報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

年次改革要望書 2005

2005年12月09日 19時52分25秒 | □年次改革要望書
netjapanさんより、「年次改革要望書2005」が発表されたと連絡をいただきました。
いつもありがとうございます。



12月8日の読売新聞の電子版。

郵政新会社は民間と公平に、米政府が要求
2005年12月 8日 (木) 12:31
 【ワシントン=広瀬英治】米政府は7日、日本に対する年次の規制改革要望書を発表し、郵政民営化に際して新会社が銀行、保険、郵便の各分野で米企業など既存の民間企業と公平な競争条件になるよう改めて求めた。
 医療機器・医薬品の価格算定にあたり、先端技術に対する評価を盛り込むことや、金融規制の透明性向上なども求めた。
 また、ロブ・ポートマン米通商代表部(USTR)代表は声明で、日本の輸入再開が迫る米産牛肉問題について「依然米政府の最優先事項だ」と強調した。


今日、Googleのニュース検索にかけても、読売の記事以外ヒットしない。他社は関心がないのか、触れたくないのか。様子を見ているのか。

在日アメリカ大使館のサイトでも、まだ掲載されていない。
「日本政府に規制改革要望提言書を提出」というリリースがあるだけだ。
日本語訳待ちなのかなとも思ったが、日本の外務省のサイトには、日本側の要望書が和文、英文同時掲載されているので、アメリカ側も翻訳文をすでに用意してあるはずだ。

近々、アメリカ大使館のサイトに翻訳が掲載されると思うが、例年律儀に10月に交換していた「年次改革要望書」が今年は12月にずれこんだというのは、何か理由でもあるのだろうか。選挙直後では、大騒ぎになると思ったのかも知れない。様子を見ながら、小出しにしているというような印象を受けてしまう。

アメリカ大使館のリリースを見る限り、内容は例年と同様であると推測できる。リリースの中でポートマン米国通商代表は、米国産牛肉、銀行・保険、そして医療について言及している。「年次改革要望書」というのは、幅広い分野にわたって述べられているが、その中でも、この三つについて言及しているということは、これらが米国にとっての最優先課題と受け取って間違いないだろう。

米国産牛肉も銀行・保険も、いままで同様気になるのだが、医療分野も日本国民は危機に晒されていると言える。

リリースの中で、次のように述べられている。
『米国企業が日本市場に供給している先端医療機器および医薬品の膨大な数を考慮すると、日本政府が検討している医療政策および医療改革にこうした企業が十分かつ有意義な意見具申の機会を得ることは、重要である。』

つまり日本の医療政策や医療改革に対して、アメリカ企業に意見を述べさせろ、と言っているわけだ。われわれの健康に関する医療行政に、アメリカ企業が直接アクセスしようとしている。ただでさえ、国民不在の医療行政に、アメリカ企業が直接影響を与えることができるというのは、考えただけでも怖ろしい。

A4用紙一枚程度のリリースの中にも、「年次改革要望書」の恐怖の内容が垣間見える。



年次改革要望書2005 英文PDF
http://www.ustr.gov/assets/World_Regions/North_Asia/
Japan/Regulatory_Reform_Initiative/asset_upload_file792_8516.pdf


日本政府に規制改革要望提言書を提出 (アメリカ大使館サイト)
http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-20051207-77.html

郵政新会社は民間と公平に、米政府が要求 (読売新聞電子版)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20051208i406.htm

「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」の下の5年目の対話に向けた要望書の交換について (日本外務省サイト)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/5_houkoku.html

『拒否できない日本』の快進撃

2005年12月05日 20時17分25秒 | □年次改革要望書
前回も引用させていただいた関岡英之氏の著書『拒否できない日本』がぐんぐん売り上げを伸ばしているようだ。

Yahoo!ブックスのランキングで19位、トレンドステーションの新書ランキングで10位、アマゾンで496位。(12月5日現在)

アマゾンでは、一年余りの間『拒否できない日本』が不可解な品切れ状態になっていた。現存する書籍が在庫なしというのは、ちょっと考えられないことだ。ZAKZAKがこの件を取材したが、アマゾンからの回答はなかった。外資のアマゾンは、『拒否できない日本』を読ませたくないのでは、という憶測がウェブ上を飛び交った。それがかえって『拒否できない日本』の知名度を上げたように思う。その後、いつのまにかアマゾンは『拒否できない日本』を取り扱っている。少し前は、アマゾンのランキングで144位という高位についていた。

『拒否できない日本』は、今年の10月の時点で、46000部を売り上げている。すごい数字だ。おそらくすでに5万部は越えているだろう。今は、本の売れない時代と言われている。出版者の人は、本を2千部売るのがどれだけたいへんか、と力説する。そのくらい本が売れない時代なのだ。老舗書店、京都丸善も先ごろ閉店した。京都丸善は、梶井基次郎の小説『檸檬』のクライマックスに登場するため、多くの人にとって愛着のある書店だった。そんな丸善でも経営が成り立たない時代なのだ。

こんな時代に、お堅い新書本が5万部も売れるというのは、出版界では、かなりのニュースだ。よいものは読まれるという証だ。

『拒否できない日本』の快進撃によって、『年次改革要望書』の認知度も高まっているはずだ。そして、それを喜ばない人たちも大勢いることだろう。次は、『拒否できない日本』への攻撃がはじまるのかもしれない。

先週の日曜に偶然、某評論家がテレビの討論番組で、『拒否できない日本』について言及するのを見た。もう、ほとんどテレビを見ない僕が見たのだから、『拒否できない日本』への攻撃はあちこちで始まっているのかもしれない。

僕が見たのは、関西だけの番組で、討論形式のバラエティ番組だ。その中で、某若手評論家が、唐突に『拒否できない日本』についてしゃべり始めた。

「なんだか、『拒否できない日本』とかいう、そんな本がベストセラーになってるらしいんですけど、改革・・年次要望書、だかがあって、それが日本を改造してるとか言ってるらしいんですよ。それはアメリカ大使館のホームページに翻訳が載ってるんですけど、これが、よくまあ、日本をここまで調べたなあというくらい詳しいんですよ・・・」

最初の口調からして、『拒否できない日本』を批判したかったらしいのだが、最後は何が言いたいのか、よくわからなまま終わった。彼が、しゃべり終わるまで、ぽかんと口を開けて見てしまった。まさか、テレビの中で、『拒否できない日本』の書名を聞くとは思わなかった。

いま盛んにテレビに出演している評論家というのは、はっきり言って、国民のためになることは言わない。大なり小なり小泉首相や国民不在の「改革」の応援団だ。そうした人しかテレビに登場できない。そしてこうした人たちにとっては、『拒否できない日本』のような本は格好のターゲットになる。それを批判しておけば、ポイントを稼ぐことができる。ゴマスリのポイントだ。そういう意味では、なかなか目聡い評論家と言える。今後、ますますこうした批判や攻撃が増えていくかもしれないが、それはそれで、すぐれた書物の証だ。逆に、知名度も高まっていくだろう。

前回の記事でも、お分かりいただけると思うが、『拒否できない日本』は、いま日本で起こっていることを解読するときの手引き書のひとつとも言える。売れて当然である。それにしても、5万部というのはすごい数字だ。



ナゼ読めない…「アマゾン」で1年超も品切れの本
http://www.zakzak.co.jp/top/2005_09/t2005091623.html

sankei web 【ベストセラーを斬る】『拒否できない日本』
http://www.sankei.co.jp/news/051017/boo005.htm

Yahoo!ブックスランキング
http://books.yahoo.co.jp/ranking/online/sex/literature/weekly/man.html

トレンドステーション 新書ランキング
http://toresute.seesaa.net/article/9394554.html

アマゾン
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166603760/qid%3D1133773580/249-3066677-8749146

続・年次改革要望書2005はまだか?!

2005年11月22日 22時25分27秒 | □年次改革要望書
netjapanさんの方より、経済産業省のサイトにも「年次改革要望書」関連のページがあるとの連絡をいただきましたので、参考資料として紹介しておきたい。外務省のサイトにも掲示されているが、たいへんわかりにくいのでこちらの方が便利だろう。


http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/n_america/us/html/regulatory_reform.html

「年次改革要望書」というのは、建前上、相互交換ということになっているので、日本が米国に出す要望書も存在する。「対米要望」とあるのがそれだ。これは外務省のHPへリンクされている。
その下の、「対日要望 和文(仮訳)」とあるのが、いわゆる「年次改革要望書」だ。これ在日はアメリカ大使館のHPにリンクされている。

「年次改革要望書」は、アメリカの望む日本のあり方を描いた、いわば内政干渉的な文書だが、おさらいのために、多岐にわたる要求の目次だけを掲載しておきたい。

日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書(これが「年次改革要望書」の正式名称)
目次
提言の概要
電気通信
情報技術(IT)
エネルギー
医療機器・医薬品
金融サービス
競争政策
透明性およびその他の政府慣行
民営化
法務制度改革
商法
流通


「年次改革要望書」は強制力のある外交文書ではない。単なる「要望」にすぎない。「要望」には本来強制力はない。しかし、もし外国の要望を、忠実に実行する為政者が存在したら、これはけっこう大変なことになる。そして、けっこうたいへんなことになっているのではないだろうか。

上掲の経済産業省のサイトの下の方に、
日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する日米両国首脳への第4回報告書(2005年11月2日)http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/n_america/us/data/report_Japanese4.pdf
というものがある。
こちらも、たいへん重要な文書だ。
「年次改革要望書」が、「日本改造計画書」なら、こちらは、「改造努力報告書」なのだ。つまり、改造の進捗状況と、今後の努力目標を提示している。これの目次は、「年次改革要望書」に完ぺきに順じて記載されている。この文書は、例年6月に発行されているのだが、今年は11月にずれ込んでいる。

ただ、ざっと読んだだけでは、なにがどうなっているのか、専門外の人間にはよくわからない。漠然と、物事がよくなっているという印象を受けるように書かれている。これは、一般向けの文書ではなく、あくまで米国政府向けに書かれている文書であり、独特の符牒とも言える表現もある。言葉を額面通りには受け取れない文書なのだ。各分野の専門家の分析が必要であり、安易にここでコメントはできない。

まず、この二つの文書が存在することを知っておいてもらいたい。
日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書=「年次改革要望書」=「日本改造計画書」
と、
日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する日米両国首脳への報告書=「改造努力報告書」
だ。




経済産業省
対外経済政策総合サイト
規制改革及び競争政策イニシアティブ
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/n_america/us/html/regulatory_reform.html

日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する日米両国首脳への第4回報告書(2005年11月2日)
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/n_america/us/data/report_Japanese4.pdf

外務省
「成長のための日米経済パートナーシップ」の現状
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/pship_g.html#03

年次改革要望書2005はまだか?!

2005年11月20日 17時46分33秒 | □年次改革要望書
毎年、日米間で律儀に10月に交換されていた「年次改革要望者」が、今年はまだ見あたらない。

アメリカ大使館のサイトで、公開されていないということは、まだ交換されていないのだろう。日米間に何か問題が発生したのだろうか。いや、そんなことはない。ついこの間の16日に、ブッシュ大統領は、京都で小泉首相と会ったばかりだ。なぜ今年はまだ「年次改革要望書」の交換が、行われていないのだろうか。

「年次改革要望書」は、毎年欠かさず10月に交換されてきた。一応確認しておこう。米国大使館では、「規制改革要望書」となっている。正式名称は「規制撤廃および競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティブに基づく日本政府への米国政府年次要望書」である。

2004年規制改革要望書(2004年10月14日)
2003年規制改革要望書(2003年10月24日)
2002年規制改革要望書(2002年10月23日)
2001年規制改革要望書 (2001年10月14日)
2000年規制改革要望書 (2000年10月12日)
規制撤廃、競争政策、透明性及びその他の政府慣行に関する要望書 (1999年10月6日) 規制撤廃、競争政策、透明性及びその他の政府慣行に関する要望書 (1998年10月7日)


アメリカ大使館 政策関連文書 経済・通商関連ページ
http://japan.usembassy.gov/j/policy/tpolicyj-econ.html
アメリカ大使館 政策関連文書 過去の文書ページ
http://japan.usembassy.gov/j/policy/tpolicyj-old.html#Anchor95883

このように、律儀に10月中に交換されてきた。それが、今年は、すでに11月だというのに、まだ、アメリカ大使館のサイト上に見られない。どうしたのだろうか。「年次改革要望書」は、今年一躍脚光を浴びることになった。「郵政民営化」法案の是非をめぐる議論の中で、「年次改革要望書」はネット上で頻繁に取上げられるようになった。

そして多くの人々が驚愕した。これは、ほとんど内政干渉と言ってもよい文書なのだ。しかもその内容が、実際に具体化されてきたのだから。いまでは、「年次改革要望書」は、アメリカのための日本改造計画書と広く認識されている。

「年次改革要望書」は、ネット上では頻繁に取上げられ、議論されてきたが、新聞、雑誌、テレビなどのマス媒体ではほとんど取上げられていない。ネット上で、広範に議論されている内容を、マスメディアがまったくといっていいほど取り上げないというのは、不自然で意図的なものを感じる。メディアは、ネット上でのペット(モナー)の著作権問題については取上げるのに。日本政府にとって、「年次改革要望書」は国民には知られたくない文書ということなのだろう。したがって、マスメディアもひたすら無視し続けてきた。

しかし、ネットを通じて、すでに国民の間にかなり認知されていることは間違いない。もし、今年も、例年通り10月に「年次改革要望書」が交換され、アメリカ大使館のサイトで公開されれば、大勢が一斉に取上げ、さらに議論は盛り上がるだろう。日本政府は、それを恐れたに違いない。これ以上、「年次改革要望書」の認知が広がることを避けたいのだ。

毎年、その内容はほとんど同じなのだから、今年も、絶対に交換しなければならないという類のものではない。過去の文書を参考に、どんどん「改革」を進めればいいというに過ぎない。

この「年次改革要望書」については、関岡英之氏の『拒否できない日本』というすぐれた著書がある。この本は現在でも版が進んでいるベストセラーなのだが、アマゾン・ドット・コムでは、一年以上取り扱いの休止状態が続いていた。ユースドは扱われていたが、定価735円の現存する新書に3000円の値が付けられていた。ネット上では、”米国資本のアマゾンは関岡氏の著書を読ませたくないのでは?”と静かな話題となった。ネット・メディアがアマゾンに取材したせいか、いつのまにかアマゾンは、『拒否できない日本』を復活させている。3000円のユースドも姿を消した。アマゾンの努力(?)も空しく、『拒否できない日本』は、いま、アマゾンの 売上ランキングで144位と大健闘している。

認知度の高まってしまった「年次改革要望書」は、もはや交換されることはないかもしれない。
しかし、今後も、「年次改革要望書」に基づいて、日本は「改造」され続けるのは間違いないだろう。


「年次改革要望書」は下記にて公開されています。
アメリカ大使館 政策関連文書 経済・通商関連ページ
http://japan.usembassy.gov/j/policy/tpolicyj-econ.html

『拒否できない日本』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166603760/250-3464907-1713032

「アマゾン・ドット・コムが読ませたくない本?」
http://blog.goo.ne.jp/leonlobo/e/3fdb5d9923df7ae123d15534fda75859

アマゾン・ドット・コムが読ませたくない本?

2005年09月17日 21時17分36秒 | □年次改革要望書
当ブログでも紹介した関岡英之氏の著書『拒否できない日本』(文春新書)という本が、アマゾン・ドット・コムで不可思議な品切れ状態が続いているという記事がでている。以前少し触れたが、いまだ同じ状態がつづいているようだ。

ZAKZAKというニュースサイトがこの件について調査している。発行元の文芸春秋社の担当者も、ZAKZAKの問い合わせがあるまで、その事実を知らなかったようだ。担当者は『アマゾンからの注文が来ていないようです。理由は分かりません』とコメントしている。

『拒否できない日本』はすでに3万8千部も売れているらしい。堅い内容の本としては、かなりの売れ行きと言える。それが、ネット書籍販売の最大手アマゾンが入荷していないというのは、確かに理解に苦しむ。アマゾンにアクセスして確かめてみると、『拒否できない日本』定価735円(税込み)の古本が1780円から1840円いう値で売られているだけだ。古本に定価の倍以上の値段を付けるというのも、理由がわからない。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166603760/249-3622962-1836336

『拒否できない日本』は、「年次改革要望書」について詳しく検証している唯一の書籍だ。日本政府が行ってきた「改革」のほとんどがこの「年次改革要望書」の中に見出される。もちろん「郵政民営化」もだ。「年次改革要望書」はアメリカの国益のために日本を改造する指示書とも言うべきものだ。

ZAKZAKの取材に対して、著者の関岡氏は『アマゾンは、私の本が読まれると、要望書の存在が広く知られ、嫌米論調を刺激することになるのを避けたいのでしょうか』と答えている。


ZAKZAK
ナゼ読めない…「アマゾン」で1年超も品切れの本
http://www.zakzak.co.jp/top/2005_09/t2005091623.html

ジャパン・バッシングから構造改革へ

2005年09月06日 20時16分43秒 | □年次改革要望書
我々の住む日本が、いまどのような状態にあるかを知りたければ、どうしてもアメリカと日本、アメリカと世界という視点から見る必要がある。日本の国内問題と見えるものが、すべからくアメリカの国益問題でもある。


アメリカ政府は常に、日本をアメリカの国益のために利用しようとしてきた。一昔前は、言うことを聞かない日本に、「バッシング」を行った。しかし「ジャパン・バッシング」を繰り返してもほとんど効果はなかった。たいていの国はそれで屈服するのに。なぜか日本にはバッシングの効果がなかった。

当然、アメリカ政府はその原因を徹底的に研究した。その結果、アメリカ政府は、日本のおどろくべき実態を知る。日本の首相は権力の頂点ではなかったのだ。では、権力の中枢はどこにあるのか。実は、日本には権力の中枢などなかった。そんなものは、日本のどこにもみあたらない。首相でも議会でも官界でも財界でもない。またこれらが全体として権力を形作ることもない。バラバラなのだ。バッシングも、脅しもすかしも通用しないのは、最初からバラバラで命令を下す者がいないからだった。

アメリカ政府は、日本を民主主義国であり、資本主義経済国だと見誤っていたのだ。つまり、自分たちと同じシステムの国と思い込んで対処していた。しかしながら日本とは、中世的ムラ社会であり、共産主義的な統制経済国家なのだ。まさか「同盟国」に、そんな国家が存在するとは、アメリカ政府は夢にも思っていなかった。しかも、自分たちが一度占領し、近代国家としての基礎を築いてやった国が、だ。

かくして、アメリカの頭脳は日本の正体を解明した。ジャパン・バッシングが鳴りを潜めたのはそのためだ。一部の議員の間にはいまだに名残があるかもしれないが、政策としてはもはやない。では、ジャパン・バッシングのかわりに、アメリカ政府があらたに執った政策とは何か。

「構造改革」だ。
日本の構造をアメリカとまったく同じシステムに造り替えることだ。
政治や経済、社会のシステム、そして文化までもアメリカ型にしてしまえば、もはや日本においてアメリカ国内と同じように展開すればいいだけだ。アメリカに都合の悪いあらゆる規制を撤廃させ、あらゆる市場を開放させる。もちろん制度そのものも造りかえる。

その改造計画書が「年次改革要望書」だ。日本のあらゆる分野に「要望」を突きつけている。どこからどうみても、内政干渉だ。したがって、これを突きつけただけでは、今まで同様日本が動くわけがない。1994年以来、歴代首相はアメリカの圧力により「金融ビッグバン」など少しずつ実行はしてきた。

しかし、「年次改革要望書」に沿って日本をすばやく改造するためには、日本国内にもっと忠実な協力者が必要になる。まず何よりも、権力の中枢が存在しなかった日本に、強権を発動する首相を据えなければならない。そこで弱小派閥の長だった小泉純一郎氏に白羽の矢があたった。小泉首相は、中身はまるでないが、決まったフレーズを繰り返して猪突する強引さと冷酷さがある。独裁政治の長には、そういう人物が最適だ。ただ、複雑な政策を忠実に実行するには、もっと頭のいい男が必要になる。竹中平蔵氏だ。その経歴は実に輝かしい。小泉首相自身は、ただ叫ぶだけで、実務はすべて竹中大臣に丸投げしている。

小泉首相を、ヒットラーになぞらえる人もいるが、それは妥当ではない。ヒットラーはアメリカに奉仕などしていない。小泉首相は、朴正煕、スハルト、モブツ・セセ・セコ、フェルディナンド・エドラリン・マルコスらと肩を並ぶべき人物だ。みな、自国民の生活を踏み潰し、自己とアメリカの国益にだけ奉仕してきた人物だ。そして、その末路もみな同じだ。

小泉首相の言う「構造改革」とは、アメリカの国益のための日本改造以外の何物でもない。

ラインダンス

2005年09月02日 23時16分37秒 | □年次改革要望書
Googleのニュース検索で「年次改革要望書」を検索するとたった三件しかでてこない。

asahi.comの福岡・北九州版8月23日
(政治評論家森田実氏へのインタビュー)
中央日報8月28日
(韓国の新聞の電子版)
JANJAN7月31日
(市民メディア)
マスメディアは朝日たったひとつだ。

その他のメディアの個別サイトでは、
YOMIURI ONLINE なし
NIKKEI NET なし
Sankei Web なし
Mainichi Interractive7月31日
(平沼赳夫前経産相へのインタビュー記事)

合わせて四つ。マスは二つだけだ。

マスメディアはアメリカ政府による「年次改革要望書」など語るに値しないと思っているのだろうか。小泉首相が進めている改革のほとんどがこの「年次改革要望書」の中に見い出せるというのに。普通にウェブで検索すれば、それこそ無数と言えるほど言及されている。国会でも何度か取り上げられた。関岡英之氏の『拒否できない日本』(文春新書)というすぐれた著書もある(紀伊国屋書店BookWebでは定価の735円で買えるが、amazon.co.jpではなぜか新品がなく、ユーズドが1500円以上でしか売られていない。倍の値段で古本を誰が買うのか)。

マスメディアは頑なに「年次改革要望書」に触れることを避けているようにしか思えない。「年次改革要望書」など取るに足らない公式文書だからマスメディアは無視しているのだろうか。取るに足るか足らないかは、メディアが判断することではない。多くの議論がなされている対象を取り上げないということは、国民から隠蔽したいか、無能かのどちらかだ。

日本のマスメディアは、小泉「構造改革」の前に、横一線に並んで、足を高々と上げてラインダンスを踊ることしか能がないようだ。

在日アメリカ大使館公式HP経済通商関連ページ