ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

「メメント」~記憶の迷宮~

2007-11-12 17:13:24 | 映画感想
2001年のアメリカ映画。
タイトルから分かるように、テーマは「記憶」

「記憶とは、脆くもあれば強くもあるもの。時に残酷で、時に優しい」(「仮面ライダー電王」デンライナーのオーナーの台詞より)

「タイムレンジャー(TR)」と「電王」って、一見どっちも同じ「時間」がテーマだけど、実はTRが「未来(「未来戦隊」っていうくらいだし)、電王が「過去」の話なんだなということに今更ながら気が付きました。
我々三次元の存在である人間は、「現在」以外の時間を直接認識することはできない。
我々の認識する「過去」は過去そのものではなく、記憶と記録を元に再現された複製品に過ぎない。
手がかりである記憶と記録が正確でなければ、正しく複製することもできない。
過去、確かに存在していたものも、記憶や記録が残っていなければ、それは存在していなかったのと同じになってしまう。
(「電王」において。敵=イマジンによって破壊された過去は、イマジンが倒されると人々の記憶を元に修復される。そのため、他人との交わりを絶ち、誰の記憶にも残っていなかった孤独なピアノマンは、時間からこぼれ落ちてしまった)

***

「メメント」の主人公・レナードは、頭部の怪我が原因で記憶障害の状態にある。
一般的に記憶喪失というと、ある時点から過去の記憶を忘れる(それ以降のことは覚えている)状態を思い出しますが、レナードはその逆。怪我をする以前の過去のことは覚えているが、それ以降の新しい出来事を記憶しておくことができない。
(脳にある海馬という器官が、数分くらいの記憶を一時的にプールして於いてから大脳辺縁系に記憶させるという役割を持っているらしいです。レナードはこの海馬に損傷を受けたため、海馬が覚えている範囲=数分間で記憶が飛んでしまうのだと思われます)
そのため彼は、大量のメモを残す。文字だけではなくポラロイド写真を駆使して記録を残し、大事なことは刺青として身体に記録する。彼は言う。
「記憶は曖昧で頼りにならない。だが、記録は正確なはずだ」
かくて、記憶を持てない男は、記録を頼りに探し始める。自分の頭に傷を負わせ、妻を殺した男の行方を…。

この話、公開当時に見れなくて、何故か小説版だけ読んだんですよね。原作本じゃなくて映画のノベライズ版なのですが、話の構成が全く違う。
いや、ストーリー自体は実はほぼ同じものなんですが。
小説版が、基本時系列順に主人公の行動を追っているのに対して、映画はいきなり(小説版における)ラストシーンから始まり、徐々に時間を遡って行くような構成になっています。
そのため、映画の方がより一層、ミスリードさせられる感覚が強いかも。
そう、ミスリードを誘う映画なんですよこれは。
最初は「こうなんだ」と思っていたものが、見て行く内に段々と「あれ、何か違う…?」と思うようになり、最後に真相が明らかになる。
そうやって一度オチを知った上でもう一度見ると、今度はもっとクリアに、「実際には何が起きたのか?」を理解できるかも。
(「ファイト・クラブ」もこういう技法を使ってる感じはしますね。後、私は見てないけど「シックス・センス」もそんな感じのような気が)

そういう訳で、ここではオチは書きません。
これは初見はネタバレなしで、白紙の状態で観て貰った方が面白いと思うので。

***

結論から言うと、「記憶も記録もアテにはできない」。
我々が、「過去は確かにこうだった」と思っているもの、それが本当に現実に起きた出来事だったのかどうか、本当の意味で確かめる術はないのです。
ただ、不確かな記録と記憶を元に彷徨うだけ…。



だったら怖いなあという話。

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2 コメント

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Unknown (ちろ)
2007-11-13 00:05:15
虹川さん、こんばんは。
「メメント」、観ました。手帳を繰ったら2001年11月3日だったので、公開された頃でしょうか。私の場合、手帳は予定帳というより「記録帳」なのですが、「ラストの少し前で一瞬わからなくなった」と記してありました。これ以上は書きませんが、でも実は細かいストーリーは忘れてしまっています・・・。
映画、美術館、買い物は1人で行くことを好む私ですが、「メメント」は前評判等で頭を使う映画かな、という先入観があったため、誰かと一緒に行って、観た後にあれこれ話したような記憶があるのですが、手帳には待ち合わせの時間等の記載もなく、やっぱり1人で行ったのかなぁ、なんて考えています。
その頃、公私ともに結構きつかったんだなー、なんてことも手帳を見ながら思い出してしまいました。こっちの記憶は忘れていたというより、無意識に封印したり美化したりしてしまっていたのかもしれません。
なんだか自分の話ばかりで「メメント」とはちょっとずれてしまいましたね。ごめんなさい。記憶も記録も曖昧だわ、なんて思ってしまいました。
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Unknown (虹川 章)
2007-11-13 09:41:39
>>ちろさんこんにちは。
メメントご覧になってたんですね。
確かにこれ、頭を使う映画でした。主人公と一緒になって、メモを手がかりにあーでもないこーでもないと(笑)。
過去の記憶って、結構曖昧ですよね。しんどかった時に、しんどかった事は忘れて楽しいことだけが印象に残ってたり。
メモを書いた時点で安心して、メモの存在自体を忘れたり(笑)。
この映画のオチには色んな受け取り方があるみたいですが、全部ひっくるめて言えば、「記憶も記録もアテにできない」ってことなんだなーと思いました。
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