WindowsのモバイルOSといえば今は「Windows Phone(Windows 10 Phone)」のことを指しますが、さらに昔を振り返るとその先祖として「PalmSize PC」「Pocket PC」というWindows CEベースのOSが存在しています。
Windows 10 Phone Tecnical Preview版が出たので各モバイル向けWindowsのホームスクリーンでも振り返ってみたいと思います。
*Windows Mobile 5.0以前のスクリーンショットがすでに紛失しているため、Windows Mobile 5.0、および6.0、Windows Phoneのスクリーンショット以外は英語版Wikipediaの記事、PalmSize PCのスクリーンショットはこちらから引用しています。
- PalmSize PC 1.x(98年 Windows CE 2.xベース)
すでにキーボード搭載PDA向けに「Handheld PC」というセットが存在したWindows CEですが、2.0になって当時その優れたUI・コンセプトなどから人気を得ていた3COM社のPDA「Palm Pilot(Palm)」に対抗するためにキーボード非搭載端末向けにリリースしたのが「PalmSize PC」です。当初は「Palm PC」と呼ばれていたのですが、3COMから提訴されかけたために「PalmSize PC」に名称変更されました。
基本UIはデスクトップ版Windowsに準じたものになっていますが、いわゆる「デスクトップ」は存在せず、PIMアプリであるOutlookのToday画面がホームスクリーンになっています。
このころはまだWEBブラウザは非搭載でオフラインで観覧する専用の「チャンネルビューア」が代わりに搭載されていました。ただ日本国内ではあまり対応しているサイトが少なかった記憶があります。またファイルは各アプリで管理させるというコンセプトからかファイルエクスプローラも非搭載でした。
Windows CE 2.11ベースに切り替わり、カラーに対応したマイナーアップデート版「PalmSize PC 1.2」がのちにリリースされています。
搭載端末:CASIO CASSIOPEIA E-55、E-500、Compaq Presario 213など - Windows Powerd PocketPC 2000(00年 Windows CE 3.0ベース)
2000年にはWindows CE 3.0ベースに変更された初代PocketPCが登場。「OutlookのToday画面がメインスクリーン」なのは基本変わりませんが、UIが大幅に変更され、デスクトップ版Windowsと違うフラットUIを採用し、スタートメニューの位置も丈夫に移動するなど画面が小さいPDAにより最適化されたUIになったのが特徴。また前バージョンではアドオン扱いだったWindows Media Player 1.1が標準搭載されるようになり、新たにファイル管理ソフトのエクスプローラー、WEBブラウザのPocket Interent Explorer、Officeドキュメントを簡易編集できるPocket Officeが追加されるなど、機能面でも大幅に進化したバージョンです。
個人的にPDA端末に手を出したのがこのバージョンのPocketPCからなのでいろいろと思い入れ深いです。
ちなみにTodayスクリーンはプラグイン式で今でいうウィジェットみたいなものを張り付けることも可能になっていました。
搭載端末:NTT DoCoMo G-FORT、CASIO CASIOPEIA E-700、HP Jornada 545&548、Compaq iPAQ h3700など - Windows Powerd PocketPC 2002(02年 Windows CE 3.0ベース)
2002年にはアイコンデザインを当時のデスクトップ向け最新OSであったWindows XPのものと共通化した改良版「PocketPC 2002」がリリース。本バージョンで新たにテーマ機能が追加され、Todayスクリーンの壁紙を変更できるようになりました。
OSの機能自体は標準搭載のマルチメディアプレイヤーが動画再生できるようになったWindows Media Player 8.0に入れ替わったことを除けば前バージョンPocketPC 2000と大差はないものの、以前のバージョンまで複数CPU(MIPS、ARM、SH)に対応したものをARMに統一したのは本バージョンが初となります。
それゆえMIPS/SH搭載機は本バージョンへのROMアップグレードが不可能でちょっと寂しい思いをしたものですが…
ちなみに今となっては信じられないかもしれませんが、このころのOSアップデートは有償でした。フラッシュROM搭載以前のWindows CE機はメーカーに本体を送ってROMを書き換えたりする作業が必要だったり…
日本では登場しませんでしたがスマートフォン向けに電話通話機能を追加した「For Phone Edition」が追加されたのも本バージョンが初となります。
搭載端末:NTT DoCoMo Musea、CASIO CASSIOPEIA E-2000/E-3000、NEC PocketGear、hp iPAQ h1920など多数 - Windows Mobile Software PocketPC 2003/Second Edition(03年/04年(SE)Windows CE.net 4.1ベース)
2003年にはOSベースがWindows CE 3.0からWindows CE.net 4.1に変更されたWindows Mobile 2003が登場。「Windows Mobile」名称がつかわれだしたのもこのバージョンが初となります。
基本機能はそれまで同期ソフト「ActiveSync」で独自形式に変換する必要があったOfficeドキュメントが無変換で観覧できるようになったことを除けばほぼPockertPC 2002と変わらないもののOSレベルで無線LANやBluetoothなどの無線接続に対応したのが特徴となっています。無線内蔵端末が増えたのもこのころでしたね…
また2004年にリリースされたマイナーアップデート版「Windows Mobile 2003 Second Edition」では横画面切り替えにも対応し、VGA解像度(640x480)に対応しました。
搭載端末:hp iPAQ h1937/rx3715 Mobile Media Companion、Dell Axim x3/x30/x30vなど - Windows Mobile 5.0(05年Windows CE 5.0ベース)
2005年にはOSベースがWindows CE 5.0に変更されたWindows Mobile 5.0が登場。ここにきてUIに手が加わり、画面下にソフトキーが追加されました。
日本では2005年末にウィルコムが日本初のWindows Mobile搭載スマートフォン端末「W-ZERO3 WS003SH」が登場し、この端末にも搭載されていたことから「このバージョン使っていたよ!!」という人も多いのではないでしょうか。
地味にExcel Mobileが旧バージョンより強化され、グラフ作成機能に対応していたりWord Mobileが図の表示(挿入は不可能。これはWindows Phone 8.1までずっと受け継がれています)もできるようになっています。
搭載端末:Sharp W-ZERO3/W-ZERO3[es]、hp iPAQ hx2490など
- Windows Mobile 6.0/6.1/6.5(2007年 Windows CE 5.0ベース)
2007年にはアイコンデザインをVista風に変更したWindows Mobile 6.0、およびそのマイナーアップデート版6.1が、続く2008年には2007年に発表された初代iPhoneを意識したような「Titanium」Todayスクリーンに変更(これもプラグインなので旧来のTodayスクリーンに戻すことも可能)され、ブラウザがPC版IE6ベースに変更され、タッチスクリーンにある程度最適化したWindows Phone 6.5.xがリリースされました。本バージョンがWindows Mobile系最終バージョンとなります。
搭載端末:Sharp Advanced W-ZERO3[es]、Toshiba T-01A/X02T、HTC Z、touch Diamond、Shift(VIstaとのデュアルブート機で本バージョンベースの独自OS。手を加えるとWindows Mobile 6.0モードとして切り替え可能)、hp iPAQ 112 Classic Handheldなど
すでに基本設計的にも機能的にも旧態化していたのもあり、コンバージョンの直接的な後継として開発していたWindows Mobile 7.0、コードネーム”Photon”をキャンセルして2010年に別のOSとして再スタートを切ったのが - Windows Phone 7.x(2010年 Windows CEベース)
2010年に登場したWindows Phone Seriea 7です。ベースOSこそ従来と変わらずWindows CEベースとなっていますが、それまでのWindows Mobileの資産は一切切り捨て、アプリケーションはストアで許可されたもののみ導入可能な仕様に変更されています。
またMicrosoftのマルチメディアプレイヤー「Zune HD」に先行して搭載されたタイルUI、「Metro(のちにModernに名称変更」UIを搭載したのも本バージョンが初で、のちにこのUIはデスクトップ向けWindows 8にも採用されています。
Windows Phone 7.0の時点では日本語非対応でしたが、2011年に登場したコードネーム”Mango”ことWindows Phone 7.5にロケールとして日本語が追加され、日本初にして日本最後のWindows Phone端末IS12Tが登場しました。
のちにWindows Phone 8のタイルサイズ変更機能が追加されたWindows Phone 7.8がリリースされています。
搭載端末:IS12Tのみ - Windows Phone 8.x(2013年)
続く2013年にはWindows Phone 8.0が登場。OSのカーネルがデスクトップ版Windows 8と同じNT6.2カーネルに変更され、れっきとした「NTファミリーの一員」に仲間入りしたのはこのバージョンが初です。さらにWindows Phone 8.1では共通のストアアプリが動作する「ユニバーサルアプリ」もサポートし、PC版Windowsでもスマートフォン向けWindowsでも共通のアプリが動作するようになりました。 - Windows 10 Phone(2015年)
そしてついに携帯端末向けWindowsも本家Windowsに統合され、「Windows 10のエディションの一つ」という扱いに変更されました。本バージョンではOS標準アプリもユニバーサルアプリ化され、IEに代わる新ブラウザ「Spartan」が新たに搭載される予定となっています。