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六本木アートナイト散歩

2010-03-29 01:07:30 | Art

夜空に月がふたつ。
「六本木アートナイト」でのできごと。


3/27土曜。日没後、ミッドタウンの桜の下にて、レイちゃん&ハカセと合流。
相変わらず肌寒い中、周囲には既にかなりの人垣ができていた。
ほどなく、桜並木の向こうから、巨大な“白い人たち”がふわりふわり登場――

人垣がすごすぎて足下を撮影できなかったのだけど、
彼らは竹馬のような花魁のぽっくりのようなかなり細長ーい上げ底状の足で
キリンのように二足歩行していた。


この“白いひとたち”こと、フランスのパフォーマンス集団「カンパニー・デ・キダム」の
パフォーマンス〈ハーバードの夢〉は、’97年以来、世界各国で披露されている演目だそう。

‘80年代、頭に大きな目玉マスクを被った目玉親父みたいな人々がタキシードで踊る
謎のパフォーマンス集団「ザ・レジデンツ」が来日して話題になったことがあったけど、
あのなんともいえない脱力系のノリにどこか似ているように感じた。

’80年代なら、恐らく「ブキミー!」といわれながら愛でられたであろう存在感。
大真面目なんだかふざけてんだか、アートなんだか大道芸なんだか…という微妙な臨界点がミソ。


彼らは妖しいバルーンオブジェがゆらめく芝生広場をしばし回遊。
そうこうするうち、巨大な頭部がやおら ぽわっと発光した。
すぐそばにいたお子さまが「ぴっかりん!ぴっかりん!」と大興奮。



頭部を時おり明滅させながら、月と東京タワーを背景にふわふわ踊る“白いひとたち”。
やがて、彼らの親玉のような大きな白い玉が、宙に向かってゆっくり放たれると
ベールを脱いだ白い親玉は、夜空を浮遊しながら もうひとつの月になっていった。

白いひとたちは、月の使者だったのかもしれない。



昨年から始まった「六本木アートナイト」は、国立新美術館、東京ミッドタウン、六本木ヒルズ、
森美術館などなど 界隈のアートトライアングルをつないだ一夜限りのオールナイトアート祭り。
気取ってスカした敷居の高いアートではなく、もっと卑近にアートを楽しもうという意図は
あえてキンアカチラシ的な看板やポスターなどのデザインからもむんむん伝わってくる。

メインデザイナーの北川一政氏いわく「スタイリッシュでソリッドで今っぽいシャレたものだけが
デザインなんだという概念や意識には、つねづね疑問を持っています」byアートナイト公式HP

私たちは 他の日でも観られる美術館などのハコモノにはあえて入らず、
この期間しかお目にかかれないものを中心にゆるゆる観て回った。


これはミッドタウンのキャノピー・スクエアにあった映像制作集団「WOW」の映像スカルプチャー。
巨大な円筒に投影された映像メタモルフォーゼに、なにげに見入ってしまった。
こういうのって案外退屈な場合があるけど、これはアイデアが濃密で見ていて飽きなかった。


左はミッドタウンOPEN3周年アニバーサリーの巨大ケーキオブジェにて
ポンチョの私とレイちゃん。 右は六本木ヒルズにいた巨大薔薇オブジェwith月。



左はヒルズ内で見つけた〈六本木の猫道〉というインタラクティブアートby浅野耕平。
実在する猫たちの映像が、ベンチや自転車の周りになにげなく点在していて、微笑ましい。
真ん中は市川 武史のインスタレーション〈オーロラ’10 Roppongi〉。昨夜たまたま
ノルウェーでオーロラを見た方の記事を書いていたので、なんとなく重ね合わせてしまう。

右は桜もいい感じに開いた毛利庭園。池にはチェ・ジョンファのキッチュな蓮〈ロータス〉が
時おり蠢いており、芝生にはBoConcept の真っ赤なロング・ソファにはべった人々が
ムカデのように連なっていた。庭園前は屋台が賑々しく並ぶ夜店状態で、北海道名物イカめしの
滋味深いアロマが一帯に濃厚に漂っていた。私たちもそれにつられて夜桜withイカめし(美味)。


アートナイトは全体にキッチュな印象だったが、
中でもアリーナは郊外の遊園地的様相を呈していた。
そしてここにも、イカめしアロマがしっかりと充満しているのだった。

真夜中以降は53Fの東京シティビューをオールナイトで開放していたので、
そこで夜明けを見る手もあったけど、よいこは早めに帰ることに(笑) 
松蔭浩之氏の最強キッチュ(とおぼしき)作品を体験できなかったことは心残りでしたが。

帰り、界隈の路肩でも幾つかキッチュオブジェに遭遇。
廃材の玩具を再構築して怪獣に仕立て上げた藤浩志の作品のディテールが面白かった。

しかし、背景がなんとも六本木だなあ。。



先週は随分と寒い日が多かったけど、
桜はめげずに着々と開花に向けてシゴトしてたらしい。
私もがんばろううー。
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南イタリア脳内トリップ、ひこにゃん、フリージア

2010-03-21 08:15:57 | Travel 国内外猫の目紀行
すごい突風が吹いている。西風ゼフュロスが女神フローラをさらっていく図を妄想byボッティチェッリ。
ここのところスケジュールが瞬間風速的にびゅうって加速してパタパタしてる間に はや春分。


少し遡るけど、先週、「Decore プロジェクト」のレセプションでレイちゃん&オーリエさんと
九段下のイタリア文化会館へ。一時期、物議をかもした真っ赤な外観、私は好きです。


エントランスの一角にはボッチョーニの未来派彫刻を象ったデザインが。
(’09.10/5のZIGZAGイタリア@日本科学未来館のブログにボッチョーニについて書いてます)


「Decore プロジェクト」とはイタリア ロンバルディア州の職人を中心とした室内装飾のイベントで、
来日していたマエストロたちによる実演や展示も妙にニッチ&マニアックで面白かった。


この日、個人的に最も楽しみだったのは、陣内秀信教授の講義。イタリアのまちや建築に関する
陣内さんの著作は気取らずさくさく核心を突いていくのでとても快く、昔から愛読している。


ご本人も、少しももったいぶったところのない明朗な方で
この日は、イタリア各都市のファサード装飾について 豊富な実例を写真で見せながら
さくさく軽快&濃密にレクチャーしてくれた。


イタリア人シェフによる料理&ワインが並んだパーティでは、
ヴァルポリチェッラ片手に陣内さんともお話。本当に気さくな方。
個人的に一番好きなまちは南イタリアのチステルニーノだそう。(やっぱり南なんだ!)
陣内さんがヴェネツィアやローマに留学していた1970年代に訪れたという南イタリアの話は
もうあまりにツボすぎて、陣内さんの生徒になりたい!と本気で思った。




そんなわけで、先週末は原稿の間隙を縫って、うちにある陣内さんの著作を読み返したり
南イタリアを旅した時のアルバムをめくったりして しばし南イタリア脳内トリップ。
このブログでもしばしば懐かしい旅の断片を呟いているが(これとかそれとかあれとか)
アルベロベッロやマテーラなど南イタリアのまちは、ひとつひとつがまったく異なる世界観を持った
小宇宙を形成しており その迷宮にはえもいわれぬ蠱惑的な魔力が宿っている。
陣内さんも『南イタリアへ!』で「一度この地を知ると虜になってしまう不思議な魅力がある」と
述べている通り。思うに、一度でもこの地を彷徨すると 魂の一部を そこに永遠に置いてきてしまう
のかもしれない。南イタリア旅行の拙アルバムより↓




なにもかも、つい昨日のことのように鮮烈に覚えている。
乾いた石の匂いも、少年たちが蹴るボールの音も、旅先で交わした他愛もない世間話の内容も、
穴のように深い自分自身の影の色さえも。



と、イタリアから急に話は飛ぶけれど、先日、歴史学者 横田冬彦氏と俳人の方の対談取材で
彦根に行ってきた。ひこにゃん、案外いないなあと思っていたら、彦根城の一角で発見。
ひこにゃんの猫耳みたいな角は、井伊直弼の兜からインスパイアされてたのね、知らなかった。
<駅前の井伊直弼像

日帰りだったので、ほぼトンボ帰りだったけれど、彦根城内の風流な茶室が取材場所だったので
そこから天守閣もチラ見。帰りは有名な冬桜やいろは松も拝めた。黒鳥に逢えなかったのは残念!
<天守閣、遠すぎてちいさっ



取材と原稿と打ち合わせの間に間に
軽井沢から出てきたキムリエさんとランデヴーしたり
まいかさんとオーリエさんちでまたエンドレスに話したり、
お世話になっている『kanon』と『Rosaba』の打ち上げを楽しんだり、はたまた
3000字近い対談原稿を締切り当日に仕上げたのに、別の対談原稿をうっかり上書きして真っ青になり
ショックで気を失う前にがんばって復元(早い話が書き直し)したり。。。


そんななか、部屋のあちこちに挿したフリージアがふっと香る瞬間
何かがすこしづつ確実に動いているのを感じる。
ニキの月命日も18日で22回目を迎えた。もうすぐ、2年になるんだなぁ。

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一丁倫敦~日比谷公園、ちょっと春ぼけ

2010-03-09 18:55:28 | Cat 猫族の甘い生活

ほぼ雨続きの3月、一瞬うそのように晴れた週明け、またもや丸の内界隈で取材。
鬼門の早起きを無事クリアし、“一丁倫敦”を三月兎の足取りでタッタカ。



これは4月に開館する「三菱一号館美術館」に隣接する「Café 1894」。
1894年の創業当時は銀行だったらしく、お客様窓口だったカウンターもちゃんと復元されている。
それにしても、建築の構造から素材までオーダーメイドで見事に蘇った館内は、
当時の製法で作られた煉瓦の風合い一つとっても趣深い。
同じコンドル作品でも、ちょっと江戸川乱歩風な旧岩崎邸(これも去年取材)などとは異なる。
解体される前の「旧・新丸ビル」(今の「新丸ビル」は、正確には「新・新丸ビル」なのよね)の
ふき硝子を再利用したという窓硝子から臨める 少し歪んだ丸の内の朝の風景が眩しい。。


*先日インタビューした高橋館長の「モネとモダン都市パリ」についての記事と
今回の記事は、4月末発売予定の『NODE』に掲載されるので、またご一読ください。


編集の宮崎さんやカメラマンさん、デザイナーさんたちと遅い昼食後、
先月に続いてまたもや日比谷公園に寄り道。案の定、心の字池付近で先日の茶トラ猫、発見。
シエスタ中だったらしく、呼んでも置物の眠り猫みたいに箱座りのまま 行儀よく爆睡していた。


と、もう一匹、茶とらくんがタイサンボクの下でやはりお昼寝していた。
こちらは呼ぶと、薄目を開けて大あくび。それから左右をゆっくり確認し、
私の足下にとことこやって来て、何度も前足をぐーんと伸ばして猫ストレッチ(尻尾ふとっ)。


撫でようとすると何度もすりすりしながら頭突き。カメラにもがしがし頭突き(笑)

ようやく落ち着いた茶トラくんを撫でることしばし。今度はゴロゴロがやまない。
至福の猫チャージ(私は猫のゴロゴロによって急速充電される低燃費体質なので)



猫フルチャージ後は、北欧バイキングの古代文字が刻まれた謎の石碑や
噴水を眺めながら公園内をゆるゆる散策。たまたま何かの撮影中だったようで
春の装いの女子数名が凄い勢いで傍らを「きゃはははは」と笑いながらぱたぱた疾走していった。
春のニンフかと思った。


この季節になると つい公園に引き込まれてしまうのは、
春のなまあたたかな蠢きとたくさん出逢えるから。
まだ冷たい風に震えつつ、樹木のしじまには楚々と美しい花たちがひっそりと咲いており、
枯れたように見える枝々にも新芽がぷくぷく膨らんでいる。
ぽっとピンクのにじんだボケの花、(ちょっとピンボケだけど)なんてかわいいの。



完全に散り落ちる寸前の山茶花、つい足を止めてしまう凄みがあった。
花壇にはチューリップがすくすく育っており、ムクドリの群れが黄色いくちばしで
地面を無心につついてはもぐもぐしていた。ムクドリは近づくとなにげに遠ざかるので撮影できず。



ところで、日比谷公園のベンチの背もたれには、よく見ると「思い出ベンチ」という
小さな金属のプレートが貼ってあり、いろんな人たちの「思い出」が実名入りで綴られている。

「ここは○子のふるさとです。また来ましょうね◇江さん」とか
「昭和20年に此の公園で別れた人を今でも思い出します。触れもせで別れし悔や60年」とか。。

じーん
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盛岡、猫毛フェルト、4回転ジャンプ

2010-03-01 01:50:15 | Travel 国内外猫の目紀行


週末、車窓を流れる青褪めた霧の木立を眺めながら 不意に深い穴に堕ちるような睡魔にとらわれた。
ぁあ、気がつけば2月もお終い。夢の深淵に立ち込めているような霧の向こうに 辿り着けるかな。



ミモザ!ミモザ!ミモザ!

残念ながら、去年は大満開だったうちのベランダのミモザが今年は一向に咲く気配がない。
去年ハッスルしすぎたのかな。。でも今週はいろんなとこで大好きなミモザの洗礼を受けた。

先週半ば、春のような陽気の昼下がり、この4月 丸の内にオープンする三菱一号館美術館の
高橋館長にインタビュー後(すごく面白かった。詳細は4月末発売の『NODE』を乞ご期待)
あまりに気持ちが良い日だったので、ミモザが満開の代々木公園を散策しながら帰った。

小学1年生位の子たちが、地面から生えた何かの根っこを必死の形相で引っ張っていて
なんだかシュールな光景だった。あれはいったい 何の根っこだったんだろう?




遅ればせながら、紅白梅も拝むことができた。ほんのり甘酸っぱい香り。
梅の季節になる度、子供の頃に家族で行った水戸偕楽園を思い出す。
当時、父が愛用してたニコン一眼レフのシャッター音が今も間近に聴こえてくるような気がする。



週末、取材で盛岡へ。昨秋の石川啄木本の第二弾で、今回も石川啄木記念館の学芸員であり
啄木博士の山本さんが啄木ゆかりの地をガイドしてくださった。

この日は小雨模様で、2月の盛岡~渋民村にしては比較的暖かいということだったけど、
寒がりの私には十分寒かった。。でも、啄木の足跡を巡る旅はとても興味深く
盛岡を流れる中津川ではシベリアに発つ直前の白鳥たちとも邂逅できた。


日暮れと共にどんどん霧が深くなり。。啄木記念館のすぐそばの生命の森には
まだ灰色がかった白鳥の赤ちゃんが数羽遊んでいた。無条件に愛しい光景。



土曜はレイちゃん&ハカセと「茶房高円寺書林」で開催していた“猫毛祭り”へ。
“猫毛祭り”とは文字通り、猫毛を梳いた時に出るリアルファーを生かした猫毛作品の展示会。
実はこのイベント、先週行った軽井沢の古本屋さんで教えてもらったのだ。
↓これももちろん、リアル猫さんたちの毛でできている。


この日はたまたま猫毛フェルト指人形劇団の公演日だったようで
脱力モードなリアル猫ファー指人形をしばし楽しんだ。


↑ヒゲの猫がニャン・コルレオーネ。左の黒猫がアル・パーチーノ役のマイケル(笑)

数年前、猫の毛対策ついて取材記事を書いたことがあるが、こういう猫毛活用法は当時まだなかった。
猫毛フェルトに魅かれたのは、ほかでもないニキが生前に梳いた毛が
仔猫一匹分ほど軽くあるので、それで何か作れるかなーという下心から(笑)
実際、↓こんな利用の仕方があるのね。参考になります。


故ニキは表面的には黒猫だったけど奥の毛はチャコールグレーだった。
↓半ばフェルト化したニキ毛。これ、触ると恐ろしくあったかいのだ。



猫毛の後は、みんなでお隣の阿佐ヶ谷にあるきゅうちゃんのおうちへ。
テーブルには満開のミモザ。初夏にパリに留学する彼女はとても輝いて見えた。

きゅうちゃんちの愛猫コトラくん(20歳)をぎゅっと抱かせてもらった。ありがとう、コトラくん。
(この直後、コトラ爺さん、うっかり放尿。。幸い、私には被害がなかったけど:笑)



あ、そうそう、今日でバンクーバー五輪もお終いですね。
フィギュア、男子も女子も例年以上にレベル高くて萌えました(笑)
審美的な評価は毎度のことながら審査員によって評価が分かれるので仕方ないけど、
個人的には4回転とかトリプルアクセルとか、より高度なジャンプをする人が評価されてこそと思う。
器用で無難な演技を完璧にこなす秀才より、リスキーでもより高度な技に挑む天才肌の方が
魅かれるし、仮に失敗しても愛しく感じる。

下手の横好き
だからというわけでもないけど、先週ミッドタウンのスケート場でレイちゃんとひと滑りしてきた。
前に滑ったのは日比谷にあった冬季限定のスケート場だったはず。十数年ぶり!
感覚を取り戻すまでに一寸時間がかかったけど、身体が思い出すと勝手に滑っていく。
とはいえ、2度ばかり転倒して 今も尾てい骨と膝の打ち身痕がじんじんする。。
こんなつるつるっの所で3回転とか4回転とか、天使のしわざとしか思えません。

と、天使といえば、トリノの時も思ったのだけど、スノボのハーフパイプで軽々と2連勝した
ショーン・ホワイトくん、彼も相変わらず異次元に棲む天使の飛翔でした。


もちろん、天使たちが天使たるゆえんは、恵まれた才能と共に凄絶な努力のなせる業。
「最強の敵は 自分のなかにある」というビートニクス「Left Bank」の歌詞がしばしば頭をよぎった。


1月に取材した建築家 隈研吾氏のインタビュー記事が掲載された
Kanon vol.18 が発売になっています。ぜひ、ご一読を!
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