報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

米イージス艦、ついに宿毛に入港

2006年05月24日 17時04分48秒 | □イージス艦宿毛寄港
イージス駆逐艦ラッセルが、今日、宿毛湾に入港した。埠頭には有刺鉄線が張りめぐらされ、寄港に反対する人々は、イージス艦から遠く閉め出された。

宿毛では、少しでも地元が潤うなら、という声が多いようだ。しかし、それは甘すぎる考えだ。宿毛が潤うことは決してない。

イージス艦によって潤うのは地元ではない。落ちるおカネの大部分は、地元を素通りして大都市の企業や業者のところへ流れる。在日米軍と日本の業者というのは、すでにパイプが出来上がっており、米軍の行くところにはこうした業者がついてくる。地元には、おこぼれ程度しか落ちない。

高知新聞でも、このことは触れられている。さらりと書いてあるが、こういう記載が最も重要なのだ。

宿毛の海事代理業者は、宿毛湾港に足場を置いている。後に分かるのだが、米海軍はこうした地方の業者と直接は契約しない。米海軍艦船の入港を引き受けているのは横浜市にある「大興産業」。社長を含む数人は自衛官出身者だ。
http://www.kochinews.co.jp/rensai06/06aegis02.htm

米海軍の艦船のめんどうをみるという特殊な仕事は、こうした専門の企業に独占されており、地元はその下請けか孫請けとして使われるだけだ。地方経済の疲弊をいいことに、相当足元を見られることになるだろう。安易に歓迎する前に、どういう仕組みになっているのかを十分調査する必要がある。

国連やPKFのミッションなどでも、同じようなことが起こっている。ミッションには必ず欧米の業者がついて来る。こうした業者によって食材から機材まであらゆる物資の納入がおこなわれる。国連やPKFに納入する物資には、レギュレーションで品質が規定されている。地元の食材や産品は間違いなく不適格とされる。業者は輸入食材や物資を納入する。

ミッションがあらかじめ長期とわかっている場合は、外資系のホテルやスーパーマーケット、レンタカーの会社が次々とオープンしたりもする。そしてミッションの終了と共に企業も業者も撤退して行く。結局、国連が落した莫大なおカネは、こうした企業群が持ってでていくのだ。地元にはほとんど何も残らない。

確かに一定の雇用が生まれ、一定のおカネは地元に落ちる。しかし、それで潤っているのは、ごく少数の人に過ぎない。地元が潤っているわけではない。

米軍が宿毛にきても、これと同じことが起こるだけだ。
米軍の経済効果など幻に過ぎない。
大都市の企業が米軍の落すおカネの大部分を持ってでていく。
得るものよりも、失うものの方がはるかに大きいはずだ。



イージス艦入港を伝える高知新聞
http://www.kochinews.co.jp/0605/060524evening01.htm#shimen1
http://www.kochinews.co.jp/0605/060524evening02.htm#shimen2
高知新聞特集記事
http://www.kochinews.co.jp/rensai06/06aegisfr.htm

米イージス艦は宿毛寄港をなぜ延期したか

2006年05月23日 13時50分34秒 | □イージス艦宿毛寄港
今日、23日に予定されていた米イージス艦ラッセルの宿毛(すくも)湾寄港が、明日24日に延期された。この一日の延期が意味するものは非常に大きい。

駐大阪・神戸米国総領事館フィリップ・カミングス領事は、
「運航上の問題で遅れている、とのことだった。あくまで船のことで、日本側の事情によるものではない」
「こうした入港遅れはままある」
と、コメントしている。
http://www.kochinews.co.jp/0605/060523headline01.htm#shimen1

年間約40兆円の軍事費を使う、世界一整備された軍隊には、それほど運行上の問題が起こるとは考えにくい。シンガポール~宿毛間の洋上は、悪天候でもなく、敵もいない。イージス艦ラッセルの宿毛寄港は、意図的に一日ずらされたと見るべきだろう。

宿毛市では、イージスを歓迎する声の方が多い。経済的に疲弊した地方としては、たとえ外国艦船であっても、少しでもおカネを落してくれるものはありがいたい。それほど地方の経済というのは疲弊し切っている。

しかし、イージス艦寄港の目的を懸念する人々も存在する。京都にいては、現地でどれほどの反対運動が展開されているのはわからない。しかし、現在宿毛入りしているカミングス領事は、反対運動は予想以上と認識しているのではないだろうか。状況を本国に報告した結果、ラッセルの寄港が一日延期されたに違いない。

一日ずらすのは反対運動に「肩透かし」を食らわすためだ。反対の声は、イージス艦寄港が発表された8日からすでに起こっている。その声は徐々に盛り上がり、そして23日に最高潮に達する。盛り上がった声の中に飛び込むのはあまり得策ではない。

そこで「ガス抜き」のために寄港をわざと一日ずらす。すこぶる単純な手法だが、実は非常に効果的だ。一度萎んだ気分をもう一度盛り上げるのはとても難しい。さらに一日延期すると、より効果的だ。そしてもう一日延期すると、ほぼ完璧だ。人間、待たされることほど、気分の萎えるものはない。

しかし逆に言えば、米国側は、宿毛の反対運動に少なからず脅威を感じていることを物語っている。たいした反対運動でなければ、ラッセルは予定通り、今日、宿毛湾にその姿を現しているはずだ。

もし米軍が宿毛の基地化を画策しているとしたら、すでに大きな後退を余儀なくされていることになる。
この一日の延期が意味するものは非常に大きい。


高知新聞電子版
http://www.kochinews.co.jp/

米イージス艦はなぜ高知をめざすのか

2006年05月18日 23時45分59秒 | □イージス艦宿毛寄港
イージス艦宿毛寄港打診 県が核の有無照会中
 米海軍が核兵器の搭載も可能なイージス艦の宿毛湾港への寄港を県に打診していることが、8日までに分かった。予定では今月23日から4日間停泊。県は県議会の決議を基に、核搭載の有無を日米両政府に文書で照会中。橋本大二郎知事は9日に今後の対応を検討する方針だが、橋本県政は平成11年の県議会2月定例会で外国艦船が核兵器を搭載していないことを外務省に証明するよう求める「非核港湾」の条例化を目指した経緯(継続審査の末に廃案)があり、判断が注目される。
2006年05月09日
http://www.kochinews.co.jp/0605/060509headline01.htm#shimen1

全国ネットではほとんど報じられていないが、アメリカのイージス艦が高知県宿毛(すくも)湾にやってくる。戦後、高知には外国艦船が寄港したことはない。それが今なぜ突然、宿毛にイージス艦が立ち寄ることになったのか。公式には「親善と休養」ということになっているが、そんなものを額面どおりに受け取れるわけがない。

米国防総省は意味のないことは絶対にしない。あらゆる行動には理由がある。シンガポールからハワイに帰るだけなのに、わざわざ宿毛で休養をとる必要があるとは思えない。それとも、海軍兵士はそんなにヤワなのか。

1997年、高知県議会は「県の港湾における非核平和利用に関する決議」を全会一致で可決し、県内のすべての港で非核三原則を守ると宣言した。つづいて1999年、橋本知事は、「非核神戸方式」を県議会に提案した。これは、外国艦船入港時に非核証明書の提出を義務づけるものだ。

しかし、高知県のこうした動きに対して、外務省は猛反発した。「外国軍艦の寄港を認めるか否かは国の事務。地方自治体が関与、制約することは許されない」との見解を示した。当時の小渕恵三首相も橋本知事の動きを批判した。橋本知事の「非核神戸方式」は廃案となった。
http://mytown.asahi.com/kochi/news.php?k_id=40000000605100003

その頃、宿毛湾では、池島地区と呼ばれる広大な地区が埋立中だった。1993年に着手され、2001年頃にはほぼ完成している。この広大なエリアはいったい何のために埋め立てられたのだろうか。この岸壁は水深が約13メートルもある。かなりの大型船の停泊を想定して設計されたということだ。しかし、大型船による商業航路の予定はいまのところない。おそらく今後もないだろう。産業がないのだから。

池島地区の埋め立てが完成する頃に、外務省が高知県の「非核神戸方式」を叩き潰したのは、単なる偶然なのだろうか。

宿毛湾には、大戦中、日本海軍の訓練泊地があった。戦艦長門を旗艦とする連合艦隊が訓練の合間に休息した港だった。宿毛湾は、深く切れ込み、水深も深く軍港にはたいへん適している。日本には数少ない天然の軍港と言えるかもしれない。

一連の流れから見ると、国は宿毛湾を米海軍の基地として差し出すつもりであると考えるのが妥当だろう。水深13メートルの岸壁を持つ広大な池島地区が、地方切り捨て政策で疲弊する人口2万の都市に必要とは思えない。イージス艦”ラッセル”は、将来の基地の下見に来るのだろう。

米国防総省は、米軍再編費用は3兆円などと気軽におっしゃる。
米軍再編といっても、気がついたら基地が増えているということになりかねない。
しかも、われわれの税金を何兆円も使ってだ。
これ以上日本に米軍基地を造らせるわけにはいかない。
宿毛以外にも、われわれの知らないところでこうした動きが進行しているのかもしれない。


宿毛湾港 航空写真
http://www.pa.skr.mlit.go.jp/kouchi/A/A13.html
高知新聞電子版
http://www.kochinews.co.jp/