零度の空気。迷走をのみこむ青空。
冬木立の向こうの半月が「サイレントにゃあ」のかたちをしていた。
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先週末、ユミさん&セイジさんちで、いつものユニークなメンバーと春の宴を夜遅くまで楽しんだ翌朝、
珍しく早起きして高速バスで一路、「STUDIO TORICO」のキムリエさん&キムナオさんが棲む
軽井沢へ。(トリコは昨秋、麻布十番から軽井沢にお引越ししました)
ふたりの新居は木立の中にある心地よいおうち。
広いデッキテラスに掛かっているキムナオさんの写真が目印。
テーブルやカウンター、戸棚などなど、どれもキムナオさんの手作り。とても温かな仕様。
大きな硝子ベースにキムリエさんが近所で拾ってきたという いろんな小枝たちがいた。
お昼はキムナオさんの快適なキャンピングカーで小諸へ。ランチは当然、小諸蕎麦。
懐古園前のお蕎麦やさんに近所の猫さんが遊びにきていた。にゃあにゃあ語でご挨拶。
食後はキムリエさんおすすめの「べにや喫茶」で珈琲タイム。
久しぶりにいろんなことを差し向かいで話した。冬の陽だまりのような心ゆるむ時間。
昼下がり、ふたりの案内で、小諸駅方面へてくてく。
融けかけた雪の中にドライフラワーになった紫陽花(?)が。なんだか草月流の作品みたい。
旧い町並みが残る北国街道小諸宿に出ると、無数の雛人形や吊るし雛を
道沿いの商家に飾ったイベント「お人形さんめぐり」(2/20~3/7)の真っ最中だった。
江戸時代からある享保雛も間近に拝めた。お人形たちもなんだか喜んでいるように見えた。
明治や大正の趣ある佇まいをそのまま残した建物が多く、独特の陰影が美しい。
掘出し物が眠っていそうな骨董店も、元は和洋折衷様式の銀行だったのだとか(一番下の写真)。
小諸から追分の古本屋さん「追分コロニー」に寄り道。なかなか掘出し物多し。
町の方々で見かける薪の山に近寄ると、清浄な木の香りがした。
そんな中、ひょんな話からあさま山荘事件の現場が改築されつつ現存しているという話題になり
酔狂にも見に行くことに。。。'70年代当時に別荘地として開拓されたそのニュータウンエリアには、
うねうねした山道のえぐれた谷間に沿うように 保養所や別荘が点々と佇んでいた。
しかしオフシーズンで人けもなく、ちょっとしたゴーストタウンだった。「シャイニング」っぽくもあり。。
アイスバーンになった山道の傾斜はかなり激しく、みんなで滑らないよう慎重に歩を進めていく。。
結局、旧あさま山荘は特定できなかったけど、類似した建物も多々。。
奇しくも2月末といえばまさに事件と同時期。その凍るような空気感に背筋がぞぞっとした。
実際、軽井沢は日が落ちてくると、昼間とはうってかわって恐ろしく寒かった。
キムリエさん&キムナオさんちに帰り、薪ストーブと石油ストーブであったまりながら
美味しいお鍋&赤ワイン。ふたりの心づくしに何よりほこほこあったまる。
スクリーンにはフェリーニの「道」。でも肝心のラストシーンがぶちっと切れてた!!(笑)
それにしても薪が燃える匂いや、煌々とゆらめく焔、時折りぱちんと薪が鳴る瞬間というのは
不思議なほど快い。ふと、むかし取材でモンゴルのゲルに泊まった時のことを思い出した。
あまりに楽しくて夜更かししてしまったせいで、翌朝はすっかり朝寝坊。
うす曇りの木立の向こうに、月のように白い朝の太陽が覗いていた。
朝食後、敷地内にせせらぎが流れる星野エリアの温泉へ。
入口付近でぽつんと寒そうにしていた雪だるまも入れてあげたいほど(?) いいお湯だった。
24時間余りの滞在だったけど、まさに命の洗濯。
ここ一カ月ほど迷走していた心が木立にとけていった。
キムリエさん キムナオさん、ありがとう!
帰りのバスの車窓より。
高速バスの降車地はなぜか下落合。池袋駅は大きすぎて苦手なのでこちらを選んだのだけど
むかしよく訪れた懐かしい場所でもあり、ちょっとめくるめいた。
軽井沢から帰ってきてから、随分あたたかくなったが
自分の中でも何かがやんわり変った。