報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

訂正とお詫び

2007年06月05日 09時20分04秒 | ■時事・評論
2006年4月の記事『最強の傭兵部隊・IMF、世界銀行』の文中に不正確な表記がありましたので、訂正とともにお詫びいたします。
記事中に、
「たいていの場合、コンディショナリティによって融資金を農業生産に使用することを禁じられていた。ただし、外国から食料を購入することはできる。その際の購入先もたいてい指定されている。つまり、食料不足はアメリカの農業製品で補えということだ」
という表記をしていましたが、IMFのコンディショナリティに、そのような禁止事項が盛り込まれることはありません。上記の表記は明らかな誤記であり、謹んでお詫び申し上げます。

ただ、IMFや世界銀行がそうした意図をもって政策を遂行していることは間違いありません。しかし、”食糧生産に金を使うな””アメリカの食糧を買え”というようなあからさまな命令をすることはありません。にもかかわらず、結果的にはそうせざるを得ない事態に途上国は陥ります。マラウィでは、「国内の一方の端から他方の端まで(食糧を)輸送するよりも、カンサスから船で運ぶほうが安上がりになっている」という、にわかには信じがたい事態が発生していました。国際食糧政策研究所はその原因を、IMFと世界銀行がマラウィに命じた政策にあると報告しています。
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/headline/agri0208.htm
http://www.irinnews.org/report.aspx?reportid=33255

IMFや世界銀行の政策によって、農業生産が阻害され、その結果欧米のアグリビジネスが巨大な利益を得てきたという報告は多々あります。

 これまで、IMF・世銀は、貿易障壁、国内で生産される食料品への補助金、地方の農業振興プログラムなどの撤廃を融資の条件にしてきた。
 北の先進国に対しては、そのような条件を付けて来なかった。さらに、WTOの農業協定は、北の先進国が生産コスト以下の安い価格で余剰農産物を途上国にダンピングし、巨大多国籍農産物輸出企業の市場拡大を許してきた。
 その結果、途上国では産業の要である農業部門が壊滅的打撃を受けた。
http://www.eco-link.org/jubilee/dn336.htm

南半球は、農業協定によって一定の裁量権を認められているにもかかわらず、国際通貨基金(IMF)や世界銀行から強要された関税引き下げを追い風とする北半球からのダンピング輸出にさらされることになった。それが彼らにもたらしたものは、農業貿易の赤字の増大である。
http://www.diplo.jp/articles03/0309-4.html

IMFと世界銀行は、自給自足の地域型農業システムの商業的かつ市場依存型の生産、流通システムへの移行を義務付ける政策をとっている。
その上、現在の輸出作物偏重は、土や水、大気、種の多様性、人間と動物の健康を脅かすような有害で費用のかかる化学物質投入への依存を高めるとともに、北に拠点を置く大手アグリビジネスと化学企業の利益を増やすように作用している。我々の農業を守るためには、世界銀行とIMFも食糧と農業から排除しなければならない。
http://www1m.mesh.ne.jp/~apec-ngo/wto/wto04/viacampesina.htm
IMFや世界銀行の政策の意図は歴然としています。IMF・世界銀行は、自由化や民営化、規制緩和という欧米のスタンダードを一様に適用することで、当該国の国内経済と国民生活に多大な不利益をもたらし、逆に欧米の多国籍企業や金融資本へは莫大な利益をもたらしてきました。IMFと世界銀行は、欧米の大企業や金融資本の利益代表者と考えて間違いありません。したがって、両機関の採る政策には、そうした意図が隠されています。「世界の通貨の安定」や「貧困の撲滅」というお題目は隠れみのにすぎません。もし、本当にこのお題目が実行・達成されれば、欧米の多国籍企業や金融資本は利益の機会を失うでしょう。

IMFや世界銀行に対しては、改革論から廃止論まで、すでにさまざまな意見が存在しています。IMF・世銀は国連の専門機関ですが、国連大学の世界開発経済研究所は、「第二次世界大戦の終結時に創設された世界銀行と国際通貨基金(IMF)が、政治的にも経済的にもすでに時代遅れになった機構のままで現在も運営されており、・・・外部から変化を強要されるまえに、機構刷新の必要がある」と報告しています。また、「これらの機関の改革ではなく、役目を終えた国連信託統治理事会に代えて、世界環境機関や世界社会機関を創設し、IMF、世界銀行、WTO に対抗すべきだ」というような提案もあるようです。
http://www.unu.edu/HQ/japanese/ar01-jp/ar7.pdf
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/ReCPAcoe/uemura.pdf

しかし、IMFや世界銀行の改革や廃止は非現実的と言えます。両機関は弱体化しはじめているというものの、多国籍企業や国際金融資本にとっては、まだまだなくてはならない利用価値の高い機関のはずです。廃止も改革も念頭にないことは明らかです。見せかけの改革をおこなってごまかそうとはするかも知れませんが。

両機関の影響力を無力化する最も有効な方法は、ベネズエラのチャベス大統領のように、きっぱりと脱退を宣言することです。もしくは決して融資など受けないことです。そしてそうした動きは実際にはじまっています。

パキスタン、ウクライナなども、IMFと手を切りたいと思い始めている。セルビアはすでにIMFの融資を断っている。
南アフリカなどは、はっきりと世銀からの融資は受けないと宣言している。

ガーナは、IMFの「貧困削減成長基金(PRGF)」から脱退することを宣言した。PRGFは貧困国に対する無利子の融資基金だが、厳しい条件がついている。
 また、ザンビア大統領は予算についての新年のメッセージで、IMFが要求した主食をはじめとした農産物、上下水道、国内交通、蚊帳、書籍、新聞などに対する17.5%の付加価値税の再導入を拒否すると発表した。
IMF離れの傾向は、これに留まらなかった。最近大統領選に勝利したニカラグア、エクアドルもIMFとの決別を宣言している。

途上国では、IMFと世銀の威力は著しく後退している。その正当性を失っている。
すでにエクアドルのコレア大統領は、世銀代表を国外に追放した。そして、エクアドルはすでに債務を返済していると述べた。

http://www.jca.apc.org/~kitazawa/undercurrent/2006/
collapse_of_neo_liberalism_2006.htm

http://www.jca.apc.org/~kitazawa/debtnet/2007/vol6_1.htm
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/debtnet/2007/vol6_6.htm
こうした動きがどんどん加速すれば、事実上IMFや世界銀行を葬り去ることができるでしょう。IMFと世界銀行から脱退し、スタッフには国から退去してもらえばいいのです。改革も廃止も必要なく、いままでどおり両機関が存在しても何の問題もありません。

IMF・世界銀行の政策によって、豊富な資源を有する国の国民が貧困にあえいできました。資源や原料は格安の値段で先進国に供給され、先進国企業は、この安い資源と労働力によって可能になった大量生産・大量消費・大量廃棄のサイクルがもたらす莫大な利益を享受しています。同時に先進国で余剰生産された工業製品や農産物が途上国の市場を席巻しています。途上国が飢えと貧困にあえぐことによって、いまの先進国の快適で便利な生活がなりたっています。

IMFや世界銀行がもたらしている貧困と飢えによって、世界何十億という人々が、何世代にもわたって苦しみ続けます。貧困の破壊力、殺傷力に匹敵するのは核兵器だけでしょう。あるいは、核兵器もおよばないかもしれません。

なすべきことはただひとつ、一刻も早くIMF・世界銀行と手を切ることです。






※カテゴリー「IMF&世界銀行」は今回の不備を機に、一端閉じてリニューアルいたします。ただ、現在取り組んでいることを優先しますので、いつできあがるかは、今のところわかりません。より充実した内容を目指したいと思いますので、ご理解ください。ご迷惑をおかけすることを重ねてお詫びいたします。
※貴重な指摘をいただいたカリキュラスさんへ厚くお礼申し上げます。



IMF・世銀・WTOがジュネーブで政策協調会議/第11回国連持続可能な開発委員会(CSD)の報告
http://www.eco-link.org/jubilee/dn336.htm

カンクン後の農業に関する声明
http://www1m.mesh.ne.jp/~apec-ngo/wto/wto04/viacampesina.htm

世界の自滅的な農業政策
http://www.diplo.jp/articles03/0309-4.html

世界飢餓にまつわる12の神話
http://journeytoforever.org/jp/foodfirst/report/hunger/12myths.html

Trade and Food Sovereignty (貿易と食糧主権)
http://hideyukihirakawa.com/GMO/ngoreport.html

マラウィ:農業改革が食糧安全保障を損ねる
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/headline/agri0208.htm

MALAWI:Agriculture Reforms Hurt Food Security
http://www.irinnews.org/report.aspx?reportid=33255

食糧主権に関する世界フォーラム最終宣言
http://www1m.mesh.ne.jp/~apec-ngo/wto/wto04/FOOD%20SOVEREIGNTY_cuba.htm

国連大学 食糧・栄養ネットワーク
http://www.unu.edu/HQ/japanese/ar01-jp/ar7.pdf

グローバルな持続可能な福祉社会へのプロレゴメナ
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/ReCPAcoe/uemura.pdf

途上国はIMF・世銀・WTOから脱退し、新国際機関を創立せよ
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/undercurrent/2006/
new_institution_for_developing_countries_2006.htm


「IMFは嫌われ者」
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/debtnet/2007/vol6_1.htm

「ベネズエラがIMFと世銀から脱退宣言」
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/debtnet/2007/vol6_6.htm

「ネオリベラリズムとネオコンの破綻」(3.IMF、世銀、WTOの機能低下)
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/undercurrent/2006/collapse_of_neo_liberalism_2006.htm