ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

ゲゲゲの女房

2010-09-29 01:18:00 | ドラマ
♪ありがとう~って伝えたくて~

…という訳で。『ゲゲゲの女房』終わっちゃいましたね。水木先生目当てで見始めたけど、脚本の良さが拾いモノでした。
面白い実話を元にした手記のドラマ化なら当然面白いだろうとは思ってましたが、原作のおもしろさにあぐらを書かずに、丁寧にポイントを押さえたいい脚本だったなと思います。

(1)実在のモデルのいる人物と、ドラマオリジナルの人物が入り乱れていますが、どの人物もきちんとドラマ上の役割を明確にして描かれていたこと。
(2)ヒロインの価値観だけが正義だと決めつけず、多面的で公正な視点が感じられたこと。
(3)丁寧に複線を張ってきれいに話をまとめたこと。
最近、こういうちゃんとした脚本のあるドラマってあんまり見ないような気がします。

例えば『ゼタ』の女性編集者として登場した加納さん。モデルとなった女性は、実際には編集長の深沢さんのモデルである長井勝一さんの奥さんだったそうですが、ドラマでは深沢さんと袂を分かっています。
『自分は表に出ず、夫の仕事を陰から支える妻』であるヒロイン・布美枝に対して、『自分の名前を表に出し、男性と肩を並べて働く女性』という対局の立場にある女性を登場させる意図があって、実在のモデルと全く違う人生を辿る事になったのではないでしょうか。
後のエピソードでは、加納さん自身が「布美枝のような生き方もありだったかも。でも両方を取る訳には行かない。自分は自分の意志でこの生き方を選んだ」という意味の台詞を口にしています。
自分を立てるか夫を立てるか。女性の二つの生き方を、どちらも否定しないのがこのドラマのポイントだと思います。
また、「大きくてやりがいのある仕事がしたい」という加納さんと「大手にはできない自由な仕事がしたい」という深沢さんの考えも、「どちらもあり」という書き方がされていたと思います。

それとこういうストーリーで扱いが難しいのが「才能」の問題。NHK的には「努力と根性が報われる」話が必要なんだろうけど、漫画を描くにはセンスも必要。努力だけではどうにもならないこともある。
漫画家を志しながらも自分独自の作風を確立できず挫折したはること、職業としてクリエイティブの道を目指すことはないが、人にはないセンスの持ち主として描かれる太一の対比は上手いと思いました。
(太一にはセンスがあるから、無名時代の水木マンガの面白さが分かったというのも説得力があるし、最終週に「沢山いる水木ファン」を象徴する存在として出てくるという役割も果たせましたよね)

最初に二人が安来で「べとべとさん」に会って(実際には青年が茂かどうかは作中でははっきりしないが、視聴者にはたぶんそうだろうと思わせる演出ができている)、最後も同じシュチュエーションで終わるのも随分長い伏線だと思いましたが(このためのオリジナルエピソードだったのかとちょっとびっくり)、これに限らず丁寧に伏線を引っ張っていたのも印象的でした。

***

でも多分、女性の視聴者の心を捉えたのは、絶妙なタイミングで茂さんが奥さんに『好きだよ』『感謝してるよ』『おまえ(たち)の事をちゃんと考えとるよ』みたいなサインを送る所だと思います(笑)。
昭和の男である水木先生は、絶対にはっきりと口に出しては言いませんが、間接的に、「ああ、今のはそういう意志表示だな」と割とはっきり分かるサインが出てくる(さりげなく肩を叩くとか、何気ない風を装った頼みごととか)。布美枝さんのハートも視聴者のハートもがっちりキャッチ(笑)。ああいうの、上手いなあと思いながら見てました。

***

あと最近は、特撮出身の役者さんが結構NHKに出てくるんだなーと改めて思いました。
ケータイ捜査官のケイタは地味に順調に出世してるし。ゲキレッドとゴーオンシルバーも割と目立つ役でしたが。
個人的には、アヤセ@タイムブルーの城戸くんと、真司@龍騎の須賀ちゃんが久しぶりに見れたのが嬉しかったです。二人とも相変わらず男前でした。芸能界には男前がたくさんいるから大変かもしれないけど、頑張って欲しいです。

あとやっぱり、このドラマのお陰で今年はあっちこっちで水木ブームが起きてて、水木ファンとしてはなかなか楽しい夏でした。ありがとう。

***

Web拍手へのお返事は次のエントリーで。

岡山から来た奇跡の男

2010-09-24 00:16:00 | 日記
タイトルでフェイントかましてすみません。
今回は大ちゃんの話ではありません。

9月6日の「カンブリア宮殿」ごらんになりましたでしょうか?
猫駅長たまちゃんがニュースになる時、よくたまちゃんを抱いて一緒に映っている品の良い初老の紳士。
和歌山電鉄の親会社・両備ホールディングス社長 小嶋光信。
地方公共交通の救世主。そして岡山県スケート連盟会長。

番組ではスケートには触れられませんでしたが、氏の手がけて来た地方交通再生のスキームが、倉敷のリンク存続運動に生かされているのはよく分かりました。

負担の大きな初期投資を財政基盤の大きな所が担い、実際の運営はノウハウを持っている所が担当する。
初期の設備投資を官が負担し、実際の業務を両備が担当する三重のフェリー会社のスキームは、ヘルスピア(旧サンピア)倉敷のリンク運営に当てはまりますね。
初期の設備投資を加計学園が。そして実際の運営をスケート連盟が。
地道なコスト削減のため、和歌山電鉄のお偉いさんが自ら売店の売り子をやっている姿を見て、倉敷で自らザンボニーのハンドルを握る大上君の姿を思い出しました。

改めて、草の根運動の熱意や大ちゃんの善意をひとつの形にまとめあげてくれた小嶋さんの手腕があってこそのリンク存続だと言う事がわかりました(同時に、彼のスキームが交通だけでなく様々な分野に応用できることもわかりますね)。こういう人がいてくれたことが本当に有難い。

社会貢献への高い志と、ビジネスマンとしての経営感覚のバランスの取れた、素晴らしい経済人だと思います。

***

実は密かに、大ちゃんの夢のスケートアカデミーは岡山の地に実現するんじゃないかと思っています。
小嶋さんの尊敬する津田永忠は、地元では名君として名高い池田光政公に仕えて閑谷学校を作った人だったんですね。
閑谷学校は、藩士の子弟でなくても、一般庶民が誰でも学べる初の公営の教育機関として画期的な存在だったそうですが…スケート版閑谷学校、どうですかね?

***

拍手コメントへのお返事

□2010/9/21 10:33
かっこよかったですねえ。私はダンスのことはよく分かりませんが、あの見せ方のセンスとリズム感はやっぱり天性なんでしょうか。

□2010/9/22 9:56
いや、私も正直他人に対してそんなに心が広い訳ではないです(笑)。でも大ちゃん自身も「僕もできてる訳ではないですが…」とさらっと言ってて、そこが彼の良い所だと思いました。最初に「ノクターン」を見た時に「彼の目には一体何が見えてるんだろう?」と思ったものですが、やっぱりちゃんと正しいものが見えている人だと思います。

終わらない未来のために

2010-09-21 10:58:00 | 日記
※タイトルの元ネタはタイムレンジャー。

そういう訳で、↓こちらに行って参りました。

SEND TO 2050 未来づくりアジアこどもサミット

今回のイベントをざっくり説明すると、まずは「未来づくりコンテスト」として、関西地域の中学生たちから作文形式で未来へのビジョンを募集。色んな審査を経て、関西2府3県と4つの政令指定都市の代表計9名を選出。この9人を中心に、子どもたちからの未来へ向けての提案やディスカッションを行うという非常に社会性の高いイベントです。

会場はおなじみなみはやドーム。氷の張ってない時に行くのは初めてでした。いつもはリンクがある所が無料招待枠(小・中・高校生)の客席になっていて、私たち大人枠はスタンド席という構成。
司会はFM OSAKAのDJさんが男女コンビで務めていらっしゃいました。

SEND TO 2050の紹介映像で幕開け→DJコンビの挨拶→ゲストの紹介映像という流れ。大ちゃんは、EyeとLuv letterの映像に、何故かEyeと道の音楽。映像はどちらもFOI(08Eyeと09るぶれたー)だったと思います。

まずは9人の代表団の自己紹介と、全員で話し合った「関西全体の未来づくり」の発表。
その後、フィリピンと中国の代表者の「未来づくりスピーチ」(フィリピン代表の女の子はビザの発行が間に合わず来日できなかったため、映像での参加)。
その後、ソナーポケットのミニライブを挟んで、地元北河内の中学生&先生たちによる発表。
それからORANGE RANGEのYAMATOさんが、プロジェクト代表の森下さんと一緒に登場。
ORANGE RANGEとしての参加は色々制約があって無理でも自分一人でもどうしてもここへ来たかったというYAMATOさんは、出るなり感極まって泣き始め、会場を驚愕させました。元々森下さんの理念に共感していたみたいで、しっかりと意見を述べる子どもたちの姿に感じる所もあったのだろうと思います。それにしてもセンシティヴな人だ。

***

その後、代表団9人に中国代表の女の子を加えた「サミット」の後、大ちゃん登場。やっぱり森下さんが一緒でした。
今回はゲストも含めて参加者が全員「SEND TO 2050」のTシャツを着ていたんですが、大ちゃんはオレンジのTシャツの袖口から黒の五分袖を覗かせてるのがお洒落でした。
シーズンインに向けて今日も練習してから、出番ギリギリに駆け付けたという割にはすごく元気。
(そして一部プログラムの順番が変更されていたのはもしかして大ちゃん待ちだったのかも…と思ってしまったり/汗)

まずは森下さんから、大ちゃんとこのイベントの関わりについて。
森下さんとはトレーナーが一緒だった縁で仲良くなり(渡部トレーナーの所属するブライトボディのセミナーにも一緒に参加してましたね)、去年の6月にSEND TO 2050を立ち上げる際に協力を頼んだら即答でOKしてくれたと。フィンランディア杯からの帰国後、関空から直接去年のイベントに駆け付けたというエピソード(復帰特番で紹介されてましたね)も披露してくれました。
最初は「緊張しちゃって上手くしゃべれないんですけど」という大ちゃんに代わって、森下さんが「昨日大ちゃんこんないい事言ってくれてたよね」みたいな感じで話を振ってくれていました。

以下、思い出せる範囲で。※記憶違いや聞き間違いなどあったらすみません。

○アスリートは引退後ではなく、現役で戦っている時こそ子どもたちに伝えられることがあると思う。
○海外で戦っていると、外国の人の、自国への愛国心などを強く感じる。自分の国や自分自身に自信を持つことが必要だと思う。フィギュアはアピールしていかないといけない競技だけど、まずは自分の中に自信を持つことがアピールに繋がる。
○海外へ出る機会が増えるほど日本の良さが分かって、日本が一番好きな国です。謙虚さだったり、はっきり言葉に出さなくても分かり合えたり、そういう海外と違う日本の文化が好きだし大切にして行きたい。
(この辺の話は、森下さんの「アメリカにいた頃、黒人のような服装や言動をしていたが、ある黒人の老人から『お前は何人だ。なぜ俺たちの偽物になろうとするんだ。お前は自分の文化を俺たちに語れないのか』と言われたことをきっかけに自分の生まれ育った地域や文化を見直すようになった」というエピソードに絡んでいると思います)
○自分が競技をする上で色々な人に支えられていることを、昔は理屈でしか分からなかったが、今は実感として感じるられるようになって来た。
○以前は現役を引退したらスケートとは全然違うことをやって見たいと思っていたが、怪我などもあり、自分を育ててくれたスケートの世界に恩返しをして行きたいと思うようになってからすごく楽になった。
○(子どもたちに対して)人は大人になるとどんどん臆病になってくる。挑戦できる今の内に、やりたい事にどんどん挑戦して欲しいし、やりたい事を見つけて欲しい。失敗しても、どんな経験も必ず将来役に立つから。
○(保護者の方たちに対して)子どもたちがやりたいという事を、頭を押さえ付けたりせずに背中を押してあげて下さい。
○完璧な人はいなくて、誰にでも欠点や嫌な所はあるけど、悪い所だけ見て「あいつ嫌い。無理」と思わずに良い所を探してあげて欲しい。自分もそういう事ができてる訳じゃないけど、一緒に努力して行きましょう。

例によって「なんて言うんですかね」を挟みながら、一生懸命言葉を探している様子が印象的でした。
前から思ってたんですけど、大ちゃんて「何を話したらいいか分からない(話したいことがない)」というタイプの口下手ではなくて、上手く言葉がみつからないだけで、言いたい事、考えていること自体は山ほどある人なんですよね。口下手だけど、すごくしっかり色んなことを考えている。「なんて言うんですかね」はそんな彼を象徴する言葉だなと思いました(笑)。
でも話し方も随分堂々として来て、イオン倉敷で「はずかし~~~~っ」とか言ってた頃とは別人のようです。

森下さんとは本当に仲が良いんでしょう、一緒にいて終始リラックスした感じでした。
それとシーズンインが近いからなのか、立ってるだけで全身にパワーがみなぎっているような感じがしました。終始ぴょこぴょこ動き回ってたのが印象的なんですけど、普通に歩いてるだけでバネがはずむような不思議な躍動感があるんです。

大ちゃんコーナーの後はAIさんが登場し中学生(合唱部)たちと一緒に「SEND TO 2050」のテーマソングを歌います。すごく良い歌詞で、AIさんも流石の歌唱力。
そしてこの歌の後、再びゲストたちが登場してエンディングなんですが、ステージの下で出番を待ってる大ちゃんが、例によって歌に合わせてぴょこぴょこ弾んでいるのが見えました。
そして登場時、ジャンプしながら登場(角度的に見えづらかったんですが、多分1回転くらい回ってた)。「世界に誇れる日本に、そしていい世界にして行きましょう!」と挨拶。
エンディングには、詩人のきむさんと画家の大城清太さんも来ていました。あと、スマイルの2人はちょこちょこ出て来て客席へのインタビューなどをやってました。

その後全員で、観客席の子どもたちを背景に記念撮影(このニュースの写真)。
この後更に、舞台に出演した子どもたち(先生含む)を交えての撮影もありましたが、大ちゃんはずっと楽しそうに他のゲストの方たちとしゃべりながら、落ち着きなくぴょこぴょこ動き回ってました。

***

主催者の個人的な人脈で出演者が集まっている事。しかし単なる仲良しグループではなく、理念への共感が根底にある事。個人の理念が出発点となり、それに共感した仲間が集まり、企業などを巻き込んでプロジェクトとして動いている感じは、ちょっとFOIにも似た所があるなと思いました。多分大ちゃんはこういうことに共感できる感性を持っているし、出会い運も持っているし、将来的には彼自身がムーブメントを起こしていける可能性も持ってるんじゃないかなーなんて考え過ぎでしょうか。

それにしても、スタンドから見ててアリーナ席の子どもたちの盛り上がりっぷりが凄かった。特に後半から終盤にかけて、誰のファンという感じでもなく全体にテンションが上がって来て、最後に写真を撮る時にはみんなキャーキャー楽しそうにはしゃいでるのに圧倒されました。若さってスゴイ。
難しい年頃の子たちを集めてこれだけ真面目な話をさせて、尚かつこれだけ楽しませるってすごいことだなと思います。

***

拍手コメントへのお返事

□2010/9/19 20:11
FOIだけは、出演予定者に大ちゃんの名前がなくても安心してチケットを買えますね。荒川さんの、アマチュアスケーターへの対応もずっと一貫していると思います。
大ちゃんのファンとして、今年はいつになく不安材料のない形でシーズンに向かえてるから、逆に騒ぐ必要もないのかなという感じもします。もちろん試合では上手くいかないこともあるでしょうが、それも含めて楽しみに待ちたいですね。

□2010/9/19 23:33
コメントありがとうございます。来年もまた観に行きたいなーと毎年思わせてくれるのがすごいですね。

コンセプトでは夢を語れ

2010-09-18 23:17:00 | 日記
FOI(フレンズオンアイス)の話、ちょっとだけ続きます。
私これ毎年書いてるような気がするんですが、プロデューサーとしての荒川さんの仕事ぶりには毎年感服しております。
私も近頃本業の方で、小さいイベントの企画とか運営とかやってるんですが、大変ですよ本当に。やるのも大変だし、続けて行くのはもっと難しい。
FOIみたいな大きな企画を動かして、しかもそれを5年間続けてるのは本当にすごい事。周囲のブレインも優秀なのだと思いますが、そういう人たちを集めること自体が既にシゴトの才能ですから。
見習わなければいけないなあ、という気持ちと、正直真似できないなあ(笑)という気持ちの狭間で揺れながら楽しく見ています。

***

何も考えずに目の前の演技や演出だけを楽しみ、あれがよかった、あの人がよかったというのも、ショーの楽しみ方として何ら間違った所はありません。

でもこのFOIというショーを総括するなら、舞台の上に出てきたものだけでなく、その根底に流れているコンセプトを見ずして、このショーの本質は語れないと思います。

このショーが他とは違うこと。それはスケーター自らの意志で発案し、企画し、協力し合って創られたショーだということです。
それが「どんな意志によって創られたのか?」が分かれば、「何故こんなショーなのか?」もわかります。
そしてその「意志」がどんなものなのかは、誰にでも簡単に分かるはずなのです。だってショーの開演前、わざわざ字幕入りでアナウンスされてるから。

自分を育ててくれたスケート界に恩返しをし、これからのスケート界を担う子供たちに夢とチャンスを与えたい。
(うろ覚えですが意味はこういうことだったはず)

2006年、第1回のFOIは、今から思えば手作り感が強く、手探りでの開催だったことが伺えますが、その当時からコンセプトは明確でした。
あれから5年たってショーとしては年々グレードアップしていますが、このコンセプトがブレることはなく、当時の、仲の良い仲間が集まった和気藹々とした雰囲気も失われていません。

前のエントリーにも書きましたが、ひとつ事業を起こそうと思うと、必要になるのはヒト・モノ・カネ。
でもその前に、まずは夢を語る事って大事なんだなと、このアナウンスを聞いて改めて思いました。

第1回のFOIが開かれた当時は、トリノ五輪の後の荒川ブームが続いていたから、ブームを利用すればヒトもお金も比較的楽に集まっただろうけど、ブームありきで集まった人たちはブームが終われば去って行く。
でも最初に夢のあるコンセプトを打ち立てていれば、夢に共感して集まった人が残ります。
5年経って出演者の入れ替わりもありましたが、独特の暖かい雰囲気が変わらないのは、単なる仲良しグループではなく、夢を共有している仲間だからかも知れません。

***

厳しい競技生活に青春時代を捧げてスケートに打ち込んで来ても、フィギュアの選手生命は短い。でもプロスケーターとしてショーで滑るという世界があれば、競技生活を終えた後も華を咲かせることができる。人間、先の見えない中での努力は辛いもの。でも目標とする将来像をイメージできれば頑張れるというものです。
(昨今の発言や、ショーでの演技の充実ぶりを見るに、荒川さんて本当にアマチュアの頃からプロになるのを夢見てたんだろうなあ…と思います)
ショーの世界が充実すれば、そこを目指してアマチュアの世界も活性化するし、アマチュアの選手たちが活躍することでフィギュア全体への注目が高まり、ショーの集客にも繋がる。
プロとアマチュアが相互にお互いを盛り上げる良い循環を作り出すために。
(1)自分はプロスケーターとして、誰かがショーに呼んでくれるのを受け身で待つだけでなく、自ら発信し、活動の場を広げる努力をする。
(2)アマチュアの選手たちには、まずは試合で結果を出すよう激励する(今回のFOIでも、現役組についてコメントする時には必ず『試合で応援してあげて下さい』というような意味の事を言っていました)。
(3)そしてキッズスケーターたちには、成長した時に今この時感じた夢や憧れがパワーになるように、ショーの華やかな舞台を実際に体験して貰う。

***

そしてそういう流れの中に、今回のDAISUKEプロデュースによるメンズナンバーがあったと思いました。
↓これ、すごくいい記事でしたね。
JOC-TEAM JAPAN DIARY : 高橋大輔選手「セカンドキャリアのステップ」プロデューサーに挑戦

思えば2006年、荒川さんがトリノ五輪でアジア人として初の金メダルに輝いたことが直接のきっかけとなって、最初のFOIが実現しました。
そして4年後のバンクーバー五輪で、大ちゃんがアジア人として初の男子のメダリスト(そして世界王者)になった。
ある意味4年前の荒川さんと似た立場に立ったことで、荒川さんの始めた「スケーターの立場からの発信」を引き継げるようになったのかなと思いました。
勿論、競技を続ける以上試合が優先なので、きっぱり競技と決別した荒川さんのように一からショーを立ち上げる余裕はありませんが。
日曜日の昼だったと思いますが、荒川さんが「大ちゃんが五輪や世界選手権で結果を出したらやって貰おうと前から思っていた」と発言した時、大ちゃんは驚いていましたが、私は「ああ、やっぱり」と納得しました。
FOIのような活動が、荒川さん1人だけのものなら結局は『点』で終わってしまう。でも大ちゃんがその流れに続けば、彼の独特のセンスと人脈で、また違った新しい試みが生まれるし、それがまた次へと繋がる。そうやってどんどん『点』が『線』へと繋がり、そうこうしている内にかつてのキッズスケーターたちがシニアへ、そしてプロへと育って行って…と考えると、わくわくして来ませんか?

***

来年の事を言うと鬼が笑うと申します。この記事を鬼が呼んだら大爆笑されることでしょう。
でも私がFOIが好きなのは、過去から現在、そして未来への流れを感じられることも大きな理由なのです。単に今、見て楽しいだけでなく、今のこの流れが未来に繋がっていると感じられる。それがこのショーの、他にはない魅力だと思います。

***

拍手コメントへのお返し

□2010/9/16 12:43
コメントありがとうございます。私も来年も絶対行きたいです!

□2010/9/18 15:51
こんにちは、コメントありがとうございます。
マンボは、試合に向けて衣裳や髪型も変わるだろうし、振付けも詰めて行くだろうし、また違う感想も出て来ると思います。
グループナンバーは新しかったし、かっこ良かったですよね。
あと、私はファンのテンショが下がっているとは全く感じないのですが、何を見てそう思われたんでしょう?
大ちゃんのファンはちょっと自虐的な所があるような気はしますが、長く欧米主導だったフィギュアの世界では仕方がない部分もあるのかなと思います。

友を選ばばFOI(大輔編)

2010-09-12 21:27:00 | 日記

ルンバがサンバがチャチャチャが新しい朝を告げる
踊ったことのないリズム東京に朝を告げる
(「TOKYO LOVE」The BOOM from極東サンバ

そういう訳で。
なんて呼んだらいいんだろう、な大ちゃんの新SP。

実は私、このプログラムにあんまり「笑い」の要素を感じないんですよね。どうも、「黒いオルフェ」の印象が頭に残っているようで。「陰」の要素なんてどこをどうさがしても見あたらない底抜けに明るい音楽とダンスだけど、実はその明るさは普段の生活の苦しさを忘れたいっていう、現実の辛さの裏返しだったりするという。
そしてそれ以上に、黒人のとんでもないリズム感にひたすら圧倒される映画。あんなの、日本人には絶対に無理だと思ってたのに…やっぱり、踊っちゃうのねあなたは。

ラテン系の音楽は基本的にダンサブルなものだとは思うんですが、特にこれに使われる曲(特に後半で使われてる曲)は、なんか、座って黙って聴いてるのがアホらしくなるような曲です。「聴く」音楽じゃないでしょ。「踊る」ための曲でしょ。という感じで。
ちょっとムーディなゆったりしたリズムの前半から疾風怒涛の勢いでステップに突入して行く辺りで、そこがつるつる滑る氷の上だということを完全に忘れる(ボーンさんてこういう盛り上げ方上手いですね)。

まだ細かい部分で詰め切れてない部分があるのかも知れないけど、そんな事はどうでも良い(というか、競技で戦って行くことを考えると、振り付けてすぐに簡単にできてしまうようなものでは逆に困る訳で)。
シーズンの終わりにどんなダンスになっているのか、とても楽しみです。できれば東京で一緒に踊りたい。

***

そんな訳で新SPも良かったんですが、個人的には今回メンズナンバーを強く推したい。これ、もっと評価されても良いと思います。
プロデューサーDAISUKEとしても、ダンサーDAISUKEとしても。

基本的に「止め」の動きを多様するストリート系のダンスを、スケートの「滑る」動きに落とし込むのは素人が考えても簡単ではなさそうです。
加えて、フィギュアのファンは保守的なセンスの人が多そう(オペラとかバレエとか)なので、そういう人たちのお気に召すものではないかも知れませんが。
個人的には、今回一番の見物でした。
フィギュアスケートって、本来バレエ的な表現だけでなく、ジャンルにとらわれずにいろんな事が表現できるもののはず。
にも関わらず、今、一番新しいストリート系のダンスのかっこよさを、ここまで『Cool』に表現したものは、私は今までほとんど見たことがありませんでした。

まあ、あの「HipHop白鳥の湖」でさえ「なんちゃっては恥ずかしい」という理由で当初は気が進まなかったという大ちゃんですから、「ダサいものは絶対に見せられない」という決意もあったことでありましょう(笑)。

企画を成功させるのに必要なのは「ヒト・モノ・カネ」。中でも重要なのが「ヒト」の要素でございます。こういう時、普段からどういう「ヒト」と繋がりを持っているかがモノを言います。
今回、振り付けを手がけたのはプロのストリート系のダンサーの方という事ですが(千秋楽で大ちゃんから紹介されていました)、こういう、今までフィギュアに縁の無かったであろう人材を「こういうことがやりたい、じゃあこういう人が必要だ」で連れて来れるのもシゴトの才能なんですよね。

最近はプロの振り付け師でも、専門分野を持つ陸上のダンサーとコラボで振り付けたという話をよく耳にします。
今回のプログラムも、振り付けの原型をその道のスペシャリストであるダンサーの方に頼んでいますが、それを氷の上の動きに落とし込むのは当然大ちゃん自身が大きく関わっていると思います。
「本物の、ストリートのかっこよさを氷の上で再現してみたい」そんな大ちゃんの思いが伝わって来る、まさにCOOLなプログラムでした。

***

そして。
かつてあの「白鳥の湖」を踊ったくらいなんだから、「この手のダンスは一番踊れて当然だよね」と思われていた大ちゃん、見事に期待に応えて、期待以上のものを見せてくれました。

なんて言うか、いい感じに力が抜けてるんですよ。ああそうか、こういうのは力いっぱい、元気いっぱいじゃなくて、ちょっと抜け感があるのがCoolなんだなと。
そのくせリズムはばっちり合っていて、ピタ、ピタ、ピタとポーズが決まるのが気持ち良くて、何か変な脳内物質が出て来そう。しかもそのポーズがまたいちいちかっこいい。
見てて腰が抜けそうになる程かっこ良かったです。映像で見れるまで間が空くのが辛い。何回でも繰り返し見たいのに。

これだけのメンバーが集まる機会というのは他になかなかないかも知れませんが、是非いつかまたどこかで見たい、と思いました。

***

そう言えば大ちゃん、プーマのTシャツの上から、この夏の彼のマストアイテムとおぼしき救命胴衣みたいなベスト着てましたね。ああいうのをさりげに私物として持ち込むところがなにげにツボだと思います。