ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

黒いオルフェ

2008-12-01 19:53:55 | 映画感想
「黒いオルフェ」1959年フランス・ブラジル・イタリア
神戸の美術館でビデオ上映会やってたので見て来ました。
名前だけは知ってたんですが、見た事は無かったのでこの機会にと思いまして。
カーニヴァルに湧くリオデジャネイロを舞台にした、ギリシャ神話のオルフェウスの物語。

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カーニバルを翌日に控えて沸き立つリオの街。市電の運転手である青年オルフェは、従姉を頼って田舎から出て来た少女ユリディスと出会う。実はオルフェはギターの名手で、歌やダンスも得意。オルフェがリオの街を見下ろす貧民街の自宅に帰ってギターを弾いていると、そこへユリディスが現れる。彼女が尋ねて来た従姉とは、オルフェの隣人のことだったのでした。運命的に再会した二人は急速に惹かれ合うのだが…。

冷静になって考えてみると、リオのカーニヴァルにギリシャ神話を落とし込んだ脚本は、必ずしも成功している訳ではない…ような気がします。
ストーリーがかなり元ネタそのままなので、元ネタを知らない人には訳がわからないような気がするし、知っている人には先の展開が読めてしまうし。ギリシャ神話のハイライトである、オルフェウスが冥界に妻を探しに行く下りの再現には、結構無理があるような。

でも見ている時には、そういう冷静な考えがあんまり浮かばない。そういう映画でもあります(笑)。
如何せん、音楽&リズム&ダンスに圧倒されっぱなしになりますので。
黒人のリズム感は我々日本人とは全く違うとは言いますが、改めて見るとなんかもう本当にすごくてカルチャーショックでした。
冒頭、フェリーがリオの港に入る。サンバのリズムが聞こえて来ると、甲板にいる人たちはもう当たり前みたいに全員踊ってる。水汲みの女性たちも、水の入った一斗缶頭に乗せて、歩きながらセクシーにお尻をフリフリして踊ってる。十歳くらいの小さい子供たちまで、平気で複雑なリズムに合わせてステップを踏んでる。遺伝子レベルでリズムが身体に刻み込まれているとしか思えない。なんだこの世界は。

カーニヴァルは一夜の夢。貧しい人々は日々の苦しみを忘れるため、持てる情熱の全てを注いでサンバのリズムに酔いしれる。夜が明ければ夢は醒め、ボサノヴァのけだるい調べと共に、再び日々の生活が始まる。彼らの生活の隣に、いつでも音楽は流れている…。

最後の最後に、神話には(多分)無かったオチがあって、そこが凄く印象的でした。神話と同じ悲劇的なラストで終わる…と思いきや。この映画のラストは明るく、希望に満ちている。
朝日を浴びて歌い、踊る子供たちの姿に、なんとも言えない衝撃を受けた映画でした。

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フランス語版とポルトガル語版があるそうですが、私が見たのはポルトガル語版でした。
とりあえず、「オブリガード(ありがとう)」だけは分かりました。

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カテゴリーが違うので、拍手コメントへのお返事はまた後日に。

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