そこに見える道は歪んでいる
歪みたくもない道の筈なのだが
視界の悪い日々がつづくと
レンズで矯正するのに疲れるのだ
おどろくほどにひとの姿がなく
歓呼の一隊が抜いていくべき
枯れた樹はそのまま
流れの定まらない風が
幹に枝になぶるように絡み
そのあたりの風景は
フィルター無しで見ると
少しもさらりとしていない
*
見てはいけない場所だとか
触れてはいけないもののことが
あちこちの掲示板に焙りだされて
わずか一度だけの訪問地
それを強調したがる
桃の花にはその訳がある
燦々とかがやく季節は
はるか境界線をのどかに越えて
引き伸ばされるべきものなのだ
空には追いつめられた風船
その膜を弾け抜ければ懐かしの
眠りの中のあのメロディ
幻想曲が戦車のように壁を抜ける
June 1995