ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

グランファルーンのお祭り

2012-06-11 22:25:00 | 日記
なんかもう遠い昔のようですが、国別対抗戦まで遡らせて下さい。略称はWTT。ワールドチームトロフィーの頭文字のようでございます。
前回は大ちゃんが怪我でお休み中=私の中でのフィギュアお休み中だったためどんなノリなのかよく分からず、JOみたいなお遊び試合なのかと思っていたのですが、終わってみれば色々と興味深い大会だったので、今更ですが振り返ってみたいと思います。


■SP 魂の庭で世界のてっぺん

完璧4-3決まった全日本はとりあえずおいといて。

GPF:4T失敗・3lzもコンボにできず。

4CC:4T失敗したけど3lzをコンボにしてリカバー

世界選手権:4Tは成功したけどコンボにしようとして失敗

…と続いて来たSP4回転への挑戦(そしてリカバリー)の系譜、ここに完結。
自分の失敗を正面から受け止めて未来へ活かす大ちゃんならではなのかも知れませんが、積み重ねって大事だなと改めて思わされました。
GPFでのSP4回転にご不満だった皆様(結構いるらしい)に改めて言いたい。
一つの山のてっぺんまで行ったら、そこから上はもう行けない。もっと高い山に登るには、一旦山を下りないといけない。
思えばNHK杯は4回転抜きで登れる山のてっぺんだったのかも知れないですね。勇気を持ってそこから下りたからこそ、もっと高い山に登る事もできたのです。拍手。
(大ちゃんがジェットコースターなのって、そういう気質も要因のひとつなんだろうなあ…)

94点でショートの世界最高得点って事に関しては、正直、「え、そうなの?」って感じでした。だって全日本では96点貰ってたし(それに相応しい演技だったと思いますけど)。余所の国の国内戦では3ケタ出たって話も小耳に挟みましたし。
国際試合ではまだ94点て出た事なかったんだなーと思って、そっちの方が意外でした。ていうことは、まだてっぺんではないのかもですね。国際試合で4-3決めればもっと上に登れる!かも(無責任)。

それと本当に4回転が安定して来ましたね。
復帰してから去年の年末くらいまでは、試合前の公式練習でも中々決まらず、本番で奇跡起こす勢いで気合入れて一発勝負…みたいな印象がありましたが(それでも先シーズン何回か決めてるんだからそれはそれでスゴイ)。
年が明けてからは公式練習でコンスタントに決まるようになって、試合でも自信を持って跳んでるように見えました。何度も同じ事を書くようだけど、あの大怪我からここまで持って来るの本当に大変だったと思います。医療関係者の皆様、指導陣の皆さん、そして何より大ちゃん自身に改めて頭が下がる思いです。


■FS ブルースをもういちど

高橋大輔、ゾーンに入りました。
私が生で観た限りでは、大ちゃん自身が今でも語る『名古屋のファントム』。あと、大ちゃん自身には不満の残る出来だったからも知れませんが(最初の4回転で転倒してるし)『仙台のロミオ』もそんな感じ(私に取っては)。後半なんてジャンプ失敗する感じが全然なくて、終わりに行くほど観客が引き込まれてわーっと盛り上がって行くのが体感できる、そんな感じ。
今回はテレビ観戦だったので確かな事は分かりませんが、あの観客が演技を終わるのを待ちきれないかのようにすごい勢いで立ち上がる感じは、正しくゾーン。
最後のステップに入る前、お客さんがすごく嬉しそうなんですよね…あそこまで反応してもらえたら、大ちゃんもさぞ気持ち良かっただろうと思います。

そして何より、ライバルのはずの他国の選手たちからの喝采と祝福。
日本チームのキス&クライで皆大喜び→何か上の方が騒がしい???→カメラが引くと、チームジャパンの頭上に他チームの選手たちが集まって大喜び(むしろ、チームジャパンより派手に騒いでいたような)。
あの構図に何やら象徴的なものを感じたのは、高橋大輔ファンの欲目というものなのでしょうか。

私正直素人だしフィギュアの採点なんてめんどくさくてあんまりさわりたくないんだけど。
今回のFSではチャン選手のPCSを上回ったんですよね。今シーズン初めての事じゃなかったかと思うんですが(←調べろ)。
もちろん今回はチャン選手が本調子じゃなかったというのもありますが。
ただ今シーズン、チャン選手がミスしたり精彩を欠いたりしていても、大ちゃんがPCSで彼を上回ることはなかった。そしてそれに対する異論の声がGPFくらいから結構大きくなっていたのも事実です。

そういう異論の声に、大ちゃんのファンが同調して声を上げる必要は、私はないと思ってます。
だってスケートに関係ない一ファンが声を上げても、『それは自分が好きだからそう感じるだけでしょ?』で終わりになるから。
こういう事は、ファンを含めた『自分』ではなく、『他人』に言わせるから意味があるのです。そのためには、それに見合うだけの演技をする必要がある訳ですが。

今シーズン通して聞こえて来た『ダイスケの点、低すぎ!』の声は、むしろ『他人』の口から聞こえて来たと思います。
海外のフィギュアファンはもとより、各国の解説者やコーチ、元選手など。日本の一選手に肩入れする義理もなく、フィギュアに関する経験も知識も豊富な関係者からの声にはそれなりに重みというものがあると思います。

もちろん、こういう外野の声がいくら大きくても、過去の試合の結果を覆せる訳ではありませんが、だからと言って決して無意味ではないと思うんですよね。
昨シーズン、点数的には報われているとは言い難かった『マンボ』が、『音楽と調和した演技はもっと評価されるべき』という採点の変化に結びついたように、審判の出した結果に対する外部の『評価』は見えない形で未来に花開く…んじゃないかななんて思ってます。
これもファンのヒイキ目って言われたらそれまでだけど。

ともかく、『国別』というチームの境目を飛び越えての、ライバルであるはずの海外の選手たちからの惜しみない祝福と賞賛。あれは点数以上に大きな、大ちゃんが得た演技の対価だと思います。

***

※タイトルはアメリカの作家ヴォネガットの小説「猫のゆりかご」から。この小説には「ボコノン教」という架空の宗教が登場するんですが、この宗教の概念として「カラース」というものが出て来ます。
「民族、制度、職業、家族、階級など一切の領域にとらわれず、神の御心を行うためのチーム」の事だとされているのですが、この「カラース」の対義語として「人間が誤って作ってしまう間違ったカラース。それらしく見えても、ボコノン教的には無意味な存在」を表すのが「グランファルーン」という言葉なのだとか。作中には、グランファルーンの例として、「同郷・同窓会、共産党、アメリカ愛国婦人団体、ジェネラル・エレクトリック社、国際秘密共済組合、あらゆる時代のあらゆる大陸のあらゆる国家など」が挙げられています。

マルケイ選手が“WE WERE A ONLY ONE BIG COUNTRY!”と呟いていましたが、本来国と国とで争う国別対抗戦で、却って『国境を越えて心がひとつになりました』みたいな空気になったのは何やら因縁めいたものを感じます。

※ちなみにボコノン教は、教祖本人が「こんなの嘘っぱちだ!」とか言ってる宗教です。信じてはいけません。


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でも私にとってはある意味バイブル(笑)。