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月のmailbox

詩或いは雑記等/小林貞秋発信。

詩-Space 空 7 (アフガニスタン)

2008-04-14 22:28:06 | 
      

       空 7 (アフガニスタン)



                        一九六七年
             アフガニスタン
     眼は
     ひらいていても
     暗闇
     真っ暗闇で
     脇に
     なにがあるのか
     なにを
     泳がせても
     手がかりのない
     空間の
     その場で
     バスを降りたあとの
     夜を明かした
     記憶

     そして
     明け方
     まだ暗い町に
     スピーカーから
     流れ出したコーラン
     読経の
     声

                         別の夜
              その国で
     見た夜空は
     地上を
     席巻するような
     満天の
     星
     地の
     端から端まで
     圧するような
     全天の
     星



                 from Six Poems No.4 2002      
      


                      
        

詩-Space 雨

2008-04-02 23:05:40 | 
       雨


    降りおちて
    輪ができる
    その外
    その内に
    輪
    円が重なる
    誰も頷かないので
    昼回る頃
    梯子持ちだし足をかける
    その音なく現われ
    また去ろうとするひと
    円を描き
    輪を描き
    その内に
    その外に
    運動ひろげる
    地の上からみっちりと
    濡れ
    更に濡れる
    高みへと
    駆られるようにして
    足をかける


            *

    あの時のまま
    黴生えず
    古びることのない
    「再生」
    の手にかかり
    万年もの時
    なだらかに過ぎても
    あの夜
    あの記憶に沈む
    大粒たち
    その叩いた音
    その叩きつづけた音
    消し去るものを消し
    ただ当たる
    打ちつける
    淡々と
    古びることない空間の
    内を抜ける


            * 


    そのものの
    名は示したくはないと
    巨きな耳に寄りかかる
    あちらから
    訪れ来るもの
    何処にも中心のない
    声のさざめき
    その平たいひろがりの
    上に
    柔らか
    穏やかな
    ささやき偏在して
    時
    過ぎることなくむしろ
    煽られるに
    逆の向きに
    靡いていく


            *


    ひとという生きものの
    見えるのは
    別の領土
    そこ
    黒ずむ界隈に砂の
    発する
    言葉
    木霊して
    降りかかる
    尽きない愛のような塊
    呑むのである
    絡めとるのである
    奪うように引き込むのである
    なにも加わるものなし
    なにも入りこむものなし
    なにも求められるものなし
    あちらの
    息する
    海



                    from Six Poems No.10 2005     
   
   

     
 
   


       

詩-Space 塵

2008-03-26 23:26:44 | 
      


    ひとつとして
    戻せない
    昼のbatmanの
    向こう
    背景ブルーの   
    空のような壁に
    もうひとつの日
    またひとつ
    ひとつの
    日
    空気揺らす
    日が
    日々がと
    壁のような空
    空のような壁上に
    描かれている
    言葉
    言葉のようなかたち
    なにがあるのか
    なにがないのか
    緊密な
    骨組みなければ
    立たない
    牙城めいたもの
    遠景
    海上に颯爽浮いて
    見える
    というのは
    たしかであるのか
    知らない
    知らなければどれも
    これも
    塵
    としか言わない
    Crusoe
    輪をかけ
    輪をかけ
    輪をかけて
    薄く
    見る



                    from Six Poems No.10 2005  
            

詩-Space あちらはいつも

2008-03-22 22:44:34 | 


      あちらはいつも


                           なだらかな
                      斜面を
               空行く船で
     登るようにして
     日の始まりが
     近づいてくる
     その先には
     色にじませる
     景色
     盲目の手が
     慣れた位置に届くように
     ひんやりと
     湿り気帯びて
     控えている
     日の
     時の
     記憶
     記録

                    そのあたりから
            破れた空の
     隙間を
     抜けるようにして
     最早
     日の始まりも
     風景も
     ない
     記憶する者もない
     ひっそりとした
     光の中に
     消えている
     全歴史の
     先端まで
     あちらは
     いつも
     動きたがる



                     from Six Poems No.7 2003       
    

詩-Space 架空の球

2008-03-16 20:23:05 | 


     架空の球


    ついには
    ひとりだけとなる
    この球の上
    たまたまのものか
    百億の年過ぎるごとに
    ついには
    ひとりだけとなる
    寂しい
    架空のくりかえし球などは
    要らない
    要らないと
    だれがだれに言うのか
    蝶のように天使の舞う
    隙間なども
    見えて
    百億の年分の記憶
    どこに消えて行くのか
    探そうにも
    ひとりが去れば
    ゼロに帰す
    お話のなかでは
    神の
    再生する
    あてもない



                           June 2006  


詩-Space フルーツAを齧る

2008-03-08 23:11:30 | 

     フルーツAを齧る



    前奏
    ダダダダダダダダ
    耳にはきこえない
    記憶のなかで
    採取される
    音
    だから
    扉の向こうになにが
    見えてくるのか
    分からない
    家
    手のひらの上にあること
    誰知らなくても
    通り道はいつも
    空の中に探る鍵の
    在処みたい
     辿り難し
    で齧るものは
    あれあれ
    影に
    歯型など見える
    あれの
    暈
    あれの
    ど真ん中



                    from Six Poems No.11 2006

詩-Space フラグメント

2008-03-06 22:44:55 | 
      フラグメント


           

海を眼前に絶壁、数キロメートルもある高さゆえに見下ろす高所恐怖症の目には、彼方へと流れる風に乗り見る夢のような眺めとしか映らない。そうして考えたりなどしている。多分、壁を容易に抜ける透明なひとというのは、切れた凧のように何処にも戻ることなく、ただ遠ざかるのみなのであろう、初めからそこにいたことなどないかのように、と。


                 *


ゲームなどというものではない、単線を行く列車の旅なのだが、真上に時限爆弾つきの雷という文字が浮いていて、離れない。不参加組というのもあるが、それは好んでそちらに入っているわけでもない。初めは誰もそれに気づかずにいて、だんだんと顔が見えてきたりするので、しっくりとするカードの組み合わせを、おそらく最後まで追いに追う。


                 *


なぜにあの向き、あの色、形、感情なのか。この球上取り巻く総ての地カラコロ音立て、巡るまでもなく、あれ脳内深くに沈んで追い払おうにも鍵見つからず、見えてくるのは、草、樹、薙ぎ倒して重戦車のように地鳴り立てる、巨大な褐色の塊。開いたこちらの扉抜けそうな気配に波乱の兆しも、あの雲の流れに読めると、見立てるとか。


                  *


そこもまた、上は天、下は地、ギリギリと引かれた一線が横に見えるような、雑、全部放り捨てられて、それは撃つものも引きずるものもない、それこそがとびきりの眺めだと、上下の色の優しさよと、西に数億、東に数億キロ置き前方見る眼は、原人めいて、雑な、雑すぎるものの生え立つ幻景、新たに噛み捨てている、束の間。


                  *


青の地では青の罠受け、黄の地では黄の手が犯す。彼の地に行けばそこだけの眺め見え、圏外限りなく離れれば、空間で光受けつつその顔見えないわれらのこの星、見えていながら追えば道分かれ、足ひとつ置くに場所ない地に、追いうちかけて暴発の気配あり、この集団何処に向かうのか、知られた試しなく、また問いかけるまでもない、とも。


                  *



ああ、とうに数万もの日々、似たような道、動きつづける繰り返しに、足、自律の気失せ、前に進むのはご免蒙りたいと、跳ねている、跳ねている、跳ねている、天まで届けと風船気分、浮かぶイメージ描いて、暫しこの変調スタイルに決めたかに見える、わたしであるようなあのひとそのひとでもあるような、順番待ちのひと。


                  *


あそこに指、向ける。その指、悪い指、むかし圧された切ない指、風切りたがる指、でもいやである、いやなばかりではない、坂道の先見えない処まで遠ざかりたい訳あると、指、恐れだしたりなどするのは、あそこのあれ、なぜにあれほど形ととのうのか、なぜにあの角度からの光に強いのか、偶像、隙なく敷きつめられるという。


                  *


限界、というのが初めからそこにあるのに、それを知ることのできない無能ゆえの、哀しさ、そう言う者あり、いやいやそうではない、限界云々のことではない、と湖面から顔出す溺れた仙人めいたのが発して、先に読めるものがある、読めるものがある、と強調する。



                    from Six Poems No.11 2006


 

詩-Space 偏愛する

2008-03-02 22:41:29 | 
      偏愛する



         1

    どうしても
    眼はあちら側を向いて
    何故に総ては色をまとうのか
    不思議なほどに
    空白がそこを抜けて
    見えるもの
    総てを一気に
    呑みこんでしまおうというのである
    そんな危うい場所に
    置かれてみれば
    ああ消える
    消える
    色を奪われてしまう
    その切なさは強い思いと
    結びつかずにはいない


         2

    なぜならば
    根が曖昧でありながら
    不似合いな拳を
    突き出してくるからである
    天と地の分かれ目に
    確かな一線探るみたいに
    それはあるのだと
    青い声を上げる
    時は前にも斜めにも
    動いていない
    その根は天に浮いている
    かもしれないのです
    その声の哀愁


         3

    それは見えていながら
    見えないもののような
    永劫ひらいているもののよう
    でありながら
    既に閉じているもののような
    そうしてどこまでも
    薄ぼんやりとしたものなんだろうと
    まるで
    百万年前に逝った母みたいに
    どの階段に足かけて
    呼び覚ませば良いのか分からない
    あちらに見える
    温もりただよう記憶とどめ得るのは
    軽快さ何者にも負けない
    蟻でもなければ
    言葉話せぬ象というわけではない
    変種とも思われ
    傲慢極まりない蛙のごときもの
    とも思われ
    哀しいほどに美しすぎる
    とも思われ
    それは見えていながら
    見えないもののような


                        from Six Poems No.12 2007  
                     
 


       

詩-Space 蝶遠のいて

2008-02-26 22:47:01 | 

     蝶遠のいて


    皮下の
    透明な層に抱かれて眠る
    大量の埋蔵物なるもののこと
    あそこの
    もの言いたげな光帯びる
    カラスなのか
    キャラスなのか
    クラウスなのかカイラスなのか
    人と同じに気づきもせずに
    その上方
    カタカタ首を鳴らし
    キアキアキアキア歌声上げて
    飛んでいるというわけだが
    それ哀しげなことなのか
    二回転飛行のできないことに
    問題ありと見るのか
    あれは宇宙の迷子だから
    いずれは元の場所に戻ることあろうと
    幸運を祈らせていただけばいいのか
    あちらの眼が
    あなたの眼というわけでもないから
    その不確かな高みから
    階段を下りるように
    地に触れるところまで戻れば
    この世のものとは思えぬ
    蝶の遠のくさまなど見えて
    何故に掘りおろそうなどとするのか
    あるべきところに
    事を進める腕などないのになどと
    あのカラスだか
    キャラスだか
    クラウスだかカイラスだか
    それとも姿見えぬ地平の向こうの
    自身の片割れみたいなのが
    生温かな空気にのせて
    伝えようとするのである
    眠るジャングルも見えるのである



                  from Six Poems No.11 2006    
    
    
    

詩-Space 誕生日

2008-02-24 23:28:40 | 

     誕生日


数が増えて、一のうしろにゼロが99にもなる。意味のない数、というばかりのものでもないだろう。恐怖を覚えさせるものであるかもしれない。僅か20つくだけでも恐慌を引き起こすに足るものだろう、想像の中に。
われわれ、限りなく高齢に近づいても、数は三桁。辺りを見渡すに苦労のないはずの数だ。色とりどりのネオンサインは、途方もない夢の中にいることを思わせる。チカチカとまたたく世界、それに比べて月をはじめ、何と殺風景なことか。過ぎる夢の中でこちら、またひとつ年を重ねる。


                            September 1995

詩-Space 朧な玉

2008-02-22 22:44:35 | 
    朧な玉


消えずにいる間に、気づいてみればまた生まれている。それも愉しみと言える、この地の上。昼の月は、まだそこに見えている。滅することがないかのように。だから輪を描いた指の中に入れて、そこまでの距離を乗り越えてしまおうかと思うのだ。あのような場所に浮いて見えるのは、錯覚をする眼を欺いてのもの。飛び上がって触れることのできるもの以外は認めない。鐘を鳴らすようにして、小気味良く主張してみたくなる。手の届かないもの、果てしのないもの、想像の中を渦巻き収拾できなくさせるもの、辺りに置きたくないのだと。この演者である、朧な玉。   

詩-Space 14 June 2005 ─ 余韻

2008-02-20 22:59:00 | 

   14 June 2005 ─ 余韻


地平線あたりは白ずんでいて、それを目当てに向かっていく目玉の大きな何者かの姿が見えている。深緑をした重量のありそうな体。時速2キロで地下への入口でも模索するかのように黙々とのめりつつその縁に鈍い光を浮かせて。
夜の時間、こちらは窓のそばのテーブルでアップルパイ。甘さ吟味しながら、大きすぎもする金縁の置時計の長針が一時のひとつ手前にあるのを捉えている。四分。ふいとなにかしらの思いにとらわれて、眼をほんの少しだけ離しているともう六分になっている。どうして時間は前にしか進まないのか。そのせいで彼方には消えた人々の微かな足音の余韻。それは限りなく遠いとさえ思える未来のひとびとが、既にして過去へと消えていることをも思わせる余韻。だが次元が異なれば逆に進む時間もあるだろうと、このひとは考えたりもする。置時計の白い長針。その狭い空間の中で、それでも宙に浮いているイメージも思わせるその先端あたりを追いながら、生まれ浮遊しだす思いに従いつつ。    
        

詩-Space ある国

2008-02-18 23:08:36 | 
      ある国


    その土台が
    崩れている最果ての国
    一見の価値あり
    とか
    緑だか黒の
    色紙の上に浮いている 
    臍曲がりな
    虫らしきもの
    とも映る専制主がいて
    見える
    見える
    見えると
    あたり飛ぶどこかの
    ヒコーキ
    恋に胸熱する女など
    乗せているのが
    その機体のアタマ
    光らせ
    確認をする
      こともある



                         October 2006       

詩-Space あちらに行けばあちらのこと

2008-02-16 22:44:29 | 


     あちらに行けばあちらのこと


なにかとてもちがうひとびとがあちらにいて、まるで別の人種なのだとだれかが教えている。どういうだれかなのか、夜の電柱の影あたりを探る。あちらは海の向こうにあるあちらだったか、そのこちら側だったかも、そのだれかに確かめてみなければならない。それは、あちらに行けばあちらのことがある。こちらにはこちらのことがあり、それだけで最早先に進むことがないかのようである。だがあちらのちがうひとびとは、いつまでもあちらにいるひとびとであるわけでもなく、どこを探しても見つかることのない翳の世界へと、いずれは集団移行することはとうに知られている。結局のところ、どのような話になるというのか。にんげんのことというのは、まるで初めから出口だらけであるというのに、どこにも出ていけない家の中にいるような、奇妙さつきまとうもので。


                           September  2006

詩-Space 名前を呼べば

2008-02-14 22:31:16 | 
         名前を呼んで


    リラ
    とライラックは
    同じ花
    なのであるが
    月には咲かない
    咲きたい
    と駄々をこねても
    咲けない
    それに
    合わせるわけではないが
    花のようなリラ
    という名の
    女の子
    ライラック
    と呼んで届くだろうか
    同じ色
    なびかせる
    その奥の
    奥に



                         April 2007