報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

イラク国民議会選の茶番(2)

2005年02月01日 15時41分41秒 | ■イラク関連
 世界の主要メディアによると、イラクの国民議会選挙は大成功のうちにめでたく終了したらしい。
 世界は諸手を上げてこの茶番を「民主主義」への第一歩と賞賛している。このすばらしき「自由選挙」を統括管理しているのは、10 万人とも20万人とも言われるイラク国民を殺戮し、イラク国土を破壊してきたアメリカ占領軍だ。このような占領軍によって実施された選挙に、はたして正当性や公正さがあるのだろうか。

 イラク占領軍の最高司令官ジョージ・W・ブッシュは、2000年の大統領選挙でインチキをして、それでもやっと537票差で大統領になった男だ。昨年の米大統領選挙でも、信頼性に疑問のある「電子投票」とやらを導入して、集計結果が形として残らないようにした。ディスプレイ上の数字があるだけで、もはや票の数えなおしすら不可能な選挙にしてしまった。そしてめでたく二期連続の大統領となった。自分の選挙に不正を働いた男が、莫大な石油利権の存在する占領下のイラクで、まともな選挙を実施すると考えられるだろうか。

 この選挙に正当性があると主張するのは、かつて中国に存在した「満州国」を完全な主権を持った独立国だったと言うようなものだ。その国の国民が参加する政府だからといって、それが主権を意味するわけではない。たとえ直接選挙が行われたとしても、他国に占領された状態で行われる選挙によって選ばれる人物が、はたして国民の利益を代表する存在となるだろうか。歴史はこのようにしてできた体制を「傀儡政権」と呼んでいる。

 アメリカは世界の警察として、世界の独裁を倒し、世界に「民主主義」をもたらす救世主なのだろうか。
 たまたま、独裁者フセインのイラクに石油があっただけなのか。
 たまたま、ブッシュは、石油産業界出身だったのか。
 たまたま、チェイニー副大統領は、石油関連会社ハリバートンの元CEOだったのか。
 たまたま、チェイニー夫人は、世界最大の軍需企業ロッキード・マーチン社の元取締役だったのか。
 たまたま、ライス国務長官は、大手石油会社シェブロンの元取締役だったのか。
 たまたま、現アフガニスタン大統領カルザイは、石油会社ユノカルの最高顧問だったのか。
 たまたま・・・

 石油産業と軍需産業の利益代表で構成されてきたブッシュ政権は、15兆円もかけてイラクを占領した。それは純粋にイラクの「民主主義」を実現し、主権をイラク国民に譲り渡すためだったのだろうか。ブッシュ政権は、イラクの莫大な石油の埋蔵量なんぞには何の興味もなかったのだろうか。問うだけ馬鹿げている。

 このようなアホくさい選挙の実施を、世界中の政府、メディアが賞賛しているようでは、人類の未来は相当に暗い。しかし、世界中の人々がこんなまやかし選挙やまやかし報道を信じているとは、僕は思っていない。抑圧され、殺戮され、略奪され続けてきた何十億という人々には真実が見えているはずだ。こんな茶番を無邪気に信じられるのは、茶番による恩恵を享受してきた少数の富める国の人間だけだろう。

 投票所に足を運んだ者も、このイラク国民議会選挙の茶番を理解している。
 では、なぜ彼らは投票所に足を運んだのか。
 投票しなければ、また容赦なく殺戮されるからだ。
 またひとつこの地上にアメリカの傀儡政権が誕生する。
 我々は、それをこの眼で目撃するわけだ。