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空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

図書館本について

2023年09月04日 23時00分00秒 | 様々な話題

図書館がベストセラーを過剰に購入しないように、
ルール作りを──
国がそんな検討の場を今秋にも設けるという。
急減している書店の支援策として、
自民党の「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」
が出した提言を受けたものだ。

文部科学省で開かれる会議には、
書店や出版の関係者、
図書館関係者らが参加。
公立図書館で同じタイトルの本を過剰に持つことの禁止や、
地元書店からの優先仕入れの推奨
新刊本の発売から購入までに一定の期間を空けること
などについて、ルール作りが必要かどうか議論する。

書店の経営は厳しさを増している。
業界団体・日本出版インフラセンターの調査によると、
全国の書店は1万1495店(2022年度)と、
10年前から約3割減った
地方だけでなく、都心部の有名書店や大型書店も相次いで閉店している。

出版文化産業振興財団(JPIC)の調査によると、
書店が一つもない「書店ゼロ」の市区町村は全国で26.2%。
「書店ゼロ」と「1店舗だけ」の自治体を合わせると、
45.4%もある。

書店の減少は、
人口減雑誌の売り上げの急減
ネット書店で本を買う人が増えたことなどが背景にある。

だが、ネット販売は、時代の流れであり、
ネットで申し込めば、
翌日には書籍が手元に届くシステムは
もはや変えようがない。
それに規制をかけるのは、
自由競争の抑制になるだろう。
業界の要請で市民の利便が損なわれるのは、
やはりおかしい。

むしろ、業界は、書店を守るというなら、
アマゾンに代わって、
ネットで書籍を購入するサイトを自ら立ち上げ
注文された本を地元の書店に届けさせるシステムを作ったらどうだろう。
それは書店の売上になる。
生花を申し込むと、
地元の花屋に宅配させるシステムがあるのだから、
出来ないことではあるまい。

もう一つの図書館の大量蔵書だが、
これは確かに問題はある。
本屋大賞受賞本が55冊も図書館に買われ、
貸し出されているのは、どうかと思う。
ある都内の図書館では、
待機が1800番などというのがあるそうだが、
20冊の在庫で、1冊平均1週間位で返却としても、
順番が回って来るのは、2年後だ。
これもどうかと思う。

私は年間100冊は本を読む読書人間だが、
ここ数年は、一冊も書店で購入していない。
自転車で5分とかからない近所に
市営の図書館の分館があるので、
そこから借りている。
新聞の書評欄で知った本をパソコンで予約しておけば、
忘れた頃に「用意できました」とメールが来るので、
受け取りにいけば済むので、便利だ。

それでも、実は、胸は痛む
図書館で貸し出される本からは、
1冊分の印税しか著者に支払われないからだ。
単行本の著者は、
売れてナンボの収入だ。
図書館で無料で貸し出されたのではたまらない。
図書館が同じ本を複数備える「複本」については、
以前から作家や出版社が「無料貸本屋化している」と指摘していた。
2015年には新潮社社長がベストセラーの複数購入を批判し、
17年には文芸春秋社長が文庫の貸し出し中止を訴えた。

と言いつつ、1800円の単行本を買って、読んで、
外れだった時のことを思うと、
そう簡単には購入するわけにはいかない。

ただ、ベストセラーの小説などは、
発売後6か月は図書館では貸し出せない
という仕組みは必要だと思っている。
待てない人は自分で買えばいいし、
待てる人は半年遅れで読めばいい。

その変わり、高価な学術書や写真集などは、
図書館で購入してくれなければ
出版元は困るだろうから、
半年の制限はつけない。
高額な書籍を買えない庶民は、
図書館で借りられるのは大変助かるからだ。

ビデオのレンタルでは、
貸し出し1回につき一定の額を発行者に還元する。
フィンランドでは、図書館で本を借りれば
著者に印税が入る仕組みがあるという。
日本でもそれを導入したらどうか。
ただし、借り手からはお金を取れない。
法律で公立図書館ではお金を取るのを禁止しているからだ。

著作権法には、このように書かれている。

(営利を目的としない上演等)
第38条
4 公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、
営利を目的とせず、かつ、
その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、
その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、
当該映画の著作物の複製物を除く。)
の貸与により公衆に提供することができる。

図書館法第17条には
「公立図書館は、入館料その他
図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。」
とある。

貸り手から取れないのなら、
市町村の税金でまかなうしかない。
2022年の日本の図書館の貸出数合計は約6億冊。
1冊15円を著作者に支払うとして、
全国で総額100億も予算をつければ可能だ。
著者への還元だけでなく、出版社への還元も必要だから、
1冊20円くらいは必要かもしれない。
結局は市区町村税で支払われるわけで、
図書館を利用しない人には、
「おかしい。受益者負担ではないか」
と言われるかもしれないが、
それくらいは全体の文化の向上のため、認めるべきだろう。

 


小説『老害の人』

2023年09月02日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

内館牧子の小説で、
「終わった人」「すぐ死ぬんだから」「今度生まれたら」の
「老後小説」「高齢者小説」と呼ばれているシリーズの最新作。
4つの本につながりはなく、それぞれ独立した作品。

主人公は戸山福太郎、85歳。
ボードゲームメーカー「雀躍堂」(じゃくやくどう) の2代目社長。
75歳で社長を娘婿の純市に譲り、
5年間は静かにしていたが、
80歳になって、
会社に再び出るようになる。
引退時、顧問や相談役の肩書を拒否する福太郎に、
「経営戦略室長」という役職を与え、
部屋を一室与えたのが間違いの元だった。
出勤した福太郎は、「老害」の毒を発し始める。
朝、お茶汲みの女子社員を相手に、昔の自慢話を15分。
その後、若い社員たちに対して、
自慢話と教訓話と精神論。
同じ話を何度も何度も。
社員たちはうんざりしながらも、
前社長の話を拝聴する。

その福太郎が過ちを犯す。
発注先の会社のトップが表敬訪問してきたのを相手に、
上から目線の自慢話と教訓話。
相手を怒らせ、契約を白紙に戻されてしまう。

実の娘にやりこめられて、
出社は断念したものの、
老人仲間と一緒にいろいろ目論見を始める。

この老人仲間の会合が傑作で、
病気自慢に元気自慢、孫自慢、趣味自慢、前歴自慢、教養自慢の応酬
中には「死にたい」が決めゼリフの老婆もいる。
実の娘の明代は、
「老人が困るのは、自分が自慢してるってことに気がついていない」
ことだと愚痴る。
この老人仲間を「老害クインテット」として描く部分は楽しい。

その福太郎、老人仲間と一緒に
会社の自分の一室を
老人のサロンとすることを計画する。
老人たちは、
目標が出来、生き甲斐が出来たと、張り切るが・・・

これに、
純市の息子の俊が農業をやりたいと言い出して、
四代目として雀躍堂を継がせたかった
福太郎の悩みが加わる。
また、明代の娘が孫を産み、
今まで孫自慢の友人から
「孫がいない人には分からないでしょうけど」
と厭味を言われてきた明代の心境の変化も描かれる。

途中、老人談義が
登場人物の口を通じて語られるが、
筆者が混乱している感じで、
老人問題の取り扱いの難しさを感じさせる。
内館牧子も今74歳。
後期高齢者直前の人として、
老いは実感しているのだろうが、
まだまだ深く切り込んだとは言えないなあ。

老人たちが、役に立たなくなった自分を嘆き、
何とか生き甲斐をみつけよう、
居場所を得ようとするのだが、
そんな老人ばかりではあるまい。
加齢を認め、社会から相手にされなくなったことを受け入れ、
静かに歳をとっていく、という生き方をしている人もいるはず。
世の中の役目を終えたものは、
静かにこの世から去っていく。
よほど、その方が美しく、人間らしいと思うのだが。
登場人物の老人たちは、
まだまだ未練と欲に満ちているように見える。
自分の存在意義を必死に求める老人ばかりの中、
静かに引退を是とする人物登場させてもよかったのではないか。

話の中で、数度にわたる緊急事態宣言が出て来るが、
あの時の暗い、希望のない生活を思い出すと、
よくぞここまで回復したものと思わざるをえない。

本人には楽しいが、
他人が聞いて楽しくない話、というのがあり、
旅行した話、株で儲けた話、
うまいものを食べた話に並んで、
家族の自慢話というのがある。
特に、孫自慢というのは、
身内だけでやってほしい話の筆頭だ。

私は幸い、
「今が一番いい」の人なので、
「あの頃は良かった」という言葉は口にしない。
思い出は美しいが、それだけで十分。
従って、自慢話はしない。
そういう老後を過ごしたいと思う。

 


ドラマ『終わりなき夜』

2023年09月01日 23時00分00秒 | 映画関係

[ドラマ紹介]

2013年1月27日深夜
ブラジルのリオグランデドスル州サンタマリアの
ナイトクラブ「キス」で火災が発生、
242人の若者が命を失った。

本作は、その事件に基づくリミテッドシリーズ。
ジャーナリストであるダニエラ・アルベックスの著書を原作に、
今日まで続く、犠牲者の親や生存者たちによる
正義を求める闘いを描く。

そのナイトクラブは、
700人の定員に1000人を詰め込み、
入り口は一つしかない。
バンドはステージで花火を使用、
その火が天井に燃え移り、
天井の防音素材が有毒ガスを発生、
ほとんどの犠牲者が火よりもガスで命を落とした。

最初の2話で、
火災の状況を克明に描写する。
火事の知らせを受けた家族は現場に直行。
息子や娘の消息を求めて走り回る。
やがて、遺体の中に子どもを見つけての悲嘆。
犠牲者が若者ばかりで、
父母は初老の夫婦。
子どもの成長を楽しみにしていたのに、
その希望を断たれた悲しみが痛々しい。

やがて、警察の捜査で、
ナイトクラブは営業許可を取り消されており、
再開の申請中だったこと、
防音素材は防火素材ではないのを使用、
消防の検査もずさんで、
市役所もその不備を把握していたことが分かる。
バンドが使った花火も燃え移らない室内用ではなく、
安価な野外用のものを使っていた。

検察は店のオーナーやバンドの責任者など4名を
業務上過失致死傷罪で起訴するが、
遺族は消防や市役所職員まで含めた
28名の起訴を求め、対立する。
市長も危険を認識していたはずだという。
しかし、検察は法律で定めたものしか起訴できない、という。

検察を突き上げた遺族に対して、
名誉棄損で訴えられたりする。

命は助かったものの、
片足を切断した女性、
全身ケロイドの男性が
けなげに生きていく姿が涙をさそう。

ブラジルの裁判制度について、
分からないところが沢山あった。

火災から8年後の2021年、
オーナーらに対する有罪判決が出たものの、
控訴となり、
今だ次の裁判の予定はないという。

事件から6年後の裁判で、
遺族会の会長が語る言葉が胸に迫る。

「私たちが問うているのは、
命に価値があるかどうかということです。
罪のない若者242人の命に価値があるのかどうか。
遺族や残された友人が
6年以上苦しむ価値があるのかどうか。
正義はあるのでしょうか。
同じことが起きないよう、
誰かが責任を負わなければなりません。
私たちは6年半も判決を待つ被害者の遺族です。
正義を求めてずっと闘ってきました。
私たちの人生は空っぽです。
でも、裁きが下れば、安息は得られるはずです」

監督はジュリア・レゼンデカロウ・ミネム

Netflixで配信中。
5話完結、計3時間34分。