外のある場所。例えば、コーヒーを飲む店。テーブルを前に、ひとり。その時に、姿の見えない何者かに向けて話し出したら、おかしいだろうか? というようなこと、普通には問うまでもなく少々頭の方がおかしな方と思われる。舞台の上でなら結構。どうぞ、存分に表現豊かに、と言わせていただきたくもある。
さる場所。そこはファーストフードの店。その三十代とおぼしい女性、見えない相手に話すのである。幾度となく見かけている。常に話し始める。煙草などを吸いながら、ひとり。午前中の時間で、いつも人は僅かなのだが周りに聴こえる声。当人、頓着しない。それは普通ではない光景である。普通ではないが、それだからどうなのか、という程度のことでもあるだろうけれども。普通でないことが周りに不安を煽る、という問題でもない限り。だが、普通ではない人がそこにいるという印象は、強い。話す相手のいない、孤独な人間であるのかもしれない。
目の前にいない相手に向けて、話すケイタイ。そうした店などでも近くに人がいようと、頓着せずに例えば仕事のことなど、傍若無人な調子で話しつづける人間がいる。話す相手は確かにいるのだから、見えなくてもおかしなことはない。だが、こちらには、妙に挑発的な人を苛立たせるものがある。人にどのように映るか、ということは、普通にはどのような場合にも考えておいたほうがいいのではないかな。その方が、姿も良く見える。