あそこ
あの風に吹かれ
空間が色変わりしたように見える
あの場所に立ち昇る炎は
あそこ
あの黒みを帯び
節くれだった太い樹の
幹にしなだれかかる
あの薄く物思うひとの脳裏の
何処かに留まりつづけ
その見定めがたい熱放つものが
朧に写し出されたものでもあるのか
その炎の姿
その背景透けて見えるような
冷えびえとした
いのち
そのゆらめくものの色合い
突如の風の異変にでもよるものか
俄か
俄かに変わる
背景
また生気盛り返すごとくに
艶めいたもの帯びだして
それまた誘いに屈するように
変わるのである
なんの前触れもなく
あそこ
あの場所だけのことでもない
遍く場所という場所で
あそこ
あの場所でのように
あるもの
中枢溶かしこむように
のめりこんできて呆気なくも
表裏が転換するごとく
これこそが
いま眼の前にひらけていること
生々しく手に触れることができるものと
幸運の薫り滲ませ
近づいてくる
2004