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菖蒲、薔薇の名前、ミルキーウェイ

2009-06-28 17:26:38 | Scene いつか見た遠い空
視界を斬る 一瞬の翼。あるいは翅。
梅雨の晴れ間の夕暮れ前、飛来するカラスやカラスアゲハが
いつまでもぬるい空に ひらり 帳を下ろしていく。


先日、菖蒲もそろそろ終わりというので、原稿の小休止に明治神宮御苑へ自転車でぴゅう。
参道から庭園に入ると、ここは上高地?みたいな巨木と熊笹に覆われた森閑たる小径がうねうね。
睡蓮がわずかに浮かぶ大きな池伝いにてくてく行くと、さまざまな紫のグラデーションを湛えた
菖蒲田が見えてくる。盛りは過ぎていたけど、その分ヒトもまばらでのんびり観照。
さらに進むと、こんこんと清水が湧き出ている清正井に行き着く。
絶句。水が生きている。しばし呆然と佇む視界に まるい夕陽が見えた。



御苑を出た後、本殿をひと巡り。耳に入ってくるのは中国語、韓国語、英語、タガログ語…。
唯一聞こえた日本語は、境内に響き渡る大声で携帯を片手に商談している人の声だけだった。
それが止むと、御神木の楠の大木から さらさらさらさら…と快い葉擦れの音が聴こえてきた。
楠の足下には赫い葉がちらほら。小さな女の子がとびきり綺麗な葉をそっと拾って駆けていった。



さらに代々木公園を自転車でゆるゆる散歩。ゴンズイの実はまだ青く、
クローバーの原っぱには、ミモザの黒い鞘がふかふか落ちていた。



薔薇の園には、5月に見たのとはまた違う薔薇たちが咲きほこっていた。
黄昏空にぽっと灯った黄色い薔薇の名前は [かぐや姫]。
クリスマスローズの中では、ハナムグリが静かにディナー中だった。


こちらの乙女な2カットは、 [ダイアナ プリンセス オブ ウェールズ](上)と [恋心](下)。
香りも濃縮乙女。しかし もしこれが[西太后]とか[邪心]という名だったら、印象も違いそう。


帰りに、羽ペンみたいなカラスの置き土産を拾った。




金曜はレイちゃんのお誘いで 夜の銀座のギャラリーを巡る[TOKYO MiLKY WAY]に参加。
「東京で銀河を見る」を標榜したキャンドルナイトの一環で、日没直後から
キャンドルを携え、銀座界隈のギャラリーツアーを楽しむという企画だ。
1丁目から8丁目まで小さな画廊をつぶさに回るにはそれなりに気合がいるし、
自発的にはあまり観ないタイプの作品にも触れることができ 有意義だった。


蝋燭の灯のみに頼る鑑賞には不向きな展示もあったけど、
Gallery art pointで開催していた「Naruhitoガラス展-共鳴する視覚―」は、
企業の廃棄物のみを利用したガラスオブジェとキャンドルのインスタレーションで、
まさに趣旨に合致した出色の作品だった。作家のNaruhitoさんによると、光学メーカーなどに
自ら廃材提供を申し出、賛同してくれた企業から地道に素材を蒐集してきたそう。
ある意味、ジャンクアートの進化形。


奥にいる方がNaruhitoさん↑

2時間たっぷり練り歩いてお腹ぺこぺこになったので、レイちゃんと新橋に流れてゴハン。
夜銀座とは一転、夏の夜の週末シンバシは焼鳥の煙もうもうたるディープな路地に簡易テーブルが
ずらり並び、そこに顔の赤い“おとうさんたち”がぎっしり。ザ・アジアな光景が妙に新鮮だった。


☆THE OMIYAGE

明治神宮に行った折、文化館のお土産店に物見遊山で立ち寄り、
昭和初期の復刻版「小學国語讀本」と、明治神宮参拝記念ココナッツマカロンをお土産に。


土曜からうちに泊まりに来ている母に見せたら、母の小学時代よりさらに古いものらしい。
ナショナリズム色もそれほど激しくなく、ときどき中原中也の詩みたいに思えるものもある。
外国語訛り風に音読すると、意外とはまって面白かった(笑)




夏至の翌朝、ベランダの朝顔が咲いた。
宿根なので数年前に苗を植えて以来、弦のおもむくまま好きにさせているだけなのだが、
毎年 この時季の夜明けに、最初の花が思い出したようにひらく。
夜明け空に染まったみたいな 夜明け色の花。

当然、太陽に顔を向けるので、部屋からは100%後ろ姿しか拝めないのだけど。
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夏至の灯、モレイラ、ミヌー

2009-06-22 01:16:12 | Tokyo 闊歩・彷徨・建築探偵
The time to hesitate is through  No time to wallow in the mire
Try now we can only lose  And our love become a funeral pyre
(The Doors [Light My Fire]より)

先週18日は1年と1カ月目のニキの月命日。19日は桜桃忌。そして21日は夏至。
1年中で昼が1番長く、夜が1番短い日(南半球は逆だけど)。
日にちのかわる深夜、ハートの蝋燭に火を入れてみた(あ、妖しい儀式とかじゃなく..笑)。

蝋燭は5年程前にコロンボの雑貨屋さん取材で見つけたもの。長らく書棚の隅に置いたままだったが、
先月のニキキにふと火を点けてみて以来、2度目の灯火。
夏至未明、小さな獣のように呼吸する焔。


あいにく夏至の日は曇天で、日の長さを愉しむにはあまりにもまったりと湿っぽい空だった。
気まぐれに、誕生日にもらった砂時計をくるっとひっくり返してみた。
さらさら零れていく砂は、実は細かく粉砕された硝子の粒なのだとか。
音もなくおちていく硝子の砂の向こうに、ジム・モリソンの歌声が重なる。
♪The time to hesitate is through  No time to wallow in the mire.....


先週は取材&原稿三昧。とはいえ、楽しいお誘いには、つい尻尾ひらひら。。。
まず火曜の夜は、メグ千鶴子さんが’80年代に贔屓にしていたという根津の「モレイラ」へ。
「モレイラ」とは、サンバランソトリオのドラマー、アイアート・モレイラから命名したのだそう。
ちなみに、あのブラジル代表ロナウジーニョも本名はロナウド・デ・アシス・モレイラなんだとか。
さすが千鶴子さん秘蔵の店だけあり、あえて冠した「コーヒー&スナック」とは名ばかり、
実態は秘密にしておきたいほどマニアックでおいしいビストロ。

マスターはシネフィルらしく、カウンターの奥には映画のポストカードがびっしり、
見上げれば天井にもポスターが隙間なく。。私の頭上には奇しくも大好きな『ニキータ』が。
マスターはB級アクションと悪役のニコール・キッドマンがお好きなのだとか。

奥の壁にはマスター手描きの酒瓶ポストカードがいっぱい。コピーもなかなかなお味。



隣席には、根津にある外国人御用達宿「澤野屋」に泊まっているというフランス人カップルが。
熱々のお手製ブルーベリーソースをたっぷりかけたナッツ入りアイスをマスターが出すと、
それまでひっそり話していた彼らが初めて満面の笑みを見せた。
ちょっとスプラッターな雰囲気のこのアイス、くせになる美味しさ。いっぱい食べたー。

トレビア~ン&ボンボヤ~ジ


その二日後、私はこのブルーベリーアイスを 再び「モレイラ」でちゃっかりいただいていた。
というのは、マスターに紹介された根津で上演中の演劇を観に行き、その帰りに寄った次第。
演劇会場は芸大前にある明治40年築の市田邸。演目は「厩横丁くろにくる」(気まぐれ倶楽部公演)。
「築110年以上の文化財なので、くれぐれも襖や柱には寄りかからないようご注意ください」と
上演前に脚本&演出の山下まさる氏自らが汗を拭き拭きアナウンスしていたのが可笑しかった。

お座敷は縁側まで超満員で、配られた団扇で扇ぎながらの観劇だったけど、面白さに時間を忘れた。
江戸、明治、昭和、平成を貫く谷根千を舞台にしたオムニバス年代記で、笑いの奥に、
この地に根ざす歴史の紆余曲折が見事に織り交ぜられていた。もちろん猫噺もさりげなく。
演劇は場の磁力にことのほか左右される空間芸術。まさにどんぴしゃな会場選択だったのでは。



金曜は、原稿が煮詰まっているさなかの夜9時頃、文化村にいるというキムリエさんから電話があり、
二つ返事でビアンキを飛ばして一緒にゴハン。さらにNEWPORTで夜更けまで話し込み。
原稿さえなかったら、また朝まででも話していたかった。

土曜は夕方に日本橋で再び文学博士シャウマン・ヴェルナー氏と俳人の方の対談取材。
シャウマン博士は思春期に自我に目覚めて日記文学に興味を持ち、その時に選んだ書物が
「土佐日記」や「徒然草」だったそう…! 卒論は、偶然にも私が先日谷中でお墓を見つけた
猫々道人こと仮名垣魯文研究だったのだとか。なんとも いとをかし な博士でした。

取材後、銀座のボザール・ミューで開催していた米田民穂さんの個展へ。
私はほのぼのファンシー系の猫絵は苦手だけど、米田さんの描く決して媚びない猫たちの
ふてぶてしい面構えにはいたく惹かれる。どれも実際に出逢った猫をモデルにしているそう。


これは新作ミヌーの油彩。ミヌーとはフランス語で“かわいい仔猫ちゃん”みたいなイミらしい。
ますますふてぶてしいお嬢貌猫。なのに妙にコケティッシュ。パリ留学中に出逢った猫がモデルとか。
ぬいぐるみバージョンもやぶにらみが効いてていい。


実は、米田民穂さんという名や作風から女性とばかり思い込んでいたら、にゃんと男性でした。
えーーっ?! 米田氏いわく「みなさん、本人を見てがっかりして帰っていきます(笑)」

たみほ ではなく、本名はたみお だそう にゃ。


これは米田さんの作品..ではなく、帰りにメトロの日比谷駅通路で見た「世界こども図画コンテスト」
受賞作品のひとつ。ロシアの7歳の子が描いた「水そうのそばのねこ」。
子供の絵には、巧い下手を超越して、大人には描き得ない極みがある。


これは東京の9歳の少年が描いた「猫と宇宙」。宮沢賢治の童話の挿絵にでもなりそうにシュール。


スリランカの9歳の子の「お母さんのおっぱい」。猪熊弦一郎画といっても通りそうな?!


インドネシアの6歳児作品「ぼくのドラゴン」。ミロもクレーもびっくりよ。


ポルトガルの少年が描いた「いつも1番の選手」。…てことは、これはクリスティアーノ・ロナウド?



☆追伸

ここのところ朝日新聞の夕刊で連載していた「この1枚の物語」が面白かった。
東松照明、長尾靖、森山大道、荒木経惟、藤原新也、蜷川実花、岩合光昭――
エポックな写真で独自の世界観を切り拓いた日本の名物写真家たちを採り上げたコラムなのだが、
写真家各々の生成流転が、無駄を極限まで省いた文体で語りおろされており
そのいかにも新聞らしい ごつごつ骨太で濃密な書きっぷりが小気味よかった。


速報性じゃネットの足もとにも及ばず、いずれ新聞はなくなると断言する輩も多いし
私も忙しい時には全然読まずに溜め読み(しかも飛ばし読み)する人だけど、
新聞というアナログなメディアをなぜか未だやめられない。


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ぬりえと青春オタク

2009-06-18 02:03:13 | Event
これは、イラストレーター服部あさ美ちゃん作のぬりえ『1.2.3…』。
先週末、代官山UNICEであった彼女のウエディングパーティの引き出物にいただいたのだ。
あさ美ちゃんらしいチャーミングなタッチの薔薇に、色鉛筆でちょこっとだけ彩色してみた。
緑色を出すのに、あえて緑を使わず、赤色を出すのにあえて薄紫や黄色を下地に塗る。
昔、絵を描いていたときの天邪鬼ごころがむくむく。一輪塗るだけでもはまったー。
無垢でどこかあやうい彼女の描画には そんな欲望を喚起する魅力がある。


それにしても贅沢なぬりえ。ネットでも買えるようなのでぜひ。


こちらはあさ美ちゃん&たいちゃんのパーティ。司会は世界のナベツネ。お友達だそう。
「クラリスのような新婦」byナベツネ。まさに。彼女は透けて見えそうなほど透明可憐でした。



「We Are The World」にあやかったパロディ映像の上映があり、すり替えテロップによる
大御所たちの辛口コメントが、オリジナルより面白かった!


…散々な言われようだけど、たいちゃんのバンド「プレクトラム」のミニライブ、ナイスでした!
ちょっと北欧ギターポップ風サウンドに甘酸っぱい歌詞。永遠の[青春オタク]にエール♪


高原で摘んできたみたいな 可憐なブーケを投げるあさ美ちゃん。ずっとずっとお幸せに!!
Tante Auguri!!

その後、ふくちゃん&初対面のライターくみ姐さんと共に拙宅に移動し、
なんと朝8時半までお喋りしていた。私たちも別のイミで幸せなヒトたちかも。。


パーティ前日、新宿でランチ打合せ後、夕方に恵比寿でひだかと久々に合流。
軽くコーヒーの筈が、楽しいやら美味しいやらで 気づけばワイン片手にすっかり夜遅い時間に。
ちょっと遅めのお誕生日プレゼント交換にて、19世紀のアンティークブローチに
ショットグラスなどなどをいただいた(喜&ありがとうー)。


ひだかも書いている[BRUTUS]最新号などもおみやげにもらった。
お茶特集、大充実の内容。保存版です。(おお、写真家 高木由利子さんも出ている!)

もひとつ[Casa BRUTUS]は、ベランダガーデナーの私にはもはや同胞の如き緑偏愛系の輩が
いっぱいで興味津々。しかしやはり、植物をおとなしく飼い慣らしているヒトの家より、
植物がわっさわさワイルドにのさばっている家の方が、断然面白いことを再確認。

植物学者パトリック・ブランさんのおうち&思想にも大いに賛同した。
いわく「植物は水と光の条件さえ整えば人に頼らず生きていく自立した生命体。人の
思い通りになるオブジェではない。うまく暮す秘訣はできる限り彼らを自由にすること。
インテリアのために彼らをコントロールするより、共棲する植物に合わせ、
インテリアを変えてもいいじゃないですか(要約)」  拍手!

GW前後に取材していた洋館の特集が掲載された[ROSALBA]最新号vol.15も6/25に発売に。
特集の扉写真はキムナオさん撮。桐島かれんさんのインタビューも面白いから読んでね。




月曜、青葉台で歌人 朝倉富士子さんと文学博士シャウマン・ヴェルナー氏の取材をした帰り、
自転車で駒場東大前のアンティークショップを覗くと、誰もおらず、
代わりに巨大な駝鳥が店番をしていた。この剥製も売り物らしい。。



雨降りの火曜、夜。帰宅途中に近所のスーパーマーケットに寄ったら、ジュースや野菜と一緒に
鈴虫が売られていた。「夏の涼特集 音色を楽しみましょう」というコピーと共に。
りりりりり・・・鈴虫の輪唱はへたなミニマルミュージックよりずっと好きだけど、
雨粒を照らす煌々とした電灯の下で、その鳴声は壊れたレコードみたいに乱れていた。


今週は時々取材&ひたすら原稿ウィーク。
その間隙を縫って、またまたディープな夜の谷根千詣で。その話はまた追って。
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Cassina、満月週間、夏草たち

2009-06-12 00:17:41 | Art
劇的に器用な職人と、笑っちゃうほど不器用な芸術家。
それぞれ 優劣も貴賎も上下左右もないけど、私的には後者に惹かれる。
編集が死ぬほど巧いヒトと、創らないと死んでしまうから何か創るヒト。同じく、後者に惹かれる。 
秀作を連打するヒトと、連打する駄作の中に 稀に誰かが絶句するほどの傑作を生むヒト。以下同。。
満月の夜明け、ずっと昔から明白に感じていることを、しみじみ反芻。


先週土曜、森アーツセンターギャラリーで開催していた[メイド・イン・カッシーナ展]へ。
満月のせいか妙に身体をクリアに動かしたく、六本木ヒルズまでビアンキを漕いでびゅーん。
正直、何度訪れても愛し難い空間ながら、ここのギャラリーや美術館は昔のセゾン美術館みたいに
我が道疾走系なので、ぜひその路線を貫いて欲しいなと。

↑トップの画像は1920年代末、ウンベルト&チェーザレ兄弟により設立されたCASSINA最初の
カタログ「ちっちゃなテーブル工房」より。当時は意外とクラシカルなデザインの集積だったよう。

カッシーナは戦後、客船用ファニチャーを手がけて以来 生産も飛躍的に増え、コルビュジエ家具初の
復刻も行った。ル・コルビュジエの名作[シェーズ ロング]もそのひとつ。かの椅子で寛いでいるのは
コルのパートナー シャルロット・ぺリアン↓。彼女の復刻家具も温かくてすき。


ル・コルビュジエの提唱した“寛ぐための機械”というコンセプトを さらに官能的に捉えた
フィリップ・スタルクの[レイジー・ワーキング・ソファ](1998年)や、
ちょっと『時計仕掛けのオレンジ』みたいなADワークのアフラ&トビア・スカルパ作
[チプレア](1968年)あたりは、すきというか、願わくば欲しい。。


今やとんと見かけなくなったけど、1980年代末に登場したガエターノ・ペッシェの
[フェルトリ アームチェア]の有機的フォルムに出逢った当時は狂喜したものだ。
柔らかなフェルトの背もたれにすっぽり包まれる快感は、
乱歩の『人間椅子』もびっくり?(座ると後で意外と肩が凝るんだけど…)

以上、ファニチャー写真はすべて[Made in Cassina]図録より。

帰り、ヒルズの一角から、天皇夫妻成婚50周年記念ライトアップの東京タワーをぱちり。
この夜に行われた日本VSウズベキスタン戦の勝利により、日本が2010年に南アフリカで開催される
W杯出場をいち早く決めたことを祝して、ジャパン・ブルーのライトアップに変わったよう。
私は帰宅後、後半からTV観戦。審判の采配が恐怖政治的だったのも去ることながら、
ウズベクがシュートする度に放たれる解説の松木氏の絶叫も恐怖映画さながらだった。

この夜は、狼男が思わず変身しそうな満月が宵闇にくっきり。



月曜は赤坂でインタビュー。取材相手は広報のNPOをたちあげている方。目から鱗の話に敬服した。
このシゴトをしていると、プレス関係者と接する機会がたいへん多く、各々実に千差万別なのだが、
時々 凄腕のプロフェッショナルに巡り会う。たいていは年長者だが、人間の幅がまるで違うのだ。


取材後にレイちゃんから電話があり、赤坂のクレープリーのテラスであれこれ話した後、ビストロで
モヒート&ワイン。古道具屋さんで見つけたというイタリアの古いガイドブックをいただいた。
懐かしいリグーリアの海辺の写真にちょっと遠い目に。。




水曜はオーリエさんのお誘いで、広尾のギャラリー旬で始まった陶芸家 森田榮一氏の「創器」展へ。
山つつじや春椿が大胆に投げ入れられた空間と思い思いに戯れる器たち。ディスプレイというより
インスタレーション。作家とギャラリースタッフの感性の交歓の妙がいとをかし。
6/14まで開催中。ぜひ。

ギャラリーを出た後、オーリエさんと恵比寿のトラットリア(その名もVACANZA!)でゴハン。
直感的に私のことを深く理解してくれる彼女と話していると、不思議なほどげんきになる。


ギャラリー旬ではたっぷりした器に盛られた八ヶ岳直送の花々が印象的だったが
この季節はヒトの意図を超えて生い茂っている植物たちに方々で出逢い、その度に心踊る。

日曜、近所のフリマやオーガニックショップなどに買い物に出かけた折に見かけた緑たち。
花期を終えたミモザの大木には鞘がたくさん! 鞘の中には黒い種が粒々詰っているはず。
今春初開花したうちのミモザには一房しかならなかったけど、いつかこんな風になるといいな。


これは先日試写で訪れた東銀座の築地川公園にぼうぼう繁茂していたローズマリー。この清浄な香り
たまらない。そういえばご近所のNEWPORT入口にもローズマリーがげんきよく繁っていたっけ。
サブリミナル効果か、先日は夕餉のパスタの付け合せにローズマリー入りトマトサラダをどっさり。


これは先週取材で訪れた日本橋の一角で偶然見つけた廃虚ビルに絡みついた雑草たち。
このビルには宮内庁御用達の傾いだ看板が。創業文化三年の鷄屋さんだったらしい。


これは、少し前に銀座で見かけたミキモト本店前の花々。創業110周年記念ディスプレイらしい。
自慢の花珠パールをこれでもかと贅沢に使う装飾もありと思いきや、意外に楚々と可憐で魅かれた。


これは…市ヶ谷の一角、高台の邸の庭で揺れているを見つけ、思いっきりズームして撮ったのだけど、
このほわほわ物体はいったい何?? おわかりになる方、ぜひ教えてください!!
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雨のプール、北欧、屋上ジャングル、熊谷守一美術館

2009-06-07 13:13:49 | Scene いつか見た遠い空
梅雨入り目前。しかしいいお天気。
昨日は雨予報だったのに晴れて逆に拍子抜け。
前夜の雨音があまりに心地よかったから。

金曜、10年前に棲んでいた池袋モンパルナス界隈へふらりと。懐かしい“プール小路”にも寄り道。
かつて、ここで出逢った白猫の白玉さんとその仔猫たちは、あれからどうしたかなあ。
白玉さんとその子供たちの幻影も、降りしきる雨粒の彼方に。。。

―そういえば、こんなアングルのプールの大きな油絵を17歳のときに描いたことがある。
水の無いプールの中から、カメラを持ったセーラーカラーの男の子がこちらを撮影しているという。
青臭いシュールな画は今思うと恥ずかしい限りだけど、プール好きは昔も今も変わっていない。
子供のころからプールは眺めるのも泳ぐのも大好き。そろそろ泳ぎに行こうかな。


雨が降る直前の水曜。Gallery五峯(杉並区下井草2-40-16 tel03・3395・9956)を運営する
大村陽子さんのご紹介で、浩江グンナーソンさんの北欧アンティーク初夏のフェアへ。
スウェーデン在住のグンナーソンさんは北欧アンティークというサイトを主宰しており、
20年以上前から現地の骨董店を自ら歩き回って見つけたアイテムを展示販売しているそう。


この前、パークタワーのOZONEでも「北欧の生活デザインと文化展」を見たけど
北欧デザインにある種共通するチャーミングなぬくもりは、しみじみ心を豊かにしてくれる。

この掌サイズの硝子の小鳥オブジェは 迷わず連れて帰った。
1930年頃のものとか。塩入れだそう。柚子胡椒とかを入れてもいいかも。


やはり1930年代に作られたスウェーデンのホウロウメーカー コックムスのお鍋も入手。
「ミッドサマー」という名も気に入った。卵を茹でるだけでも楽しくなるデザイン!


スウェーデンの森に咲くハーブが描かれたStig Lindbergのディナープレートと
硝子のミルクピッチャーも入手。ピッチャーに挿したミントは
大村さんの弟さんにいただいたもの。



大村さんはいつお会いしても美しい色彩の装い。この日は目の醒めるようなオレンジと朱のスカート。
Gallery五峯は彼女の弟の大村龍一氏の設計だそうで、屋上庭園があるというので見せていただいた。
窓辺も緑豊富で、ビルの側面からも生い茂った藤の木がぶわっと。
そして屋上に昇ると…ジャングル! 先日までは枇杷やさくらんぼもなっていたのだとか。
ちまちました家庭菜園とは全然違うこのワイルドさ、猛烈にシンパシーを覚える!

あらゆるハーブが繁茂した一角から、大村氏がスペアミントやペパーミントを根っこごと抜いて
たくさんおすそわけしてくださった。スーッと快い香りごと家に連れ帰って鉢に植え、
部屋のあちこちにも活けた。こぼれた葉をミントティーにしたら、身体がすきっと。

ちなみに、大村氏の建築事務所邑計画工房では、「コーポラティブハウス」(分譲マンションのように
完成した住宅を購入するのではなく、住宅購入を検討している人が集まり、立地条件の良い土地を
共同で購入し、各々のライフスタイルと予算に見合う間取りでマンションを建てる方式。欧米で広く
普及している。<HPより要約)の参加者を募集しているそう。興味のある方はぜひHPをご覧ください。



雨の金曜は「熊谷守一美術館」の24周年展(~6/14)へ。
(雨粒にフラッシュがあたって不思議なドット模様が。。)


守一の娘であり美術館館長でもある榧さんに、先日、母が上梓した歌集の挿画に熊谷守一画伯の
作品を使用させていただいたお礼をすると、うれしいことに榧さんにも母の本をお褒めいただいた。
入口のCafé KAYAにて榧さん手作りの器に入った美味しい珈琲やケーキをいただきながらしばしお話。

1956年に描かれた「ケシ」という埼玉県立美術館所蔵作品は初見だった。絶筆の「アゲハ」や
「白猫」をはじめ、何にも縛られない守一の潔い筆致と久々に対峙でき、目頭が熱くなった。

帰り、懐かしい住宅街を漫ろ歩いた。『猫町』じゃないけど、雨の夕方の散歩には不思議な
空気感がある。満開のクチナシから放たれる甘い芳香と、初夏の雨の匂い。
雨粒が花びらになったみたいな紫陽花。濡れた舗道に映る世界。


雨の日は外出が億劫になるけど、植物にはうれしい恵みの雨。
熊谷守一美術館にも、蛙たちが集った『喜雨』という墨絵があったっけ。
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谷根千「猫町」再彷徊

2009-06-01 14:14:18 | Cat 猫族の甘い生活
[荘子は、かつて夢に胡蝶となり、醒めて自ら怪しみ言った。
夢の胡蝶が自分であるか、今の自分が自分であるかと。]

萩原朔太郎の散文小説『猫町』の主人公は、終章で荘子を引用し、
自分が見てきた幻想世界の虚実を自問しつつ云う。
[理屈や議論はどうにもあれ、私がそれを「見た」ということほど、
私にとって絶対
不惑の事実はない。]

前置きが長くなったが、ここのところ 虚実の境界が曖昧な夢ばかりみる。
覚醒した後も、しばし夢のふちで宙ぶらりんなまま ひどく遅い朝食の珈琲を飲んでいたりする。
あまりにその夢が心地よいので、朝食と一緒に夢を反芻しているだけなのかもしれないけど。

要は 雨曇り続きの低気圧のせいで、少々ぼーーっとしているわけです。


そんな中、先週木曜は 新宿パークタワーのリビングデザインセンターOZONE 7Fに
期間限定オープンした「Pioneer Built-in Audio Gallery Supported by OZONE」の内覧会へ。
ここは、キッチンやダイニング、ベッドルームなどで iPodやインターネットラジオなどのサウンドを
気軽に楽しめる画期的システム「ACCO」をいち早く体験できるスペース。
(会期:5/29~12/22 10時半~19時 祝日以外の水曜休)

空間デザインは知人の寺内ユミさん。ジェイミー・オリヴァーじゃないけど、私も料理作りに
音楽は不可欠だったりするので、こういうのはとても面白い試みと思います>ハカセ

帰りにレイちゃんと下のコンランショップに寄った後、またもや田宮二郎が密会してそうな昭和な
喫茶店で話し込み。さらに夜は銀座で原野先生たちとお会いし、その後はメグ千鶴子さんたちと
トリコロールで閉店間際までお喋り。雨の日の旧い喫茶店て 何ゆえあんなに心地好いんだろう。



金曜は、フォトグラファーみっちゃんのお誘いで、四谷の仏料理店テート・ア・テートにて
シャルル・フーリエ研究者であり フランス語の教授でもある篠原洋治先生を囲んでの会食。
先生と同じ90年代にパリ留学をしていたロクシタンの齋木さんなど 個性豊かな面々が揃い、
あっという間の楽しい数時間。家を出る間際まで雨頭痛でぐったりしていたのが嘘のように復活した。




土曜はふくちゃんと千駄木で待ち合わせ。実に3週続きの谷根千詣で(いやあ谷根千は奥が深い)。
まずは、先日 谷根千通の方に教えていただいた「旧安田楠雄邸」の見学に。
「豊島園」の創始者でもある実業家の藤田好三郎氏が大正8年に建てた近代和風邸宅で、
旧安田財閥の創始者・安田善次郎氏の末裔が10数年前まで住んでいらっしゃったそう。

左は書生室前の電話室。なんだか半透明な高等遊民の姿が見えるよう。。
で、右は畳敷きの廊下。畳と並行して端が板張りになった部分は使用人用だったとか。



廊下の先は洋風の応接室。最近 洋館取材をしていたこともあり、この手の洋室は多々見たけど、
ここは非常にシック。ウォールナットの柱に施されているリスや梟のレリーフも、実にさりげない。
安田氏は大正当時のままの家に穴を開けるのを嫌い、エアコンも床暖房も設置しなかったらしく
椅子の傍らの小台の蓋を開けると、中が手あぶり用の特注火鉢になっていてびっくり。
見学中、この部屋の一角に置かれた蓄音機からSPレコードの歌が流れてきて、ちょっとくらっとした。


洋室からさらに奥に進むと、美しい枯山水の日本庭園を一望できる純和風の客間がどーんと。
華美な襖絵などは一切ないけど、木目の美しさや職人の手仕事の丁寧さがじんわり伝わってくる。
思うに、旧岩崎邸のような豪奢な邸宅は京マチ子とかがシルクのドレスで踊っていそうだけど、
ここは白ブラウスの高峰秀子がほっこりお茶でも淹れてくれそうな滋味深い風情とでもいおうか。


こちらはキッチン。天窓から差し込む光が明るい。
当時としては最先端の設備が整っていたよう。


ボランティアの方が、詳しくレクチャーしながら案内してくれるので、非常に有意義だった。
公開は水曜・土曜10時半~16時の週2回だけ。四季折々の行事もあるようなのでまた行ってみたい。


1時間半たっぷり見学した後は、「乱歩」で小休憩。つい先日も来たけど、ここは隅々まで空間が濃い。
そして珈琲が美味しい!お隣にお座りだった初老のご夫婦も「こんなに味わい深い珈琲は珍しい」と。
“歩くまたたび”こと猫族ふくちゃんの吸引力か、ここのスタッフ猫くんもひょっこり登場。
この白い靴下を履いたみたいな猫手の主は、ふくちゃんに抱かれた看板猫りょうすけくん。



「乱歩」と「いせ辰」の間の路地から奥に入って行くと、まさに朔太郎の『猫町』に出てきそうな
佇まいの「猫町Gallery」が現れる。なかなかマニアックな猫モチーフ作品が多々。



さらに界隈のオーダーメイド靴屋さんやアートなアクセサリー屋さんで油を売った後、
夜はふくちゃんのバースデイ祝いに「猫町カフェ29」へ。10日ほど前に来た時は
あまり顔を見せてくれなかった看板猫の空ちゃん&風ちゃんも うれしいかな出ずっぱりで♪


至福の猫シチュエーションの中で、素材の風味を活かした温もりある熊本スローフードを続々堪能。
どれもシンプルなのにあたらしい。しゅっと清新で潔く濁りがないのだ。
途中で、研究発表のためにやってきた弟の竜ちゃんも羽田から直行で参入(谷中は竜の古巣だし)。
お店の方との話も凄く楽しく、親戚のおうちで歓待していただいているようなひとときだった。

お土産に包んでもらった「にくきゅうまんじゅう」は、
日曜の朝食に竜ちゃんとほくほく美味しくいただいた。
ほんものの肉球は握っても食したことはないけど(笑)
なんか表皮のぷにぷに具合とかリアル肉球っぽくてどきどき。


それにしても。 谷根千は いろんなイミで「猫町」濃度が高い。


これは、10年ほど前にデザイナーのヤゴちゃんにいただいたパロル舎版『猫町』。
朔太郎の鋭利な言葉に 金井田英津子のシュールな挿画が絶妙にいい。彼女は漱石の『夢十夜』や
内田百の『冥途』などの挿画も手がけており、いずれも図抜けた解釈&表現力。
朔太郎も漱石も百も、彼女の挿画をみて冥途で膝を打って歓んでいるにちがいない。

知っている筈の角をふと曲がると、思いがけず現れる蠱惑的な世界。
『猫町』の主人公は、おそろしく閑雅な町の万象が 一匹の黒猫が駆け抜けた瞬間に静止し、
猫だらけの「猫町」に変貌すると、はげしく戦慄。息が止まり、昏倒しかけさえする。
[見れば町の街路に充満して猫の大集団がうようよといるのだ。
 猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。どこを見ても猫ばかりだ。]

私ならうっとり深呼吸するけどなああ。
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