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空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

墓参りとハイアット

2022年08月25日 23時00分00秒 | わが町浦安

昨日のこと。

亡き母の命日だったので、
市内の墓地公園へ。


ここには、父と母が眠っています。
父が亡くなって36年、
母が亡くなって20年。
歳月の経つのは、早いものです。

その後は、このホテルへ。


ハイアット・リージェンシー東京ベイ

海と自然に囲まれ、
潮風に揺れるヤシの木が印象的な
美しい街並みの新浦安のベイエリアに位置しています。
2019年7月19日、ハイアットプレイス東京ベイとして開業、
2021年7月12日、
ブランド格上げされて、現在の名称に。

夜の情景。

新浦安の駅とは離れているので、送迎バスが。


デザインはコシノ・ジュンコさん。

入ったところのメインロビー。

客室は350

窓の外には海が。

コシノ・ジュンコさんがデザインしたスイートもあります。

ラウンジの壁画も。

1階には3つのレストラン
ヨーロッパのエッセンスを取り入れた「ザガーデンブラッスリー& バー」、
厳選した旬の食材を堪能できる江戸前寿司「すし絵馬」、


シェフの調理シーンが見られる「鉄板焼富貴亭」。


また、東京湾を一望できる「ルーフトップバー」もあります。

 

今日のランチはザガーデンブラッスリー& バーで。

外の席は犬同伴でもOK。

パンはビュッフェスタイルで。

ついつい。

ナイフとフォーク置きが素敵だったので、


フマホで調べてみると、550円だったので、
その場で申し込みました。

まずカボチャの冷製クリームスープ

次が前菜の盛り合わせ。(5種)


これだけで満腹感が。

メインデッシュは肉、魚、パスタのうち選択。

千葉県産豚肩肉の赤ワイン煮込み マッシュルームのコンフィ

軽いカレー風味のイサキのポワレ。

もう一品は、ズワイガニと静岡県産フルーツトマトのジェノベーゼ

デザートは季節のフルーツのスープ仕立て 巨峰のシャーベット

コーヒーまたは紅茶。

普通、ドリンクは有料ですが、
ネットで予約すると、
スパークリングワイン、白ワイン、赤ワイン、ソフトドリンクのうち、
ドリンク一杯が付きます。

どれも手がこんでいて、おいしい。

墓参りにかこつけて、
贅沢な午後を過ごさせていただきました。

 


小説『救国ゲーム』

2022年08月23日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

SNSの世界で二人の男が論争して、
日本全国の注目を浴びていた。
一人は限界集落を奇跡の復活に導いたカリスマ・神楽零士。
もう一人は、女の能面をかぶり、
音声を変換した動画で、
過激な主張をする「パトリシア」。
二人はSNS上で激しくバトルを繰り返していた。
パトリシアは、ある提案を政府が実行しなければ、
60日経過後、行動を起こすと予告。

その61日目、神楽零士が殺される。
場所は神楽が復活させた僻地の奥霜里集落。
しかも神楽の死体は首が切断され、
体は発見後、炎上して黒こげになり、
首は配送不可能な場所で発見される。

パトリシアが犯行を明かし、
政府に対しての要求が果たされなければ、
ドローンで地方都市を攻撃すると宣言する。

事件のあった奥霜里集落の住人・晴山陽菜子は
真相解明のため、旧知の仲の官僚・雨宮に協力を要請する。
雨宮は、ある男が犯人だと指摘するが・・・

という、本格的謎解きミステリー。
神楽の殺害と、死体の猟奇的発覚の謎は、
雨宮によって解かれるが、
相当無理のある内容。
バトリシアの正体も、
予想の範囲。
途中、視点の混乱があり、
誰が主人公だか分からなくなる。
また、過去の話も混乱を呼ぶだけ。

というわけで、ミステリーとしては、
相当な瑕疵があるのだが、
注目したいのは、
パトリシアと神楽の論争内容
バトリシアの主張は、
日本の国家存続のため、
財政のお荷物である地方を切り捨て
破綻を回避せよというのだ。

そして、神楽殺害後、政府が自分の主張通りにしなければ
どこかの地方都市をドローンで無差別攻撃するから、
国民は命が惜しければ政令市か東京特別区へ移住せよと迫る。
つまり、国民全員(都市部を除き8000万人)が人質になる。
ちなみに、バトリシアとは、
愛国者=パトリオットと救世主=メシアをあわせた名称だと自称する。

パトリシアの主張は、ある点で当たっている。

経済的に不合理なすべての地方都市を放棄し、
あらゆる政策資本を大都市圏にのみ集中投下すべきではないか、ということ。
「あたくし、ずっと、疑問だったんでござんす。
どうして東京など“中央”がお稼ぎになった大事な大事なお金を、
この国の鄙びた場末の“地方”へせっせと注ぎ込んでおられるんだろうって」

政府への要求とは、
全ての過疎対策関連予算・施策お撤廃を表明し、
今後それらの政策資本を
政令市および東京特別区のために投じると宣言せよ、
というもの。
そして、その本丸は、
地方交付制度の撤廃だ。

地方救済か、はたまた切り捨てか

という命題。

そして、30日という日限を切ってのテロ宣言。

これに呼応して、「亡国教団」なるものが出現し、
大都市圏への移住を煽動する。
匿名掲示板には、
「いつまでも地方に住み続ける
国家的反逆者どもを皆殺しにする」
などという書き込みも現れる。
政令市および東京特別区のビジネスホテルは
避難民によって軒並み満室になる。

こうして、「大都市vs地方」という、国家的分断にまで至る。

パトリシアの主張で欠けているのは、
地方の農業など、
国の食糧を支える分担なのだが、
それについては触れていない。

そして、事件が終結した後の
日本の行方に対しても言及していない。

そういう意味では、
問題提起的には面白いが、
結局はうまい素材を最後まで料理しそこなった、というべきだろうか。

 


映画『奪された七人の花嫁』

2022年08月22日 23時00分00秒 | 映画関係

[旧作を観る]

「ジプシー」と一緒にツタヤDISCASで借りたのが、この作品。
何を隠そう、隠しません。
この映画、私が生まれて初めて観たミュージカル映画なのです。
(その後、リバイバル公開で大人になってからも観ている。)

私は東京に出るまで、
私のベルファスト、伊豆にいた。
駿豆線(すんずせん)の南の方のとある駅前で生まれ育った。
当時、三島には映画館が5つほどあり、
既に映画少年だった私は、
お金を握りしめて、一人で電車に乗り、よく三島へ。
主に、東映の映画館で3本立ての「三日月童子」だの「七つの誓い」だったが、
何をどう間違えたのか、
駅前の映画館で観たのが
「略奪された七人の花嫁」と「第三の男」の二本立て。
伊豆にいたのは小学校4年までだったから、
おそらく小学3年くらい。
さすがに「第三の男」は小学生には難しかったが、
「略奪された七人の花嫁」は子供でも楽しめた。
なお、この映画館では、
「わんわん物語」も観ているが、
その時の併映が石原裕次郎の「鷲と鷹」。
どういう組み合わせだったんだろう。

「略奪された七人の花嫁」は、
1954年7月22日全米公開のアメリカ映画。
舞台の映画化ではなく、映画オリジナルのミュージカル作品
日本公開は同年の10月3日。
原作はピューリッツァー賞作家スティーヴン・ヴィンセント・ベネットの
短編小説「The Sobbin’Women」(泣く女たち)。

まず、しょっぱなに「シネマスコープ」と出る。

映画館がテレビの攻勢に対応し、
大型化していた時代の産物。
1953年に最初の作品「聖衣」が公開されたばかり。

主演はジェーン・パウエルハワード・キール

後に「ウエストサイド物語」でリフを演ずるラス・タンブリンの名も。

作詞はジョニー・マーサー
作曲はジーン・デ・ポール


名曲ばかり。

振付は大振付師のマイケル・キッド

監督はスタンリー・ドネン

1850年のオレゴン。
山奥で農場を営むアダムが町を訪れて嫁捜しをする。

絵に描いたような美男子のハワード・キール。
歌もバリトンの美声。

食堂のミリーに一目惚れし、その日のうちに結婚。

農場に連れ帰るが、
行ってびっくり。

アダムの家族は男ばかり6人で、
ぞろぞろ出て来る荒くれ男たち。


アダムは「言うのを忘れた」ととぼけるが、
言ったら来てもらえないだろうから、
だまし討ちに近い。
名前がアダム、ベンジャミン、カレブ、ダニエル・・・と、
ABC順なのが笑える。


弟たちも町に嫁捜しに出かけるが、
すぐに暴力沙汰に。
ミリーにマナーと
女性に付き合うエチケットを教育されて、町を再訪。

それぞれ惚れた町娘をみつける。

この映画で一番有名なダンスシーン「納屋作り」

町の男と娘たちを取り合って踊る。

シネマスコープの横長の画面を生かした
ダイナミックなダンス。

この場面を娘に観せたら、
「ウエストサイド物語」と「メリー・ポピンズ」を思い出したと。


なるほど「体育館のダンス」「屋根の上のダンス」に
影響したかもしれない。

山に帰った男たちは、
町の娘のことが忘れられない。

ここで歌うのが、「淋しい山猫」


オノやノコギリを使ってのダンスナンバー。

公開時の字幕は「淋しい山猫」だが、
このDVD では、「スカンク」。


スカンク?
英語歌詞は「polcat」で、

日本語訳はスカンクでもいいが、
正しくは、ヨーロッパ・ケナガイタチ。
でも、イタチもなあ。
やはり、語感的には「淋しい山猫」が一番いい。

そこでアダムの提案。
「パルターク英雄伝」にある
古代ローマの「サビーニの略奪」の故事にならい、
娘たちを略奪しようと計画する。
(今でも東南アジアには、そういう風習がある)

町に行った弟たちは、
それぞれ意中の娘を拉致し、
北朝鮮へ、いや、山奥へ。

途中追ってきた町人の前で
意図的に雪崩を起こし、


春まで道は遮断される。

それを知ったミリーは激怒し、
娘たちを母屋に隔離、


弟たちは納屋暮らし。

しかし、ちょっとずつ接触するうち、
みんないい仲に。

雪が溶けて町人が取り返しにやってきた時は、
それぞれカップルが出来上がっており、
めでたく結婚に。

よく考えてみると、ひどい話だが、
まあ、ミュージカルだからね。

エンドマークの後は、
配役が出るだけで、
今のように延々とクレジットが流れることはない。

1997年に作られたメイキングを観ると、
次のような事実が明かされる。

○はじめ題名は原作と同じ「泣く女たち」だったが、
 映画の題名としてはふさわしくないので、
 「SEVEN BRIDES FOR SEVEN BROTHERS 」に。
 「略奪された七人の花嫁」は日本で付けたもの。
 いい邦題だ。
○振付のマイケル・キッドは舞台明けで断ったが、
 「振付しないでいい」とだまされて、担当した。
 しかし、やはり天才の仕事、「納屋作り」のダンスは評判に。
○実は兄弟のうち、踊っているのは5人。
 2人は俳優で、ダンサーではなかったのだ。
○シネマスコープ用とスタンダード用の2テイクが撮影された。
 当時はまだシネマスコープの大型スクリーンを設置している映画館が少なかったため。
 しかし、実際はスタンダード版が公開されることはなかった。
 (以前、シネマスコープ第一作「聖衣」もスタンダード版を撮影し、
  公開されたという話を聞いたことがある。)
○会社は同時制作の「プリガドーン」に力を入れていたので、
 予算は大幅に削られた。
 しかし、公開してみると、「プリガドーン」をしのぐヒットだった。

アカデミー賞は作品賞、脚色賞、撮影賞、編集賞にノミネート。
作曲賞(ミュージカル映画音楽賞)を受章。
アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されている。

1982年には舞台化バージョンがブロードウェイで上演された。
「納屋作り」のダンスシーンは舞台でも評判に。

今は、映画→舞台というのが盛んだが、そのはしりと言えるだろう。

生まれて初めてのミュージカル映画に、
こんな傑作が当たったのは、本当に運がいい。
その後の私の人生を決定づけたかもしれない。

なお、リバイバル公開の時は、70ミリ版だった。

 

 


TIPSTAR DOME CHIBA

2022年08月21日 23時00分00秒 | 身辺雑記

昨日のこと。


京葉線千葉みなと駅で千葉モノレールに乗り換え。

下にレールがないのは、
このモノレールが懸垂式であるため。

この駅で降りて、

公園内を


こんな看板に誘導されて、

ここへ。千葉JPFドーム。

現在はミクシィが施設命名権を取得しており、
「TIPSTAR DOME CHIBA」の名称を用いている。
(2031年10月1日まで)
施設の老朽化により解体された
旧千葉競輪場跡地に建っており、
法的には「千葉競輪場」(の建て替え)だが、
(一般的な)競輪ではなく、
250競走PIST6(ピスト・シックス)という競技を開催している。

施設所有は株式会社JPF。
主催は千葉市

競技実施は一般財団法人日本サイクルスポーツ振興会。

私が来ることになったのは、

夏休みの無料招待日で、

娘が1か月ほど前に行き、

行ってみたら、というので、

申し込み、当たった次第。

↓は、入り口でくれたプログラム。

顔認証の写真を撮られた後、バンクウォークへ。

この先に

アリーナが。

その周りのバンクを歩く。

赤い線より上には行かないように、注意が。

伊豆ベロドローム、JKA250(日本競輪選手養成所内)と同じく

国際規格に合った木製250mバンク

日本の公営競技(自転車競技法)としての競輪は、

1 周距離333m、335m、400m、500mの
4 つの種類のトラックを各競輪場ごとの用地のサイズに合わせて行われているが、
このPIST6は、
国際規格の競技場と国際ルールのケイリンに沿った、
1 周250mの屋内木製バンクを使用して行うもので、
競輪においては「250 競走」(にーごーまるきょうそう)

という種目に位置付けられている。

コーナーの最大斜度は42.6度

売店がいくつか。

ピザ800円、飲み物Lサイズ500円。

QRコードを活用すると200円引きと、

係のお兄さんが教えてくれた。

館内は現金が使えない。

私はSUICAで。

席はメインの反対側の中央。

トラックは、こんな感じ。

通常の入場料は、レギュラーシート2000円(1949席)・
ホームストレッチ側最前列のプレミアムシート5000円(58席)。

一日2回の興行で、夜昼入れ替え制。

レースのオッズが出ている。

オープニングショー。照明がすごい。

アリーナでは、ダンサーが踊る。

これがそのメンバー。PITS6 DANCERS。

選手紹介。

父親が競輪選手だったので、自分もなった、

という人が多かった。

きっと子供心にカッコよく見えたんでしょうね。

競輪場ではあるものの場内には投票窓口・払戻窓口は一切なく、
車券発売は行われていない。
ミクシィが運営するインターネット競輪投票サイト

「TIPSTAR」のみで投票が可能

選手入場もショーアップ。

まず、選手6人がバンクをゆるやかに一周。

この人たちは何かというと、

選手たちをスタートラインで支える人たち。

出走する選手の車番は前検日のタイムトライアルの順位順に1 ~6 番となっているが、
スタートの並びは事前の抽選によって決められた位置に就くことになる。
つまり、車番と並び順は一致しない。

従って、先行型の選手が6番手となることもありうる。

号砲が鳴ると、係員は選手を押し出す。

レースは6周でなされる。

先頭の黒い服の人はペーサーという先導者で、

ペーサーになるには、

競輪での先頭誘導員と同様に資格取得が必要であり、
JKA が実施するペーサー試験に合格し
JKA に登録された者でなければならない。

競輪で選手を先導する先頭誘導員は現役の男子選手が務めるが、
PIST6で選手を先導するペーサーは審判係員であり、
現役の競輪選手ではない。
また、ペーサーは電動アシスト自転車を使用するため、
女性でもペーサーになることができる。

ペーサーは次第にスピードをあげ、

3周で時速50キロに。

最初の1周は最初の並び順を狂わせると失格になる。

2周目からは、順番を変えてもいいのだが、

ペーサーより前に出ては失格となるので、

誰も仕掛けない。

3周の終わり頃に仕掛ける人が出て来て、

3周回ってペーサーが外れると、実質のバトル。

 

ゴール。

レースの所要時間は1 分50秒~2 分ほど
(ペーサーが外れてからは約40秒)であり、

通常の競輪より短時間で勝負が決する。

1位の人はインタビューを。

5レースから私は、アリーナに移動。

空きがある限り、自由に入れる。

選手入場口、インタビュー・表彰ステージ、
ダンサーのパフォーマンスステージは、

全てアリーナに設置されている。

ここからの景色も一興。

MCがレースを盛り上げる。

レースの模様はYouTubeで生配信される。

開催は毎週土日。平日に開催することもある。

6レース×6人で36人が出走

前日、タイムトライアルが非公開で行われ、

それで予選の組み合わせが決まる。

↓のとおり、早い人遅い人がうまく混ざるような工夫がされている。

昼12時から6レース、午後5時半から組み合わせを変えて6レース。

 

タイムトライアルを合わせてのポイント制で、

2日目の昼に19位から36位までの選手が順位戦3レース、

上位18人で準決勝3レース。

うち上位2着までが決勝進出。

夜のレースで最終順位決定戦と決勝。

優勝賞金は123万2千円

以下、ランクにより、

賞金は4万7千円から11万3千円まで。

自転車は選手個人のもの。

競輪と異なり、カーボンフレームを使用。

出場する日本選手は全員が競輪選手だが、
通常の競輪とは使用する機材(自転車)、
競走形態、ルールなどが大きく異なるため、
「250 競走」に出走を希望する選手は
別途「250 競走」の出走資格を得ることが必要。
「250 競走」の出走資格は
日本競輪選手養成所で2泊3日の講習
(ガイダンスや模擬レースの実施など)
を受けることで取得できる。

 

リングシェル構造を採用した大屋根で、
メインアリーナ内には一切の柱を設けていない構造となっている。

日によってはゲストが。

娘の行った時は、

バスケットの千葉JETSのマスコット、ジャンボくんが登場。

まあ、娘は、それを目当てに行ったのですが。

ジャンボくんはダンスが上手。

ふなっしーは、こんな芸当まで。

私はギャンブルをやらないので、

競輪、競馬は未知の世界

へーえ、こういう世界があるんだ、

そこで仕事をしている人たちがこんなにいるんだ。

という新鮮な驚きがありました。

一方、この建設費用は回収できるのか、

豪華な開催経費はペイするのか、

賭金の売り上げはどれくらいなのか、

あのダンサーの女の子のギャラは一体いくらなんだろう、

あの賞金で、選手たちの生活は成り立つのだろうか

と様々な疑問も湧いてきました。

 


連作短編集『砂嵐に星屑』

2022年08月19日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

一穂ミチによる連作短編書き下ろし。
関西のテレビ局を舞台に
様々な人間模様を描く。
「砂嵐」は、放送終了後の画面、
「星屑」は、その中に光る人々ということか。
砂嵐の中でも星の切片は輝く。

四季をめぐる、4篇の短編から成る。

<春>資料室の幽霊

社内不倫により東京の局に飛ばされた女性アナウンサーが
不倫相手の病死を契機に、大阪の局に帰って来る。
旬を過ぎた40代独身女性アナウンサーの鬱屈。
新人アナウンサーとの軋轢。
そんな時、亡くなった不倫相手の幽霊が、
夜な夜な資料室に現れるという噂が・・・

女性がいると華やかになるから、
というだけの理由で、
財界の重鎮と呼ばれる面々や、
省庁のお偉いさんとの会食に同行を命じられることもあった。
苦痛でしかない時間だったのに、
三十五を過ぎたあたりでばったりとお誘いが途絶え、
愕然としたことにまたショックだった。
わたしはていのいい無料のホステスにされ、
そして賞味期限が切れたから呼ばれなくなった。

まさに、テレビ局における女性アナの立場がよく分かる。

演者が多いほどカメラワークにバリエーションが生まれるし、
中高年男性が四人も五人もいるよりも華やかなのは確かだ。
でも、いつまでも盛りのまま咲き続けることはできない。
実をつけない花、実を求められもしない花が萎れた時、
花瓶から引っこ抜かれた後の生き方はテレビには映らない。

自分で企画として、
おひとりさまとか、シングルマザーの苦悩とか、
いかにも「女性目録」が生きそうなネタでいくつか考え、
これどうでしょう、と打診してみると、
年下の女性デスクから言われる。

アリバイづくりみたいな仕事はやらなくていいんですよ。


<夏>泥舟のモラトリアム

同期の早期退職に悩む50代の報道デスク。
娘とは2カ月も口をきいていない。
地震が起こり、電車が止まり、タクシーも行列。
そこで、局まで5時間かけて歩くことになる。
その途中、目に触れるものから、
自分の人生の来し方について想いを辿る。

父は下町の定食屋。
「自営業なんかやるもんちゃうぞ」が口癖。
息子には勤め人を薦めた。

父の希望どおり勤め人になった時、
もうあれこれ悩まなくていいと安堵したのに、
今頃になって周囲が次々と「自分探し」めいたことを始めるものだから、
巣穴から放り出されたねずみのようにきょろきょろしてしまう。
ここを出てやりたいことも、
ここにしがみついてやりたいことも別になかった。
それは今に始まった話じゃないのに、
自分が空っぽなつまらない人間だと
改めて突きつけられた気がする。

そして、行き着くのは、この想い。

俺の人生、この先ひとつもえことなんかないんやろな。

歩きながら、こんなことも思う。

ああもうやる気をなくした。
全部やめたろか。
俺ひとりおらんでも仕事は回る。
別に必要とされてへんねんから。
年だけとった中間管理職など組織にとって贅肉に等しい。
自覚と才覚と矜持のあるやつらは
しがみつかずに自らを切り離す。

ポスターに書いてある言葉にはっとする。

「どれだけの人がやりたいこともできずに死んでいくのだろう」

しかし、すぐに、こう思う。

どれだけの人がやりたいこともわからず死んでいくのだろう。

近く退職したいと打ち明けられた同期から、
主人公は意外な励ましを受ける。
人を出し抜いて結果出そうとしたり、
手ぇ抜いて楽しようとしたり、
そういうずるさと無縁だった、と。

「どんな組織にも、お前みたいな人間が絶対に必要なんや」

どんな職種の中間管理職にも共通の悩みを描いて秀逸だった。
   

<秋>嵐のランデブー

好きになった男がゲイで、
望みはゼロなのに、同居しているタイムキーパーの鬱屈。
ルームシェアする時の約束。
会社の人には内緒、
互いの個室には立ち入り禁止。

ゲイの同居人に対する記述。

由朗はレインボーカラーを身につけてパレードに参加しないし、
カミングアウトもしない。
権利と平等を求めて戦わない。
アプリで相手を探さないし、
ゲイバーにもサウナにも行かない。
そういうゲイも当たり前にいる。

触れることの出来ない男に対しての復讐からか、
男の憧れている同僚と寝たりする。

タイムキーパーが女性なのは、
副調整室で男の怒号が交差する中、
時間経過のカウントだけはちゃっと通らなければならないので、
女性の声がいいのだという。
なるほど。

主人公には、人に言えない過去がある。
それが最後のくだりで明らかになる。

           
<冬>眠れぬ夜のあなた

ADとしての適正も向上心もゼロの非正規社員。
初めて任された番組は、
アラサーの腹話術漫才の男の人生探求だった。
元商社員だという男の才覚がうらやましい。
ある日、阪神淡路大震災にかかわる男の秘密に触れてしまうが・・・

主人公は同居した女に計画的に去られ、気づくのは、
相手の住所も勤め先も何も知らなかったこと。
電話もLINEもブロックされてしまえば、
連絡の取りようがないのだという。

男の秘密を知った主人公が
それをカメラの前で話してくれ、
と迫ると、男が腹話術の人形に託して回答する場面がなかなかいい。
ちょっと胸が熱くなった。


華やかなテレビ界だが、
それぞれの世代に、それぞれの悩みや壁がある。
今の生き方はいいのか、このまま仕事を続けていいのか。
それはどの職種の人も同じだろう。
そのつらさに触れて、身につまされる。
もがきながらも、自分なりの回答を見つけていく。

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