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映画TOKYO!感想メモ

2008-08-17 06:29:20 | Cinema
土曜から公開されている映画『TOKYO!』。先日その試写を観たので、独断と偏見による感想を。
私がこの映画に最初に魅かれた理由は、“東京”をお題にしたオムニバス映画であることと
レオス・カラックスの9年ぶりの新作がそこに含まれていたこと。

実際に観終わった後、いいイミで裏切られた気分に。
まあ 映画は予定調和ではなく、観客を裏切ってこそ。あくまでも持論ですが。

第一話の監督はミッシェル・ゴンドリー。彼の作品はビョークの『Human Behaviour』しか
知らないのだけど、日本人若手監督の作品といわれれば、すんなり納得しそうなテイスト。
キッチュでチープで寓話的。その実、恐ろしく繊細なお話。アンビバレントな感情が導く変身譚。
観ながら、ボリス・ヴィアンの『日々の泡』をなぜか思い出した。
『インテリア・デザイン』というシニカルなタイトルが、ボディーブローのように効いてくる。

第二話は、件のカラックス作品。その名も『メルド(隠語で糞)』。
東京に突如現れた謎の怪人メルドが銀座や渋谷を疾走して人々を恐怖に陥れ、
やがて捕えられ裁かれるという、まるで『ゴジラ』と『東京裁判』をシャッフルしたみたいな
超C級テイストの怪作。三池崇史が撮ったという方がしっくりするほど(?)
しかし何が謎って、ドニ・ラヴァン演じた怪人メルドの正体より、カラックスの狙いが謎。
深読みすると怖いことをいろいろ想像してしまう…。個人的には、この裏切り方 嫌いじゃないけど。

第三話は、ボン・ジュノ作品。韓国映画はキム・ギドクくらいしか知らず、まだ未開で恐縮ながら。。
これも、1作目同様、気鋭の日本人監督が撮ったといっても違和感がない。
静謐なSF漫画みたいなカメラアングルやカット割。無人の山手通りや世田谷の住宅街辺りを
引きこもりの主人公が漫ろ歩くシーンで、カメラは初めて“東京”を映し出す。

3作をざっくりくくってしまうと、3監督ともどこか穴ぐらのような東京をクローズアップしている。
まるでソフィア・コッポラへのアンチテーゼのように、メディア好みのお洒落な名所などほぼ皆無。
“クール”なトーキョーという通俗的な言説に対し、図らずもこの3監督は
いずれも東京をダークなファンタジーのカオスに沈めた。

東京に棲む人がこの映画を観るのと、パリやN.Y.やコロンビアやカンボジアやグルジアに棲む人が
この映画を観るのでは、意味合いが全然違う(映画観るどころじゃない国も多いかもだが…)

ちなみに、エンディング曲はHASYMO。あの3監督&HASYMOをセレクトした
2人の日本人プロデューサーのキュレーションセンス、興味深し。
The City of Light
HASYMO,Yukihiro Takahashi,Kyoko Amatatsu,Ryuichi Sakamoto
エイベックス・エンタテインメント

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↑YMOという奇跡が終わっていないことを再認識する悦びに浸れる1枚。


余談ながら、映画を観る時、その舞台となった都市で選ぶことがよくある。多くはローマと東京。
例えばグリーナウェイの『建築家の腹』が好きなのは、舞台となったローマの切りとり方に痺れるから。
東京を舞台にした映画では、私の知らない時代の風景が垣間見られる作品に俄然魅かれる。
黒澤明の『野良犬』しかり、『素晴らしき日曜日』しかり。
後者は焼け跡も生々しい新宿や上野、日比谷を漫ろ歩く恋人たちがたまらなくせつない。
素晴らしき日曜日<普及版>

東宝

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そういえば、カラックスが敬愛する成瀬巳喜男の描く東京もやるせない。。
父に昔もらった佐藤忠男の『映画の中の東京』によると、
成瀬は、ロケハンで徹底的に東京の路地裏を歩き廻ったのだとか。


先週は映画のような事件もなく、仕事もそこそこゆるめで平穏なお盆ウィークだった。
木曜、ミッドタウンのレストラン971でラウンジーなDJや演奏に耳を傾けつつ友人たちと夜話。


金曜、渋谷道玄坂裏の怪しく細い階段の途上にあるバー「あなぐま」で、ふくちゃんとゴハン。
マスターの怒話芸にカウンターで抱腹絶倒。しかし料理は天才技。これはグラタンが失敗したからと
シチューを添えてくれたのだけど、どちらも絶品。夏に熱い料理をふうふう食べるのって爽快。


週末は煌々たる十二夜、十三夜だった。

今日は満月。しかも月蝕とか? 雨曇予報、はずれたらいいな。
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