報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

ライブドア事件の深層

2006年09月05日 17時19分54秒 | □経済関連 バブル
昨日、ライブドアの元社長堀江貴文氏の初公判が行われた。午前中からテレビは、ライブドア事件の報道を特集していた。

こうした事件に際して日本のメディアはいっさい事件の本質を報じない。堀江=悪=裁きを下せ!、というような単純な世論誘導が行われている。

メディアが、誰かを「悪」と決めつけ、そして容赦なく断罪する時、そこには国民の眼から遠ざけたい真実があると思って間違いない。


堀江氏は、粉飾決算やインサイダー、マネーロンダリングなどを行った。確かにそれは事実だろう。しかし、堀江氏の逮捕理由は粉飾決算やマネーロンダリング、インサイダーとは関係がない。

粉飾決算をしていない企業が日本にいったい何社あるだろうか。粉飾決算を徹底的に取締ったら日本の企業は全滅するかもしれない。インサイダーやマネーロンダリングしかりだ。みんながしていることをライブドアもしただけにすぎない。では、なぜ堀江氏だけが逮捕されたのだろうか。

そもそも堀江氏と小泉政権とは密接に結びついていた。昨年の911の衆院選挙で、堀江氏は亀井静香氏への「刺客」として、無所属ながら小泉政権の全面的バックアップを得て広島6区から出馬した。竹中平蔵大臣も堀江氏を褒め称えた。堀江氏は、竹中大臣の唱える市場原理主義の体現者だった。竹中大臣の唱える市場原理とは、徹底した弱肉強食の経済であり、勝ち馬に群がるハイエナ経済だ。

まさに、堀江氏はサバンナで成功して勝ち馬になり、そしてハイエナに群がられて終わった。

本来なら、政界にパイプを築いた堀江氏には、検察庁は絶対に手を出さない。堀江氏は小泉政権にとって急に魅力がなくなったということだ。いったい何が起こったのだろうか。その真相と深層は、半世紀は明らかにならないだろう。しかし、ある程度のことは読むことができる。


一番のヒントは、やはり堀江貴文という人物にある。
彼は、型に嵌ることを極端に嫌っていた。
守旧的な既成秩序を嫌悪していたと言っていいだろう。

ライブドアがプロ野球に参入しようとしたとき、超保守的団体である日本プロ野球協会に、堀江氏の「型破り」が嫌われ、参入を許されなかった。長髪、Tシャツ姿で通す堀江氏を、プロ野球協会の重鎮は「どこの馬の骨かわからんような奴」という表現を使った。守旧派の間に存在する、あうんの呼吸を重んじないアウトローという意味だ。

しかし、堀江氏のそうした型破りは、日本の政財界を牛耳る長老たちにとっては、それほど本質的な問題でもなかった。彼らにとって重要なのは、政官財へ恒久的に資金を供給させることだ。カネがすべてであり、スタイルなどどうでもよいのだ。

日本の政官財は成功者にカネを要求する。それは、選挙資金などの直接的なゲンナマである場合もあるし、インサイダーなどの情報である場合もある。要はカネにつながるものすべてだ。これにはおそらく見返りはない。一方通行であり、出て行くだけのカネだ。

泥棒が泥棒にたかるシステムだ。そういう意味では、堀江氏のような存在は泥棒界の末端にすぎないと言える。誰かが危険を犯して盗んできた物のウワマエをはねる方が楽でリスクもない。泥棒を続けたければウワマエをよこせ、ということだ。要するに泥棒同士の掟なのだ。

しかし、堀江氏はそれを拒否したのだろう。もう、そんな時代ではないと、彼は言いたかったのかもしれない。

自分の頭脳一本で巨額のカネを生んだ堀江氏は、アタマもなく、努力もせず、単に地位を世襲しただけで、人のカネにたかろうとする連中に我慢ができなかったのだろう。そんな連中にくれてやるカネは彼にはなかった。つまり、掟破りだ。

しかしそれは、自分は人にたかっておきながら、自分がたかられるのはごめんだ、と言っているようなものだ。それが通用するほど甘い世界ではない。

堀江氏は、彼にたかろうとしていた連中は、代々「権力」を世襲して来たということを理解しなかったのだろうか。権力を乱用するのに、アタマも才能も努力も必要ないのだ。掟を破った者を葬り去ることなどいともたやすい。

政官財のたかり屋は、堀江氏を葬り去る前に、ライブドアを利用してかなりの荒稼ぎをしたようだ。そして、損をしたのは当然、一般投資家だ。総額6000億とも言われる。


実際の真相はもう少し違ったものかもしれない。
しかし、はっきり言えるのは、堀江氏は悪いことをしたから捕まったのではないということだ。確かに法律に触れることをした。しかし、みんな同じことをしているのだ。日本のシステムでは法律違反をしただけでは誰も捕まらないのだ。堀江氏は、泥棒世界のルールを無視し、秩序を乱すという大罪を犯したために処分されたのだ。これを、泥棒同士の勝手な争いと笑うわけにはいかない。

重要なのは、われわれ国民はこの泥棒たちによって、常にたかられ続けているということだ。
株式投資をしている人だけが、たかられているのではない。
税金が上昇し、福祉予算が削減され、金利は約5年間もゼロだった。
今後も、さまざまな形で国民の負担は増していく。
そして浮いたカネはどこへ消えていくのか。


メディアは、知っていても決して報じない。
悪は討て!と、お決まりの勧善懲悪の旗を振り回して国民の眼を反らしている。
メディアもまた、たかりの一端を構成しているからだ。

三井住友銀行、国有化の危機!?

2006年04月26日 20時34分40秒 | □経済関連 バブル
金融庁が三井住友銀行に週内に一部業務停止命令=関係筋

[東京 26日 ロイター] 金融庁は26日、三井住友銀行が融資先企業に金利スワップを無理に購入させていたのは独禁法違反の優越的地位の乱用に当たり、適正な取引ではなかったとして、一部業務停止命令を柱とする行政処分する方針を固めた。関係筋が明らかにした。
http://today.reuters.co.jp/news/articlenews.aspx?type=businessNews&storyid=2006-04-26T143933Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-211270-1.xml

三井住友銀に業務停止命令・金融庁検討、週内にも
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060426AT2C2600C26042006.html
三井住友銀行に一部業務停止命令へ 金融庁
http://www.asahi.com/business/update/0426/114.html


日経、朝日、読売、ロイターとどこも同じようなことしか書いていない。読者としては、ああ、そうですか。悪い銀行ですねぇ。で、終わりだ。しかし、これはとても重要な出来事なのだ。ここでも、メディアは真実を伝えようとしていない(のは当然である)。

三井住友銀行の独占禁止法違反は事実だ。しかし、他の銀行も同じようなことをしているはずだ。でも、告発されない。なぜだ?

三井住友銀行は、金融庁のターゲットにされているのだ。どういうターゲットかと言えば、告発→銀行弱体化→公的資金投入→国有化→外資へ投売り、という金融庁の黄金パターンのターゲットだ。

三井住友銀行の前には、UFJ銀行が金融庁のターゲットにされていた。2004年10月、UFJ銀行は、金融庁より検査忌避容疑で刑事告発された。後に逮捕者を4人出している。UFJは国有化され解体されたあげく売却されるよりは、三菱東京銀行との統合を選んだ。

もともとUFJは、UFJ信託銀行を住友信託銀行へ売却する予定だった。それを突然撤回し、三菱東京銀行との統合を発表した。UFJ信託を切り離せばグループ全体が弱体化し、いずれ国有化されると予想していたのだろう。UFJの国有化を狙っている金融庁の裏をかいたわけだ。金融庁は刑事告発で迎え撃つが、すでに手遅れだった。

たまったものではないのが三井住友銀行だ。UFJ信託銀行を手に入れてグループの強化を図ろうとしていたのが、突然一方的に破棄されてしまった。それだけならいいのだが、UFJが東京三菱と統合されたために、金融庁のターゲットはUFJから三井住友銀行に移行した。

今回の、業務停止命令(予定)はその第一弾ということだ。三井住友銀行のイメージを低下させ、株価を下げ、経営困難に追い込むという作戦だ。しかし、三井住友もそのくらいのことはすでに予想していたはずだ。そう簡単には金融庁の罠にははまらないだろう。

金融庁は、何ゆえにメガバンクを国有化したいのか?
海外の金融資本が日本のメガバンクを欲しがっているからだ。

破綻した日本長期信用銀行が国有化されたときは、米投資ファンドのリップルウッド・ホールディングスに売却された。そして新生銀行としてスタートした。この過程で、税金をふくめ約7兆円が投入された。そしてたった10億円で売却された。ミスタイプではない。10億円だ。(旧長銀の国有化にはもう少し複雑な裏事情があるのだが、ここでは触れない)

日本の銀行もロクなことはしてこなかったのだが、税金を投入されたあげく、みすみす外資に叩き売られるのも困る。

日本経済の本当の姿

2006年04月21日 21時06分34秒 | □経済関連 バブル
前回は、故・石井紘基衆院議員の「財務金融委員会議録」を元に、日本の国家予算について説明したが、これは予備知識であって、このあと本論に入って行く。石井議員の発言から、日本の経済の本当の姿について学んでいきたい。

(日本の国家予算が二百兆円)一方でGDPは名目で約五百十兆円ぐらいですね。そうすると、このGDPに占めるところの中央政府の歳出というのは、何と三九%に上ります。
(中略)
 さらに、これに、政府の支出という意味でいきますと、地方政府の支出を当然含めなければなりませんから、我が国の場合、これも純計をして、途中を省きますが申し上げますと、大体これに四十兆円超加えなければなりません。そうすると、一般政府全体の歳出は約二百四十兆円というふうになるんです。これは何とGDPの四七%であります。GDPの四七%。
つまり、日本のGDP約500兆円のうち、約半分が日本政府の支出ということになる。石井氏は、「権力が市場を支配し、その結果、市場経済というものを破壊している。」と述べている。そして「ここでは本質的に資本の拡大再生産というものは行われない、財政の乗数効果というものは発揮されない」という結果をまねいている。石井氏は、これを「官制経済体制」と呼んでいる。

健全な経済というのは、社会の中において、おカネが円滑に循環する過程で、資本が拡大して行くものだ。政府の役割は、おカネの流れを阻害する要因を取り除き、流れをよくすることにある。あとは、すべてを市場にまかせるべきなのだ。そうすれば富は拡大再生産されていく。伸びる産業や企業は伸び、不必要な産業や企業は滅びる。

ところが、日本の経済体制の中では、伸びる企業が伸びず、滅びる企業が滅びないというイビツな現象が長年にわたって維持されてきた。こうした経済体制が、日本の経済全体を根本的に歪め、日本経済の体力を奪い続けてきた。その結果、引き起こされたのがバブルである。

日本の総生産の半分が、政府支出というのはどう考えてもおかしい。とても、資本主義とは言えない。「護送船団方式」こそなくなったものの、いまでも基本的には政府によって管理統制された経済であることに間違いない。故・石井紘基衆院議員の指摘は妥当を極めている。

GDPの半分におよぶ政府支出が形になったのが、際限なく作られていく、不必要なダムや高速道路、港湾、空港(農道空港)などに代表される公共事業だ。

日本の国家予算はいくら?

2006年04月20日 23時20分29秒 | □経済関連 バブル
故・石井紘基(いしいこうき)衆院議員のHPの中に、『「国民資産が紙屑になる日」本当の理由』というタイトルがある。開いて見ると中身は国会議事録だった。この中で石井紘基氏は、日本の国家予算について周到な調査を行ったうえで克明に述べている。

この議事録の中でおもしろいのは、石井氏が明確にする予算の数字に、当時の塩川国務大臣が当惑している様子がうかがえることだ。国家の予算を明らかにすることに何の不都合があるのだろうか。

故・石井紘基衆院議員が明確にした国家予算の内容を簡単に解説しておきたい。数字は平成14年度当時のものである。

日本の国家予算には、一般会計と特別会計がある。
われわれが普通、国家予算として知らされているのは「一般会計予算」だ。
これが、81兆円。

日本には、もうひとつ予算がある。
それが「特別会計予算」だ。
これが、なんと382兆円もある。

特別会計の中には、一般会計からの50兆円も含まれている。別個ではないのだ。また、特別会計は、かなりの重複分があるので、純計すると248兆円となる。さらに内部で移転するだけの会計が50兆円あるので、それを引くと200兆円になる。

たいへんややこしいが、
日本の本当の国家予算というのは約200兆円ということだ。

日本の税収というのは、約40兆円しかない。
では、残りの160兆円はどこで賄われ、何に使われているのか。

○石井(紘)委員 二百兆円、国税収入が税プラスその他でもって五十兆円になるかならないかというのに、二百兆円の予算を組まれているということは、これはすなわち国債の発行だとか、あるいは郵貯の資金二百五十五兆円、年金資金百四十兆円、あるいは簡保の資金百十兆円、その他の資金五十兆円というようなものを、投資とか融資に主として充てている。公共事業なんというのは、こういうものでもってかなり投資活動として行われているわけです。

つまり、日本の国家予算の大部分は、国民の財産を使っておこなわれる公共事業である、ということだ。毎年、160兆円も使うほどの公共事業が、はたして本当に必要なのだろうか。


故・石井紘基 衆院議員HP
http://www014.upp.so-net.ne.jp/ISHIIKOKI/

ゼロ金利とは ー奪われ富、儲ける外国資本ー

2006年03月16日 23時21分29秒 | □経済関連 バブル
先日、アメリカの2005年暦年の経常赤字が発表された。
8049億ドルだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060314AT2M1402N14032006.html

アメリカの経常赤字は年々増加している。
2003年 5307億ドル
2004年 6659億ドル
2005年 8049億ドル

アメリカの預貯金率はほぼゼロなので、アメリカは海外の資本によってこの赤字を埋めなければならない。この穴埋めができなければ、アメリカ経済は崩壊する。アメリカ経済というのは常に綱渡りを演じているわけだ。

しかしアメリカは心配しない。かならず海外の資本がこの赤字を埋めてくれるからだ。アメリカ経済が崩壊すれば、共倒れする国家はいくつもある。日本や中国、東南アジアなど対米輸出の比率の高い国がそうだ。特に日本と中国はせっせとアメリカ国債(アメリカ財務省証券)を買ってアメリカの赤字を埋めてきた。

日本がゼロ金利政策を執っているのも、日本のおカネを金利の高いアメリカに誘導してこの赤字を埋め合わせるという意図も含まれている。過去、日本の金利がアメリカの金利を上回ったことはない。経常赤字の拡大するアメリカにとって、日本の金利上昇というのは非常に困るわけだ。

また、日本政府も金利が上昇すると困る。なぜなら日本政府が抱えている負債の利息が増えるからだ。政府の借金を800兆円とすると、金利が1%になると8兆円もの金利負担が生じる。

日銀が量的緩和を解除したものの、金利の上昇については慎重な発言をしているのはこのためだ。金利の上昇は、日米両政府にとって有難くないことなのだ。

しかし、金利ゼロなどというのは尋常な経済状態ではない。これは強奪に等しい。日本人の全預貯金額は約800兆円。金利1%あたり8兆円、3%なら24兆円になる。×5年で120兆円。これだけの国民の資産が奪われたに等しい。

それに対して、
「ヘッジファンドは日本でゼロ金利の円資金を調達し、高い金利のドル資産で運用し、莫大な利益を上げてきた。」
ということだ。
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/tamura/20060113n191d000_13.html


日米の経済構造は歪みに歪んでいる。

堀江貴文氏の蹉跌

2006年03月10日 20時58分12秒 | □経済関連 バブル
多くの方には、すでにライブドア事件は過去のものなのかもしれませんが、僕はまだこの事件にこだわっている。最後の疑問が解けないから。

なぜ堀江氏は逮捕されたのか、という理由だ。
もちろん悪いことをしたからだが、世の中それほど単純ではない。堀江氏と同じようなことをしている人は他にいくらでもいる。にもかかわらず、なぜ堀江氏だけが逮捕されたのか、ということだ。そこには明確な理由がなくてはならない。

堀江氏は、急成長するIT企業を運営するだけでなく、先の選挙では造反組の超大物亀井静香氏への刺客として立候補し、これを機に日本の政治中枢とも太いパイプを築いた。ここまでくると本来、何をしても逮捕などされることはない。身も蓋もないが、そういうものなのだ。

堀江氏は、粉飾決算やマネーロンダリング、インサイダー取引によって逮捕されたのではない。
では、なぜ逮捕されたのか、その真相がずっと解けないでいた。

しかし、すでに本に書かれているらしい。
『さらば小泉 グッバイ・ゾンビーズ』ベンジャミン・フルフォード著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334933769/503-4114485-3229569
まだ、本は読んでいないのだが、引用しているサイトを読むと、おそらくそれが正解に違いない。

堀江氏は、裏金をばら撒くことを拒んだのだ。

政治家や官僚を自由に操りたければ、カネをばら撒くことだ。そうすれば、さまざまな便宜がいずれ還ってくる。そうすることによってまた儲けることができるし、地位はより安定する。これはサイクルであり構造なのだ。しかし、堀江氏はこの基本を無視した。

彼は、自らこの構造の中に入りながら、自分だけ別のメカニズムで動こうとしたのだろう。要するに儲けは分け与えない。しかしそれは絶対に通用しない世界だ。政治家とのパイプを築いておきながら、何も出さないというのは掟破り、あるいは裏切り行為と見なされる。裏切り者の運命はどこの世界でも同じだ。

なぜ堀江氏が分け前を拒んだのかは推測するしかないが、堀江氏は頭が良すぎたのだろう。頭脳一本で、ライブドアを日本一を狙える企業に急成長させた。その堀江氏から見ると、票田を世襲しただけで何の苦労もせず政界で大きな顔している政治家がバカに見えて仕方がなかったのかも知れない。そんな連中に分け前など与える気にはなれなかったのだろう。

堀江氏は、複雑なおカネの流れを読み解く優れた頭脳を持っていたが、人間の欲望が持つ単純な原理は理解できなかったのかもしれない。

堀江氏の逮捕とその後の永田議員の勇み足は、二人の人間の蹉跌という単純な事件ではなく、日本の暗部そのものを表している。

バブルもハイパーインフレも国策

2006年01月17日 00時17分02秒 | □経済関連 バブル
日本経済は一見何事もないかのように見えますが、国家財政という視点から見ると、事態は少々違ってきます。すでに償還不能なほど国民から借金していることから、国家財政は事実上破綻していると言えます。ごく一部の専門家を除いて、誰もそのことを言わないだけです。

日本の財政構造は、日本経済の絶頂期に出来上がったシステムです。しかし、バブル崩壊以降、巨額の国債を発行していることから、この構造はすでにまったく機能していないと言えます。国家財政は、国民の金融資産を食い潰しながら賄われてきたというのが実情です。国民の金融資産は有限であり、食い潰された後には何も残りません。

国家の借金も当然返済しなければなりません。永遠に借金をし続けることは不可能です。今回問題にしているのは、日本政府が抱えている莫大な借金を返済する方法があるのか?ということなのです。

これは、製造や商取引など日本経済の活動とはまったく別の問題です。景気に関係なく、国家が償還不能なほど借金を膨らまし続ければ、いつかは財政が破綻します。そしてそれはすでに来るところまで来ているというのが専門家の見解です。

国家が莫大な借金を解決するために執る策は、
①緊縮財政と大増税
②ハイパーインフレ
の二つしかないようです。

懸命な政府なら「緊縮財政と大増税」を選ぶでしょう。しかし現政権は緊縮財政などする気はなさそうです。「小さな政府」というのは単なる見せかけで、まったく緊縮されていません。このような状態では、仮に大増税をしてもほとんど意味がないでしょう。国家債務は減らず、いたずらに国民が苦しむだけです。

「緊縮財政と大増税」をする気がないとすれば、残るはハイパーインフレしかありません。ハイパーインフレとは、勝手に生じるものではなく国策です。国家による借金の踏み倒しです。仮に国家債務を800兆円としても、すでに償還不能なのです。ましてや、1600兆円や2000兆円といった規模なら答えは明白でしょう。

かつて政府は、自らバブルを創造し、それを極限にまで膨らませ、そしてコントロールを失い、破滅を招きました。その結果、莫大な国民の富が失われました。バブルは決して、勝手に膨らんで勝手に弾けたわけではありません。バブルは国策だったのです。誤った国策のため、日本は90年代をまるまる棒にふりました。しかしバブル絶頂期、誰がバブルの崩壊を危惧したでしょうか。

ハイパーインフレも同じです。それは、国家の手によって引き起こされ、バブルの比ではないほどの打撃を国民に与えるでしょう。しかし、誰もそうした危惧を持っていません。

警鐘を鳴らしている専門家は大変少ないです。ほとんどのエコノミストは、日本は安泰であるかのように取り繕っています。しかし腹の内では、国家財政が遠からずたち行かなくなることを知っているはずです。

それを防ぐ方法があるとしたら、国民がその危険性を知ることだと思います。国民が、”ハイパーインフレなんて起こるはずがない”と高をくくっていればいるほど、その危険は増し、それは突然やってきます。バブル崩壊のように。

ハイパーインフレを信じる信じないにせよ、そういうことを言っている奴がいる、ということくらい念頭においても損はないと思います。


※これはコメントへの返信として書いたものですが、長くなりすぎましたので独立した記事としました。

日本の財政について 

2006年01月15日 00時04分35秒 | □経済関連 バブル
日本でのネット中毒気味の環境から、一転してネット接続のない環境で長らく暮らしている。すでにネット環境なしでは何もできないことを痛感する。日本の新聞やテレビなど、とっくの昔に見限ってしまったが、ネット環境は死活問題だ。いまネット・カフェで少しは調べものもするが、必要なときに必要なサイトを閲覧できないというのはかなり不便なものだ。

昨日、まとめてダウンロードした立花隆氏のサイトを読んでいて、”やはり、そうか”と思う記事があった。日本を出るまでずっと、日本の財政について調べていたのだが、書けないまま時間切れとなってしまった。新聞やテレビが絶対に触れない日本の危機的な財政状況について、立花氏のサイトから少し引用したい。


『いま日本経済に充満しているのは、いちど火が点いたら止めようがないほどの大爆発を起こすに違いないような、歴史上いまだかつてない量の過剰運動流動性のガスである。

それは驚くほどの長期間にわたってつづけられてきた、ゼロ金利政策、量的緩和政策によってもたらされた。それは日本を大破綻から救うために人為的に作り出された運動流動性であるが、それがもうギリギリの危険水準まできていることは、日銀がもっと流動性を供給しようと、買いオペをしても、札割れを起こすという現象が、しばらく前から何度も何度も起きているという事実によって証明されている。

ハイパーインフレで国民は貧乏のドン底に

この状況を目ハシよく利用して、たまげるほどの大儲けをすでにしている連中の話が大衆的なメディアに載るようになる(すでにそれは起きている)と、大爆発⇒大破綻が近いのである。

日銀首脳は、リアルなデータにもとづいて、この危険な状況を誰よりもよく知っているが故に、繰り返し警告を発しているのだろうが、それに反発する政治家連中は何を考えているのだろう。

事態がよく理解できないバカ(経済音痴)である可能性も強いが、もしかするとあの連中が心中秘かに考えていることは、日銀の行動をおさえることによって、日本経済を大爆発=大破綻(ハイパーインフレ)に導き、それによって日本経済の最大の難問、すなわち救い難いレベルにまで達した財政破綻を一挙に暴力的に解決してしまおうとしているのではないかとさえ思えてくる。

それは、あの大戦争(赤字国債のたれ流しによって遂行した)に敗れた後に日本に現実に起きたことで、政府は、とても返済不可能な額に積みあがってしまった赤字国債を、ハイパーインフレで全部チャラにしてしまったのである。それは言葉を変えていえば、国民のすべてを貧乏のドン底に追いこみ、その犠牲によって、すべてを清算したということである。

口に出しては、誰も死んでもそうはいわないが、内心もうそれしか手がないと思っている政治家が少なくないだろう、と私は疑っている。

だいたい、小泉首相があと一年で何がなんでもやめるといっているのも、ポスト小泉の最有力候補といわれる安倍晋三官房長官が、言を左右にしてポスト小泉になかなか手をあげないのも、この破局が目の前に迫っているのを知っているからではないのか。破局を避けようとするなら、大増税しかないのだろうが、政治家たちはそれもやりたくないのだ。』

立花隆のメデアソシオ・ポリティックス
2006年の日本経済を展望する量的緩和巡る政府・日銀の攻防
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051226_kouboh/


簡単に言ってしまえば、いま日本政府が抱えている約800兆円(実際は1600兆円とも2000兆円とも言われている)の借金をチャラにする最も手っ取り早い方法がハイパーインフレなのだ。それは極端に言えば、日本の通貨を紙切れにしてしまうということだ。それによって日本国債も紙切れとなり借金は消える。もちろん、日本国民の預貯金も紙切れになり、日本国民は貧乏のどん底に追いやられる。立花隆氏が言っているのはそういうことだ。日本の財政の専門家は、はるか以前から言い続けている。

なぜ日本政府はハイパーインフレを画策しているかと言えば、すでに日本政府の借金は償還不能な域に達しているからだ。つまり、日本の財政は事実上破綻しているのだ。なぜ、実際に破綻しないかと言えば、日本国民の金融資産1400兆円を食い潰して誤魔化しているからだ。もし、日本政府の借金が800兆円なら、まだ600兆円あることになる。しかし政府の借金は、実際は1600兆円あるいは2000兆円と専門家は見積もっている。すでに国民の金融資産は食い潰されていることになる。明日にでも、日本が破綻しておかしくはないのだ。

立花隆氏が「~この破局が目の前に迫っている~」と表現しているのも、この事実の裏づけを取っているからに違いない。

氏が指摘しているように、政府は日銀に圧力をかけ、過剰な通貨供給を行わせ、かつ国民をマネーゲームへと煽りに煽って、日本を破局へと導いているように思える。小泉首相がなぜこの絶頂期に退任しようとしているのかという答えも、その破局の責任からとっとと逃れるため、と考えることができる。

これは架空の話しではない。
いま日本国債を買う勇気のある国はまずない。
日本の資産家はすでに資産を海外に逃避しているという指摘もある。

国民の利益より、業界の利益

2005年11月28日 15時51分35秒 | □経済関連 バブル
「悪者探しに終始すると、マンション業界つぶれますよ、ばたばたと。不動産業界もまいってきますよ。景気がこれでおかしくなるほどの大きな問題です」
26日、自民党武部幹事長発言。耐震強度偽装事件に触れて。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1E2600L%2026112005&g=P3&d=20051126

なかなかみごとな本末転倒だ。
業界が国民を欺き、国民の利益を侵害しているというのに、国民の利益よりも、業界の利益の方が心配とは。政治家の頭の中とは、こういうものだ。

都合の悪い事には蓋をして、国民の目から遠ざければ、それで済むと思っているようだが、旧態依然の政治家の発想というしかない。「民は知らしむべからず、寄らしむべし」「民は愚かに保て」こんな言葉をいまだに金科玉条としているのが政治家だろう。いったい、いつの時代の言葉だ。

武部氏は景気を心配しているようだが、なぜ景気が悪いのかを考えたことがあるのだろうか。
国民を欺く、政界、官界、産業界の三位一体のあり方が信用できないから、景気が悪くなるのだ。国民は、政治家も官僚も企業も信用してはいない。そんな国民不在の、安心して暮らせない社会の中で、大切なおカネを使おうという気持ちになれるだろうか。メディアが電波を使って、いくら笛を吹きまくっても、国民は踊らない。こんな不安な時代に、踊れるわけがない。

景気をよくしたければ、安心して暮らせる社会を築く以外にない。そうすれば、誰もが安心して消費するようになる。そういうことだ。日本には、おカネそのものはふんだんにあるのだから(いまのところ)。

しかし、政治家や官僚、資本家が自らそうした本質に気づくことは期待できない。
彼らの発想は、より手っ取り早く、より楽して、より多くを奪うことだ。
つまり、よりよき社会とは、われわれひとりひとりが築いていくしかないのだ。
誰も代わりにやってくれはしない。
われわれは、もっともっと疑わなければならない。

人民元2%切り上げ

2005年07月24日 19時43分19秒 | □経済関連 バブル
 中国が、人民元を2%切り上げた。
 しかし、たいした事件ではない。
 たった2%の切り上げなど、中国にも世界にも何の影響もない。
 ここで、取り上げる必要のないニュースだ。

 問題に思うのは、人民元切り上げに対する日本のメディアの大騒ぎだ。異常としか思えない。22日の日経新聞の一面は、二段ぶち抜きで、
『人民元2%切り上げ』
 というでかい見出しをつけている。
 これでは、とんでもないことが起こったという印象を与える。
 2%の切り上げなど、ほんの調節程度にすぎない。
 続いて5面では、小さな見出しではあるが、
『「円」の71年切り上げに相当』
 とある。
 これもまったく妥当とは言い難い。
 71年のニクソン・ショックでは、円は360円から308円へと約15%も切り上げられたのだ。しかも、ドルと金の交換が停止され、世界経済は大混乱となった。これは大きな世界的事件だった。その71年の円切り上げに相当とは、あまりにも誇張がすぎる。

 もちろん、つまらない事件に大きな見出しをつけてはいけないという法はない。
 しかし、見出しというのは、読者にとってはひとつの目安だ。そのニュースがどれだけ重要であるか、あるいは緊急であるかを、読者は見出しで判断する。
 新聞社は、その心理を利用して、読者をミスリードすることが出来る。ドルペッグ制で固定相場を取っていた人民元が微量とはいえ、変動に移行したことは、確かに「事件」ではある。しかし、2%程度の調節幅にそこまで紙面で大騒ぎするのは不自然だ。日経新聞の紙面には、あきらかに意図的な誇張を感じる。

 なぜ、このような不自然な紙面づくりがなされるのだろうか。
 人民元2%切り上げよりも、「郵政民営化」の方が世界的な大事件だ。何といっても350兆円もの資金が市場に放出されるのだから。この大事件が、衆院を通過し、来月5日には参議院で採決される。いよいよ天王山なのだ。にもかかわわず、日経新聞は驚くほど小さくしか扱っていない。国民の富350兆円の行方を決する大事件を、経済専門紙がこの程度にしか扱わないというのは、これこそが、あまりにも不自然というしかない。

 たいしたこともない事件を過大に扱い、本当に大事な事件を取り上げない。日本のメディアは、国民を意図的に落し穴にミスリードしている。明らかな確信犯だ。日本のメディアは、いつか断罪されなければならない。既製メディアは、放っておいても遠からず、姿を消す運命にはある。しかし、なるべく早く消えて欲しいものだ。

【バブルとは何だったのか】

2004年12月13日 02時46分03秒 | □経済関連 バブル
テオティワカン遺跡、太陽のピラミッド。
そのテッペンで「郵政民営化実現!」と、場違いな願を掛けた小泉首相。
アステカの神に郵政民営化は、果たして理解できたのだろうか。

しかし小泉首相は、国内ではたいへん現実的に、橋本龍太郎派閥(=郵政族)を一億円程度の不正献金疑惑でゆさぶり、抵抗の芽を確実に摘んだ。郵政族でない議員諸君は、安心して今日も不正献金をマクラに高いびきであろう。郵政民営化とは何なのか。「構造改革」とは何なのか。少なくとも小泉氏の念頭には、日本国民の利益という概念はない。アメリカに追随するしか能がなく、国民の富をひたすらアメリカに流し続けるだけのパペットにしか見えない。

昨年の日本の貿易輸出額は約54兆円(輸入額約44兆円。貿易黒字額約10兆円)。日本政府は昨年度、32兆円もの国富を為替市場につぎ込んだ。円高を抑え輸出産業を守るためだという。54兆円の輸出を支えるために、32兆円をつぎ込むとは正気の沙汰ではない。1日に200兆円が乱れ飛ぶ為替市場では、年間32兆円の介入資金など瞬間的な効果しか持たない。

日銀は、邦貨にして約90兆円のアメリカ財務省証券(アメリカ国債)を保有している。他にも銀行、保険会社、証券会社、郵貯、簡保、民間企業合わせて、およそ400兆円分のドル証券を保有している。アメリカの財政赤字を埋め、アメリカ経済を支える以外、何の役にも立たない紙切れだ。他国の減税や軍備拡張、そして戦争のツケを、なぜ日本国民が埋め合わせなければならないのか。

そもそも日本経済が、対米貿易に依存しすぎているためにこんなことになる。日本の総輸出額の3割がアメリカ向けだ。日本の経済は、アメリカの購買力に大きく依存している。そのアメリカの財政赤字を埋めてやらないと、アメリカはモノを買えなくなる。アメリカがモノを買えなくなれば、日本の経済は一気に冷え込む。そういう馬鹿げた構造が今日まで続いている。アメリカはどれだけ財政赤字、貿易赤字を出そうが、世界一の金持ち=日本が即座に埋めてくれる。この構造を改善しない限り、日本はいつまで経っても政治的にも経済的にも自立できない。しかし小泉氏は、改善する気などさらさらないようだ。

小泉氏は日本経済を立て直すどころか、アメリカに売り渡しているようにさえ見える。グローバリゼーションの美名の下、外資の波が日本に押し寄せ、日本経済を圧迫している。不良債権をかかえた金融機関は、ほとんど足腰立たない状態だ。いまやアメリカ資本の草刈場とさえ言われている。「護送船団方式」はもはや過去のはなしだ。生き残りをかけて、財務省・金融庁の裏をかいたUFJ銀行は、官庁の逆鱗に触れ、刑事告発される始末だ。金融庁は、三菱東京との統合を破談させ、UFJを国有化し、バラバラに解体して外資に叩き売りたいのだろう。旧長銀と同じ運命だ。日本経済における銀行の役目は終わった。すでに第二層の産業だ。こうしたフラフラの金融機関は、貸し渋り、貸し剥がしにより、優良な中小企業さえ、容赦なく倒産に追い込んでいる。

リストラ、内需の低迷、デフレ・・・。この十数年、日本経済は迷走している。
GDP世界第二位、金融資産世界第一位の日本経済が、なぜかくも長きにわたって低迷し続けているのか?
わざわざ問うまでもない。あの「バブル」だ。
バブルが何もかも吹き飛ばし、日本経済はいまだあの激震に揺れているのだ。
しかしバブルとはいったい何だったのか?


──『バブルの正体』──

「バブル」という用語は誤解をまねきやすい。なにか勝手にブクブク湧いて勝手にパチンと弾けたという印象を与えてしまう。ある意味、都合のよい用語だ。

●すべては「プラザ合意」から

1981年に誕生したレーガン政権は、企業や高所得者層に対する大幅な減税を行う一方、軍事費の大幅増額を行った。その結果、財政赤字は過去最高を更新し続けた。財政赤字は高金利につながり、ドル高と巨額の貿易赤字を招き、世界最大の債権国が世界最大の債務国に転落していった。(ちなみに、ブッシュ大統領は、レーガノミックスとまったく同じ政策を執り、双子の赤字の記録を更新中だ)

日米貿易不均衡がレーガン政権の存続を危うくした。当時のドル円為替レートは、1ドル260円あたりだったが、ワシントンは為替レートが1ドル180円になれば、日米貿易不均衡は解消されると単純に考えた。米大手企業や全米製造業協会、労働総同盟などもこの意見に同調した。

そこで1985年9月、アメリカ主導の会議がもたれた。参加はG5(日・米・英・仏・独の蔵相と中央銀行総裁)。このときの決議を「プラザ合意」という。内容は、「各国が協調して、ドルを他通貨に対して10~12%下げる」というものだった。しかし、その真の目的は日本に円高を容認さすことだった。

 プラザ合意の目的。
①円高誘導により日本製品の需要を低下させ、アメリカ市場から日本製品の撤退を促す。
②ドル安により安価になったアメリカ製品を、日本の消費者に購入させる。

 
これにより、日米貿易不均衡が是正されると考えたのだ。しかし、実際は①も②も起こらなかった。アメリカ政府、財界、金融界は、日本の経済構造をまったく理解していなかった。

日本の製造業は、たとえ円高で収益が落ち込んでも、一度手にした市場を放棄することはない。市場拡大こそが日本の唯一絶対の「国策」なのだ。円高による製造業の収益の落ち込みは、系列の金融機関によって支えられた。しかし、むりやり世界市場にしがみついたせいで、日本の産業の競争優位性は損なわれ、日本経済は減速していった。「円高不況」だ。

●競争力を取り戻せ!

失われた競争力を取り戻さなければ、輸出立国である日本経済の再生はない。競争力を回復するには、莫大な設備投資が必要だった。この設備投資をどのように行わせるかが政府・大蔵省の課題だった。円高不況により、海外市場にしがみつくだけで精一杯の製造業には、ほとんど余力がなかった。

政府・大蔵省は、資産インフレを起こす必要を感じていた。株価、地価を吊り上げることによって、製造業の資金調達を助けるのだ。具体的には、日本銀行は金利を立て続けに引き下げた。まず流動性をつくる。次に、日銀は紙幣を刷り続け、金融機関へ供給した。この資金を、金融機関は企業へ積極的に融資した。ついには資金を必要としない企業や事業者にまで、むりやりカネを押し付けた。本来の事業に必要とする以上の余剰資金が日本中の企業や事業者になだれ込んだ。そうした余剰資金は不動産取引や株式取引にまわった。あるいは、本業そっちのけで、マネーゲームに没頭した。

銀行は、企業所有の土地に破格の査定をし、融資をおこなっていた。この銀行の行為が、日本中の不動産価格を跳ね上げていった。不動産取引が増えたから、地価が高騰したのではなく、銀行が担保不動産に破格の査定を行ったから、取引が増えたのだ。高騰した地価は企業の資産価値を高め、株価を上昇させた。株価の上昇による含み益は不動産投資にまわり、さらに不動産価格を上昇させた。地価と株価の連鎖反応だ。こうして資産インフレがバブルへと発展していった。土地は投機の対象となり、無数の「地上げ屋」が跋扈し、日本中を更地だらけにし、はてしない土地転がしが行われた。

不動産バブルに支えられ、株式価格は上昇し続けた。東京株式市場を利用する企業は、いとも簡単に莫大な資金を手にすることができた。手にした無限の資金によって、製造業は生産設備を拡大していった。そして、1ドル110円以上でも競争力を持つ体力をつけた。ほんの数年前は、1ドル180円で真っ青になっていたのがウソのようだ。政府・大蔵省の目論見は、みごとに成功した。

「プラザ合意で損なわれた輸出競争力を取り戻し、いかなる円高にも耐え得る体力を日本の製造業が持つこと」──これこそが、バブルの真の目的だった。

1985年のプラザ合意で受けたダメージを、たった2年間で挽回してしまった。本当ならここでバブルの空気は抜かれていたはずだ。そうすれば、バブルの影響はあそこまで大きくはならなかったはずだ。

●ブラックマンデー

1987年の時点で、なぜ大蔵省はバブルを収拾しなかったのか。不幸なことに1987年10月19日、ニューヨークの株式市場が大暴落してしまったのだ。世に言うブラックマンデーだ。日本の経済そのものが、アメリカの購買力に頼っている以上、アメリカ経済の破綻は日本経済の破綻を意味する。日本は、永久にアメリカ経済を支え続けなければならない運命にある。

ブラックマンデーの翌日、大蔵省は四大証券会社に対して、大規模な買い取引きを指示した。東京株式市場のまれにみる活況に世界の株式市場は安堵し、連鎖的な株式市場の暴落は起こらなかった。ひとまず株式市場の暴落は防いだが、それだけでは十分ではなかった。続いて大蔵省は、銀行、信託銀行、保険会社、証券会社にドル証券の買いを指示した。プラザ合意後の円高により、すでにドル証券による甚大な損失がでていた。それにもかかわらず、さらにドル証券を買うのは無謀と言うしかない。しかし、こうした大蔵省の意向を無視できないところが、「護送船団方式」の悲しい性である。

しかし損すると分かっている膨大なドル証券を保持させるには限界もあった。そこで金融当局は「低金利政策」を取り、円建て証券への鞍替えを防いだ。このときの低金利政策が最悪の結果を招いた。もともと低金利でボコボコ沸騰していたバブルが、さらなる低金利政策(過剰流動性)で水蒸気爆発を起こしてしまったのだ。あとは説明するまでもない。在り有べからざる狂乱バブルだ。

バブル崩壊直前には、日本の土地資産総額は約2400兆円になっていた。アメリカ全土の四倍だ。東京証券取引所の上場企業の市場価格は合計約900兆円。全世界の4割を占めていた。地方銀行の市場価格でさえ、チェース・マンハッタン銀行の市場価格を上回っていた。日経平均株価は約39,000円(現在、約11,000円)。世界の王者になった気分だっただろう。

●そしてバブルの終焉

ブラックマンデーによるアメリカの経済危機を救ったのは、日本のバブルの資金だった。金融機関はアメリカ財務省証券を買い続け、不動産開発業者はアメリカの不動産を破格の高値で買いまくった。三菱地所は経営難のロックフェラーセンターを買収し、ソニーはコロンビア・ピクチャーを買収した。レーガン大統領が再選されたのも、日本のバブルのおかげだ。しかし、アメリカから感謝されることはなく、「アメリカの魂を買った」として猛烈な反日感情がおこっただけだった。

1989年、アメリカが経済危機から脱したころ、日本のバブルはもはや手の付けられない状態になっていた。担保もない料理屋のおかみの「手書き」の預金証書に対して、何千億円もの融資を行った銀行さえあった。政官財どころか社会全体が、完全なモラル・ハザードを起こしていた。それでも大蔵官僚は、この狂乱バブルを沈静化させる自信があったのだろう。しかしヤカンのお湯でさえ、火を止めてすぐには冷めない。ましてや日本中が、水蒸気爆発を起こしていたのだ。

1989年12月、日銀は金利を引き上げた。株式に集中していた資金は、債権や預金に向かうはずだった。しかし株価は思ったほど下がらなかった。
1990年2月、二回目の金利引き上げ。株価はまだ十分には下がらなかった。
1990年8月、三回目の金利引き上げ。2.5%だった金利は6%に達した。
日経平均株価は、最盛期の39,000円から26,000円まで下がった。
1990年9月、住友系大手不動産商社イトマン倒産。

効果を焦って、立て続けに三回も金利を引き上げたせいで、多くの不動産開発業者の借入コストがキャッシュフローを上回ってしまった。莫大な負債を抱えた倒産が相次いだ。バブルの崩壊。

●統制経済による管理バブル

バブルの崩壊により、日本は実によく管理された「統制経済」国家であることが表面化した。一見、自由市場、自由競争があるかのように装ってはいるが、そんなものは日本にはない。バブルについて語られるとき、それはまるで不可避的な自然現象だったかのように語られることが多い。しかし、統制経済国家で勝手にバブルが発生し自然爆発することなど考えられない。

統制経済の実体は、経済の動脈=銀行システムによく表れている。日本の銀行の融資条件とは何か。「土地」につきる。融資を申し込む企業の実績や収益性、将来性などほとんど考慮されない。要は、担保となる不動産があるかどうかだ。日本の経済は土地に信用供与を行うことで成り立ってきた。つまり「土地本位制」だ。もし、日本の土地価格が市場原理で決まるなら、「土地本位制」は成り立たない。日本の土地価格は、大蔵省が厳格にコントロールしていたのだ。バブル期、銀行は大蔵省の承認のもとで、意図的に土地価格を吊り上げていた。

証券会社も同じだ。バブル崩壊後、証券会社各社が大手投資家(ほとんどの大企業)に巨額の損失補填を行っていたという事実が表面化した。損失補填は、取引の前から約束されていた。もちろん違法だ。損失補填は、大蔵省があらかじめ承認していたことが、野村證券田淵義久社長の証言で明らかになった。バブル崩壊で、財産を失った小規模投資家は、この事実に激怒した。しかし、一般投資家に損失が補填されるなどあり得ない。これを、政官財の癒着や不正、腐敗という言葉で表現するのは間違いだ。日本の経済は、庶民から大資本へカネが流れるように作られているのだ。これは国家存立の基盤システムなのだ。農奴が封建領主に対等の権利を主張しても意味はない。問題は、領主にあるのではなく、封建制そのものにある。

日本のような統制経済国家で、不動産バブルや株式バブルが「自然に」発生することはない。政府・大蔵省が意図して操作したからこそ発生したのだ。だからこそ円高に喘いでいた日本の製造業は、競争優位性を取り戻せたのだ。しかしその一方で、一般家庭、小規模事業者の投機資金は、すべてアワと消えた。

政府・大蔵省は意図的にバブルを起こし、計画的に一般家庭や小規模事業者からカネを奪い取り、円高に喘ぐ製造業にまわしたのだ。バブル崩壊で富が消えたのではなく、移転していったのだ。これが、あのバブルの正体だ。

●果てしない流れ

バブル崩壊後、今日に至るまでの長きに渡って、日本経済は低迷している。しかし、GDPは世界第二位。金融資産は1400兆円と世界一の金持ちだ。技術力や技術開発力もいまだ世界のトップクラス(もはやトップではない)。カネもある。技術力もある。生産設備(主力は海外に移転したが)もある。その日本の経済がなぜかくも低迷しているのか。にわかには理解しがたい。バブル崩壊から、すでに14年にもなるのだ。豊かでなかったころの日本の方が、はるかに活力があった。

確かに日本人は世界一豊かだ。すでに何もかも持っている。しかし、メガバンクでさえ不良債権でフラフラ。貸し渋り、貸し剥がしで中小企業は冬の時代。パパは明日リストラされるかもしれない。そんな不安な時代に消費が伸びるわけがない。好景気とは、すなわち、人々の浪費が生み出す現象だ。将来に不安を抱えて、浪費に走るバカはいない。トヨタやソニーだけが絶好調でも、景気には関係ない。景気回復の一番の近道は、信頼できる国家をつくることだ。そうすれば、「不況」という文字は経済学の教科書に永遠に封じ込められるだろう。

しかし残念ながら、小泉氏はいまだに国民の富を奪うことしか考えていない。
来年4月にペイオフが解禁されれば、またもや巨額のカネが奪い取られる。
そして、「郵政民営化」だ。
民営化によって郵便貯金の289兆円、簡易保険の123兆円が手品のように、アメリカのふところに消えていく。