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満月の言霊

2010-01-31 04:52:36 | Cinema

何もかも射抜くような黄金の月があがっている。懐かしくてあたたかい。
こんな月の下では、ほんとうは何も言葉にしなくていいのかもしれない。



。。とか云って、また間が空いてしまった。。


☆ プレイバック。
先週、恵比寿でとても懐かしいひとと邂逅。ひとは変るけど変らない。
一皿毎にうきゃあとなるようなアートなメニューと念願のSalonをいただく。感涙。
@Joel Robuchon
「大人は判ってくれない」から、自分たちも大人に。なったのかな。



週半ば、一寸、カオス。夕暮が泣きたくなるほど美しい。バッハ、エンドレス。。



校正待ちのエアポケットのような日、
オーリエさんのお誘いで市ヶ谷のミヅマアートギャラリーへ。
「天明屋尚展」の作品のひとつである黒い畳が敷かれた小部屋で、しばしアート談義。
その後、側にある東京日仏会館へ。ブラスリーがお休み時間で残念!
ターコイズブルーのコートのオーリエさん、プチパリな背景にかわいく融け込んでいた。


週末、再びオーリエさんと、今度は渋谷にヴァンタンが主催する講座を聞きに行く。
「日本的アート ローカル/ナショナルの可能性」というテーマで、
ミヅマアートギャラリーの三潴末雄氏とART iT編集長小崎哲哉氏が繰り広げた対談は
微に入り細に入り非常に興味深かった。遂に結論は出なかったけれど。

その後、オーリエさんとうちで夜明けまでお喋り。彼女と話すといつも自分が広がる。
日曜夜、まいかさん&ちよさんのお誘いで青山でゴハン。そんな楽しい週が明けたとたん
月曜から幾つか重なって瞬間原稿ラッシュ。隈研吾氏の原稿にもやっと手をつけられた。
なかなか濃密な作業だったけど、とても有意義だった(本が発売になったらまたご紹介します)

そんな間隙を縫って火曜夜、原野先生の集いへ。スリランカ取材の件でお世話になった
まりさんとの旅話や、清水さんとの映像談義も楽しく、メグちづこさんとも久々にお話できてよかった。


週末は少し手が空いたので、「戦後フランス映画ポスター展」@国立フィルムセンターへ。
アイコンになっているのはゴダールの「女は女である」のキュートなアンナ・カリーナ。
残念ながら、今回見た第1期(~2/14)は1940年代末までの作品が中心だったので
かの傑作ポスターと会えるのは、2/17~3/28の第2期になる。


こちら、京橋にある東京国立近代美術館フィルムセンター前。
しかし、かわいいアンナ・カリーナをよそに、妙にインパクトを放っていたのが――


――こちら、大島渚の「青春残酷物語」のバイオレントなワンシーン。
これだけ見ても、なぎさ、あらためて凄すぎる!


と、気を取り直して、ポスター展へ。会場は「常設展 映画遺産」と併設になっており、
日本映画の黎明期に活躍していた人々やアンティークなカメラ機材などが紹介されていた。
しかし会場には私一人きり。警備帽のおじさんが慌てて電灯を点けてくれたりして可笑しかった。

ポスター展は、洋画配給会社 新外映の旧蔵コレクションからの初展示らしく
マニアックなオリジナルポスターがずらり。

特に好きだったのは、「情婦マノン」(1949)のポスター。仏アール・デコの第一線で活躍した
ポール・コランの作品。ただ、映画はデートリッヒが主演した方しか観ていないのだけど。
アヴェ・プレヴォーの原作を読んだのは高校時代。あの頃はあの頃なりに結構心酔していた。


ジャック・タチの「のんき大将 脱線の巻」(1947)は、こじゃれたカフェとかにも
時々飾ってあったりするけど、ルネ・ペロンの脱力系描写がなんだか憎めない。
タチが台詞のない幽霊役で出演したという「乙女の星」(1946/中央は仏版、右は日本版)とかは
もう'70年代の少女漫画の扉絵みたい。「睫毛のかげの黒い瞳に揺れる恋のあこがれ」なんていう
キャッチもやっぱりクラシカルな少女漫画風味。まあ、オリジンは映画の方なんだけど。


「ラ・ボエーム」(1945)もルネ・ペロンの作品。流麗。巨大薔薇がすてき。


先週18日のニキの月命日に供えた薔薇、なかなか長持ち。
だいぶくたびれてきたけど、すぐ棄てずにさいごまでちゃんとみてあげたい。

実は、ポスター展の後、広尾の旧フランス大使館で開催中(~2/18)の
アートイベント『No Man’s Land』も観てきたのだが(冒頭の満月も@大使館)
これは写真てんこ盛りになりそうな予感もりもりなので、次回に!(週明けには更新したいなぁ)

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根津美術館、春の芳香

2010-01-19 06:29:32 | Tokyo 闊歩・彷徨・建築探偵

年始から相変わらず少々立て込んでいる日々。案外気持ちはゆったりしているのだけど。
先週、隈研吾氏のインタビュー前に、彼が改装を手がけた根津美術館に行ってきた。
楡家通りの先にあるエントランスには、竹を配したこんなアプローチがあり
そこを歩く間、とても不思議な、そして心地よい気配が 身体をスッと通り抜けていった。


建物も以前とはがらりと様相が変った。母と数年前に訪れた時は
あの有名なカキツバタの金屏風ばかりが記憶に残ったが、
新しい根津美術館は 硝子越しに臨める庭園と融合した佇まいの美しさに まず目を奪われた。
オリエンタルな展示物を表情豊かに見せつつ、隅々まで見事に均整がとれているのだ。
それも、これみよがしの意匠をこらしてあるわけではなく、あくまでも密やかに。


館内で、やはり下見に来ていたkanon編集部の佐藤さんとばったり! なんだかうれしい。
彼女と一緒に夕暮の庭園を巡り、緑陰に抱かれたNEZUCAFEでコーヒーブレイク。
ふと見ると、赤瀬川原平さんもお茶していた。


翌朝、隈さんの事務所でインタビュー。「クマさん」と呼びかける響きがなんだか面白い。
例えば『反オブジェクト』の冒頭の一文「一言で要約すれば、自己中心的で威圧的な建築を
批判したかったのである」にも顕著なように、ご本人も単刀直入で明晰。
気取らずもったいぶらず、屈託がない。海外を飛び回る多忙な中で取材できたことに感謝!
インタビューは2月末発売予定の『kanon vol.18』をご覧ください。(原稿、これから書くのだけど)


クマさん取材の後は、新宿の「柿傳」(ロゴの書がby川端康成)で対談取材。
この昭和モダニズムなしつらえ、なんだかホテルオークラのメインロビーに似ていると思ったら
手がけたのは同じ谷口吉郎の設計だそう。ちょっと低めのラウンジチェア、大変好みです。



谷口吉郎は金沢の九谷焼窯元の生まれなのだとか。
偶然だが、今週はスパイラルで九谷焼展を観た。
1/20まで開催中の「上出・九谷・惠悟 九谷焼コネクション」だ。
根津美術館で遇った佐藤さんに「面白いからぜひ!」と勧められたのだが、ほんとこれは必見。

九谷の伝統ある上出長右エ門窯の5代目による作品の数々、
どれも伝統を軽やかに飛び越えるアヴァンギャルドぶり。
左はエレガントな髑髏型のお菓子壺、右はキッチュな九谷焼のバナナ!

伝統工芸を受け継ぐ若手の2代目3代目のインタビューをする機会が時折りあるが、
その多くは伝統を継承しながら、時にはそれを壊し、独自の新境地を切り拓いている。
伝統を守ることに命をかける職人と、伝統を新しい価値に昇華する芸術家。
長い目で見ると、伝統を壊すことこそが伝統を守ることになるという逆説もありなのでは、と思う。



今日明日は久しぶりにあたたかくなるようだが、ここのところ恐ろしく寒かった。
よりにもよって、寒波が来てどっと冷え込んだ先週明け、早朝からスタジオ撮影取材だった。


しかも、スタジオが外と同じようにひえひえ! 終日、コートにマフラーをぐるぐるに巻き、
カイロをポケットに握り締めて過ごすこと12時間強。撮影で使った花も人間同様しおしおに。。
スタイリストさんが棄てようとしていたので、その子たちをいただいてきてあたたかな部屋に活けた。

翌朝目覚めたら、萎れうなだれていた花たちが、嘘のようにしゃきっと復活!
ストックというアブラナ科の花で、香りが甘酸っぱく清々しい。
数日前から窓辺にいたオレンジのフリージアとあいまって、一足先に春の芳香。

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虎穴に入らずんば虎子を得ず

2010-01-10 05:27:31 | Scene いつか見た遠い空

年明け、ベランダジャングルの侘びすけが、珍しくたくさん咲いている。
吉兆なら うれしいな。 新年早々、原稿ラッシュでぱたぱたしつつ、
2輪ばかり伐って部屋に飾った。ひとえの楚々とした佇まいが、愛しい。

すっかりあけてしまったけれど、新年おめでとうございます。
2010年もよろしくお願いいたします。


と、年末年始の回想をさくっと――
大晦日、なにやかにやで予定時間ぎりぎりになってタクシーで東京駅へ。
「えっ、渋谷から15分じゃ絶対無理っすよお」
「きっと大丈夫です。行っちゃってください」
15分後。運転手さんいわく「映画のTAXiみたかったけど、着くもんですねえ!」
そんなわけで、無事に予定通りの新幹線に乗り込み、即ZZZ...

越後湯沢で乗り換えたとたん、窓にみぞれ雪が。


雪景色は、いっさいの思考モードを変える。
私は5歳になったばかりの頃から数年、父の仕事の関係で東京にいたので
幼少期の鮮明な記憶はその頃に集中するのだが、もともとは雪国生まれ。
雪の下には言い知れない思いが永久凍土のようにきらきら埋もれている。


元日、実家の庭には、降ったばかりの新雪に山茶花の花びらが落ちていた。
地球温暖化で、雪国も近年は雪知らず。元日に雪が降るのはかなり久々のことだった。
弟の竜ちゃんも雪のために少し遅れて到着。母は「今年は手抜きだから」と言うけれど
幼い頃から馴染みのお雑煮やお節は、やっぱり何にも代えがたく美味しいし、ありがたい。

元日は満月だった。が、まさかこんな雪空で満月が拝めるわけもないだろうな、と諦めていた。
深夜、遊びに来ていた叔母を見送りに外に出ると、満点の星空に煌々と満月が浮かんでいた。
その月あかりに照らされた青白い雪肌の美しさに陶然と見とれる。写真を撮ることさえ忘れて。


正月2日。雪雲の向こうにうっすら太陽が透け見えた。夜明け空に消えかけた月のような。
夏に来たとき満開だった庭の百日紅の梢には、小さな実がすずなりになっていた。

時折はらはらと降ってくる風花に煽られるように、なじみの旧い神社へ初詣に。
狛犬がかぶった雪の綿帽子が妙に微笑ましかった。


意外とあたたかな真冬の午後。雪道から見えた金色のゆずが眩しかった。



正月3日。竜ちゃん&はーちゃん夫妻と一緒に、マニアックなレトロスポット散策。
まずは、某ドラマのロケにも使われているという風格ある昭和初期のレトロなオフィスビルへ。
実は亡き父が若い頃に通っていたビルでもあるが、中を探検したのは初めて。





戦後すぐにできたレトロ喫茶店にて休憩。
珈琲ゼリーになぜか白玉と苺が入っているのが泣ける。

さらに、駅前にある戦後の闇市跡へ。小さな飲み屋がひしめく路地奥の社に、
ホワイトタイガーをむぎゅっと圧縮したみたいなふくぶくしいシマ猫さんが鎮座していた。
2010年初の猫さん。おめでタイガー…・・


と、虎つながりで、竜のお土産のとらやの羊羹も、虎模様だった。


母がどこから見つけ出してきたのか、亡き父がその昔 出張土産で買ってきた
木彫りの親子虎を飾っていた。彫り物のテーマはたぶん「虎穴に入らずんば虎子を得ず」。

すなわち ハイリスク ハイリターン。あるいは ノーリスク ノーリターン。
といっても、虎は猫科動物だから、行動パターンは猫と酷似。よく見るとかわいいのだ。
私としては リターンはいいから、虎穴で虎親子とぬくぬくまるまりたいかな。


驚いたのは、鏡餅の横にお雛さまとお内裏さまも飾られていたこと。
逢うのは十代のとき以来。亡き祖母が作ってくれたきめこみ人形で、
今回はそこまで飾られてはいなかったけど、全部飾ると五段の雛壇に
三人官女や五人囃に牛車などもずらり並んで とても壮観だった記憶がある。

つい先日も、お雛さまは1月から華々しく飾るという 元人形作家の方の取材をしたばかりだが
元旦からとは母も気が早い! 何年も飾っていなかった罪滅ぼしの意味もあるのかもしれないが。。
しかし、久々に見るしもぶくれのお雛さまのチャーミングなこと! 


帰りの電車にて、うとうとしながら車窓から垣間見た夕暮れに染まる雪景色。
この田園風景からすると、昨夏訪れた越後妻有あたりだったかもしれない。

やっぱり聴いてしまう Ben WattのNorth Marine Drive..


帰ってくるなり、原稿ラッシュで睡眠不足な中、時折うたた寝しながら
奇妙な夢をいくつも見てはすぐに忘れた。虎の夢もみたような見なかったような。。

↑在りし日のニキ、TVのホワイトタイガーにかたまる の図
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