちにも活けた。こぼれた葉をミントティーにしたら、身体がすきっと。

ちなみに、大村氏の建築事務所邑計画工房では、「コーポラティブハウス」(分譲マンションのように
完成した住宅を購入するのではなく、住宅購入を検討している人が集まり、立地条件の良い土地を
共同で購入し、各々のライフスタイルと予算に見合う間取りでマンションを建てる方式。欧米で広く
普及している。<HPより要約)の参加者を募集しているそう。興味のある方はぜひHPをご覧ください。



雨の金曜は「熊谷守一美術館」の24周年展(~6/14)へ。
(雨粒にフラッシュがあたって不思議なドット模様が。。)


守一の娘であり美術館館長でもある榧さんに、先日、母が上梓した歌集の挿画に熊谷守一画伯の
作品を使用させていただいたお礼をすると、うれしいことに榧さんにも母の本をお褒めいただいた。
入口のCafé KAYAにて榧さん手作りの器に入った美味しい珈琲やケーキをいただきながらしばしお話。

1956年に描かれた「ケシ」という埼玉県立美術館所蔵作品は初見だった。絶筆の「アゲハ」や
「白猫」をはじめ、何にも縛られない守一の潔い筆致と久々に対峙でき、目頭が熱くなった。

帰り、懐かしい住宅街を漫ろ歩いた。『猫町』じゃないけど、雨の夕方の散歩には不思議な
空気感がある。満開のクチナシから放たれる甘い芳香と、初夏の雨の匂い。
雨粒が花びらになったみたいな紫陽花。濡れた舗道に映る世界。


雨の日は外出が億劫になるけど、植物にはうれしい恵みの雨。
熊谷守一美術館にも、蛙たちが集った『喜雨』という墨絵があったっけ。
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天然ガール。5歳

2009-05-27 19:14:13 | Scene いつか見た遠い空
「この季節に生まれたから こんなに明るいのかもね」と、小学生の頃、母に言われたことがある。
幼稚園時代は一歩外に出るとすごくシャイだったけど、小学時代は わりと天真爛漫系だった。
「このコ、なんて子供らしい子供なの!」と、通りすがりのオトナに妙に感心(?)されたこともある。

昨日、『地下鉄のザジ』ニュープリント版の試写会に行って、なんかそんなことを思い出した。
ザジをはじめ、最近観た映画の話などは次回に。


――と、夏めいた明るい陽射しに見舞われた先週土曜、
ザジみたいな天然ガールがうちに遊びにやってきた。ガールの名はりんちゃん。5歳。
学生時代からの盟友えとさんの愛娘。前日にえとさんが私のうちに遊びに行く話をしたら
「オトナなのにトモダチになってくれるかな?」と心配していたそう(笑)。くーっ。


まあ フタを開けてみれば オトナが思いっきり遊んでもらった感じ。
私も中身は5歳児に近いところがあるし。
公園では滑り台でエンドレスに滑り続け、うちでは資料などの裏紙をいっぱいつなげて
長靴下のピッピみたいに奔放にお絵かき。至る所にある猫モチーフアイテムを見つけては、
「うきゃあっ! ここにもねこーっっ」

私、この日、百回は口走ったと思う。「かわいいっっ」って。

「好きなお洋服は?」と訊くと「ドレス!」と即答。そんな“ドレスガール” の絵は、
ガール自らが冷蔵庫の扉にちゃちゃっと貼ってくれた。しかし、そんなおしゃまなガールに
嫌われたのが、書棚に居たウッドマン。「あのシロイヒトやなの こわいー」(<ゴメン かわいすぎ)

でも確かに 幼児の頃って、つるっとしたのっぺらぼう人形が妙に怖かったかも。
(ちなみにこのクロッキー用ウッドマン、高校時代からあるのだが大学時代は緑色にペイントしていた)

おみやげにも手作りアイテムをいっぱいいただいた。さすがえとさん譲りの独創性。
ちなみに右のピンクのは“ケータイ”で、左の白いのは“パソコン”だそう**

ピンクケータイの画面には「みひい」の文字とミッフィらしき兎の顔が。
りんちゃんが生まれたばかりの時にあげたミッフィの縫いぐるみらしい!
あの時はミッフィより小さかったりんちゃんも、今ではミッフィの何倍も大きくなった。

これはガール用に用意したマカロンやドラジェにお花たち。


えとさんからもお手製のさくらんぼジャムや美味しいケーキ&焼き菓子をどっさりいただいた。
故ニキ&私にと、母娘でこんなかわいいミニブーケも選んでくれた。ありがとう!!


これもおみやげにいただいたマンゴー。プリンみたいにとろっと甘くてぺろっと完食。
昔スリランカで入手した木製のマンゴーオブジェと2shotで撮影してみました。


この日、母からもサマーオレンジがどっさり送られてきた。歌集を出した記念に
方々からいろんな品々や手紙が続々届いているらしく、そのおすそわけに預かったしだい。
ころころまるいイエローがたくさん部屋にあるだけで、気持ちまでみずみずしくなる。



えとさん&りんちゃんを名残惜しく見送ったあと、代々木小公園の脇道から
小田急線沿いにある「春の小川」にうたわれた細い暗渠をお散歩。
うちに帰ったら、マンション入口の紫陽花が満開になっていた。


りんちゃんは、「もっと遊びたかった。泊まりたかった」と地下鉄で泣いちゃったのだそう(じーん)

天然ガール。5歳。なんてすてきないきものだろう。
また遊んでね
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PCを閉じて、森へ行こう

2009-03-20 04:29:21 | Scene いつか見た遠い空
なにか禁を解かれたように 春へまっしぐら、といった感じのこの頃。
空気が一気にぬるむこの時季は、生きものとして快い。
春特有のメランコリックも同時にあるのだけど、これも生きものならでは。


月曜は確定申告だったけど、間に合わずスルー。お役所系の書類作成は気が進まないのだ。。
で、遅ればせながら週明けに黙々と経費の整理。妙に懐かしい領収書を見つけて感慨に耽ったりして
時間がかかることこのうえなし。しかもあまりに気ままな自分の消費行動を自戒することしきり。

一気に春めいた水曜は、表参道で落語家の林家木久扇氏と俳人の方々の対談取材。
木久扇師匠はさすが話題も知識も豊富。しかも腰が低く、駄洒落サービスも忘れない。
まさに座布団10枚もの。ぱふ♪ 記事は5月発売のKanon に掲載予定。
(ちなみに今発売中のvol.14には東儀秀樹さんを取材した記事の最終回が掲載されています)


帰り途、あまりにぽかぽか気持ちいいので、ゆるゆる歩いて帰ることに。
街路に咲き誇っていたラナンキュラスの鮮やかなイエローに、つい蜜蜂の如く引き寄せられ。


代々木公園には案の定、妖気もとい陽気に誘われた人々がわらわら繰り出しており、
桜の蕾もぷっくぷくで、開花準備万端のご様子。

中には既にうっかり開花している桜も。


あまりの陽気に、カラスくんも水浴び。かなり近寄っても気になさらず ちゃぷちゃぷ。
この日はもういろんな鳥たちが、梢から梢を飛び交いながらピチュピチュ大騒ぎをしていた。


やっぱ生きものって春はわけもなく萌えるよね、と うきうき闊歩していたら
わき目もふらずゲームに熱中する男の子たち。

大きなお世話かもしれないけど、ねえ、ゲームをしまって森を歩こうよ。
そのゲーム、たとえ勝っても、花の匂いとかしないでしょ?
ユキヤナギもコブシも満開だし、梅も最後の残り香を放っていたよ。




森では花のみならず、こんな自然の驚異に出くわすのもまた一興。
(アスファルトが大木の根っこに突き上げられてめりめりに…樹木の無言の反逆)

そうそう、公園を散歩中、サックスやギターなどを黙々と練習する音に混じって
「ちょっとそこの君!」とか「首をはねておしまい!」とか演劇練習中の役者さんの台詞に
たびたび ぎょっとさせられ。「ほんとうは愛しているくせに!」っていうのもあった。うーん。


昨日はさらにぽかぽか5月なみの陽気だった。昼間は窓を開けたままシゴトしていたほど。

pm.5:00きっかり、薄暮があまりに美しいので、久々にご近所散歩。
細い路地へ路地へ 心のおもむくまま歩いていくと、満開の巨大ミモザに遭遇。
左には満開の白椿も。犬も思わず立ち止まってマーキング。


東海大付近のしだれ桜も春風に揺れていた。行き交う人がみなうっとり見上げていく。

ほかにも 木蓮や沈丁花やユキヤナギなどなど、満開の花たちとたくさんすれ違った。
そのたびに 甘いきもちになった。


3月18日はニキの10カ月目の月命日だった。
たそがれどき、どこからともなく恋猫のせつない声が幽かに聴こえた。

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夜の森、幸福の木開花!、赤いポピー

2009-03-09 04:55:23 | Scene いつか見た遠い空
春の夜の森は、奇妙になまめかしい。静謐なのに、刻々と目ざめている。
枯木なのに、触れるとあたたかい。頭上の鳥の巣には、何が居るのか居ないのか。

週末の夜更け、代々木公園の遊歩道をてくてく。電車はまだあったのだけど
月も星もきれいで、なんだか歩いて帰りたかったから。
             


昨日、Hair Splashの小林さんから“幸福の木”が遂に開花したといううれしい速報を受け、
開花する夜を待っていそいそお店へ。 ひらいたばかりという幸福の花は、仄かな妖精のように可憐。
それでいて、もの云わぬ植物が紛れもなく生きていることを実感せずにはいられない圧倒的な存在感。
近づくと、タヒチやバリなど遠く懐かしい南国の花々を彷彿させる恐ろしく蠱惑的な甘い芳香――


つい猫みたいにくんくん嗅いでしまう私(笑)。嗅覚と記憶は大脳で分かちがたく結びついているゆえ、
香りに喚起される記憶は 映画のように鮮烈。初めて嗅ぐ花の香りが、こんなにも懐かしいなんて!

半透明の雫は、これから咲かんとする蕾から滴っている樹液。一寸舐めてみたら、甘く優しい蜜の味。
小林さんによると、さらに開花すると鞠のようになって、お店中にこの香りが満ちるのだとか!
見ごろ予測は3月10前後で(10日は定休のようですが)、開花するのは夕方以降のよう。
追って 満開の幸福の木を 見に(&嗅ぎに)お店に伺おうと思います。


久々に暖かだった土曜の午後は、原宿キャットストリート側でキムリエさんと待ち合わせ。
キムリエさんは麻布十番のスタジオ トリコから自転車で登場。私も自転車にすればよかった…!
この日はなぜか、マフラーからタオル、コーヒースプーン(?!)まで 道端にていろんなオトシモノに遭遇。
そのひとつ、冬眠から醒めた小動物のごとき、ファーの塊。いまにもぴょこんて動きそう。


向かったのは、ars galleryで開催していた村瀬可衣さんのステンドグラス展「桜とポピー」。


「ポピーって、やっぱり赤ですよね!」と村瀬さんと意気投合。
私のポピー好きの原点は、初夏のローマ遺跡に群生していたワイルドな赤いポピーの記憶。
彼女のポピーは深い死生観に関わるもののよう。ただ美しい、というだけではない澄んだ妖気が
ギャラリー空間を密やかに包み込んでいた。


階下には、村瀬さんのアトリエにも寄り添っているという桜のステンドグラスがほのほのと。
薄淡く発光する桜に抱かれた、ほの白い花闇の空間。なんだか急に、坂口安吾を読みたくなる。
(LED内臓のステンドグラスは個別に買える。手作りなので当然ひとつとして同じ桜はいない)

螺旋階段から仔猫みたいに覗いているのはキムリエさん。


おやつに、仏人率が妙に高いクレープリー ラ・フェ・デリースでもちもちの苺クレープをぱくぱく。

帰りにお店の上の帽子屋さんで春用キャスケットを入手。なんだか旅に出たくなる。


キムリエさんにかわいい小鳥のオブジェをいただいた。うちにある雑貨たちとトーンが似ていて
なにげに棚に置いてみたら、むかーしからずーっとそこに居たみたいになじんだ。
ピチュピチュッ


この季節はいつもそうなのだが、菜の花の辛し和えを作るたび、開き過ぎた花を食べずに飾る。
2月に益子から連れてきたミルクピッチャー(或いは醤油挿し)が、初めて役に立った。

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雨上がりのウグイス

2009-02-22 02:45:58 | Scene いつか見た遠い空
一昨日、つがいのウグイスを目撃。雨上がりの公園で、黄昏空を眺めながら桜の梢で悠々とお喋り。
「Che bella giornata!」「Adesso sono davvero felice!」「Sembra un sogno..」「Mi sto innamorando…」


金曜は苦手な朝いち打ち合わせ。しかも雨ーー。ミーティングルームの窓も白く霞んで。。
でも打ち合わせが終わった昼過ぎには、雨上がりの窓から東京タワーがにょっきり貌を出し。


レイちゃんたちと貿易センタービル地下の昭和系喫茶店で、
ナポリのヒトはだぁれも知らないナポリタンをあえて食した後、
表参道に出て母の誕生日のお菓子を選び、歩いて帰宅。早朝まで原稿を書いていたので
ぼーっとしてたけど、なんだか雨上がりの代々木公園を潜って行きたくて。


花びらには、まだ雨しずくがふるふる。


雨上がりの噴水に、空を横切っていく鳥たちが絶え間なく映り。
小さな弧を描く水音、雨に洗われた木々のしじまに響くさえずり。
張り詰めた様子でずっと携帯で話していた人が、ふとそれを胸にしまって天を仰いだ。


何かにいざなわれるようにてくてく歩いていくと、ほわっとあでやかな梅ゾーンに。
数年前、紅白の梅の中を漫ろ歩く夢を見たことがあるが、まさにこんな光景だった。


白梅より紅梅の方が、香りがしとねつくように濃厚。
小学1年生のとき、早春に家族で水戸の偕楽園に行ったことをふと思い出した。
あのときはまだ5分咲きほどだったが、幼心にも感動した旨が当時の絵日記に(元祖 悪童日記ね)





冷え込んだ土曜の夜は、池の上のCinema Bokanで「大原とき緒nuit」と題した映画上映会。
10代の頃からイメージフォーラムなどの自主制作映画を好んで観ていたこともあり
ちょっとアンダーグラウンドな空間で、手作り感のある映画と対峙すると わくわくする。

着物姿も麗しいとき緒監督と、彼女の東京日仏学院のご学友よしのさん。ボン ソワ~(笑)


最初に上映された『緑薫…』(2007年編集版)は、密室で展開する男女3人の会話劇。
各々の思慕が次第に浮き彫りになる脚本と、超狭小部屋でのカメラアングルの妙が面白い。
女性の部屋の乱雑な密室感が、昨夏観た『TOKYO』のミッシェル・ゴンドリー作品を彷彿。
次の『MATU☆KAZE』は昨春も拝見したが(映画の感想&とき緒さんの驚愕!写真はこちら
改めて観て ミレイのオフィーリアの一瞬の引用とか、編集の隠し味を再発見。
映画って、批評するのは簡単だけど、創るのは至難だと思う。がんばってね、とき緒さん!


先週キムリエさんにいただいたライラック。9カ月目のニキの月命日に。
日曜は一週間ぶりにあったかなよう。あちこち散歩しよー。

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早春の此岸と彼岸

2009-02-10 04:01:50 | Scene いつか見た遠い空
最近よく夢をみる。
今日は危機一髪のところで「そだ、目を覚ませばいいんだ」って思った瞬間、覚醒した。ふぅ。
ちょっとした冒険譚。でも、ほんとうのところは、どっちの世界が虚/実なのか。


先週末は冬眠から覚めかけつつ、まどろみの彼岸と此岸を行き交う森の生きものみたいに
家でゆるゆる過ごした。郵便を出しに行ったついでに 一寸だけお散歩。

頭上に、冬のことりたちが描く楽譜が。


遠目にみえる裸木からは、春の気配がしうしう立ち上っていた。



からっ風がベランダの木々をゆらす音で目覚めた日曜、からっ風に恐れをなし、一歩も外出せず。
暮れなずむ窓辺で、すこし空っぽになる。かまびすしい情報にまみれた日常から。
手を振るようにゆれるミモザ越しに、借景の白梅が「ごきげんよう」と云ったように見えた。


夜半、ようやく手をつけ始めたお仕事原稿に没頭していたら、不意にPCが落ち。。
しかたなく、再起動するまでゆやゆよんと伸びをしていたら、
ほくほくの満月と目があった。新芽を蓄えたぐみの枝々のしじまに。


明けて今夜もいいお月さまがあがっている。昨夜よりも少しあたたかな色あいにみえる。
私はといえば、最近なぜか三日月型のネックレスがお気に入りなのだけど。



月曜、すっかり重くなった髪をなんとかしたくてsplashさんへ。
なんでも午前中にはお店に、BBCのクルーが“WABI SABI”をテーマにした番組の
撮影に来ていたのだとか。しかもなぜかその日の取材のお題目は“げじげじ眉毛”だったそう。
英国訛りのナレーションで「ゲジゲジマユ~ゲ」って言うのをぜひ聞いてみたい(笑)


splashの店長こばやしさんによると、お店にいるドラセナが今年も開花しそうな様子なのだとか。
別名「幸福の木」。この木に花が咲くのは極めて珍しいことらしい。
開花の気配を秘めた植物には、独特の凛とした香気がある。


ドラセナといえば、うちにいるこの小さなever green もそうらしい。
冬の薄日に遊ぶ密やかな“幸福”。そんな風に 幸福って日常のしじまにふと息づいている気がする。
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水にとけた太陽と 黄金の月

2009-01-30 05:50:51 | Scene いつか見た遠い空
週半ば、取材先に向かう途上、井の頭公園を漫ろ歩いた。
ぷくぷく芽吹いた猫柳の向こうには、水にとけた冬の太陽が仄かにゆらめいていて、
デコイみたいな鴨たちがその上を悠然と滑っているのが見えた。


遡ること日曜。Oxyオーリエさんちで昼下がりから鍋を囲みながら深夜まで尽きないお喋り。
彼女の部屋は実に居心地がいい。手作りでいろいろ工夫してあり、さすが空間デザイナー。


翌月曜に入稿しなければならないイームズ原稿のために、オーリエさんの私物シェルチェアや
ハウス・オブ・カードも撮影させていただいた。レイ・イームズの密かなガーリィ感がすき。



原稿書き、入稿、あちこち電話&メール、再び原稿書き・・・と慌しい月曜を乗り越え、
火曜は、ここはイタリア?な感じのリストランテ リヴァ デリ エトゥルスキ@南青山で
オペラ歌手幸田浩子さんのインタビュー。

イタリア留学経験もある彼女は、LunaSubitoの名刺を見るや、即イミを理解してくれた。
彼女が愛用しているという上原のお花屋さんは、私も御用達。オリーブが実をつける方法を話したら
早速試してみます、とチャーミングな笑顔。ボッティチェッリの春の美神の如く 心身麗しい人だった。


帰りにリストランテで松の実が入ったメレンゲのお菓子をお土産に。その名も「修道女の乳房」。
さすがイタリア人パティシエ、倒錯したセンス…しかも美味。メレンゲ愛好者としてはかなり好み。


水曜は5月まで開催している「プチ・ルーヴル展」の取材で、ジブリ美術館へ。
展示も美術館自体の造りも、子ども目線の仕掛けが随所にあってなかなかわくわく。
外国人来訪者の率が非常に高く、ジブリアニメの影響力を改めて思い知る。


帰りにポニョや猫バスのヌイグルミ、ではなく、プチ・ルーブル展アイテムのポストイットを購入。
さて、どの眼がどの絵に描かれた人物でしょう?

しかしこれ、普通に資料とかに貼って人に渡したら、引かれそう(笑)
余談ながらジブリ美術館のミュージアムショップ名は「MAMMA AIUTO!(伊語で、ママ助けて)」
なるマザコンめいたネーミングだった。意味深。

その夜は銀座へ。原野先生や清水さん、ちづこさんたちと久々にお会いし、積もる話題もあれこれ。
年長者の方々のお話は含蓄があって深い。そしてなんとも温かい。
「和福美」の色コラムの取材でいつもお世話になっている組紐作家の原野先生にささやかなお礼を
お渡ししたら、結んであった紐を解き、蜻蛉や蝶々や梅をいともたやすく作ってみせてくださった。


帰りにちづこさんに伺った60~70年代 銀座・原宿・横浜 青春グラフティ話も実に楽しく。
彼女にいただいたJohanの袋をうちに帰ってから見たら、ラズベリーの香りがふわん。
こんなピンクのかわいいパンが ぽこ・ぽこ・ぽこと。ごちそうさまです!



今週は新月明けで、しかも曇りがちだったので、月にはまったくお目にかかっていない。

そんななか、「黄金の月」を何度も聴いていた。オーリエさんちでこの曲を歌うスガシカオの
PVをみせてもらい、その歌詞の鋭利で屈折した“ジュンブンガク”っぷりが琴線にちくっときて。
有名な曲らしいのだけど、J-POPにあまり明るくない私は今までまるで知らなくて。
1997年のリリースだそう。12年前。。その頃って、私は何を聴いていたんだっけ?

・・・そんなことを思いつつ書棚を物色していて、こんな古雑誌を発掘。

ちょうど12年前、イタリア旅行中にローマの路上のバンカレッラ(キオスクみたいな雑誌スタンド)で
なぜかSILENT POETSが表紙になったイタリアのクラブ系雑誌がCD付きで売られていたという。。
(ちなみに1冊18500リラ。2000円ちょい?ユーロになる前の金額計算、もうできない…)
あの頃はポエツよく聴いてたなぁ。。ポエツの音楽は遠い旅の匂いがする。

そのときは南イタリアにも足を延ばした。電車でマルティーナフランカの賑やかな高校生たちと
乗り合わせた際、質問攻めにあったので、逆に彼らにどんな音楽が好きなのか訊いてみた。

多くはジャミロクワイ、オアシスの名を挙げ、イタリアの人気DJジョヴァノッティの名が出ると、
ものすごく盛り上がったが、一人だけ「メタルが最高」とガッツポーズしてみせた。

マルティーナフランカの隣はアルベロベッロ。ここでどんな音楽を耳にしたか、全然憶えていない。
夕暮れに、羊たちがとことこ歩く時、首に下がった鐘がカラコロ鳴っていたこと以外は。。


一昨年に出た「澁澤龍彦のイタリア紀行」の表紙もアルベロベッロでのスナップだが、
澁澤も似たような場所をあちこちわくわく訪れており、つくづく親近感がわく。
彼は最期の病床でも「もう一度イタリアに行きたいね」と云っていたとか。


あれからもイタリアへは遊びや仕事で2,3年毎に訪れているが、ここのとこご無沙汰。
今年こそは再訪したいな。と、花瓶の赤いヒナゲシを眺めつつ思うこのごろ。

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迷子の鍵と手袋

2009-01-10 17:08:50 | Scene いつか見た遠い空
この季節になると、路上に手袋が片方だけ落ちているのをしばしば目にする。
かくいう私もときどき手袋を落としてしまうくち。失くすのは、使う頻度の高い黒が多い。
バッグから何か出すとき、表面に置いてある手袋をうっかり落としてしまうようなのだ。
昨年末も、深夜の渋谷で革手袋を片方だけ落としてしまった。
すぐに気づいたけれど、歳末の雑踏の彼方にそれを再び見つけることはできなかった。

そんなわけで、数日前、新しい黒革の手袋を入手。自分の掌サイズにぴったり
と、喜んで着けて歩いていた矢先、渋谷警察署から携帯に電話が――

やはり昨年、渋谷でうっかり落としてしまった自転車の鍵が、警察の落し物課に届いているという。
合鍵が幾つかあったので、無くても困ることはなかったけど、再会できてとてもうれしかった。
この鍵には、かつてニキの首に巻いていたリボンが結わえてあったから。


リボンには、万が一ニキが迷子になっても連絡してもらえるよう携帯番号をしたためていた。
それがこんなところで効を奏したわけで。。鍵をぎゅっと握りしめて云った。「おかえり!」
在りし日のニキ@新幹線

――実は、警察に連絡をもらう前に、鍵を拾ったという女性から私の携帯に直接電話をもらっていた。
「清掃中に拾ったのよ。困ってると思って」という彼女に、「ありがとうございます。鍵というか、
リボンが猫の思い出の品なんです」と私がいうと、その人は「あー、ねこ」と呟いてふっと笑った。

しかし、いざ受け取りに行こうと、伺った彼女の携帯にかけるとなぜか全然つながらず。。
その方が先日警察に届けてくれたらしい。お礼をしたかったけど、警察には名乗らなかったよう。
色褪せたリボンに触れると、ニキの体温とその女性の心温かさが 仄かに伝わってくるような気がした。


さて、今週は仕事始め。水曜は『NODE』の取材で五反田の大日本印刷にある
ルーブルDNPミュージアムラボへ。ここは、ルーブル美術館の所蔵品からセレクトした作品を
マルチメディアを駆使して紐解く実験的空間。開催中の「ファン・ホーホストラーテン《部屋履き》
問い直された観る人の立場」展は、入口に脱ぎ捨てられた部屋履きやドアに下がった鍵、
蝋燭の焔などなどから、絵に込められた秘密を探偵のように推理できる仕掛け。
詳細は、ルーブル展を特集する3月発売予定の『NODE』vol.6をぜひ。

帰りに、布張りの美しいノートをお土産にいただいた。その後、編集のサトウさんとPR会社の方と
カフェでしばし談笑。仕事始めにほっと心なごむ冬の午後。



木曜は銀座のジュエリー会社で打ち合わせ後、日本橋高島屋で12日まで開催中の
「ガレ・ドーム・ラリック アール・ヌーヴォーからアール・デコへ ~華麗なる装飾の時代~」展へ。

会場にはアール・ヌーヴォーからアール・デコの時代を彩ったエミール・ガレ、ドーム兄弟、
ルイス.C.ティファニー、ルネ・ラリックの名品(主にポーラ美術館所蔵品)がずらり。

植物や昆虫など自然の造形を取り入れたアール・ヌーヴォーらしい有機的な装飾の数々は
あるいみ非常にグロテスクかつエロティック。ゆえに きわどいほどエレガント。


特に魅かれたのは、↓ルネ・ラリックの彫刻的な花瓶「つむじ風」(1926年)。
アール・デコらしい造形の奥に、未来派やダダ、キュビズムのエッセンスが潜んでいる気が。


日本橋高島屋は昭和初期の建築らしい意匠がエントランスや階段など隅々に残っていて趣深い。
ここの屋上も穴場。特に平日は、都市の不思議なエアポケット空間に。
冬晴れのささやかな空中庭園ではしゃぐ子供や犬、誰かの噂話を神妙に語り合う女性たち、
テイクアウトのカフェでパンケーキを独りつまむ白髪のご婦人。。


この後、件の手袋を買い、渋谷警察で件の鍵を受け取ったしだい。
さらにその足で代々木八幡宮に向い、少し遅めの初詣。
ひと気もまばらな参道には近隣の小学生の書道作品がずらり。


世の中にはいろんな「お正月」があるもので。私はいまだ少々お正月惚けぎみ。。


夕刻、上原の一角でこんな早咲き梅に遭遇。

その夜は雪予報だったけど、私が目覚めている間は遂に窓外に雪を目撃することはなかった。

翌金曜午後には雪も雨に変っていたが、ひどく底冷えがした。浜松町に打ち合わせに行った際、
氷雨で濡れた窓越しに、浜離宮恩寵庭園の一角に咲いていた桃色の梅がぽっと見えた。


打ち合わせの帰り、タガタ氏がふくちゃんから預かったというお菓子を渡してくれた。
中原中也にちなんだ山口のお菓子。パッケージにはローマ字で「湖上」の一句が書かれていた。
  ポッカリ月が出ましたら   舟を浮かべて出かけましょう
  波はヒタヒタ打つでしょう  風も少しはあるでしょう

明日は満月。ポッカリ月が出るといいな。


そうそう、1月6日にNHKで放映された「教育テレビの逆襲~よみがえる巨匠のコトバ~」が面白かった。
本田宗一郎、三島由紀夫、開高健、司馬遼太郎、手塚治虫などなど故人たちのリアルな言霊に
幾度も魂をつかまれた。好き嫌いはさておき'80年収録の矢沢永吉インタビューも呆気にとられた
同じく若き日の坂本龍一(「YOU」出演場面↓)もひたすら微笑ましく。

とかく旧いものに興味が向きがちなのは、単なる回顧趣味というわけでもない。
ホンモノには、時代を超越した凄みがあるから。
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タジン、命日、カサブランカ

2008-11-06 06:10:17 | Scene いつか見た遠い空
11月5日。父の命日の花を買って帰ってくる道すがら、夕暮れ直前の空に、白い半月が浮かんでいた。

家に帰って間もなく夕陽が沈み、あっという間に夜の帳がおりた。



ちょっと連休惚けしている間に、もう週半ば。。
日曜はキムリエさんちでカッシーと3人でタジンな午後を満喫。
南から西へ動いていく陽の移ろいが心地よく染み込んで来る空間で、ぼーっと過ごす快い時間。


思えば今春、代々木上原でチュニジア料理を3人で食べた際、タジンに欠かせない塩漬けライムを
授かったキムリエさんが、見事に本格的なタジン鍋をこしらえて招いてくれたのだ。

あまりに美味しくてどんどんおかわり。チュニジアに行きたーい!と言いつつ、食べる食べる。

キムリエさんちに居た縫いぐるみのホットさんをもてあそびつつ、深夜まで尽きないお喋り。至福。



週明けはレイちゃんが近所で打ち合わせしているというので、代々木八幡のnewportで会った。
お店でかかっていたTommy Guerreroと、Beastie Boysの大好きなThe in sound from way out!が
たいそう心地よく、書きかけ原稿を忘れて深夜までお喋りタイム。

前日に残念ながら行けなかった勝沼ワイナリーのお土産をいただいた。重いのにありがとう!

翌朝、いただいた勝沼土産の100%葡萄ジュースを賞味。ワイングラスに注ぐと、どう見ても赤ワイン。
しかもノンアルコールなのに酔いそうに濃く美味。朝から赤ワインを飲み干すような罪悪感。。



11月5日、父の命日に生けた白い花たち。懐かしいカサブランカの香り。
6年前、父の棺が父の部屋から運ばれて行ったとき、実家の玄関で濃密に香っていたカサブランカ。
その香りと光景が今も静かに甦る。あの日は11月初頭というのに恐ろしく寒く、おまけに新月だった。
まっくらな夜空は分厚い雨雲で覆われており、どんな星々も きらりとも見えなかった。


寒がりなので、ここのところ深夜は暖房を入れている。
部屋が温かなせいか、カサブランカの蕾が明け方にゆるゆる開花。
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渋谷am.6:30

2008-10-25 05:08:35 | Scene いつか見た遠い空
ここのところ毎晩外出続き。なんだか、あちこちで猫集会を楽しんでいる気分。
週半ば、夜明け近くまでキムリエさん&キムナオさんと中目黒でお喋り。
帰宅後、前日から渋谷駅に置きっ放しの愛車ビアンキが気になり、
熱いシャワーを浴びて目を覚ましてから、早朝散歩がてら回収に。

am.6:30頃の渋谷。雨にほんのり濡れた早朝の舗道は、人よりもカラスやハトの方が多い。
時々すれ違うのは、スーツ姿の眠たげなビジネスマン、クラブ帰り風情のくたびれた一群、
路肩の煙草を掃いているおじさん、地べたに座り込んで夜明かししたらしい女の子たち。。


Bunkamura前で、数羽のハシブトガラスが辺りを超然と睥睨したり、上空を旋回したりしていた。
不気味がる輩も多いけど、カラスの鳴き声ってどこかヒトの会話みたいで、なかなかおもしろい。


――その前夜、六本木の東京国際映画祭ワールドプレミア会場に居た。
観たのは、『二匹のロバの物語』という中国映画。
文化大革命で農村へ下放された青年とロバの奇妙な交流―というと、何か牧歌的な映画と思いきや、
良質な映画の装いをしたブラックなアニマルサイコホラーともいうべき怪作だった。
後で知ったのだけど、原題は『今に見てろよ!』とか(それ、最初に言ってよ。笑)
新進監督のリー・ダーウェイと主演男優の質疑応答はなかなか興味深かったけれど。


映画鑑賞後は、レイちゃん、ちよさん、キムリエさんとバリ風レストランでわいわい。
その後、先の中目黒に流れたしだい。連れていってもらったのはBird Song Caféというお店。
そこで“ガーリーな音楽”を巡って盛り上がり、信じられないようなレアな曲をあれこれ聴いた。
「ガーリーといえば」というわけで、私のwalkman(i-PODじゃないの)からもAlmand Trovaiori
の「L’amore dice Ciao」やFPMの「Days and Days」、ルパン三世の「Love Squall」などなど
僭越にもあれこれかけさせていただいたりして、超性別&超年齢的ガーリー音楽談義は尽きず。。


木曜夜は骨董通りのスペイン料理店であかしさん&やおちゃんとゴハン。
久々の本格的パエリアっっ。しかしスペイン料理は赤ワインが進む進む。。

3人が去年再会したのも不思議な巡り合わせ。やおちゃんのジャズライブにも来月行こう。

あかしさんからベルギーレースの蝶ブローチをいただいた。私の愛用の蝶ブローチにお仲間が。
背景の美しい鳥の刺繍ハンカチは、先日キムリエさんからいただいたもの。好きなモチーフ満載。



金曜は、午後からホテルオークラでロング取材。到着した時はスコールみたいな豪雨だったけど、
夕刻にホテルを出た頃には雨も上がり、東京タワーの回りだけ空が真っ赤だった。

そういえば、今週はなぜか東京タワーが目の前にどーんと見えるシチュエーションが多かった。


帰宅してメールチェックすると、レイちゃんから、テクノ、ヒップホップ、ヘビメタなど
音楽によってノリ方が違う猫たちの爆笑動画が。↓これはハウスでノリノリの猫。
(静止画もかわいいけど、動画でアップできず残念…)

ちなみに、猫って打楽器の音が好きという一説があるけど、
ニキはヴァイオリンとソプラノボイスが好きだった。
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ユリシーズとホテル・バタフライ

2008-10-17 12:46:11 | Scene いつか見た遠い空
無類の蝶好きだった父の命日が近づいているせいか、最近、蝶のことをよく思う。蝶を巡る話を幾つか。

↑これはうちの本棚にいる ユリシーズ ulysses(右)。
10年あまり前、取材で訪れたケアンズで初めてこの蝶に出逢った。
グレートバリアリーフの海みたいな鮮烈なブルーの閃きを
レインフォレストのしじまで目撃した瞬間、南半球にしかいないこの蝶に恋した。
数年前、原宿の雑貨セレクトショップでこの標本を見つけ、衝動買いした。


このユリシーズの栞は、「ホテル・バタフライ」という架空のホテルをイメージしたプロダクトを
展開しているデザインプロジェクトD-BROSのアイテムのひとつ。

(ちなみにこの本は父の蔵書より拝借。ドイツ人作家シュナックによる蝶の博物誌)

「ホテル・バタフライ」シリーズには、他にもこんなドアプレートやランチョンマット、
カップ&ソーサーなど種々のアイテムがあり、どれも機知溢れるデザイン。


そしてこちらが、その「ホテル・バタフライ」。
存在しない国にある 存在しない町の、存在しない湖の畔に佇む、予め存在しないホテル。


決して辿り着くことのできないホテル――と思いきや、
つい最近出た阿部海太郎さんの新譜「SOUNDTRACK FOR D-BROS」に収録されている
「ホテル・バタフライ」のためのサウンド・ストーリーを聴くと、
いつの間にかこのホテルの一室にいざなわれてしまう。

この中の「蝶の歌」という不思議な曲に ここのとこ魅入られている。


と、これはEsquire11月号のカメラ特集に出ていた上田義彦の写真。
東大総合研究博物館に収蔵されている明治時代の昆虫標本らしいが、あまりに凄惨な朽ち方に呆然。
ただ、上田義彦の撮る標本や剥製の写真には、忌まわしさやネクロフェラスな匂いは一切感じない。
寿命ある生きものたちの、分かち難く繋がっている生と死を静かに慈しむ視線に貫かれている。
この筐(標本箱)を写した筐(カメラ)は、いきものが朽ちていく変容そのものを封じ込めた
驚異の部屋なのかもしれない。
<愛用のピンキーリングも蝶々


以前もここで、蝶愛好家のについて触れたことがあるが、子供の頃から蝶の標本は見慣れている。
が、蝶の標本には残酷とかグロテスクといった印象を抱く人も多い。
初めてうち(実家)に遊びに来た友達は、たいてい飾ってある標本箱を見てぎょっとした顔をしたものだ。
でも中には、エレクトリックブルーの光を放つモルフォ蝶を目敏く見つけ、
「きれい」と瞳を輝かせる子も。青光る鱗粉は、時を経てなおしずかに輝き続けている。



母の短歌より「亡夫の手に集めし蝶の標本の樟脳を取り換う心込めつつ」

若き日の父。捕虫網を実に巧みに操り、一瞥しただけで、蝶の種類や雌雄を言い当てた。
11月頭に6年目の命日を迎える。

これは父の形見の捕虫網と、捕獲した蝶を保管する油紙の詰まったブリキの三角筒。
(今春、日干しにした時の写真。興味深げに嗅ぎまわっていた在りし日のニキの後ろ頭にじーん。。)



父の影響か、私自身も大学時代に“コピー”という課題でフェイクな昆虫標本を創ったことがある。
そして気付けば、身の回りにも蝶をモチーフにした雑貨やアクセサリーが方々に。
これはえとさんに先日もらったマグネットの蝶。ユリシーズに似ているけど違う。何だろう?


これは随分前に神保町の文房堂で買ったドイツ製のマグネット蝶。たぶんオオカバマダラ。
澁澤龍彦邸の書斎に同じ蝶が飾ってある写真を見たことがある。
(背景はM.アントニオーニ「欲望」のポーランド版ポストカード)


窓に貼ったカラスアゲハのシールとともに、再び、在りし日のニキ(あれから5カ月)。

ただし、本物の蝶は、こんな風に翅を広げてはとまらない。
もし翅を広げて静止していたら、それは蛾だ。昔、父にそう教わった。
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ラッキー7

2008-09-11 11:11:17 | Scene いつか見た遠い空
夏の名残りと 初秋の風が、マーブル模様のせめぎあいといった感じの今日この頃。
先週土曜は原宿に出た帰り、薄暮の代々木公園を散歩。
ぼうぼう伸び過ぎた芝生に埋もれて秋虫の気分になってみる。りりり。

夕暮れの公園は外国人率が高い。ふと自分がどこか旅の途上に居るみたいな錯覚に。
まぁ、ある意味、日々ながい旅の途上なのかもしれないけれど。


日曜は数ヶ月ぶりにエトさんと、何年も行っていなかった新宿のカフェ・ハイチで逢う。
夕刻、新宿ノーザンウエスト方面へ。超高層ビルと昭和な新宿が混在しつつ、日々破壊が進むエリア。

宵闇の古い幼稚園の運動場にいた小象(背中が滑り台)。雨に濡れた耳や鼻が愛しいぞ。

幼稚園の隣は廃校になった淀橋第三小学校。(ちなみに私は淀橋第四小学校の元生徒)
この小学校校舎の元音楽室で、原マスミ&近藤達郎の「教室コンサート」を堪能した。


相変わらず縦横無尽な弾き語り&キャラ。不意にぽそっと話す呟きMCもライブの密かな愉しみ。
チケットにはシャルル・ペローの「ロバと王女」をモチーフにした原マスミの画が。
その黒い深遠な瞳は、彼の音楽世界と同じく、夜のしじまにぽっかり開いた底なしの穴の如し。

チケットの下のランチョンマットはエトさんお手製。ギンガム、水玉、チェリー。ツボ満載。


月曜は渋谷で夜まで長時間取材。少々頭を整理したかったので、メトロに乗らず歩くことに。
身体を適宜動かした方が、情報を取捨しやすいし、ネタがいい感じに熟成するのだ。

美竹公園脇の坂道をてくてく闊歩していたとき、突然大粒の雨だれが。。
とりあえず最初に見えたカフェに飛び込もう、、と決意するやいなや、この猫が目のはじに。
 café ano

で、一目散に飛び込むと、中に操り人形が何体も。実は東京でも希少なチェコ料理店らしく、
毎月、シュヴァンクマイエルなどのチェコアニメ上映会も催しているのだとか。今度行ってみよう。


そしてなぜかテーブルには、相当年季の入ったトランプが。適当に1枚抜いたら、ハートの7だった。
次に誰かが触れた時 ラッキーをおすそ分けしてあげようと、一番上にそれを置いて仕舞った。

十代の頃、神経衰弱をエンドレスでやり続けるという被虐的な遊びに興じていたことがある。
またしてみたいなあ(笑)。あ、でもこんな原稿ラッシュの時は、海馬が飽和しちゃうか。。


火曜は新丸ビル5FのPASTA HOUSE AWkitchen TOKYOでランチ。
十数年ぶりに、角ちゃん&はや先生に再会。うれし懐かし!
ご馳走になった白桃&ゴルゴンゾーラソースのニョッキも、世界一もっちもちで美味!


角ちゃんのあだなは“ドイツ人”(私が勝手に命名)。ドイツ人のようにきちんとしているから。
実はお茶目な角ちゃん、母になってますますクレバーで素敵なマダムに。

京都で悠々自適ライフを謳歌しているはや先生は、
陶芸や絵画、創作パスタ作りに熱中し、角ちゃんいわく ますます魯山人みたいな粋人に。
さらりとフェレを着こなす76歳、そうざらにはいません。
そんなはや先生から 猫の絵本作りの企画をいただいた。わーい♪


帰りに、角ちゃんに大手町野村ビルの地下に広がる異空間PASONA O₂に案内してもらった。
かつて りそな銀行の金庫だったという 陽光が一切射さない空間に、
所狭しと生い茂っていた 地下生まれ地下育ちのアングラトマト。


他にも、ゴーヤから京野菜まで栽培している野菜畑や、棚田、ビオトープなど、
6つのRoomでそれぞれ異なる栽培実験が行われていた。
薔薇とハーブのRoomは、そこに居るだけで 明らかに空気が澄んでいるのがわかった。
あの中で原稿を書くとすごーくはかどりそう。

実験農場としてだけでなく、インドアグリーンの楽しみ方を模索する意味でも興味深い。

―けど、太陽を知らない一生って、深海魚みたいだな。
以前、ICCで観た「サイレント・ダイアローグ」に 植物の意識を音声化した作品があったが
アングラ植物たちにインタビューできたら面白いだろうな。
「薔薇さん、ご機嫌麗しくていらっしゃいますか?」「ええ、案外悪くないことよ」みたいな。


あ、今日は9.11だ。あの事件を最初に知ったのはエトさんからの電話だった。
「いまTVみてみて!ワールドトレードセンターに、ニキ(2機)がっ!」って。
あれから7年。早いなあ。。
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