goo

きつね、グーグー、ポニョ 映画雑感

2008-09-29 03:12:42 | Cinema
ここ数週間、間隙を縫って数本の試写へ。睡眠削っても映画は別腹。
まずは、来年1月公開予定のフランス映画『きつねと私の12か月』

監督リュック・ジャケの少年時代の体験を基に、フランス・アルプスの四季を背景に繰り広げられる
野生のきつねと少女の友情物語…と映画紹介記事風に書いちゃうと、なんだかミモフタモないけど。。
私は映画を観ている間中ずっと、危ういほど無垢な生きものたちの交信を 密やかに見護る
森の精霊みたいな気分だった。

時に親密で、時に牙を剥く自然の営みへの畏敬が、ワケ知り顔の大人の観念的な視線ではなく、
きつねと少女の心情と瑞々しくオーバーラップして描かれていた。
野生の生きものと心通わせることの歓喜と禁忌。愛するとは、相手を所有することではない。
「大好きだから、さようなら」――単なる友情譚を超えた深遠な哲学がそこにはあった。


お次は、只今“ニャンダフル全国ロードショー”中の『グーグーだってネコである』。
これは晩夏になぜか中野サンプラザで試写を観た。原作は下手な純文学より数段深い大島弓子。

監督は大島漫画ファンの犬童一心。映画は原作を基に 良くも悪くも脚色されていたが、
大島弓子がグーグーと暮らす前に13年連れ添った猫サバが冒頭でそっと亡くなるところは同じ。
大島さんは実際、サバの死をきっかけに食べられなくなり寝られなくなる。いわゆるペットロス症状。

映画では、サバの後にやってきた仔猫グーグーの愛らしさをこれでもかと見せるが、
その実、映画の本題は“サバとの内的訣別”にある。主人公は夢の中でサバと邂逅し、サバは云う。
「ありがとう、たのしかった」と。主人公はそこで酷い自責の念から救われ、初めて涙をおとす。
(ニキも亡くなる数日前、同様のメッセージを全身全霊で伝えてくれた。
寝たきりのままサイレントにゃあを繰り返し、涙で潤んだ瞳でまっすぐ私を見つめて)
そんなわけで、このシーンにはちょっときました。シンプルなことばに宿る、ピュアな思い。

映画のラストで、主人公は漫画のモノローグと同じ台詞を云う。

寿命の違う生きものの生を慈しむ もうひとつの生きものの 最もシンプルな思い。


続いて、先週観た『崖の上のポニョ』。これは試写ではなく、カッシーのお誘いでキムリエさんと
3人で観にいった。宮崎アニメを映画館で観たのは正直これが初めて。んー、押井守が云っていた通り
因果律も何もめちゃくちゃ。でも、物語は5歳児の目線で語られているのだから、当然てば当然。
私も5歳の頃からあるイミ変わっていなかったりする生きものなので、実はかえってしっくりきた。

宮崎駿いわく「世界は生き物だ。それを小さな子供はみんな直観的に分かってる」と。すごい核心。
物語の破綻も確信犯。ただ、ポニョの母がポニョを「半魚人だけど」呼ばわりしたり
ポニョがその「半魚人」から人間になりたがったりするのは、個人的には相容れず。異種のまま
堂々と交流すればよいのに、って。 あ、矢野顕子が演じたポニョの妹たちの「声」は必聴(笑)

ちなみに、5歳児の主人公は随分と理知的な子なのだが、ポニョが失神した時は激しく動揺する。
「ポニョォーっ!死んぢゃったのぉおっ?」って。死は、とくに子供にとって、底知れぬ恐怖なのだ。
『きつねと私の12か月』では、血まみれで失神したきつねを前に、少女は激しく放心する。
『グーグー』では大島弓子がサバの死に際し、猫と人の寿命が違うことを嘆息するモノローグがある。

寿命の違う異種の生きもの同士には、蜜月があれば 必ず惜別もある。
『動物の寿命』(ズーラシア園長 増井光子監修/素朴社刊)によると
ホンドギツネは6~12年、猫は12~18年(最高齢は36歳とか!)、半漁人ぽいジュゴンは70年。

驚いたのは金魚10~30年、イエバト35年、中・大型インコ20~80年!という小動物の長寿ぶり。
ロバ26~31年、ワニガメ47~58年といった妙に細かな数値が時々あって気になりますが。。


これは先週、日本橋で撮った青銅の「麒麟」。古代中国では幸をもたらす聖獣だったとか。
明治末期設置のこの麒麟は、今年で御年97歳(しかも重文)。デモーニッシュな翼がかっこいい。


同じく日本橋にて伝統工芸展を観た後、メグ千鶴子さんといただいた まさかの「お子さまランチ」。
サンプルにはケチャップライスの中央に傘があったけど、お店の人が変に気遣ってか付いておらず。


日本橋中央通りにも秋の風が。いつもは人工的に植えられた花がただお行儀よく並んでいるだけの
退屈な花壇が、ぼうぼうたるエノコロ草(猫じゃらし草)に見事なまでに占拠されていた。
壮観。よほど秋らしい。


週末は一気に秋の気配が深まった。朝と夜の間に間に、またしても家にコモって原稿三昧。
ベランダ越しに染み込んでくる、あかい木漏れ日。ふと気づけば、暗くなるのが随分早くなった。

土曜は秋の空気が気持ちよくて、窓を少し開けて仕事していたところ
夜半にソファでうっかりうたた寝してしまい、ぞくぞくする寒さで目醒めた。

寒くなると、よくニキを懐に入れて天然湯たんぽにしていたな。。
これは仔猫時代のニキ。最初は抵抗するけど、しばらくすると気持ちよくなってくるのか
ごろごろいいながら、だぶだぶの古着カーディガンの懐にすっかり収まっていた(遠い目)。


これは件の『きつねと私の12か月』のワンシーン。巣穴で眠るきつね親子。

一緒にまるまりたいー
goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )

夜と朝と夜と― Tokyo Crossover/Jazz Festival 2008

2008-09-24 07:18:48 | Event
月曜の夕刻、ベランダジャングル越しに 暮れなずむ寸前の夕陽をキャッチ。
この日は夜明けに原稿を1本メール入稿して仮眠。昼近くから日没まで原稿を書き、再び仮眠。
そしてすっかり夜の帳がおりてから ドラキュラのように覚醒し、レイちゃん&ハカセと
TCJF (Tokyo Crossover/Jazz Festival 2008)@ageHa へ。


昨年は極寒の11月末開催だったけど、寒さを忘れるほど満喫した。今年も充実したラインナップで
Jazztronik→沖野修也さん→Gilles Petersonなどなど瞬く間にヒートアップ。
少々酸欠っぽくなってきたので屋外のWATER BARで深呼吸。プールって、存在自体が気持ちいい。
ちょうどBEAMS RECORDS青野賢一さんたちのプレイの真最中で、音楽はもちろん
プールに映ったスマイリーな半月も、夜空にくっきり浮かんだオリオン座も、すべてがperfetta!
さらにARENAでUnited Legends Live Set→Gilles Petersonを楽しんで、夜明け前においとま。

帰宅後、歯磨きをし、新聞をとりに行った際に見えた早朝の空。すがすがしい。
コアントロー+スミノフ+(ワイン×2)の余波で直後に爆睡。。

そうそう、ageHaは写真付身分証明書の提示がマストゆえ、運転免許証の無い私はパスポートを持参。
が、実は今夏で期限が切れていたことが発覚! さらに持ち物チェックの際、たまたま持っていた
胃腸薬を「規則なので」と大変申し訳なさそうに没収され(笑) とまれ、パスポート更新しなきゃ。。 

と、これが昨夜のプール                  ぇ?

で、これが昨夜の月。。。なわけはなく、翌23日に代々木八幡の秋祭りで撮った金魚すくいと
“宝石つかみ放題↓”<すごいネーミング


普段は静謐な代々木八幡神社も、祭の日ばかりは件のTCJFもびっくりのにぎわい。








お祭りを見た後、ちよさん、レイちゃん、みっちゃんが集合している三ノ輪へ。
私が到着した時には既に大方閉まっていたけど、このレトロなアーケードは見所満載らしい。
この一角にある「月光」というお餅カフェで和んだ後、また深夜までわいわい。

三ノ輪といえばアラーキーの生まれ育った所。「さっちん」もこの辺の子だったんだなぁ。

帰宅してあれこれ片付けているうちに、朝の光が。。今日も天気がいいみたい。

goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )

柔らかい月

2008-09-21 05:35:14 | Luna もの思う月
一週間近く缶詰になって原稿に追われ、やっと休息が訪れた週末の夜、弟が遊びに来た。
土曜は一緒にミッドタウンへ。ガレリアやガーデンに毒キノコ、もとい、草間彌生の作品が。

FUJIFILM SQUAREで写真展「オランダ人が見た昭和の日々」を開催しており
昭和20~30年代の日本の風景が、単なる異国情緒を超えて活写されていた。
撮影者は日本に赴任していたオランダの銀行員。まるでマグナムばりのフットワークだ。
↓昭和35年 数寄屋橋の日劇前。雑踏の音がたしかに聴こえてくるよう。
ⓒエイスブラント・ロッヘ


ミッドタウンのとらやで開催中の「月と暦展」にも寄り道。月にまつわる和菓子の数々が実に風雅。
これは9月頭にレイちゃんと会った際、一足早くいただいたとらやの月見うさぎ饅頭と月の懐紙。
月を象った懐紙に 白雲にみたてた白い懐紙を重ね、月の満ち欠けを模して遊べる。
 
月なき夜は みたての月で 月を愛で。うさぎを寝かして寝待ち月。

これは、デザインが気に入って 夏にジャケ買いならぬパッケージ買いした「東京ブラック」。
雲間に浮かぶ満月を、腰手にきりりと仰ぐお相撲さんの画がいい。

ビールはお腹いっぱいになってしまうので、普段はほぼ飲まないけど
一寸味見したら、苦みばしった濃厚な大人味。


原稿に追われている間に 月も細ってきたけど、先週は中秋の名月だった。
これは14日午前1時すぎ、ベランダの月桂樹とぐみの梢越しに現れた ほんのり橙色の月。

この日は残念ながら夜は雨に。

17日、夜明け前にふと窓を見たら、十五夜ばりのきらきらつぶらな月と目があった。
旧い知己に遭遇したような懐かしさ。


17日、明け方の残月。みるみる透明になって消えてしまった。



初夏に一度大伐採した東向きのベランダのグリーンが、夏の間にすっかりまた藪と化してしまい、
伸び放題の朝顔が、階下のおうちの植物にも絡み始めたので、慌てて剪定。
しかし、うっかり開花直前の蕾までちょきんと。。
朝顔の弦を切花にするのは難しいだろうなあと思いつつ、硝子壜に挿してみる。

翌日、一番大きな蕾が開くかと思いきや、そのままポトリと堕ちてしまった。。線香花火みたいに。

2日目、小さかった蕾がふたつ、順調に膨らみ、3日目の朝にゆっくりゆっくり開花。


が、夕方にはついに開花しきることなく萎んでしまった。小さなパフスリーブみたいになって。

・・・来夏またね。


満月前後、ニキが近くにいるような気がした。
ニキが星になって4カ月。朝顔に代わって花も秋めかして。


こっちは去年のちょうど今頃の窓辺。ワレモコウと蓮。しぶい。


去年買ったまま忘れていたイタロ・カルビーノの「柔らかい月」を
昨日、書棚の奥から発掘。たぶん、本が呼んだのだ。「ここだよ」って。
goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )

ポルチーニ祭り

2008-09-16 02:58:37 | Food 酸いも甘いも
原稿まつり、たけなわ。書くこと自体は楽しいけど、締切りが続くと少々逃避したくなる。
そんな折、イタリアから空輸された初ものポルチーニが届いたので、週末は勝手にポルチーニ祭り。

とはいえ、乾燥ポルチーニしか扱ったことがなく、フレッシュポルチーニを調理するのは実は初めて。
とりあえず、新鮮なうちに軽く洗ってお湯に浸し、だし汁をとる。ペーパーフィルターで漉すのに、
手近にあったケメックスを利用(これが後々、悲劇の元に。。)

抽出したてのフレッシュポルチーニジュース。特有の濃厚な香りふんぷん。

にんにく&玉葱をオリーブオイルでソテーし、刻んだポルチーニを和え、白ワインを降り、塩胡椒。
そこに先ほどのポルチーニだし汁を加えて煮立て、生クリームを混ぜ、パスタと絡めれば
ポルチーニクリームソースが完成。
 <なぜか茹でピーも
パスタを作る傍ら、夜食用に生の落花生も茹でていたのでコンロが激鍋ラッシュ。。

昨秋blogで書いた乾燥ポルチーニのパスタと作り方はほぼ同じだけど、フレッシュは食感がぷりぷり。


で、ポルチーニ祭り二夜目のメニューは、ポルチーニリゾット。
写真だと炒飯みたいに見えなくもないけど、絶妙な仕上がり。ブオニーッシモ♪ 


そうして、貴重なポルチーニをあっという間に食べ尽くしてしまった日曜。
書いても書いてもたっぷりある原稿を中断し、昼にオレキエッテ(伊語で“耳”の意)を食す。
ほんと 耳っぽい。南イタリアのプーリア州を代表するショートパスタ。

これを茹で、煮込んだトマトソースと絡めるだけで、
気分は南イタリア。しかし、これには或る因縁が。。

10年ほど前、南イタリアのアルベロベッロを旅した時、夕食時にうっかり爆睡。目覚めたのは深夜。
夕餉に絶対食べようと楽しみにしていたオレキエッテ・アラ・ポモドーロを食べ損ねてしまい。。
仕方なく、閉店間際のバールで冷めたピザのかけらを齧ったあの哀しい夜のことは忘れない(笑)

んで日曜夜。原稿をどんどんメールしつつ、気分だけイタリアのまま、サフランリゾットに着手。
これまた写真だと卵おじやみたいに見えるけど、それがどうして味はかなりグー。


しかし。さすがにパスタやリゾット続きで、脳みそがアルデンテ化(どんなだ)してきたので、
月曜は和食でリセット。今秋初の栗ご飯。雑穀を混ぜたので食感が微妙にアルデンテだったけど。。


☆追伸 ケメックス事件。

実は、、件のポルチーニ出汁をケメックスで濾した後、いつもより入念に洗っていたら、
うっかり手が滑ってパリンと割れてしまい…(泣) 仕方なく代替品を買いに走ったら
ハンズ渋谷がちょうどオープン30周年祭中で、30th記念ベアブリックをもらった。
展示してあった1978年のオルガン坂付近の写真や、当時のハンズの広告なども面白く。


新品を買ったとはいえ、愛着のある古いケメックスの木製パーツだけはどうしても棄てられず、
手近に居た猫花瓶(元ワインボトル)の首に巻いてみた。
 
ちょっとムチウチ風だけど、ま いっか。ケメねこ、あるいは、ケメコ。
goo | コメント ( 2 ) | トラックバック ( 0 )

ラッキー7

2008-09-11 11:11:17 | Scene いつか見た遠い空
夏の名残りと 初秋の風が、マーブル模様のせめぎあいといった感じの今日この頃。
先週土曜は原宿に出た帰り、薄暮の代々木公園を散歩。
ぼうぼう伸び過ぎた芝生に埋もれて秋虫の気分になってみる。りりり。

夕暮れの公園は外国人率が高い。ふと自分がどこか旅の途上に居るみたいな錯覚に。
まぁ、ある意味、日々ながい旅の途上なのかもしれないけれど。


日曜は数ヶ月ぶりにエトさんと、何年も行っていなかった新宿のカフェ・ハイチで逢う。
夕刻、新宿ノーザンウエスト方面へ。超高層ビルと昭和な新宿が混在しつつ、日々破壊が進むエリア。

宵闇の古い幼稚園の運動場にいた小象(背中が滑り台)。雨に濡れた耳や鼻が愛しいぞ。

幼稚園の隣は廃校になった淀橋第三小学校。(ちなみに私は淀橋第四小学校の元生徒)
この小学校校舎の元音楽室で、原マスミ&近藤達郎の「教室コンサート」を堪能した。


相変わらず縦横無尽な弾き語り&キャラ。不意にぽそっと話す呟きMCもライブの密かな愉しみ。
チケットにはシャルル・ペローの「ロバと王女」をモチーフにした原マスミの画が。
その黒い深遠な瞳は、彼の音楽世界と同じく、夜のしじまにぽっかり開いた底なしの穴の如し。

チケットの下のランチョンマットはエトさんお手製。ギンガム、水玉、チェリー。ツボ満載。


月曜は渋谷で夜まで長時間取材。少々頭を整理したかったので、メトロに乗らず歩くことに。
身体を適宜動かした方が、情報を取捨しやすいし、ネタがいい感じに熟成するのだ。

美竹公園脇の坂道をてくてく闊歩していたとき、突然大粒の雨だれが。。
とりあえず最初に見えたカフェに飛び込もう、、と決意するやいなや、この猫が目のはじに。
 café ano

で、一目散に飛び込むと、中に操り人形が何体も。実は東京でも希少なチェコ料理店らしく、
毎月、シュヴァンクマイエルなどのチェコアニメ上映会も催しているのだとか。今度行ってみよう。


そしてなぜかテーブルには、相当年季の入ったトランプが。適当に1枚抜いたら、ハートの7だった。
次に誰かが触れた時 ラッキーをおすそ分けしてあげようと、一番上にそれを置いて仕舞った。

十代の頃、神経衰弱をエンドレスでやり続けるという被虐的な遊びに興じていたことがある。
またしてみたいなあ(笑)。あ、でもこんな原稿ラッシュの時は、海馬が飽和しちゃうか。。


火曜は新丸ビル5FのPASTA HOUSE AWkitchen TOKYOでランチ。
十数年ぶりに、角ちゃん&はや先生に再会。うれし懐かし!
ご馳走になった白桃&ゴルゴンゾーラソースのニョッキも、世界一もっちもちで美味!


角ちゃんのあだなは“ドイツ人”(私が勝手に命名)。ドイツ人のようにきちんとしているから。
実はお茶目な角ちゃん、母になってますますクレバーで素敵なマダムに。

京都で悠々自適ライフを謳歌しているはや先生は、
陶芸や絵画、創作パスタ作りに熱中し、角ちゃんいわく ますます魯山人みたいな粋人に。
さらりとフェレを着こなす76歳、そうざらにはいません。
そんなはや先生から 猫の絵本作りの企画をいただいた。わーい♪


帰りに、角ちゃんに大手町野村ビルの地下に広がる異空間PASONA O₂に案内してもらった。
かつて りそな銀行の金庫だったという 陽光が一切射さない空間に、
所狭しと生い茂っていた 地下生まれ地下育ちのアングラトマト。


他にも、ゴーヤから京野菜まで栽培している野菜畑や、棚田、ビオトープなど、
6つのRoomでそれぞれ異なる栽培実験が行われていた。
薔薇とハーブのRoomは、そこに居るだけで 明らかに空気が澄んでいるのがわかった。
あの中で原稿を書くとすごーくはかどりそう。

実験農場としてだけでなく、インドアグリーンの楽しみ方を模索する意味でも興味深い。

―けど、太陽を知らない一生って、深海魚みたいだな。
以前、ICCで観た「サイレント・ダイアローグ」に 植物の意識を音声化した作品があったが
アングラ植物たちにインタビューできたら面白いだろうな。
「薔薇さん、ご機嫌麗しくていらっしゃいますか?」「ええ、案外悪くないことよ」みたいな。


あ、今日は9.11だ。あの事件を最初に知ったのはエトさんからの電話だった。
「いまTVみてみて!ワールドトレードセンターに、ニキ(2機)がっ!」って。
あれから7年。早いなあ。。
goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )

藤城清治/液晶絵画

2008-09-06 10:10:07 | Art
9月の声を聞くいなや慌しさが舞い戻り。それでも水曜は銀座での打ち合わせ帰りに
教文館の9Fウィンライト・ホールで開催していた「藤城清治 光と影」展へ。
            
藤城清治といえば、1970年代に放映されていた夕方の天気予報の背景の影絵で親しんだくち。
あの黒い切れ長の瞳を見ると、条件反射的にノスタルジーのスイッチが入ってしまう。
アンデルセンや宮澤賢治の童話をテーマにした作品をじーっと見つめていたら、なぜか涙腺がゆるみ。

教文館のビルは昭和初期の造りらしくとてもレトロ。6Fにある子供の本専門店「ナルニア国」では
パロル舎発行の画本 宮沢賢治の挿画を手がけている小林敏也の原画を展示していた。
スクラッチペンで引っ掻いて描く独特の線画と絶妙な構図は
あまたある賢治本の中でも図抜けたインパクト。
 「どんぐりと山猫」


そうそう、写美で先週観た「液晶絵画」の感想メモも一寸。

↑チラシの“少女”はもちろん森村泰昌センセイ。フェルメールのアトリエを再現し、
そこで画家に扮したり、モデルの少女になったり、それらを劇中劇のように撮影した映像を
同時に見せたりと、例によってなりきり放題。上野でやってる本家フェルメール展もかすみそう(笑)

17世紀の静物画風の桃や兎が徐々に朽ちていく様を見せたサム・テイラー=ウッドの映像や
諍いもつれ合う老若男女のアクションを超スロー再生したイブ・サスマンの作品など、
21世紀以降の映像作品群に混って、くらくらするほど懐かしい映像と2つばかり再会した。

ひとつはブライアン・イーノの「サースデイ・アフタヌーン」(↑左下)。
1984年夏頃、とんがったショップでは軒並みこのビデオを流していたっけ。モニターを縦にしてね。

もうひとつは、ビル・ヴィオラの初期作品「プールの反映(1977-1979年)」↓
大学時代、ヤマカツこと映像作家の山口勝弘教授が授業でこの作品をみせてくれた。

1人の男がプールに飛び込む瞬間、「やっ」という声と共に中空でその姿が突如静止し、
水面だけは何事もなかったかのようにゆらめき続け、男の姿も緑のしじまにフェイドアウトしていく。
遠い日の教室で観たわずか7分間の映像との思いがけない再会に、ちょっとめくるめいてしまった。


木曜、キムリエさん&キムナオさん&カッシーと京都以来の再集合。みなと居ると仕事も和むなあ。
高井戸で女優の貫地谷しほりさんを取材後、恵比寿でカッシーとゴハン。さらにホテル クラスカの
ギャラリー&ショップ ドーで開催中の「鳩時計 push me pull you 澄敬一の仕事」展へ。
演劇空間に迷いこんだような印象。会場に居らっしゃった澄さんに興味深い話をいろいろ伺う。
鳩時計の時報「ぽっぽ♪」懐かしい。その後、レイちゃんとラウンジで夜更けまで尽きないお喋り。

金曜、少々寝不足のまま、苦手な朝一打ち合わせ@田町。その後、ダッシュで新宿へ。
編集長をやめて自由を満喫中のはなちゃんとパークハイアットのNYグリルでランチ。
 52Fから臨むこんもり緑の代々木公園。
マウイ&カウアイでのとほほ話や、ゴールドコーストでの私の今では信じ難いバンジージャンプ騒動など
一緒に取材に行った時の笑い話やらなにやら話題は尽きず、気がついたらランチのはずが夕方に。


はなちゃんの車で送ってもらって帰宅すると、宅配BOXに荷物が。
4月末頃、エドツワキさんが手がけるブランドnakEd bunchの展示会で、エドさんを取材した際、
撮影の合間にちゃっかり注文していた秋冬物商品だった。微に入り細に入り凝ったデザイン。

あの時はニキが突発的な入退院を繰り返しており、取材後に即行で病院に行く予定だったため
試着もせずに選んだけど、サイズもちょうどよく。これを着てニキを抱っこしたかったな。


原稿締め切りラッシュ。集中して書かなきゃ。そういうときは、チョコ必須。
ここんとこ切らしていたカカオ100%のビターチョコを、銀座打ち合わせついでに三越デパ地下で補給。

無糖ゆえ、カカオ本来の甘みを感応できる魔性のチョコ。
goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )

海辺で青空チルアウト

2008-09-01 02:22:31 | Scene いつか見た遠い空
8月も もう おしまい。 いくつになっても、夏休み終局のあの淋しさが蘇ってくる。
印象深いのは、高校最後の夏。高1から散々サボってきた挙句の俄か受験勉強の傍ら、
美術系受験のための夏期デッサン講座(これも俄か)に、せっせと通っていた。
あの夏、ホルガー・シューカイを死ぬほど聴いていた。


さて、そんな夏の終わり。浜町のギャラリーA/Nで素敵なマダム千鶴子さん&その素敵なご友人、
原野先生にお逢いし、雨降りをものともせず、またお喋りに花が咲きまくり。
夕方、千鶴子さんとお別れして、シャンパンとレノンメロンと線香花火を携え 一路、江ノ島へ。
<ジョン・レノンとの関係は謎

江ノ電の腰越駅で降り、お呼ばれしていたひだか&まきさんの家に辿り着いた頃にはすっかり夜。
お座敷には既に人がみっしり、宴たけなわ。テーブルにずらり並んだ美味しい料理やお酒の数々を
急ピッチでいただきながら、日暮れ前から飲んでいたというおかじ先生&やごちゃんたちとわいわい。
さらに、ワインを飲みつつ庭で線香花火。

ジジッジジジッとためながらスパークする間がいい。
花火の奥で煌々と燃えるのはまきさん手製の炭焼きかまど。庭には手製の燻製窯やお風呂も完備!

小学生のお子さまたちと怖~い話をして遊んだり、ひだかたちと東海道五十三次の広重画を
今の風景と比べながら眺めている内に 夜も更け。その夜はご好意に甘えてお泊り。

夜明け頃、キジバト、鈴虫、松虫、コオロギ、キリギリス、クマゼミ、ミンミンゼミらが織りなす
絶妙なインプロヴィゼーションが庭から聴こえてきた。S.ライヒも真っ青な超絶アンサンブルに陶然。

朝、ひだか&まきさんと3人で海辺へ。8月31日、今夏初めて歩く砂浜の感触。
 真夏の喧騒は潮騒の彼方へ。

私たちは絵に描いたような“海の家”に入り、朝食。
 BGMにはなぜかビージーズが。

ひだかと私はラムネ。親方まきさんは朝から生ビール2杯。枝豆、おでん、焼きそば、いか焼き(笑)


再び砂浜に出ると、さらに太陽が高くなり、入道雲も一段ともこもこ。裸足の下の砂が熱い!

波に足を洗われる。快感。くらげさえいなければ泳ぎたかった!

砂浜の方々に、いつ誰が棄てたのか 西瓜の種が芽吹いて こんなことになっていた。

これが全部ごろごろ西瓜になったら面白いんだけど、砂地ではそうもいかないらしい。

海をあとにし、江ノ島駅界隈へ。大正時代に創業したという老舗旅館石政(休業中)の入口で旅館の
旧い食器類を売っていたので寄り道。内部のアンティークなしつらえに目が釘付け。


さらに江ノ電で鎌倉高校前へ。昨夜もおあいした方々のカフェH.L.C.Styleで一服。

50年前からある民家を自分たちで改造したという緑陰のオープンエア空間はたいそう心地よく。
スタイル・カウンシルをBGMに、つげ義春、ストーンズ、水木しげる、東横猿etc…尽きない話題を
肴に(時々やぶ蚊に刺されてキンカンを塗り塗りしつつ)夏の終わりの長くゆるい昼下がりを満喫。

ここのところの不穏な天気が嘘のようにからっと晴れ上がった8月最終日。
都心では見かけない鎌倉蝶やトンビに、たくさんの蜻蛉も目にした。
9月にはまた打ち合わせ&原稿まみれになるけど、夏の締めは海辺にて青空チルアウト。


 また少し陽焼けした。


帰宅したら、ポストにnak-ropさんから映画の試写の案内や猫写真と共に、こんな中国出張土産が。
ドラベアブリックえもん?
前回ブログで、アヴァンギャルド・チャイナについて書いたけど、あるイミこれもしかりかな。
goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )