月のmailbox

詩或いは雑記等/小林貞秋発信。

詩-Space 雨

2008-04-02 23:05:40 | 
       雨


    降りおちて
    輪ができる
    その外
    その内に
    輪
    円が重なる
    誰も頷かないので
    昼回る頃
    梯子持ちだし足をかける
    その音なく現われ
    また去ろうとするひと
    円を描き
    輪を描き
    その内に
    その外に
    運動ひろげる
    地の上からみっちりと
    濡れ
    更に濡れる
    高みへと
    駆られるようにして
    足をかける


            *

    あの時のまま
    黴生えず
    古びることのない
    「再生」
    の手にかかり
    万年もの時
    なだらかに過ぎても
    あの夜
    あの記憶に沈む
    大粒たち
    その叩いた音
    その叩きつづけた音
    消し去るものを消し
    ただ当たる
    打ちつける
    淡々と
    古びることない空間の
    内を抜ける


            * 


    そのものの
    名は示したくはないと
    巨きな耳に寄りかかる
    あちらから
    訪れ来るもの
    何処にも中心のない
    声のさざめき
    その平たいひろがりの
    上に
    柔らか
    穏やかな
    ささやき偏在して
    時
    過ぎることなくむしろ
    煽られるに
    逆の向きに
    靡いていく


            *


    ひとという生きものの
    見えるのは
    別の領土
    そこ
    黒ずむ界隈に砂の
    発する
    言葉
    木霊して
    降りかかる
    尽きない愛のような塊
    呑むのである
    絡めとるのである
    奪うように引き込むのである
    なにも加わるものなし
    なにも入りこむものなし
    なにも求められるものなし
    あちらの
    息する
    海



                    from Six Poems No.10 2005     
   
   

     
 
   


       

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