親族と親しい友人のみでの披露宴。
何かお願い、と頼まれたのは1月の末くらいだったでしょうか。
クラシックに縁のない親戚たちだし、「Time to say goodbye」あたりかな・・・・と最初は思ったのですが、曲の雰囲気からすると宴会のクライマックスになってしまう=ごちそうお預け(私は食べながらは歌えないので・・・)、それはイヤだ、と、じゃあ、最初に歌うためには乾杯の音頭と共に「乾杯の歌」を歌えば、早くお役目終了になる、と考え歌うことにしました。
ヴィオレッタは私のレパートリーではないし、本来重唱の曲、でもソプラノのアリア集に載っていたので、先週発表会前に師匠のレッスンを受けた際、一緒にみていただきました。
「初めての曲をそういう場で歌うのは大変ね・・・」と師匠。
おっしゃる通り、この1週間、毎日楽譜とにらめっこ、当日も譜持ち。
新婦のご親戚のシャンパンで「乾杯!」と発声したタイミングで「乾杯の歌」の前奏が流れ出し私は前に出ていきました。
乾杯の後にこの音楽が流れるのはとっても自然で、そして会食が始まるのでザワザワしていたため私が歌いだしても始めは皆さん気づかないようでした。でも、途中から「なんだろ?」と次第に注目が集まり・・・
親戚も、主役の幸せいっぱいのカップルにも喜んでもらえたのでホッとしました。
私も余興的に歌仲間と歌った経験はたくさんありますが、ソロでは始めてだったのでとても緊張して、1番(アルフレードパート)はほとんど発声練習になってしまったので、なんとかとコツが掴めた頃、皆さんが聞き出したのはちょうどよかったです。
一応録音も録っておいたのですが、先週の発表会の演奏に比べたら50%後退って感じでしょうか・・・
もちろん練習不足もありますが、発表会とはまた違うお客様の前で歌うということの難しさ。それに発表会というのは色んな意味で環境が整った状態で演奏しますし。
でも、これがきっと私の実力なんだろう・・・・と。
それでも親戚や親しい人たちの中ですので、大目にみてもらえたし、幸せな空気を感じながら歌えるのはとても楽しくて、私自身も幸せでした。よい経験をさせいただきました。
さて、伴奏ですが・・・
これが色々あって。
実はこっちが本題かも・・・。
ピアノは入れないことはわかっていたので、当初はカラオケをダウンロードしてと思えば、著作権の関係でCDに書き込めない。カラオケCDを見つけアメリカから取り寄せるも、テノール用の重唱用だったのでヴィオレッタパートは歌入りで使えず・・・
いざとなったらアカペラか!と思いつつ、とある先生にダメモトで音源をお持ちでないか聞いてみたら・・・・。もちろん持ってはいなかったのですが、ご自分のピアニストと合わせがあるからそのときに作ってもらう、とおっしゃる。
背に腹は変えられない状況でしたので、申し訳ないと思いつつお願いしたのが2月18日。
そして20日、発表会のため早起きしていた私の携帯にメールが届きました。
「今日発送する」という連絡と共にあったメールの内容は・・・
「原調で少しずつテンポの違うものを3種類、半音下げてと全音下げをそれぞれ3パターン、合計9パターン入れてあります。調子が悪いときは、下げて歌うほうがいいかもしれません。」
私はピアノで弾いてもらえただけで十分だったのに、演奏の場を想定していただくなって考えもしなかったし、そこまでやっていただくほどその方に私が何かしているわけでもないので・・・
そして、ふと、私たちは土日は休日でも音楽家はお仕事の日ではないか、こんな朝早くメールが届くということは・・・・と気になり始め、お礼メールの中で触れると、やはり本番の日で。しかも、奇しくも「椿姫」だとわかり・・・
ご自分が本番で忙しい中、勝手なお願いにここまで対応していただくなんて・・・
私はビックリしたというか、本当に感動して朝から涙が出てきてしまいました。
先週の発表会でよい演奏ができたのも、朝、こんな感動体験をしたからとも思いましたし。
さて、届いた音源の全てのパターンで歌ってみましたが、慣れない曲なのでゆっくりめがよかったし、この曲は楽譜だけ見れば私にとって高い音はないのですがそこはヴェルディ、ちょっと重い。それに宴会の場で雰囲気は高揚していると自分も息が上がり易いので、半音下げたパターンで演奏しました。それでちょうどよかったです。
色々な状況を想定して音源を作ってくださったことに心から感謝・・・・。
そんなことで音源CDはとっても大事なものになりました。
お祝いの席でこの曲を歌えるように、もっと練習しておくことにします。
そして、いつかテノールと重唱で(そして原調で)歌えるように、声磨きもちゃんと続けようと気持ちを新たにしました。
Time to say goodbyeはサラ・ブライトマンが歌うことになったときにつけられたタイトルのはずで原曲は「Con te parpiro(君と旅立とう)」です(Time to・・・のほうがわかりやすいと思ってそう書いただけなのですが)。
内容の解釈は色々あるようですが、前向きな「旅立ち」と捉えた楽曲と聞いています。実際、今回の結婚式でも、新郎新婦入場の際に使っていましたので・・・。
そういうことを言い出すときりなくて、「乾杯の歌」の椿姫のタイトル「La Traviata」は「道を踏み外した女」という意味だし、乾杯の歌の歌詞もなんとなく結末を暗示させるような物悲しさもあります。なので、正直、迷いました。でも乾杯のシーンに慣習的に使われているからいいかな、と歌うことにしたのです。
外国語の歌の日本語訳や必ずしも本来の意味と合ってなかったりすることがあるので、わからないことはたくさんありますね。だからと言って原語や背景にまで至るほど知識もないし・・・・。あとは考え方ってことで判断しています。