ゴールロードを南へ南へ ひた走ってきたスリランカ取材の後半、
ようやくゴールの街に辿り着いた。ゴールの旧市街であるフォートは、
インド洋に向かって猫足状に突き出た半島で、1日もあれば街中のストリートを
網羅できるほど小さな街。でも、そこにはリノベーションされたコロニアル建築や、
風格ある教会、モスク、ミュージアム、洒落たカフェやショップがひしめいていて、
東西の歴史と文化が絶妙に融けあったハイブリッドな異空間になっている。
一角には、なにげにアマン系ホテルもあったり。大変エレガントだったけど、
私はバワの弟子がリノベーションしたホテルの方がどこかお茶目で好みだった。
美しい卵色の城壁に似せた色彩の家々が多く、ゴールにあるバワリゾートの傑作
「ジェットウェイング・ライトハウス」(右下)も、サマラカラーと呼ばれる明るい卵色が印象的だった。
左下は、フォートの突端にそびえる本物の灯台(ライトハウス)。
ゴールでは、道で住人と目が合うと みな「どこから来たの?」とあたたかく微笑みかけてきた。
お土産品は手仕事の美しい品が多い。スリランカの人はカレーを指ですくって
巧みに食べる習慣があるからか、手先が実に器用。50本以上の針を駆使して
緻密なレースを編んでいたお婆さんに「1枚どのくらいかけて仕上げるんですか?」と訊ねると、
「早くても一週間以上よ。でも仕上がるとすごく幸せよ!」と嬉しそうに顔をくしゃくしゃにした。
「手作りハンモック、売ります」というコピーにも魅かれたけど、
売り子もハンモックもまるで見当たらなかった。
それにしてもゴールは、とりわけ私を嬉々とさせてくれる街だった。それは、妙に猫が多いのだ。
街の人に理由を訊いても「なぜかしらね」という顔をされるけど、少なくとも南西海岸一の猫街。
もしかしたら、列強の支配時代にネズミ除けに飼われていた猫たちの子孫なのかな?
見かけるのはブチ、三毛、トラばかり。みんな、雨の中でも平気で道をタッタカ走っていた。
オランダのアンティーク店の売り物の戸棚でちゃっかり午睡している猫たちもいれば、
お土産やさんの軒先で メス猫をしつこくくどいては猫パンチされているオス猫もいて。。
・・・
ゴールフォートのぐるりには、ポルトガルやオランダの植民地時代に外敵から街を守るために
築かれた砦が張り巡らされている。奇しくも、その砦がこの街を津波から奇跡的に護った。
砦に上って海を見下ろすとちょっと足がすくんだ。「マダム、2000ルピーくれたら
ぼく、ここから海にダイブしてみせますよ!」と少年が言い寄ってきたので
「危ないからやめて」と断ったが、かつて商談が成り立ったことがあるのか謎だった。
砦の上で死んだように横たわっている犬がいたので心配になってじーっと見ていたら
向こうから団体旅行客がなんだなんだと近寄ってきた。訊けば、全員家族なのだという。
右端がママ。中央の青い人がパパ。ゴッドファザー&マザーも孫たちの間に紛れている。
スリランカの北の方から、一家総出で遊びに来たらしい。数えると全部で16人。
妊婦さんもいるから、もうすぐ17人になる勘定。なんだか、いいな。
日本ではこんな大家族自体珍しいし、全員集合するなんて、冠婚葬祭以外ないような気がする。
ぼんぼやーじ、あーゆるぼわん。みなさんお元気で~
そんなわけで、スリランカロードムービー3部構成ブログ、これにておしまいです。
しばらく書いていなかった反動で、筆が走ってしまいました。
とりとめのない旅日記を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
帰国早々、打ち合わせ帰りに見た代々木公園の薔薇と紅葉が目に染みた。
わずか一週間でも、濃い旅の後は、いろんなことが妙に沁みます。
それでは、どうぞよいお年をお迎えください。