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うみ・ねこ・くらげ

2010-09-27 07:28:23 | Scene いつか見た遠い空

9月も半ば過ぎになって、やっと海に行けた。辿り着けた、という方が近いかも。
ここ数年、恒例になっている夏の終わりの くれない埠頭にて
潮風にふきっさらされる快感。♪泣きながら 泳げ スイマー by Moon Riders



右に夕陽、左にお月さま。波の向こうにラッコみたいに浮ぶサーファーのシルエット。
鵠沼海岸て、ゴールドコーストみたいなのね。昔、オーストラリア取材の時、
ゴールドコースト在住の真っ黒に日焼けした人に云われた。「あなた、とけちゃいそうだね」
ええ、たぶん私は灼熱の太陽の下では生き延びにくい生きものです。海月みたいに。

だからこそ、先日の失速した夏と覚醒した秋のはざ間の夕暮れの海は、恐ろしく快かった。
裸足を洗う波は思いのほか冷たく、胸がきゅっとなった。


8月頭から何度も「今週は原稿が終わらない…でも、くらげが出る前に必ず海に!」と
メールし続けてかれこれ一ヵ月半、やっと海辺に住むご学友ひだかに逢えた。
この日も随分陽射しが強く、日除けにストールを顔に巻いて歩くひだかは
どうみてもマレーシアの人のようだったw



本鵠沼で落ち合い、レトロな商店街をぶらり散歩。味わい深い看板や建物が多く、ツボること多々。
創業60年という「スワン洋菓子店」もそう。いまどきの洒落たスイーツ店じゃないところがみそ。
ここで、当時のままの味というシュークリームとエクレア、マドレーヌを入手。


その足で昭和レトロな「あとりえ梅庵」へ向かい、
縁側でカスタードクリームたっぷりのシュークリームを頬張る至福。


向田邦子ドラマの舞台みたいな和室でいただいた元喫茶店の古本屋「余白や」さんの珈琲も美味。
「銀幕の夢」をテーマに往年のハリウッド映画本が並べられていたが、これが和室に妙にしっくり。
写真、藍染め、古書、カフェなどなどが集まった期間限定のイベント中だったのだが、
親戚の家に遊びに行ったみたいな心地がした。


この夜はひだか&まきさんと地もののおすしを肴に
心底なごめるひととき。夏おさめに最高の一日でした。
ありがとうう!!!!! 



「うみ」の翌日は、ちよさんちに「ねこ」三昧。ちよさんちにやってきた黒仔猫のヤマトくんと
スウィートなこなみ嬢にたっぷり遊んでもらった。ヤマトくんはすばしっこすぎて
撮影が極めて困難だったけど、仔猫時代の故ニキを思わずにはいられなかった。
ヤマトくんはまたたびを思いっきり猫またぎしていた。お仔ちゃまにはまだわからない味?!

この日初めてお逢いしたMさんもどこか猫っぽくて、即なついてしまった私。
夜には映画ライターのたがやさんも参入。秋の名月にちなんだご馳走をいただきながら
「永遠のゼロ」を映画化した場合の架空の配役トークで散々盛り上がって楽しかった!

そして、久々に仕事を離れたこの2連休の後、夏は急激に断末魔を迎えた。


夏が去る直前、御茶ノ水での取材帰りに、市ヶ谷のミヅマアートギャラリーで始まった
松蔭浩之「KAGE」展に寄ってみた。彼の作品にちゃんと対峙するのは、
コンプレッソ・プラスティコ名義で出品していた1990年のヴェネツィアビエンナーレのアペルト以来。
エントランスのインスタレーションに使われていた’80sな12インチアルバムの数々
(JAPANのNight Porter、ロバート・ワイアットのNothing can stop usなどなど…)にいきなり
もっていかれ、個人的には大変興味深かった。賛否両論ありそうだけど、それこそが彼の持ち味かと。

まだほのかに蒸し暑い内堀通りをてくてく漫ろ歩きながら、1990年のちょうど同じ頃に訪れた
ヴェネツィアをぼんやり追想。。お堀が運河に見え、ボートがゴンドラに見えた。
ついでに、当時ビエンナーレでスキャンダラスに取り沙汰されていた
ジェフ・クーンズとチッチョリーナのキッチュな微笑が重なって見えた。



秋分の日とその前夜は、近所の神社で恒例の秋祭り。今年もお神輿にたくさん遭遇した。
毎年、家の真下を通るお神輿を、まんまる目で凝視していた故ニキの姿が今も愛しく懐かしい。


お祭りの帰り、箱根に向うロマンスカーが通り過ぎるのを待ちながら
踏み切りで満月と目が合う。まさに中秋の名月。
心の奥底まで照射するように冴えた光輝。



月が膨らみ、月が欠け、また膨らんで欠けて――
気がつけば もう今年もあと3カ月。唖然とするほど早い。
せつないほど早い。不思議に濃く澄んだ一季節がまた過ぎて行く。
ここのところ、ずっとリピートしているのは
『ドニー・ダーコ』のエンディングソング。うーせつない。
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エンドレスサマー2010

2010-09-13 02:14:50 | Scene いつか見た遠い空


ひまわりもぐったりするような酷暑の余韻がなかなか消えない。
台風で一気に終息したかに思えたが、晩夏の尻尾はおもいのほか太い。

7/11のブログにも載せた、代官山に突如出現したひまわり畑の
ひまわりたちも 旺盛に咲き誇った末、もはや青息吐息というのに。


東京都心では8月末に熱帯夜の日数が1994年以来の最多記録を更新したそう。
エンドレスサマー。もはやこの暑さをどこかで愉しんでさえいるような気がする。
とまれ、恐ろしく暑かった夏のことはいつまでも鮮烈に覚えているけれど、
冷夏のことはとんと覚えていなかったりするから
あと10年もすれば、この夏がきっと猛烈に懐かしくなったりするのかもしれない。ふぅ。


それでも、9月頭に恵比寿や代々木公園を行き来した折、
秋めいた羊雲が頭上にぽこぽこ群れなしていた。
薔薇園には、かわいた薔薇の代わりに、
夕陽に翅をきらきらさせた蜻蛉の群れが
羊雲の海を泳ぐようにすいすい飛び交っていた。




実は最近、仕事で別のブログを始めたこともあり、自分のブログ更新がめっきり遅れがち。
思いも写真も日々溜まり続けてはや9月。つらつら思い出しつつ、晩夏をプレイバック。



8月最後の週末、吉祥寺でコーチングの先生をインタビューした後、井の頭公園をしばし散策した。
といっても、この日も獰猛なまでの陽射しと熱気で、歩いている人はほぼ皆無。
鴨さんたち とても気持ちよさげだったけど、池もきっととろとろのぬるま湯にちがいなく。


晩夏の白昼に広い公園をそぞろ歩くと、懐かしさがふうっとこみあげてくる。
幼い頃、夏休みに家族とよく行楽に出かけた時の光に どこか似ているからなのか。



さかのぼることお盆あけ、木下ときわさんのライブ@クーリーズクリークへ。
レイちゃんてば、やっぱり「海へ来なさい」で落涙していた。
バックにピアノも入って一段とエレガントなパワーを増したときわさんのボッサと
クーリーズならではのモヒート&ゴハンで、仕事三昧の頭と身体に一服の涼と滋養。

この3日後、キムリエさん、ちよさん、マイカ社長と久々に集合。みんな、5年前に
とあるWEBサイトや雑誌の仕事で意気投合して以来のかけがえのないお仲間。
夜はうちでキムリエさんとまた夜明けまでお喋り。なんだか女子高生みたいな楽しい夜。



9/1、仕事で先日お世話になった南村さん(写真左。撮影してる金髪の方はアイロンママ田形氏)が
主宰する「Kitchen DOG!」のリニューアルオープンパーティへ。
骨董通り側にある心地よいお店には、「Red Lily Magnolia」も併設されています。
写真中央の方は会場で知り合った東京わん!Lifeペットシッターの國分さん。
バッグのわんちゃんは保護した子なのだそう。いい人に保護されてよかったね。

しかし、猫と長く暮らしてきた身としては、猫よりずっと華奢なわんちゃんたちが
みんなぬいぐるみみたいにお行儀よくしているのにびっくり! 
これがもし猫なら、パーティ会場はまさに 猫ふんじゃった状態で大騒ぎになりそうだもの。



とっくに終わっちゃったけど、銀座松屋で8月に開催していた「ゲゲゲ展」にも行ってきました。
エントランスから、デザイナー祖父江慎さんのワンダーチャイルドなアートワークが炸裂。


チケットブースも、ぬりかべ。

子供の頃は、墓石や卒塔婆の画も鬼太郎も怖くて、漫画もTVも横目でしか見ていなかったのだけど
あらためて水木ワールドを俯瞰すると、もの凄いクリエイターだなあと、今さらながら。
会場ではやっぱり号泣してるお子様がいたけど、水木しげるの描く目玉って
子供には妙に怖いのよね。


会場に隣接したグッズ売場には、猫娘の無添加ミスト、一反もめんタオル、目玉おやじプリンetc…
その見事な商魂と、グッズを大量に抱えてレジに並ぶ長蛇の列にびっくり。
ちなみに、ねずみ男グッズがほぼ皆無に等しかったのだけど、なぜ?所属事務所が違うの?



会場では、鬼太郎の原画の背景が恐ろしく細密で目を見張ったけれど、
帰宅して水木しげるの『猫楠』を改めて見ると、熊野の森の描写が驚くほど緻密。


そういえば、鈴木慶一が映画版「ゲゲゲの女房」の音楽を作ったよう。聴いてみたいな。



これも8月、近所のラムフロム・ザ・コンセプトストアで開催していた佐藤健寿「新・奇怪遺産」を
観てきた。世界中の奇怪な建造物を撮りおろした写真集の作品が中心だったが、これみよがしに
その奇天烈ぶりを暴くという作風ではなく、キッチュな建造物に実に淡々と向き合っている印象。


被写体としては既に見慣れた場所も多く、むしろ懐かしかったりもした。
イタリアのボマルツォオ怪物庭園もそのひとつ。ボマルツォへは澁澤龍彦も1970年に
嬉々として訪れており、「ヨーロッパの乳房」の冒頭でその仔細を語りつくしている。

と、これは随分昔にボマルツォ庭園に行った時のマイスナップ。佐藤氏の作品じゃなくて恐縮です。
下半身がないように見えるのは、黒いパンツが背景の黒にとけてしまったからです、念のため。
怪物くんの唇には「OGNI PENSIERO VOLA(全ての思考は飛び去る)」と彫られている。いいことかも。


ちなみにこの怪物くんを中から撮影すると、こんな感じ。案外かわいいのです。


この庭園の怪物たちはどれも、バロック萌えの私にはちっとも怖くなく、
むしろ飄々と牧歌的にすら見えた(遠い目)。




ラムフロムの斜向いにある図書館の隅に、夕涼みの猫さんが一匹。
この夏、野良猫たちを真昼にみかけることは皆無だったけれど、
みんなどこで涼んでいたのだろう。



――と、梨を食みながら久々にブログを書いているうち、
日付が変わる前はまだ蒸し暑かった夜風が
随分心地よくなっていることに気付いた。

ここのところ、母が贈ってくれた初秋の風物詩、
幸水を朝な夕なにありがたくいただく日々。
身に染み通るようなみずみずしく澄んだ果汁が、
体の内側から小さな秋を報せているのを感じる。
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