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マリオ・ジャコメッリとアジェ

2008-03-30 04:31:49 | Art
週末、写美(東京都写真美術館)で開催中(~5/6)の「マリオ・ジャコメッリ展」と
「シュルレアリスムと写真 痙攣する美」を観てきた。

ジャコメッリ展のチラシやポスターのキャッチ「また見つかった、永遠が。」は、
たぶんランボーの詩「永遠」のパロディ。なんとなく懐かしくなって、書棚の奥からぼろぼろの
新潮文庫を引っぱり出してみたら、その「永遠」の頁に「気狂いピエロ」の映画チケットが(!)
この半券は、恐らく高校生時代に観に行った時のもの(…くらっとめまい)
←前に開いたのはいつだったのか…
映画ではA.カリーナとJ.P.ベルモンドが「見つかった?」「何が」「海にとけた永遠が」..と囁きあう。
(記憶違いがあったら、平にご容赦。ぜひご一報を)

ジャコメッリ展については『NODE』の記事でも書いたが、
日本でこれだけまとまった回顧展が開催されるのは初めて。実際、かなりの見応え。
中でも、雪の中ではしゃぐ神学生を撮ったシリーズは、白と黒のコントラストに潜む白日夢のよう。
雪のきしみや 黒衣のはためきが、眩しい白の時空から 幽かに立ち昇ってくる。

図録を読むと、私が90年前後にいたく傾倒していたトランス・アヴァンギャルディアの画家
エンツォ・クッキが、ジャコメッリ写真のキュレーションを行っていたよう! 作風は異なるが、
どちらも呆気にとられるようなアナザーワールドへの案内人、という点では共通するものがあるかも。

ちなみに、ジャコメッリは生涯イタリアの片田舎にある故郷ゼニガリアで印刷業を営み続けた
“アマチュア写真家”。やはり故郷 境港でアマチュアリズムを貫いた植田正治とは、没年も同じ。

↑恵比寿駅と写美を結ぶ回廊にある、植田正治の砂丘写真。これもアナザーワールドへの道標?
 
ジャコメッリ展の階下で行われていた「シュルレアリスムと写真 痙攣する美」では
学生時代を思い出すような教科書的シュルレアリスム写真より、アジェ(Atget)の写真を思いのほか
豊富に観られたのが収穫。マン・レイに見出されながら、孤高を貫き、無名のまま没したアジェが、
19世紀末に撮り続けたパリの写真もまた、セピアな白日夢の如し。

↑この写真は、写美の展示ではなく、学生時代に自室に貼っていたアジェのポスター写真。
これもまた、私にとってめくるめくアナザーワールドの入り口だった。
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pian piano

2008-03-29 05:52:34 | Scene いつか見た遠い空
一昨日、駒沢公園にほど近いオフィスへ。途上の桜並木はほぼ満開。
開きたての桜って、羽化したての蝶の翅のように仄かに透き通っている。

と、住宅街の一角にある隠れ家みたいなオフィスに入るなり、
きゃんきゃん はふはふ熱烈なファー歓待。
←ふわんふわん 

こちらはユニークなwebサイトを手がけているThe Strippersさんのスタッフの愛犬あめちゃんと


あいあい↓ 2匹とも、HPのLoading中に出るアニメーションにも登場していてキュート。

犬や猫が闊歩するオフィスって、しみじみなごむー。
あ、The Strippersさんが作ったContrexのサイトが今週アップ。
(コピー書いてます)

☆☆ Dois Mapas 

夜は、昨年末ぶりにドイス・マパスLive@アダン・オハナ
すべてをあたたかく包み込むようなvocal木下ときわさんの歌声は、
春の大地を抜ける緑の風の如く。

アダン・オハナに行くのは久々だったけど、Kenさんおすすめの初もの春鰹に
アダン名物の土鍋でいただく絶品鯛めし、癖になるアダン焼きそばなどなど、毎度美味しすぎ!
またまた深夜まで、スタジオトリコのキムリエさん&ウィーン出立目前のレイさんとお喋り全開(笑)

☆☆ ピアンピアーノ

明けて金曜、久々に“Pian Piano”な1日。“Pian Piano”とはイタリア語で
「すごーくゆっくりと」「だんだんちょびっとずつ」みたいな、日常会話的フレーズ。
仕事に追われず、すごーくゆっくりできる日は、私は手帖に「Pian Piano」と書く。
いうなれば、ゆっるゆる(対義語:ぱっつぱつ)の日。

そんな金曜のおめざは、レイさんお手製の “かるかん”。
生地の原料は卵白、上新粉、すりおろした長芋にお砂糖少々だそう。
桜の塩漬けがほんのり香るやさしい食感。作り手の温かさがしみじみ伝わってくる味。
 ごちそうさま!
ちなみに、このハンドメイド硝子皿と同じものを、月末がお誕生日のレイさんに昨夜プレゼント。
(自分の好きなものを人にもあげたくなってしまう性分でつい..)

―そして夜。アイロンママのタガタ氏から、こんなチェーンメール風画像が―
「I’m so tired…」
ここ2カ月以上、一緒に関わってきた少々ヘビィなお仕事が無事に収束し、
精根尽き果てた心境を、この画像に込めた模様。うん、いたいほどわかります(笑)。
春眠暁を覚えず。私もPian Pianoで ニキと共に終日とろとろでしたからー
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東京廃墟と新東京タワー

2008-03-26 02:34:55 | Tokyo 闊歩・彷徨・建築探偵
           Indication-Tokyo Tower3↑
新宿高島屋の美術画廊で開催中(~4/1)の「VISIONS-増殖するイメージ」を観てきた。
版画家元田久治氏の手にかかると、東京タワーも、渋谷センター街も、銀座4丁目も、国会議事堂も
六本木ヒルズも…東京のアイコンと化した風景の数々が、見事朽ち果てた廃墟に変貌する。
ただしそれらは東京レクイエムのblogで載せたような、東京大空襲で廃墟と化した
東京の光景とは、同じ廃墟でもまったく異質のもの。
なぜなら、元田氏の描く廃墟は、あらゆる荒廃が天使のしわざのように美しい。

タワーといえば。2012年、墨田区に完成予定の「新タワー」。
高さ約610mってば、東京タワー(約333m)のほぼ2倍。(ゴジラも壊すのが難儀かと)
東武鉄道と新東京タワー株式会社が推進するこのプロジェクトは「Rising East Project」と呼ばれ、
昨秋より新タワーの名称を募集してきたらしい。で、全国から集まった1万8000余件の名称案から
有識者10名により最終候補が6案に絞り込まれたよう。これがふるっている(↓順不同)
①東京EDOタワー ②東京スカイツリー ③みらいタワー ④ゆめみやぐら ⑤ライジングイーストタワー ⑥ライジングタワー

え、全部当て馬…? 最終決定は、4/1~5/30の一般投票後、6月頭に決定するよう。
個人的には「みらい」「ゆめ」「EDO」だけはやめようよ、と。。。
まあ思うに、どこに着地しようと、人々は恐らくこのタワーを「新東京タワー」と呼ぶのでは?(予言)
まだ建ってもいないけど、新タワーの“廃墟版”も見てみたいかも、元田さん(笑)

←昨秋、六本木ヒルズから。少年いわく「ぼくの東京タワー」。。
ちなみに、、「東京タワー」の正式名は「日本電波塔」。これもこれで、すごいネーミング。
1958年当時、皇太子の成婚が近かったことから、「プリンス塔」という候補名もあったよう(!) 
「東京タワー」に落ち着いたのは、徳川夢声が推挙したからとか。 simple is the best.

☆☆
日没後、資料本を買いに自転車で渋谷へ。ライトアップされた夜桜をNHKのクルーが撮影していた。
宵闇に浮かぶ桜はどこか凄絶。
…と、ブックファーストに行こうとしたら、ビルごと忽然と消えていてびっくり!
お店が東急本店前から、渋谷駅前にずりっと数10mワープしていた(ご近所なのに気付くの遅すぎ?)。

☆☆
今朝のこと。お風呂上りに窓を見遣ると、柿の梢越し、お隣の屋根に残月がちょこんと。

ライター友達ちよさんのご実家の猫 月丸さんが彼岸中日、満月に召されたそう…。
「猫パンチTV!」の“ちょい丸おやじ”としても人気だった月丸さんのご冥福を祈って合掌―

そう、ちよさんに教えてもらった月暦サイトが面白い。
自分の誕生日はもちろん、日本の終戦日は新月だったとか、
ベルリンの壁崩壊の瞬間は十二夜だったとか、ピンポイントで月齢をチェックできる。
月から歴史を紐解くと、意外な発見があるかも。
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映画「My Blueberry Nights」

2008-03-24 08:54:42 | Cinema
CDだけ一足先に聴いていた、ウォン・カーウァイ(王家衛)監督の最新作
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を日曜に観てきた。カーウァイ初の英語作品にして、
本人も「デビュー作」と云うほど、隅々までみずみずしい。そして甘酸っぱい。

観た後はきっと、熱々ブルーベリーパイにバニラアイスを添えて食べたくなる(断言)。
アイスの滴りに胸きゅん

この映画は、“失恋からの立ち直り”といった取り上げられ方が目立つが、
単に失恋の痛手を癒すためだけの傷心ロードムービーでは決してなく
“遠回り”を主題に、幾つもの“喪失と再生の旅”を描いた映画、と思う。
カーウァイいわく、「2人を隔てる距離は見た目には僅かでも、時として彼らの心はひどく離れている。
そうした隔絶感を克服する道のりを描きたかった」と。

カーウァイ作品との出逢いは『欲望の翼』。その才能に驚き、『恋する惑星』でまさに恋に堕ち、
以後『楽園の瑕』、『 天使の涙』、『ブエノスアイレス』、『花様年華』、『2046』と、公開される度、
ジャンルや国境を軽々と超越し、映画史をさらりと塗り替える感性に いつも陶然とさせられてきた。
←『花様年華』より

過去の作品たちが微妙に角度を変え、時空を変えつつ、人物も物語も有機的につながっている
というのが、ウォン・カーウァイ ワールドの大きな特徴。
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』で旅に出るヒロイン ノラ・ジョーンズは、
『恋する惑星』でやはり旅に出るヒロイン フェイ・ウォンに重なるし(どちらも稀代の歌姫だし)、
カフェで待ち続けるジュード・ロウも、やはり『恋する惑星』の待つ男トニー・レオンに重なる。
そして、カフェという舞台装置も、クールな選曲も、カーウァイ映画にやはり不可欠な存在。

この作品では、「上質な楽器の音色のよう」と、カーウァイがタクシーのラジオで耳にして
ヒロインに抜擢した歌姫ノラ・ジョーンズの声ばかりが取りざたされる(実際とても心地よい)が、
ジュード・ロウのしなやかな滑舌のハスキーヴォイスも絶妙。
今公開されているケネス・ブラナー版『スルース』の試写を観たときも、そう感じた。
←リメイク版『スルース』
ジュード・ロウは『スルース』で、かつてマイケル・ケインが演じた愛人役を、
今度は夫役のマイケル・ケインを相手に見事に怪演していたが、その妖艶な声の演技には舌を巻いた。
ジュード・ロウは、そのアンドロイドめいた美貌も手伝って、エキセントリックな役が目立つが、
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』では、ひたすらピュアでチャーミング。
いつかカーウァイ映画でトニー・レオンと競演してくれたら大歓迎。万が一駄作でも無問題(笑)
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レントゲンネコと黒猫夜話

2008-03-22 06:29:34 | Cat 猫族の甘い生活
ニキ、1泊入院の末、金曜の夜に祝!退院。励ましてくれた方々に感謝!

ニキ初のレントゲン写真を公開。名づけて、ニキボーン↑ (結石などもなくて ほっ)
ふだん、ふわふわの被毛に紛れてついゆるい感じの輪郭を思い浮かべがちだが、
そこはやはり けもの。以前、朝倉彫塑館で猫の骨標本を見たことがあるけど、
猫の骨格って、精緻で流麗なマシンのよう。(胴体だけだと流線型の魚みたいにも見える?)

それにしても。病院に行くと豹変する(豹も猫ながら)ニキをよくレントゲン撮影できたなあ。。
私なんて、病院で再会した瞬間、ニキに「×∞★*!(放送禁止用語)」と
右手を本気噛みされ(いまだにPC打つ手がずきずき…)、
さらにキャリー用トートに入れる瞬間、右頬に痛烈な猫パンチ!
獣医さんにその場で消毒してもらい、今も私の右ほっぺには絆創膏が。。

でも、帰宅したとたん けろっといつものゆるゆるしたニキに。(ある意味)化け猫。

ヴィヴィッドなピンクのアームカバーは、今春のキャットお洒落アイテム
ではなく、24時間点滴の痕に巻かれた止血用包帯。痛々しい(涙)。。。
。。けど、ショッキングピンクがなにげに似合うねニキ。

☆☆☆黒猫夜話

ニキは、黒ペルシャの父と、シャム×チンチラ×日本猫のハイブリッド母の間に生まれた。
ニキ母と二キ兄弟をチラ見したことがあるが、みんなふわふわの白チンチラもどき猫だった。
私が初めてニキに逢った時、ニキはまるで、赤い金魚の群れの中で
微妙にあぶれて所在が無い黒出目金みたいな感じだった。


ティアラをつけて藤田嗣治に抱きしめられ、コクトーにちょっかいを出されそうになっている
このふわふわ黒猫卿。ニキ父って、こんな風貌だったのでは、と勝手に妄想(笑)

フジタもコクトーも 猫好きにしか描きえない猫名画の数々を残しているが、
アラーキーも 愛すべき猫観察者にしか撮りえない天才的猫ショットをたくさん撮っている。
(名作『さっちん』の子供たちも、私には戯れる仔猫たちのようにみえてしかたがない)
←アラーキーの『東京猫町』より。
東京の猫をひたすら撮りためた写真集『東京猫町』は、表紙をはじめ珠玉の黒猫スナップが多々。

私もニキと出逢うもっとずっ以前から、無意識によく黒猫を撮っていた。
←中野で出逢った黒猫一家。
黒猫って、ぱっと見、妙に深遠でミステリアスに見える。
(よくよく付き合うと、案外おばかだったりして。そこがまた魅力なんだけど)

子供の頃は、ポーの『黒猫』の影響もあり、黒猫がなんだか怖かった。
魔女裁判が盛んだった中世ヨーロッパでは、黒猫は魔女の手先として駆逐されたかなしい歴史も。
今でも黒猫は不吉という汚名のもと、虐待されることもあるという。それに抗議し、
昨秋、ローマで動物愛護団体が主体となって「黒猫の日」なるイベントが開かれたよう(Bravo!)

↑これはローマの遺跡アレア・サクラ(ブルータスが殺された神殿跡)で以前撮った黒猫。
ここには400匹以上の捨て猫が、愛猫団体の保護のもと アンタッチャブルな遺跡のしじまを
特権的に悠々と闊歩している。「Area Sacra(聖なる空間)」という名の通り、
奇しくも猫の聖地になっているのだ。ローマの喧騒の只中に、ふっと存在するその光景は、
まさに異次元のサンクチュアリ。私がローマに魅かれてやまない理由の一つでもある場所。

☆☆
「黒猫でも白猫でも、鼠を捕る猫がよい猫だ」と云ったのは、確か小平。
ニキは「指が月をさすとき 愚者は指を見る」を、まさに地でいく猫。
明け方、西の空に浮かんでいた橙色の満月を指さした時も、その指をじっと。。
指が月をさすとき、愚者は指を見る―世界の名科白50
四方田 犬彦
ポプラ社

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「NODE」未来都市Tokyo

2008-03-21 03:14:13 | Book 積読 濫読 耽読
『NODE』の2号が発行され、昨日うちにも届いた。
創刊号の時とはかなり異なる様相。私も一部取材などで関わらせていただいたけど、
もし仮にそうでなくても、個人的にも読みたいテーマが多々。
ニキも にゃっ とリスペクト↑(笑)

今回の特集は“未来都市TOKYO”。東京タワーに代わって登場する下町の「新タワー」や、
東京駅の「グランドルーフ」など、近未来に東京上空に忽然と出現する新たな巨大モニュメントの
詳細に加え、安藤忠雄氏や、金沢21世紀美術館の元館長 蓑豊氏のインタビューなども興味深し。

特に、日本の現代アートのキーマンである蓑氏のコメントが、明晰で気持ちよかった。
 バブル期に日本中に誕生したメセナが、バブル崩壊と共に消滅したことについて――
「経済が文化を支えると考えるから、おかしくなるのです。これとは逆に、
文化が経済を支えると考える。私にとってみれば、これが一番清潔で健全な動きです」
 
 現代アートとは何か?という問いには――
「今、あなたが話していることが現代アートです」「今21世紀に生きている皆の一つひとつの
動きをフレームに収めると それが現代アートになります」と。

えてして、ことの本質がクリアに見えている人物に限って、平易な言葉で明快に語るように思う。
もちろん、そのシンプルな言葉に辿り着くまでには、めくるめく道程があったはず。
逆に、説明過多は その思考自体が中途半端な証ではないか、と自省も含め。。

前にblog「サイレント・ダイアローグ」でも書いたけど、
この号で私がインタビューさせていただいたICC学芸員畠中実氏はこんな風に語っている。
「誰もがおもしろがる、わかりやすいものをわかる人に届けるのは簡単なことです。そうではなく、
これはなんだろう?というものをあえて打ち出し、それをわかってもらうようにすることの方が大切」
―まさに。非常に共感した言葉。非常に難しいことでもあるのだけど。

この本では、東京都写真美術館で開催中の「マリオ・ジャコメッリ展」のReviewも
書かせていただいた。これについては次回。

☆☆☆
そんな折、、ニキの具合がまた悪くなり、今朝 急遽入院。。
手を伸ばしても、あのふわふわのあったかな存在が無いことに、
ひとしれず毛布を見失ったライナス状態。。

動物病院へ奔走する道すがら、ミモザの大木に幾つも遭遇し、
どれも黄色い小花が満開だった。うちの3年目ミモザはまだ咲かないので
帰りに花屋でミモザを買ってきた。ニキの居ない部屋に黄色い小花がほわほわ。。

盟友えとさんに以前もらった「超ニキニキーッ」に昨日も頬ずりしてた二キ。
がんばれニキニキーッ


☆☆
今夜、雨曇りで見えない満月を思い、Bill Evans のMoon Beamsをリピート。

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マチェドニアとラテン

2008-03-18 07:43:09 | Food 酸いも甘いも
 週明け、締切地獄をようやく乗り越え、徹夜明けの朝食ついでにマチェドニアを作ることに。
 マチェドニアはイタリア版フルーツポンチ。材料の果実は手近なものでOK。

材料1:檸檬。ちょっと梶井基次郎風に撮ってみた↑(笑)
国産の有機栽培ものなので、見た目はアメリカ産に比べて無骨。そして“爆弾”の如く酸っぱい。
ちなみに、檸檬の下の「ニキータの少年時代」は、トルストイの息子“ニキータ”に捧げられた本。

材料2:オレンジとキウイ。本と全然合ってないけど、その辺に積んであったので(笑)
            

材料3:苺。これも有機ものだから、粒揃いじゃないけど、そこが愛しい。(※猫風船もいい話よ)
            

ブルーベリー代わりに干し葡萄をトッピングして、マチェドニア 完成。(切って和えただけだけど)
            
マラスキーノとかチェリー系リキュールを入れると本格的なんだけど、
なかったのでリモンチェッロで代用。梅酒も試してみたけど違った。。
黒酢は極微量ならアクセントに。ヨーグルトに混ぜると酸味がマイルドに。
一部煮詰めてコンフィチュールを作り、フォッカッチャに塗ったら…美味!

原稿が仕上がった直後の徹夜明け朝食って、妙においしい。
パンとエスプレッソと、新鮮なフルーツがあれば、十分。
            

愛用デミタスカップのソーサーには、各国へのフライト図がデザインされている。
原稿疲れでじーんとした頭でエスプレッソを飲みながら、しばし脳内トリップ。。。
            
フライトの中心がROMEってとこがいい。MILANOでもNYでもないとこがみそ。
TOKYO、PARIS、SIDNEY、HONOLULU、RIO DE JANEIRO、ACAPULCOに
なぜかタヒチの離島BORA BORAがあったりするセレクトも心憎い。

ちなみに、ボラボラの海は、私が知る最も美しい海のひとつ。水上コテージから海に飛び込むと、
ここは竜宮城か、というほどグラマラスな熱帯魚たちが群舞していた。
ただし、ホテルの朝食に出たマヒマヒは、緑亀の水槽みたいな臭ひがしていただけなかったけど…

それにしても。中南米だけはまるで訪れたことがないので、頭に思い描く地図もかなり曖昧。。
…にしては、ラテンフレーバーの音楽に なぜか昔から魅かれる傾向が。。

そんなわけで、ここんとこ うちでヘビロテなのがこの“ラテンブレイクビーツ(?)”なCD。
ブリストル×キューバなUP, BUSTEL AND OUTが10年ほど前に出した1stアルバムは
NINJA TUNEをレーベル買いしていた当時、いたくはまった1枚。10数年経ってもやっぱり心躍る。

あと、ラテンアメリカからの移民2世たちによるAREPAZ IMMIGRANTE ORCHESTRAのコンピも
去年すごーくはまって、この春再びマイ リバイバル。
ニンジャもアレパも、この影絵みたいなロゴマークが、私的にまたツボだったりする。

そんなラテンなリズム渦巻く部屋で、ニキは微妙ながら日々是復活。
←ロシアの帽子じゃないですからね。
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東京REQUIEM

2008-03-13 23:37:53 | Tokyo 闊歩・彷徨・建築探偵
週明けからまたもや怒涛の一週間。
ちょうど週明けの3月10日は、かつて東京大空襲のあった日。
銀座、渋谷、表参道、湾岸…と打ち合わせや取材で忙しく動き回りながら、
その至って平和でうららかな春先の光景に、聞き知るだけの阿鼻叫喚はどうしても重ならず…。

↑上の写真は東京大空襲2ヵ月後の渋谷、東横デパート方面。

これは焼け跡の道玄坂。


これも渋谷。八幡通り付近。


つい昨日今日歩いた街の、わずか60数年前のリアルな姿だ。

これらの写真は、父に以前、資料用にもらった写真集に掲載されていたもの。
表紙(右)は焼け残った銀座三越、(左)は炎上する鳩居堂。


作者の石川光陽は昭和2年~38年まで警視庁で写真を担当した人物で、
「東京大空襲」を撮った唯一無二の貴重な記録写真は、GHQへの提出を拒んだことにより、
後世、奇跡的に陽の目をみることに。(先日、彼をテーマにした番組が放映されていたよう)
大空襲当日の凄絶な写真を凝視すると、乾いた紙から絶望的な臭気と嘆息が立ち上ってきて
息が詰まり 視界がどんどんぼやけていく。

作者は日記でせつせつと述べている。
「泥にまみれたライカを構え」「見えない眼をひきあけてシャターボタンを押した」
「東京はこのようにして 1日1日と焼き払われ 焼野原になっていった」と。

今週、たまたま銀座で立て続けに打ち合わせがあったので、
合間にニコンサロン(~3/18)で開催中の広瀬 美紀展[Requiem東京大空襲] に立ち寄ってみた。

10万人を優に超えるといわれる東京大空襲による死者。
彼らが無名のまま仮埋葬された都内の公園や空地、寺院、そして生き残った被災者たちを、
「いま撮影し、記録を残さなければ被災者たちの思いは永遠に封印される」と
団塊ジュニア世代の写真家が撮り歩いた作品展だ。


誰が誰かも判らぬまま詰め込まれた「戦災遭難者遺骨」の骨壷が累々と並ぶさまなど
ストレートな表現の作品もある中、かつて仮埋葬地だった公園に
何事もなかったのように 遊具が平和に置かれていたり、そこで中学生が談笑していたり、
人知れず野花が咲いていたり、あるいは燦然とタワーマンションがそびえていたりする光景を
捉えた写真には、あざとさとは異なる 独自の透徹した視点があった。

前回のブログで書いた、アニー・リーボヴィッツの映画に登場するファッショナブルな
スーパースターたちとは真逆の、無名の人々の思いを照射したまなざしに胸を射抜かれた。
東京の喧騒の彼方に鎮める魂に合掌。

☆☆
今週、ニキの具合がまた悪くなり、病院へ。
薬が3倍に。。(涙)

体重も妙に減って、抱くと何か大切なものを入れ忘れたバッグみたいに軽いのがなんとも不憫。。
次第に温かさが増す春先は好きだけど、この時季はヒトもネコも免疫力が下がりやすいから、
老いた猫には鬼門のよう。いつにも増してアンニュイなニキに、私も一寸アンニュイ・・・


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「アニー・リーボヴィッツ/レンズの向こうの人生」

2008-03-10 00:50:58 | Cinema
先月、試写を観た後すぐに書いておきたかったけど、慌しい波にさらわれ、
今さらながらの拙感想メモ。

ローリングストーン誌の表紙になった、暗殺直前の裸のレノン&ヨーコの写真から
ローリングストーンズのツアー・ドキュメントのレアショット、さらにハリウッドスターや
政治家、王族まで、ありとあらゆる時代の「顔」を大胆不敵に“斬り撮った”フォトグラファー、
アニー・リーボヴィッツのエネルギッシュなモンスターぶりがコラージュされた映画なのだが、
効果音としてありがちな「カシャカシャカシャッッッ」という軽快なシャッター音が、
アニーの辻斬りのような(笑)豪快な撮影スタイルとオーバーラップすると俄然心地よかった。
           
           Photographsⓒ2007 by Annie Leibovitz

実姉が監督のため、他者がモンスターにぐいぐい肉迫するというドキュメントではなく、
「姉さんて、こうなのよ。怪物でしょ。呆れちゃうわよまったく。まあ見てよ」みたいな
ほどよくあたたかな距離感があり、アニー自身のコメントもラフな親密トークながら深い。

今渦中のヒラリー・クリントンが作中で「彼女はアメリカの心を撮っている」とのたまっていたが
まさに、アニーの膨大な傑作ポートレートには、
“アメリカ”というモンスターの魂が濃密に宿っている。

セレブリティが(この言葉を私は仕事で要求される時以外は使わないことにしているが)、
消費社会のアイコンとして異様にもてはやされる昨今、アニーのレンズの向こうには、
裸の王様としてのセレブリティが、裸になることで再生する彼岸があるのかもしれない。

今週来週は、幾つか写真展を観に行くつもり。
レンズのこちら側と、あちら側。彼岸と此岸を行き交うあやうい眼差しと出逢うために。


☆☆☆ 本日のおやつコーナー for ニキ(ロンパールームか)。

前回、ニキのおやつをお預けにしていたけど、今日は、ニキの大好物のミルクを少々。
というか、カプチーノをつくるのにミルクを温めていたら
匂いを嗅ぎつけたニキがキッチンのテーブルに上って大興奮。
身体にはあまりよくないので…、ほんの少しだけおすそわけ。
無心。※当然、猫舌なので、さめてから一気飲み。

顎にミルクの白い雫をつけたまま、大満足の一声。「なぉおおんっっ」
思うに、お酒を飲み干したヒトの第一声に近いのかも。 「くーっ」みたいな。



しかし好物を与えるとすぐに味をしめ、部屋中すりすり着いてきてミルクを催促。
「ちょっと奥さん、もっとミルクよミルク」

※足元が妙に派手で失礼(笑)。姉から数年前にもらった
モロッコ土産のバブーシュで足だけ地中海。ああ、地中海行きたい。。

☆☆
本日、新月明け。日没後、西の空に一瞬上がった繊月を、ぐみの木越しにぱちり。
にこっと、スマイリームーン=^^=
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ビアンキで代官山へ

2008-03-07 05:21:06 | Tokyo 闊歩・彷徨・建築探偵
やっと自転車で取材に行ける季節が到来!
昨日は、久々にビアンキを漕いで、代官山へ。
トレンチコートがぱりっと素敵なKumiさんと八幡通りで落ち合って、
元NHKディレクター清水満さんのオフィスへ。

清水さんは、昭和30年代の伝説の生放送ミュージュカルバラエティ「若い季節」から
大河ドラマまで、TVメディアの黎明期から半世紀以上、TV文化自体を創造してきた方。
それだけで本が書けそうなほど エピソードも粒揃い。
5年ほど前に知り合って映画の話でいつも盛り上がっていたけど、
取材として改めて伺うと、やっぱりお話が深い。

ちなみに清水さんのお父上は黒澤映画にもご出演の俳優さん。
黒澤フリークで映画オタクだった父の遺品のベータ(あるとこにはあるんです)のビデオデッキは
清水さんに昨年お譲りした。昭和の生き残りのベータデッキもこれで完全燃焼できるかと(笑)

ついついロングインタビューになってしまった楽しい取材の帰り、
「ボンジュールレコード」に寄り道。

10年ほど前に取材させていただいたこともある、好きな音楽セレクトショップのひとつ。
伊勢丹地下のボンジュールにもたまに行く。セレクトもいいけど、名前もいい。 ボン ジュール。

☆☆☆
帰宅後、早速ボンジュールレコードで入手したCDをかけてみる。
(バックのギンガムドレスもついでに寄り道ゲット)

冒頭の♪SummerTimeから何もかもがまぶしいDimitri From Parisの「COCKTAIL DISCO」に、
YMOやTomTomClubなどおいしさ満載のミルフィーユみたいな「2many dj7s radio soulwax pt.28」、
王家衛の新作「My Blueberry Nights」のサントラ(ライ・クーダーの曲も渋い..)、
ゴダール映画のコンピ「Jean-Luc Godard Histrie(s)de Musique」(A・カリーナの歌がキュート!)。
どれも啓蟄に絶妙にあう(?)みぞおちわくわくな感じ。お陰で差し迫った仕事に手が付かないーー。

☆☆☆ 本日の夜食コーナー。

代官山から自転車で帰る途上、駒場東大側の京菓子店「岬屋」で入手した道明寺と桜餅。
「和菓子は1個でも重い」などとのたまう方にぜひ。ここのは2個食べてもまだ食べたいから(笑)。



ニキにはおやつではなく、胃薬。

高齢猫につきものの慢性腎不全で、ここ最近は胃の調子がよくなく、
病院で猫のガスター10みたいな薬を処方されており。。これが効いて、一週間で完全復活。

玄関にもいそいそお出迎え。
啓蟄だから心はやるのかな(蟲かい)。

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ボッティチェッリの春

2008-03-04 06:01:56 | Art
いちだんと春めいた日。温かな陽射しに無条件に心ときめく。ねこもひとも。
これは英国のパロディ画家スーザン・ハーバードの猫版「プリマヴェーラ(春)」↑。

             ↓本物はこちら。Botticelli「La Primavera」
@Firenze      
そのむかし卒業旅行でヨーロッパ旅行した折、フィレンツェのウッフィツィ美術館で
この作品と対峙したときの衝撃は忘れない。古典絵画より現代アートだった小娘に、
「あーた ルネサンス なめんじゃないことよっ」と、がつんと知らしめてくれた。

ちなみに、フィレンツェ大学の植物学者らがつぶさに数えたという研究報告によると、
右から二番目の精霊クロリスが吐いているのは、薔薇、ヒナギク、スミレ、ワスレナグサetc…
お隣の春の女神のドレスにもヤグルマギク、ヒヤシンスなど約70ほどの花々が描かれているらしく、
絵全体に、フィレンツェ近郊に見られる実際の植物が計300種以上も実物大で登場しているのだとか。
(何が凄いって、全部洗い出した植物学者たちのオタク魂…)。

図像学的には諸説あり、書物によって解釈がかなり異なる。
敬愛する図像学者 若桑みどり氏の『薔薇のイコノロジー』にも、
ボッティチェッリの「春」を巡る興味深い洞察が。若桑さんの切り口は実にシャープで優雅。
薔薇のイコノロジー
若桑 みどり
青土社

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一般的解釈としては、上空で弓を射ろうとしているのは“盲目の愛”を象徴する目隠しキューピッド。
狙われているのは、三美神のひとり“純潔”。右端の蒼褪めた方は、春をもたらす西風の神ゼフュロス。
彼に求愛され、口から花を吐いている精霊クロリスは、
ニンフから花の女神フローラ(or春の女神プリマヴェーラ)に変身。
まあ、誰が誰であるかという解釈はさておき
花をふうっと吐き、メタモルフォーゼしている瞬間のニンフor女神の美貌に、座布団10枚っ(笑)。

昔から、メタモルフォーゼする瞬間を捉えたものにぐっと来る傾向がある。
(「ふしぎなメルモ」が三頭身少女から八頭身美人に変身する瞬間も妙に好きだったし)

これは、前にこのブログでもちらと紹介したベルニーニ作「アポロンとダフネ」より、
アポロンに追いつかれ、指先から月桂樹へとメタモルフォーゼしていくダフネのディテール。

魂が口からふうっっと抜けていく瞬間みたいな恍惚の表情と、
ミルキーホワイトに輝く大理石の滑らかな肌。ベルニーニの面目躍如な“映像的彫刻”。

少し飛躍するが、、ミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の天井画は、
天地創造そのもののメタモルフォーゼともいえるダイナミズム。
これはその一部、デルフォイの巫女のディテール。

しかし。。クロリスといい、ダフネといい、またもや口が半開き(笑)。

私はダ・ヴィンチの描く貌は、個人的に全然タイプではないのだけど
ミケランジェロとボッティチェッリの描く貌は、老若男女問わずとても魅力的に感じる。
いずれも、思わず噴き出しを横に添えたくなるような表情。
とかね。
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代々木公園界隈。土と紙の感触

2008-03-01 00:58:03 | Tokyo 闊歩・彷徨・建築探偵
井の頭通り沿いに続く植え込みの一角に、ぽっと咲いたタンポポを発見。

春の陽気にいざなわれるように、取材の帰り ふと一駅手前で下車。
お天気の良い日の夕暮れ、ときどきそんな風に 代々木公園の木立を抜けて帰りたくなることがある。

公園の中では、いつも土の上を選んで歩く。日々の生活の中で、
土の上を歩くことって意外とないから、ブーツの底からふかふか伝わってくる
枯れ草や腐葉土のナイーブな感触が、はっとするほどやさしい。
踏みしめる踵の下で、間違いなく無数の生命が春の声にぞぞ蠢いている。

見上げると、桜の枝にも無数の新芽が。
「枯れ木に 花を咲かせましょう」

あと一ヵ月ちょっとすれば、薄暮の静寂に包まれた同じこの場所で
無数の人々が花見に興じているはず。満開の桜の下には。。


冬の終わりの木立のシルエットは、
春へと誘う複雑な迷路のように見える。

☆☆☆

代々木小公園方面に抜けると、見慣れない小さなお店を発見。
紙のセレクトショップ「紙 伽羅」さん。懐紙やぽち袋などの和ものから、
イタリアやフランス、英国の便箋、巨大な絵本、ブックカバー、ダンボールの木馬などなど、
さまざまな手触りの紙アイテムが、紙製の棚にいろいろ並んでいる。
いうなれば紙フェティッシュなお店(笑)

紙だけでなく、紙に関わるアイテムも。
これは60年代に世界中でヒットしたタイプライター「オリベッティ レッテラ32」。

デザインbyニッツォーリ。60~70年代イタリア工業デザインの顔として、
私の中ではFIAT チンクエチェントと、なんだかかぶるイメージ。
どっちも角のとれたまるっこい感じが大変好み。

こんなクラシカルなグッチのレッテラ32専用ケースも展示。なんともエレガンテ。


お店では、グッチではなく、こんな楚々とした紙アイテムを購入。

銀色の残月模様が刷られた懐紙や、鳥の紙シール、朱い和紙の紐、
水玉模様がかわいい江戸からかみの和紙封筒などなど、
ほのかに温かな手触りに思わず心ほころぶ。
そういえば、幼い頃うちに 和紙でできた美しい雛人形が
この季節になると飾られていた思い出が。

。。ぱたぱたしてる間に、もう雛祭りの季節。
今週もヘビィなスケジュールの一週間で少々青息吐息だったけど、
やわらかな土や紙の感触が、つかれをそっと拭ってくれたような気がする。
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