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引っ越しました~
by lotusruby

21th TIFF Selection : 「8月のランチ」

2008-10-28 23:45:47 | Cinema な時間


「8 月のランチ」

原題: PRANZO DI FERRAGOSTO (2008 年 イタリア)
監督: ジャンニ・ディ・グレゴリオ
出演: ジャンニ・ディ・グレゴリオ、ヴァレーリア・デ・フランチシス、マリーナ・カッチョッティ
link to TIFF


今回の TIFF で見た作品の中では、これが一番良かった。

「本当に小さな宝石のような作品で、愛さずにはいられない、ほんわかした人間ドラマ」(TIFF DAILY NEWS Oct.26 Sun DAY 9) と矢田部プログラミング・ディレクター絶賛の通り、こういう作品を見つけると、ちょっと小躍りしたくなる嬉しさがこみ上げてくる気持ちは分かるような気がする。「見て良かったぁ」 と素直に思える作品。

ジャンニ・ディ・グレゴリオ監督はこの作品では主演俳優の顔も持つ。監督としては、コッチ見てと言えばアッチを向いてしまうような素人のおばあちゃん達とのアンサンブルをまとめあげる指揮者のような演出手腕が光る。俳優としては、劇中 4 人のおばあちゃんたちの世話して引率する先生のような役で見ていてホッコリする。演出と演技がどこか重なる部分も面白い。

Q&A もユーモアたっぷりで実に面白く、この監督には人をひきつける力があるらしい。1 つ質問すると、もうずっと話が続く・・・


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ジャンニ・ディ・グレゴリオ監督の Q&A 概要メモ
2008/10/26 [Bunkamura シアターコクーン]

 登場するおばあちゃん達は実に個性的だが、キャラクター作りはどのようにしたのか。身近な人がいたのか、それともすべて想像上の人物像なのか。

4 人のおばあちゃんのうち、1 人は 90 歳で自分の伯母さん、1 人は 93 歳で家族の友人、あとの 2 人は、ローマの老人ホームで募集をかけ、100 人の応募者の中から選んだ。

撮影中すぐに分かったことは、これはもう演出不可能、手に負えないということ(笑)。彼女達はたいていこちらの指示とは、正反対のことをする(笑)。

脚本はしっかり作りこまれていたものだったが、彼女達の話す内容や行動が実に面白かったので、脚本はヨコに置いておき、ラインだけおさえて、彼女達に自由に演じてもらい、その姿をカメラで追う方向にした。

撮影中、夜は、スタッフも自分も疲れ果ててぐったりしていたのだが、彼女達はエネルギッシュで、明日は何をするのかしらとあれこれ聞いてくることもあった。

彼女達と仕事をすることによって、人生について教えられたことは大きいものだった。

この作品は現実のストーリーがベースになっている。自分自身も一人息子で 10 年間ほど母親の世話をした。母親は典型的なイタリアの母親で独占欲が強い。劇中の彼女達を通じて、年配の人々の力強さ、弱さ、孤独を描きたいと思った。

自分も実際にストーリーと同じような状況があった。アパートの管理人から老女の世話を頼まれたがその時は断った。でも、あの時断っていなければ、自分はどうしただろうかということでこの作品のアイデアが生まれた。

困難だったのは、制作会社がなかなか見つからなかったこと。老人を扱う映画はイタリアでは成功しない、無理じゃないかと言われた。プロデューサーを探すのに 7 年を要した。老人を抱える問題や苦悩を笑わせることで伝えたかった。


 8 月 15 日というのは特別な祝日なのか。

特別な宗教的な意味があるわけではない。重要なのは、この日の前後 2~3 日間は誰も働かないということ(笑)。みんなバカンスで、家族が集まって会食をしたり旅行に出かけたり、都会では老人が置き去りにされて孤独だ。

イタリアの都会でも近所づきあいが少なくなった。


 この作品では監督兼俳優だが、役者または監督に専念する気はなかったのか。

彼女達のキャスティングが決まった後、男優を探すのが難しかった。条件は、中年で、借金があって、母親と暮らしていること。最後の企画会議で、その条件だったら、オマエがやるしかないだろうと言われて・・・。

実は若い頃、アカデミーに通い、役者の勉強をしていた。しかし、シャイな性格だったので、今まで演じたことはなかった。今回そのときの勉強が役に立った。何しろ数時間の会議で決まってしまったので、悩む時間もなくて、長く考える時間があったら演じることに悩んだかもしれない(笑)。


 おばあちゃん達の会話の中にあるエピソードがとてもリアルだが、あれは脚本にあったのか、それとも即興なのか。

いくつかは元々脚本にあったものだが、かなりの部分は即興。彼女達に自分の思い出を話してもらったら、そのエピソードの方が脚本より面白かった。


 おばあちゃん達は一般人ということだが、一般人が映画に出演することによって、出演前と後、あるいは撮影中に彼女達に変化は見られたか。

彼女達を選ぶ前には、女優を起用することも考えた。しかし、女優には時として冷たさや型にはまったものが見られる。これは役者への偏見ではなく、この作品には一般人を起用する方がいいと考えた。

彼女達は、事前の顔合わせを行わず撮影当日に顔を合わせた。会うとお互い印象が悪かったようだ。撮影が進むにつれて仲良くなった。今では、自分にとっては 4 人の新しい母が増えた感じで、よく電話をかけてきては、やれ 「飲みすぎるな」 とか 「夜はどうしているのか」 とか気にかけてくれる(笑)。


 「ゴモラ」 の脚本も手がけておられ、今回監督の幸せそうなお顔を拝見できてよかった。

この作品と 「ゴモラ」 の公開時期がたまたま重なってしまった。この作品は 10 年前から企画してようやく制作にこぎつけたこともあって、「ゴモラ」 の撮影現場に行くことはできなかったのが残念。通常なら脚本家として現場に赴き、製作を手伝うことができたのだが。

 * 「ゴモラ」 はナポリのマフィアを扱った映画で、原作者はその内容の深刻さから現在危険な状況に置かれているため警察の監視下にある。


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