夏至の黄昏時、まだ明るかったけど、ふと夕陽の熟れた匂いを感じ、PCを消してお散歩に。
日の傾きかけた通りには、梅雨の晴れ間に遊ぶ 生あたたかく湿った空気。
ふらりと立ち寄った近所の神社には、早くも茅の輪がお目見えしていた。
と、鬱蒼と生い茂った杜の参道に、黒や白のふわふわした塊が、勢いよく転がる鞠のように
いくつもぽんぽん飛び出してきた。…ワールドカップの観過ぎ?と思いきや
まだ生後2か月ほどの仔猫たちだった。そのあまりに無邪気な仕草とまなざしが
たえまない水しぶきのように私のまわりを跳ね続ける。
そのうちに母猫とおぼしき白黒猫が毅然と現れ、じっと私を見つめた。
夏至の夕刻の真空時間。なぜだか、不意につっと落涙。
振り向くと、木々の向こうに見える空が真っ赤だった。
帰途、またもや足下に素早く動く気配を感じて立ち止まると、今度は蛙くんだった。
実は蛙はたいへん苦手なのだけど、「だるまさんがころんだ」みたいに微動だにせず、
石に擬態している姿はなんだか憎めなかった。(この蛙くんの種類、わかるひといますか?)
ちなみに筑波に住んでいた学生時代、夏は毎晩のようにガマ蛙の輪唱を耳にしていたにも拘らず、
4年間ただの一度もその姿を拝むことはなかった。それにしても、懐かしいな、無数のガマ蛙たちの
無限アンサンブル。。。あれは、スティーブ・ライヒも顔負けの深遠さだった。
お散歩ついでに買い物しようと立ち寄ったスーパーマーケットの軒先に、今年も登場した鈴虫くん。
バーコードシールによると、「やさい」扱いらしい。餌は確かに胡瓜だけど。。
2匹で980円。佐藤錦より安価なり。
りりりりり・・・
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少々遡るけど、先々週、雨上がりの週末、久々にレイちゃんと白金のクーリーズ・クリークへ。
流しに扮したあがた森魚さんが、クール5から松田聖子、ロネッツまで、カバー曲満載の熱唱LIVE。
ちなみに あがたさん、先週の日曜は渋谷で鈴木慶一氏とLIVEだったよう。
ふたりで何を歌ったのか、すごく気になるところ。
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アポイントが妙に立て込んだ先週金曜、間隙を縫ってミッドタウン 21_21 DESIGN SIGHTで
開催中の「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」展へ。
↑安藤建築は、夜見るとこのままゴボゴボッと地中に格納されるように見える..。
↑これは展示作品の一つ、日常手にするさまざまな印刷物を色別にリサイクルした
ナチョ・カーボネルの一人用椅子、ベンチ、ラバーズ・チェア。
アート、デザイン、消費文化の関係性からトレンドを徹底分析し、次代の価値観を引き出す
トレンドクリエイターのリー・エーデルコートがディレクションした今回の企画展。
さまざまな価値観や既成概念が崩壊しつつあるいま、“デザイン”の根源に回帰することを促す
非常に興味深い内容だった。自然のエレメントやマニファクチュアな感触、オーガニックで泥臭い造形、
ただ研ぎ澄ますだけじゃないプリミティブなゆるさ、無骨で無垢な生きものの体温――
あくまでも私見だが、アートもデザインも、自然に勝る造形はないという大前提を受け入れた
瞬間こそが出発点なのだと思う。自然は凌駕する敵ではなく、共存・共鳴する仲間なのだと。
皮肉でも嘆息でもなく、こんな企画展を あのポストモダ~ンな’80年代に目撃していたら
人々は、私は、いったいどんな感想を抱いただろう? としみじみ思った。
「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」は今週6月27日まで。おすすめ。
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先週末は、二夜連続で恵比寿のアイロンママさんにてがっつり校正だった。
土曜は帰りに、前日にミッドタウンで落としてしまったサングラスを回収しに乃木坂に迂回。
ちょうどW杯の日本×オランダ戦目前だったためか、ちょこんと覗いた東京タワーが
青くライトアップされていた。あ、“サムライ ブルー”っていうの?
原宿を突っ切って帰る途中、表参道はキャンドルナイトの真っ最中だった。
所々にほのほの灯る焔に、ついつい引き寄せられてしまう夜光虫のような性分の自分。。
やっと帰宅すると、マンションの駐車場に黒猫発見!悠々と毛繕いするさまに見入っているうちに、
じーん。。そんなわけで、自室に落ち着いた時には、既にハーフタイムになっていた。
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猫といえば、先日えとさんにいただいたこの黒猫のキーホルダー。頭のスイッチを押すと
瞳がピカッと青光って、「みゅあ~んみゅあ~ん」と、たいそうかわいい仔猫声で鳴くのだ。
しかし、これがミッドタウンのトイレで不意に鳴ってしまった時は、周囲がぎょっとなって焦った。。
と、ミッドタウンで無事に回収したのが、この愛用サングラス。かなりぼろぼろのJILL STUART。
右目の下にいる猫は、いろんな所を一緒に旅してきた旅友。迷子猫さん、みつかってよかった!
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6月半ば、FIFAワールドカップが始まった。
日本人だから日本を応援するというナショナリズム魂はもとよりないし、
個人的には、AZZURRIが4年前にまさかの優勝を遂げた瞬間、
「明日のジョー」の如く燃え尽きて灰になってしまったし(笑)、
今年のファンタジスタ無きAZZURRIには萌えられないし、フランスにもジダンはとっくにいないし
…というわけで、当初は冷静だったのだけど、始まってしまうとやっぱり面白い!
「人間が守るべき道徳と義務について私が認識している全ては、サッカーから学んだ」
アルベール・カミュ
たしかにあのわずか90分のゲームには、さまざまな哲学や美意識が凝縮されている。
久々に、愛書『マグナムサッカー』(2006年 ファイドン刊)を開いてみた。
マグナム・フォトの写真家たちによる珠玉のサッカースナップ集。
といっても登場しているのは無名の人々ばかり。
写真集の表紙は、ハリー・グリエールが1998年にカメルーンのカトリック布教区で撮影したショット。
同じくカメルーンのコムトゥでハリーが撮ったこの一枚に、私はなぜかとても惹かれる。
ここに写っている少年たちの姿に、カメルーンのアイコンであるエトー選手が重なる。
今大会のカメルーンはのっけから日本に負け、グループリーグ敗退が決まってしまった。残念。
これは、同じく『マグナムサッカー』に載っているポール・ロウの作品。
1994年、南アフリカにあるネルソン・マンデラの生まれた村クヌの風景。
一見、南イタリアにあるアルベロベッロのトゥルッリのような形態の家と、
牛糞を丸めたような小さな球に群がる少年たちの対比が鮮烈だ。
開催国の南アフリカも、ついさっきフランスと共にグループリーグ敗退が決まった。残念!
「さあ、若者よ 服を脱げ 身をさらせ たとえ荒天であろうとも
たとえ不運にして その身を野に伏すことになろうとも
人生には ヒースの荒野に倒れるより悪しきこともある
それに 人の人生など サッカーの試合に過ぎぬゆえ」
―――サー・ウォルター・スコット