ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

森は見るけど木は見ない

2010-05-23 23:36:00 | 日記
こんだけ大ちゃん大ちゃん書き散らかしてる私が「フィギュアスケート」のカテゴリを作らなかったり「フィギュアファン」を名乗らなかったりするのには幾つか理由がありまして。
その一つが、「細かいルールを覚えるのがめんどくさい」だったりします。私が今から勉強したって、審査員と同じレベルで分かるようになるとも思えないし(基本的に根気がないので間違いなく挫折する)それに、ルールが分かれば面白くなることもあるけど、同時に細部にばっかり目が行っちゃうと全体像が見えにくくなることもあるんじゃないかなと。
「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、私は基本、細かく木を見るのが苦手なズボラ人間です。でも最近、全体をざっくり大づかみで見る自分の物の見方もある意味特技と言えるらしい、と気づいたので、多分私はこのまま永遠に初心者だと思います。

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ある有名な体操の先生に話を聞いたことは大分以前に書いたと思います。
先生曰く「体操の採点基準はコロコロ変わる。でも基礎がきちんとできていれば対応して行ける」のだそうで、同じ採点競技であるフィギュアにも同じ事が言えそうだなと思いました。
よく「採点基準の変更で弱点を狙い撃ちされた」なんて言いますが、「基礎をきちんとする」ということは、「狙い撃ちされる弱点を最初から作らない」ことに繋がるんでしょうね。

で、「基礎をきちんとする」ために何をするのかと言うと、コーチは「ひたすら言い続ける」のだそうです。
選手は誰でも難しい技をやりたがるが、簡単な技を単に「できる」だけでなく、「正確なフォームで」できるようになるまで難しい技はやらせない。何度でも指摘し、言い続ける。
コーチが言うことを止めれば、選手は「自分は正しくできている」と思って、ずっと不正確なフォームのままになってしまうからだと仰ってました。

その上で、「メダルを取る選手というのは、まず始めに『金メダルを取る』と目標を決める」のだそうです。金メダルを取るために何が必要か、今の自分に何が欠けているのかを考えた上でその差を埋めるような練習をする。漠然と「がんばって練習して上手になればメダルが取れるかも」という考えでは絶対に勝てない、とこの辺はフィギュアどころかスポーツ以外のジャンルにでも当てはまりそうだなと思います。

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こうして考えてみると、上記の事をきっちり実践したのがトリノの女子金メダリスト(及びそのチーム)で、それをさらに徹底したのがバンクーバーの女子金メダリスト(及びそのチーム)かなと思いました。
実際にどんな練習をしてたのかなんて分かりませんけどね。でもコーチ自ら勝負の鍵を「GOEだ」と発言してたくらいですから、ジャンプひとつにしても単に跳んで降りるだけではなくて、GOEが付く跳び方=審判に評価されるより正確な跳び方を目指した練習だったんじゃないかと勝手に解釈。
トリノにしてもバンクーバーにしても、選手・コーチ・振り付け師が的確な戦略に基づいて足並みを揃えて、勝つための準備が一番出来ていた選手が金メダルを取ったな、と言うのが、女子シングルを見ての私の印象です。
4年前はその点でモロゾフ氏が一歩先んじてたけど、この4年で他のコーチも採点法に慣れて来て追いつかれたような気がしないでも無かったり。それだけが理由じゃないとは思いますけどね。F1でもそうなんだけど、いくらチームが戦略を練っても、選手がそれを実行できないと意味ないですからね。

あ、でも難しいジャンプはトリプルアクセルと4回転しかないとでも言わんばかりの報道はさすがにどうかと思いました。素人には一番分かりやすいですけどね。3回転半と4回転。
でも男子の4回転&女子のトリプルアクセルがないというそれだけで「ジャンプ=技術で勝ったんじゃないなら芸術性だー」みたいなえらい短絡的な報道さえあったような。
女子の金メダリストは3ー3のコンビネーションジャンプを跳んでいるし(SP・FSの両方で成功させているのは五輪史上初だとどっかで聞いたような)、銅メダルの選手はアクセル以外の5種のトリプルジャンプを揃えているそうですし。「難度の低い無難なジャンプ構成」なんて簡単に言えるものではないはず。
ていうか、どうもトリノ以来ぼーっと試合を見ててなんとなく、「男子の試合で鍵を握るのは4回転よりも3A」「女子の試合で鍵を握るのは3Aよりも3ー3」なんじゃないかなーと思うんですが。

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という訳で男子、「4回転論争」。
ちょっとだけ分かって来たぞ。
4回転ジャンプは確かに、3回転以下のジャンプに比べると点数が高い。
でも4回転ジャンプを跳ぶことで、4回転抜きのプログラムの上に、4回転が入る分の点数を単純に上乗せできるかというと中々そうは行かない。
体力を消耗する4回転ジャンプを跳ぶために、(1)つなぎを薄くする。(2)後半のジャンプを少なくする/難度を下げる。などの方法で負荷を減らすと、ジャンプの基礎点分のアドバンテージが消えてしまう。しかも大抵の場合それだけでは済まず、体力の消耗が原因でレベルを取りそこねたり他のジャンプをミスしたりしてかえってマイナスになんてことになる。

何でトリノ世界選手権での大ちゃんのFSが、(4回転は失敗したにも関わらず)あれだけ評価されてるのかって言うと、4回転を跳んだ(そして失敗した)にも関わらず「後半に3A含めた5つのジャンプを跳んで大きなミスなくスピンステップはオールレベル4でつなぎも評価されている」からだった…という事なんでしょうか。
これならば、仮に4Fが成功してれば(4Tでもいいけど)、4回転の入ってないプログラムに、そのまんま4回転の得点を上乗せすることが可能って訳で。多分それが、今のルールに於ける理想のプログラムなんじゃないかなと思った次第です。
逆に言うと、そこまでやらないと、4回転は「美味しくない」ジャンプってことになってしまうのかも知れないですね(それでまたルールが変わる動きがあるみたいですが)。
そこで4回転を美味しく使える理想の演技を目指すのか、現実を見て美味しくない4回転を外すのか。若手はともかく、ベテランの域に入って来たトップ選手には悩ましい所なのかなと思います(実際、バンクーバーで金メダルに輝いたのは後者の選手ですしね)。

そういう中で大ちゃんは常に前者を目指して来た訳で(だからこその世界最高得点)、その姿勢をあの怪我の後でも保ち続けることができるという事は尊敬に値するし、同時にそれができるというのはすごく幸せな選手だなと思うし、支えてくれる周囲の方達にも感謝ですね。

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この度は、普段やり付けないルールの(ごく大雑把な)話などして疲れました。
何度も言いますが、実際ルールとかよく分かってないので、事実誤認などありましたらご容赦下さい。

スケートのもうひとつのキモである「表現力」についてはまた次の機会に。

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拍手コメントへのお返事
□2010/5/9 1:20
こんばんは。私は4年前からのファンなんですが、この4年間の展開とオリンピック&世界選手権での幕切れが劇的過ぎて、いつまでも感慨に浸ってしまいますね。
私も正直なんでこんなにどっぷりハマっているのか謎なんですが、ハマりモノがないのってすごくつまらないので、ここまでハマらせてくれる大ちゃんには日々大感謝です。
そしてまだまだ物語が続いて行くのも嬉しい所。ボーンさんの振付け、決まると良いですね。ボーンさん自身も素敵だったし、鈴木選手のウエストサイドストーリーは個人的にバンクーバーシーズンの女子のプログラムでは最高傑作だったと思います。

200日の闘いの記録

2010-05-05 23:17:00 | 日記
4月頭のダイアモンドアイス以来、すっかりブログをさぼってしまってすみません。
私がさぼってる間大ちゃんは…よう働いとりましたね☆
東京でアイスショー出てテレビ出て記念行事に出て、大阪でアイスショー出て行事に出てまた東京行って…みたいな。前から大ちゃんの事務所はメディア関係の仕事はまとめて受注して一度に済ませる方向性でしたが、流石に今回は中々簡単には捌けないオファーを頂いたご様子。でも御本人も「滅多に出来ない経験」と前向きに捉えているようだし、多忙なスケジュールも3日のPIWでようやく一区切り付いた様ですしね。それにほら、テレビに出た分しっかり本の宣伝に結び付ける辺り、抜かりはありません☆

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黒柳徹子女史が「世界ふしぎ発見」で脅威の的中率を誇るのは、予めその回のテーマに沿って資料にあたる「予習」を怠らないからだと聞いたことがあるのですが、もしかして「徹子の部屋」でも「予習」してるのか?と思った大ちゃん登場回。
予め「200days 」を読み込んで来ていたのは間違いないと思われます。VTRみながら「わあすごい!」とか「まあ、かわいい!」とかいう無邪気な反応に、この人は今でも「トットちゃん」なんだなあとしみじみ。

そんな訳で大ちゃんの2冊目の著書です。
高橋大輔OFFICIAL BOOK 200days バンクーバーまでの闘い
限定オリジナルポストカード付(15種類の内からランダムで 3枚)という妙にアイドルっぽいオマケ付き、判型も大きくなってより写真集っぽくなってますが、中身は相変わらず濃いです。
あんまり体育会系っぽくない。どちらかというと文系的。内省的で、自分自身についてぐるぐる色んなことを考えていて、それを一生懸命説明していて、一歩間違えるとうざくなる危険性大(笑)。
なのにそれがすごく読みやすいのは、簡潔で率直で、十分に自己客観視できている文章だからだろうと思います。彼はいつもそうだけど、変に自分を正当化しない所が良いですよね。所々に話し口調が入る、くだけた文体も魅力的。

タイトルの通り、09-10シーズンに復帰してからバンクーバーまでが中心ですが、「やっぱり大変だったんだなあ」というのが一番の感想です。彼はマスコミの前で絶対に嘘は言わないけど、本当のことを全部言ってくれる訳ではないから(笑)。リアルタイムでは色んな配慮があってポジティブな話題しか出なかったけど、実際はもちろんそんな甘いものではなかった。
私が生で観戦したのはNHK杯→GPF→全日本ですが、全日本で快勝するまでは、ファンも中々にじれったい試合が続いていたけど、そういう時には本人的には更に数倍ストレスだったんだなと、薄々想像はしてたけどやっぱりそうだったんだと改めて知りました。
でも「結果を焦るな!今はまだ回復の途上だから!一歩ずつだけど確実に前進してるから!今回だめでも次には良くなるから!バンクーバーには間に合うから!」と必死に自分に良い聞かせながら、彼の苦闘を見守ることが出来たのは、本当に貴重で良い体験だったと、これを読んで改めて思います。
長野も東京も行って良かった。期待に応えてくれて本当に心からありがとう。

それと、この本を読んで「やっぱり」と思ったのは、荒川さんのことと衣装の事でした。
トリノ五輪の直後に出た荒川さんの本の、大ちゃん登場シーンだけぱらぱらっと立ち読みして、「これは大ちゃんいい経験をさせて貰ったなあ」と。この経験はきっと4年後に生きて来る!と私は勝手に思ってたのですが、本当にしっかり活かしてくれたみたいで嬉しいです。
あと衣装に関しては私も、デザインは素敵だけど上半身の小柄さが強調されてしまうのが気になっていたので(これはeyeの初期衣装にも言えることですが)、新衣装ではその点が上手くクリアされてて良かったなと思いました。

この本について語るとキリがありませんが、ファンなら買って損のない一冊であることは間違いないかと思われます。

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もう皆さん入手済みかも知れませんが…

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テレビ出演の中では、テーマを「食」に絞ってあった「ビーバップハイヒール」と「アスリート勝負食堂」が個人的に面白かったです。
「怪我からの復活を目指してストイックにがんばるアスリート、でも食事に関しては無頓着。そんな僕が栄養士さんに出会い、栄養バランスを考慮した食事の効果を実感!大事なオリンピック前の体重調整も栄養士さんのサポートのお陰で成功し、見事メダルをゲットしました!」
…この分かりやすさ。ベ○ッセのDMか○ペンの美子ちゃんかというベタな展開ですが、これが100%実話なんですよ。番組作る人にとってこれほど有難い存在も珍しいのではないかと思いましたよ。
オリンピック後、大ちゃんのドキュメンタリーが多数放送されましたが、単にメダル効果というだけでなく、特に誇張や創作を入れなくても、そのまんまで感動のストーリーが出来上がるドラマ性故だと再認識。
栄養士さん編だけでなく、コーチ編、ジャンプコーチ編、振付師編、衣裳さん編…とチーム高橋全員でシリーズ物が作れるんじゃないかという気もします。ていうか作って下さい(笑)。
「ビーバップ」では栄養士の石川さんが主役なので大ちゃんの登場は短いインタビュー映像だけでしたが、その分再現VTRで、大ちゃんに似せようと一生懸命にがんばる全然似てない大ちゃん役の役者さんとか色々面白かったです。

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おまけ1 GWは岡山に帰省してましたってことで、岡山の路面を走るたま電車です。


おまけ2 実は私も五輪の前にフォーチュンクッキーを貰ったんですが、出て来たのはこんなのでした。

どないせいっちゅうねん(笑)

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Web拍手へのお返事

2010/4/18 17:07
両備の会長さん、志が高くて頭が切れる、経済人の鑑のようなお人です。会長さんの日記を読むと、大ちゃんの夢のスケートアカデミーは岡山の地に実現できそうな気がして来るんですが…。
大ちゃんは自分を『出会いに恵まれている」といいますが、そうやって周囲の人との縁を大切にすることも、良い人が集まる理由のひとつかなと思います。