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摂氏35℃の色即是空

2010-07-28 11:59:47 | Luna もの思う月

寝入りばな、窓にぬうっと現われた金色の満月と目が合って、
思わず「ひっ」と小さく叫んだ。
とっさのルナティックな瞬間。

ついこの前まで、日暮れとともに こんな透き通った
生まれたての三日月が出ていたというのに。



先週、銀座と新橋で見上げた月は、まだ猫の瞳のようなアーモンド形だった。



地球上で火山爆発があった年は、空が美しく澄むのだとか?
真偽のほどは分からないけれど、確かに今年はボルケーノ騒動があったっけ。
ともかく、今夏は連日の澄んだ夕映えを観るのが楽しみでしょうがない。
近くの陸橋で夕空を撮っていたら、「わぁ」と通りすがり女の子が眩しげに溜息をもらしたり
「おっ」とおじさんが立ち止まって携帯で撮影したり。今夏の夕空には不思議な魔力が宿っている。

キムナオさんにデジカメ写真を見せたら、「フォトショップで画像修正してる途中みたい」と(笑)
確かに 刷毛でサッと描いたみたいな暮色や、イレーサーで消すのをミスったみたいな夕雲が。。
でも、もちろん画処理は一切なく、まんまの夕映えです。



またどかんとブログに間が空いてしまったので、例によって近況をさくっとプレイバック。

まずは、先日みっちゃんと「ちいさな薬膳料理教室 鳥の巣」を主宰している
鳥海明子さんご夫妻のおうちへ。

和のしつらえが心地よい部屋の窓から見える夕景色がしだいに濃く染まっていくなか
振舞っていただいた手料理の数々は、暑さにふにゃっとなっていた夏の身体をはっと目覚めさせ、
五臓六腑にしみじみ沁みこんでいくような絶妙な風味食感だった。ご馳走さまでした!
こんなに愛情深い料理を魔法のようにささっとできる奥さん、私も欲しいかも!


こちらは先週末、近所のSPBS(渋谷ブックセラーズ&パブリッシング)で行われたトークイベント
「動き出した電子書籍『AiR』、その表も裏もぜんぶ話します」の模様。
作家の瀬名秀明氏、桜坂洋氏、北川悦吏子氏などなどのぶっちゃけ話、なかなか面白かったです。

紙媒体と電子書籍は決してヴァーサスではなく、いい意味で棲み分けていくのだろうな
と改めて確信。どっちかだけにこだわっていても 楽しい未来は拓けないはず。


その翌日、軽井沢から日帰りで来ていたSTUDIO TORICOのキムリエさん&キムナオさんと
ご近所のNEWPORTへ。トリコチームと話していると仕事の話もほんと楽しい。
バックにホルガー・チューカイやアート・オブ・ノイズやトーキング・ヘッズや
マイケル・ナイマンの「ZOO」サントラがかかっていたりして、風景が一瞬にして80sに。
あ、STUDIO TORICOでは、先日取材した「モールトン展」の本も鋭意制作中なのでお楽しみに!


7月は取材集中モードなのだが、いろんなインタビューの中でもとりわけ印象深かったのが
中央大学名誉教授の小山田義文先生と、南方熊楠 顕彰会理事の田村義也先生。
小山田先生の著作『世紀末のエロスとデーモン』は取材内容とは直接関係なかったけど
86歳にしてなお、花のエロティックな暗喩について嬉々と語る教授にしびれました。
また、南方熊楠研究者の田村先生による熊楠像や、エコと熊楠を巡る緻密な検証も大変興味深く。

で、数年ぶりに 水木しげるの『猫楠』を書棚から引っ張り出してきて読み返したのだけど
天才なんて枕詞をつけるのが気恥ずかしくなるほど人間離れしているね、熊楠も水木しげるも。



仕事の間隙を縫って、銀座のギャラリーGKで開催していた「本多廣美作品展」(写真右・中)と
ギャラリー小柳の「須田悦弘展」にも行ってきた。全然毛色は違うけど、前者は木版画、後者は木彫と
どちらも木を自在に操るアーティスト。本多さんは不思議な幻想譚の挿画のような世界観が魅力。
須田さんは楚々とした草花そっくりの木彫による利休的インスタレーションが心憎い。

そして昨日は馬喰町のオーガニックカフェ ハスハチキッチン(左)で超ロングミーティング後、
「馬喰町ART&EAT」などをオーリエさんと散策。昭和レトロな雑居ビル特有の
昭和的モダニズムを活かしてリノベーションされたお店やギャラリーは、
アンティークのあしらいがいちいち巧いなぁ。



そういえば、故ニキの月命日前夜17日、
たったいま生まれたばかりのようにつややかな漆黒の翅をひらめかせて私を先導する
麗しいカラス揚羽に出逢った。
ふと、かつてニキを動物病院に連れて行った時、眼前をふらふら横切っていった
枯葉のようにぼろぼろのカラス揚羽のことを思い出した。
おわる命とはじまる命、それぞれの瞬間。

                      ↑熊谷守一の〈鬼百合に揚羽蝶〉

7月20日は高校時代からの盟友みるの10回目の命日だった。
その日の空も、彼女が大好きな深い深いブルーだった。
その青はやがて、潤んだ緋色の空へと吸い込まれていった。
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モールトンと猪熊弦一郎

2010-07-11 19:14:04 | Event

子供のころ、母の差す日傘の影から少しも身体がはみ出さないように注意深く歩きながら
この傘の下は「別世界」だな、と思ったことがある。
灼熱の世界から自分を庇護してくれる、小さな影の魔法。
何かのかたちで、自分がそんなささやかな傘みたいなものになれたら、と夢想する。

と、近年は“どこでも日蝕”みたいな遮光率99.9%の日傘ばかり使っていて、何か風情が足りない。
ふと、クローゼットにずっと眠っていた昔ながらの白い日傘をそっと開いてみた。実に5、6年ぶり。
瞬間、傘の下に「別世界」が広がる。 よく見ると、レースの生地に、故ニキの懐かしいほさ毛が…。
思えばニキの黒い三角耳のシルエットも、触れると瞬時に「別世界」へといざなう存在だった。



ここのところ取材や打ち合わせが瞬間風速的に立て込んできたうえ、
いよいよ佳境のW杯観戦続きで、またブログ更新がすっかり遅れてしまった。
例によって、ざっとプレイバック。


この2週間ばかり、恵比寿や代官山に行く機会が多く、旧山手通りをしばしば自転車で往復した。
その道すがら、どうしても気になるのが、この辺りの瀟洒な一角には珍しい、
妙にだだっ広い更地に 日々すくすくと緑を増殖させている植物の存在だ。


正体はひまわり。どうやらここに、壮大なひまわり畑を計画している人がいるらしい。
満開になったあかつきにはデ・シーカの「ひまわり」みたいな様相を呈するのかと思うとわくわく。
もし何かの建設予定地を利用したお遊びなのだとしたら、実に粋なはからい。
いっそこのままここを花畑にしてくれたら、もっと素敵かも。


そのひまわり畑の並びにあるヒルサイドテラスで、6/29~7/4「モールトン自転車展」が開催された。
キムリエさん&キムナオさんの運営するSTUDIO TORICOで今展の図録を制作することになり、
私も関係者の取材で何度かお伺いした。


キムナオさんことフォトグラファー木村直人氏が撮影したモールトン写真を
ベースにしたイベントポスターも、非常にアーティスティックでした。

ちなみにモールトンとは、英国生まれのアレックス・モールトン博士が開発した
工学的にも芸術的にも傑出した自転車のメーカー。一見、ゆるいお洒落自転車のように見えるけれど
時速80km以上出るタフさと、エレガントなルックスが同居したちょっと別格の自転車なのだ。


ヒルサイドテラス前の駐輪スペースには、いつにも増して自転車がずらり。
当然ながら、モールトン率高し。マイ ビアンキは、とても肩身狭し。。
会場に入ると、新旧あらゆるマニアックなモールトンのミュージアムのようだった。


牧歌的なカゴをのっけても、小径ホイールだから美しくおさまる。

これは、今年で90歳になるアレックス・モールトン博士と、博士の住まい兼ファクトリーのあるお城。
撮影by木村直人氏。キムナオさんのモールトン城の見事な写真の数々はこちらをcheck!



‘60~'70年代のモールトンの広告も、レトロフューチャーな感じでいいなぁ。



モールトン博士のサスペンションは、オースチン・ミニにも使われている。イラストby寺田克也。

ちなみに、寺田克也自身も、宮崎駿男や大友克洋、鳥山明も熱烈なモールトン愛好家なのだとか。
オーガニックなSFファンタジーな世界観とモールトン、なにか解るよな気もする。。

STUDIO TORICOではモールトン展の図録を鋭意制作中なので、お楽しみに! 



モールトン展最終日の7/4は、オペラシティで開催していた猪熊弦一郎展の
最終日でもあったので、夕刻、キムリエさんと初台に滑り込み。


会場は、谷川俊太郎の「こどもの ころから えが すきだった いのくまさん おもしろい えを 
いっぱい かいた」という一文で始まる絵本の中に分け入っていくような展示がなされており、
猪熊さんの絶妙な筆致と色彩感覚、ワンダーチャイルドな世界観にとっぷりと魅了された。




少し遡るけど、キムリエさん、レイちゃん、カッシーとも、久々に集合。
ルナスービトも加えて頭文字をつなげると「リルレカ」。アヒルストアでわいわいした後は
みんなでうちに流れ、さくらんぼなどつまみながら朝までリルレカゆるトーク。




七夕ウィークは、ベランダジャングルから笹をわさわさ伐って、花瓶に活けてみた。
短冊はあえて下げず、心のエア短冊に思いを込めて。




先日、石川啄木生誕100年記念本「風紋」に続き、今年2月に極寒の盛岡を取材した「望郷」も
無事完成したので、新宿での打ち上げに参加。この面々でまたお仕事できると楽しそうだなあ。
…と、お店に向う途上、東口の一角で、路上パフォーマンスに遭遇。

ネクタイもジャケットも跳ね上げたまま、このポーズでずっと静止していた。すごい筋力!
‘90年代にアート界を一世風靡したローバート・ロンゴの「Men in the city」を思い出した。




先週は間隙を縫って「セラフィーヌの庭」の試写会にも足を運んだ。
家政婦をしながら画を書き続けた老嬢の凄まじい芸術的衝動に眼を見張りながら、
記憶の深海から立ち上ってくるような憧憬を覚えた。最近観た映画の感想は今度まとめて書きます。
と、帰りに通った有楽町のとあるガード下には、古い映画のポスターがわざと
すたびれた感じで貼ってあり、昭和の映画セットみたいな空間になっていた。




昨日は、素敵なマダム千鶴子さんのお誘いで、狂言を観て来た。演目は「越後狐」と「附子(ぶす)」。
お茶目でよこしまな応酬が渦巻く室町コントで暑気払い。演じたのは人間国宝 野村万作さん他。
Tweetにも書いたけど、狂言のツボは、おばかなボケツッコミとオフビートな笑い。
神奈川県立音楽堂には初めて訪れたが、モダニズム美学が随所に溢れた実に好みの空間だった。
コルビュジエっぽいなあと思い、帰って調べてみたら、前川國雄の1954年作品だった。やっぱり。


この日、よく見ると、千鶴子さん(写真左奥)とミュールが酷似!訊けば同じデザイナーの品でした。
さらに千鶴子さんと 彼女の幼馴染まりこさんは、髪飾りと指輪がまったく同じで、
しかも指輪はつけている指まで同じだった! すごい奇遇の連鎖。


帰り、渋谷駅前でドクター中松の名をノリノリ連呼するテクノな選挙カーと鉢合わせした。
スクランブル交差点を渡る人々の足並みもそれに合わせてタッタカ ハイスピードになっていた。

さて、ほんじつ、せんきょ。これから雨夜のお散歩がてら、投票に行ってきます。


今夜は選挙速報もだけど、本丸はW杯決勝。
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