報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

「郵政民営化」とメディア(3)

2005年07月29日 18時55分42秒 | □郵政民営化
<日本の新聞に「革新」も「保守」もない>

 日本の新聞について、よくこんな話を耳にする。
「○○新聞は革新系だ。△△新聞は保守だ。そして□□新聞は中道」

 全国紙は朝日、産経、毎日、読売と四つある。日経を入れて五つ。
 はたして、この五つの新聞は、ほんとうに○△□に分類することが出来るのだろうか。僕には、見分けが付かない。何んらの差も見受けられない。しかし顕微鏡を使って読めば、あるいは分類も可能なのかもしれない。顕微鏡も望遠鏡も持っているので、いずれ使ってみてもいいが。少なくとも、肉眼で読む限り、そこに差は見えない。五大紙の中で、「郵政民営化」の危険性について論述した新聞はひとつもない。五大紙が、二人三脚のように見事に足並みをそろえている。

 本来、あらゆる情報を開示した上で、幅広い国民的議論が必要なはずだ。しかし、基本的な情報が隠匿されているため、議論の起こりようもない。新聞をはじめとするメディアが「郵政民営化」に潜む危険性について、何も知らないということはありえない。僕でも、知っている情報なのだから。あらゆるメディアが特定の情報を国民から隠している。

 五大紙をはじめ、あらゆるメディアは、不偏不党の独立した存在などではなく、国家に従属する機関にすぎない。ほとんど、一心同体といえる。「記者クラブ」というギルドによって特権を得る換わりに、中世的な呪縛を甘受している。この既得権益を守ることが目的となっている。そのことに何の疑問も感じていない。そこには「国民の利益」などという概念はない。そんなメディアに「革新」や「保守」、「中道」といった分類をするのは、滑稽というほかない。

 では、この分類はどこからきたものなのだろうか。
 これは、市場原理による淘汰を防ぐための「棲み分け」なのだ。
”うちは保守層の読者をいただきます””では、うちは革新層をもらいます””じゃあ、うちは中道で”
 そういう棲み分けなのだ。中身はすべて同じだ。表面を少し色づけして別物に見せているに過ぎない。

 インターネットの普及とともに、新聞購読数は減っている。恒常的に国民を欺き続けている新聞がいつまでも生きながらえるとは思えない。

「郵政民営化」とメディア(2)

2005年07月28日 14時24分07秒 | □郵政民営化
<魔女狩り>

 27日、テレビ朝日、夜のニュース。
「郵政民営化」法案に反対表明している10人の自民党の参議院議員は「造反議員」と呼ばれた。

 メディアは「造反」というネガティブな言葉を使って、反対派議員の政治生命を絶とうと試みている。「造反」という言葉には、「裏切り者」「恩知らず」という意味も込められている。日本人が潜在的に嫌う言葉だ。メディアは、日本国民の利益よりも、党や党首、先輩への恩を優先しろと言っているに等しい。

「郵政民営化」の危険性を一切報じないまま、このような報道方法をとれば、視聴者は、”こいつらは悪者議員なのだ”と刷り込まれる。そうしたイメージは、政治家に大きなダメージを与える。態度を決めかねている優柔不断な議員には効果的だ。メディアは、何としても「郵政民営化」法案を通過させたいようだ。正確な情報を視聴者に提供するのではなく、明らかに為政者の側に立っている。
 まるでファシズム国家におけるマスメディアの姿だ。

 テレビ画面で、したり顔にコメントしているキャスターやコメンテーター。
 りっぱな肩書きをつけているが、彼らは進んで「ファシズム」の片棒をかついでいる。
 革新的なイメージのあるテレビキャスターも、毎日毎日視聴者を欺き続けている。
 彼らこそ、国民に対する裏切り者だ。

「造反」する議員には、それぞれ利害や利権、思惑があるに違いない。しかし、「郵政民営化」法案への反対は、紛れもなく国民の富を守る行為だ。その議員をテレビ上で血祭りにあげるメディア。まるで「魔女狩り」や「レッドパージ」を見ているようだ。
 
 21世紀の日本で、このような前時代的な茶番が、全メディアをあげて堂々と行われていることに驚愕する。
 ここはいったいどこなのだろう。

「郵政民営化」とメディア(1)

2005年07月26日 18時40分23秒 | □郵政民営化
 
 既製メディアは、ディスインフォメーションとミスリードに満ちている。
「大本営発表」を垂れ流すしか能がない。
 日本のマスメディアには未来はないと感じる。

 エリート意識や特権意識に満ち、国民を根本的に蔑視していなければこんなことはできない。こんな既製メディアの「矯正」は無意味だ。国民の前から消えてなくなることこそが最良の策だろう。
 インターネットメディアの発達は、いずれは既製メディアを歴史のゴミ箱に放り込むことになるだろう。

 いま、日本国民にとって、もっとも重要な議題は「郵政民営化」問題以外にない。350兆円もの国民の資産が民間市場に放出されようとしているのだから。
 はやい話が、「郵政民営化」はアメリカ政府の要求ではじまり、アメリカの利益に貢献する政策以外の何ものでもない。日本の自主的な政策でもなく、日本国民の利益にもならない。

 小泉首相のこころは、アメリカにしか向いていない。「郵政民営化」法案を成立させ、アメリカの利益に多大な貢献をすれば、小泉首相はかつて誰もが持ち得なかった権力をアメリカから約束される。だからこそ、小泉首相はなりふりかまわず必死になって「郵政民営化」法案を通そうとしているのだ。「郵政民営化」法案が参議院を通過すれば、アメリカ政府は、忠実な僕小泉首相に絶対的な権力を付与することになる。そして日本は確実に小泉独裁国家に向かって進む。

 小泉純一郎氏の「郵政民営化」は、日本の未来を奪う。
 しかし、既製メディアが、一言でも「郵政民営化」の本質を報じただろうか。
「安保条約」に匹敵する大事件にもかかわらず、メディアは「郵政民営化」を注目に値しないもののように扱っている。
 そして、どうでもいいようなニュースを大きく扱っている。

 本日の日経新聞の一面は、
「内田副総裁を逮捕」だ。
 たった五千万の不正事件が一面だ。
 日経新聞は350兆円の行方にはまったく関心がないようだ。
 たいした経済専門新聞だ。
 あと一週間ほどで、日本の運命が決定するというのに。
 
 新聞、テレビ、雑誌は、一級戦犯というしかない。

人民元2%切り上げ

2005年07月24日 19時43分19秒 | □経済関連 バブル
 中国が、人民元を2%切り上げた。
 しかし、たいした事件ではない。
 たった2%の切り上げなど、中国にも世界にも何の影響もない。
 ここで、取り上げる必要のないニュースだ。

 問題に思うのは、人民元切り上げに対する日本のメディアの大騒ぎだ。異常としか思えない。22日の日経新聞の一面は、二段ぶち抜きで、
『人民元2%切り上げ』
 というでかい見出しをつけている。
 これでは、とんでもないことが起こったという印象を与える。
 2%の切り上げなど、ほんの調節程度にすぎない。
 続いて5面では、小さな見出しではあるが、
『「円」の71年切り上げに相当』
 とある。
 これもまったく妥当とは言い難い。
 71年のニクソン・ショックでは、円は360円から308円へと約15%も切り上げられたのだ。しかも、ドルと金の交換が停止され、世界経済は大混乱となった。これは大きな世界的事件だった。その71年の円切り上げに相当とは、あまりにも誇張がすぎる。

 もちろん、つまらない事件に大きな見出しをつけてはいけないという法はない。
 しかし、見出しというのは、読者にとってはひとつの目安だ。そのニュースがどれだけ重要であるか、あるいは緊急であるかを、読者は見出しで判断する。
 新聞社は、その心理を利用して、読者をミスリードすることが出来る。ドルペッグ制で固定相場を取っていた人民元が微量とはいえ、変動に移行したことは、確かに「事件」ではある。しかし、2%程度の調節幅にそこまで紙面で大騒ぎするのは不自然だ。日経新聞の紙面には、あきらかに意図的な誇張を感じる。

 なぜ、このような不自然な紙面づくりがなされるのだろうか。
 人民元2%切り上げよりも、「郵政民営化」の方が世界的な大事件だ。何といっても350兆円もの資金が市場に放出されるのだから。この大事件が、衆院を通過し、来月5日には参議院で採決される。いよいよ天王山なのだ。にもかかわわず、日経新聞は驚くほど小さくしか扱っていない。国民の富350兆円の行方を決する大事件を、経済専門紙がこの程度にしか扱わないというのは、これこそが、あまりにも不自然というしかない。

 たいしたこともない事件を過大に扱い、本当に大事な事件を取り上げない。日本のメディアは、国民を意図的に落し穴にミスリードしている。明らかな確信犯だ。日本のメディアは、いつか断罪されなければならない。既製メディアは、放っておいても遠からず、姿を消す運命にはある。しかし、なるべく早く消えて欲しいものだ。

「冷戦」後の巨大な鉱脈=「対テロ戦争」

2005年07月18日 23時49分36秒 | ■対テロ戦争とは
<都合のよい「事件」>

 ロンドンの同時爆破事件については、早くも様々な憶測が流れ始めている。

 911事件においては、すでに万をこえる検証が行われている。かなり説得力のある良質な検証も数多くある。911事件はあまりにも、不可解な事例、現象が多い。そのような事例や現象の背景や原因を検証することは重要だ。ロンドンの爆破事件についても、同様の検証が始まっていると思う。いずれ信頼すべき情報がネット上に掲載されるに違いない。そこから、誰でも一定の結論を導き出すことができるだろう。しかし、個々の事件を解明するだけでは、あまり意味がない。単なる、謎解きごっこに終わってしまう。

 911事件後の、アメリカ政府の発言や動きからは多くのことが読み取れる。アフガニスタンでは悲願のパイプライン建設が進み、イラクでは埋蔵量世界第二位(世界最大であるとも言われる)の油田を手に入れた。そしてイラクの石油決済通貨をユーロからドルに換えた。しかし「大量破壊兵器」は永遠に見つかりそうもない。存在するかしないかもわからない「アル・カイーダ」との関係も立証されなかった。ここで一番重要なのは911事件によって、アメリカは欲しいものをすべて手に入れたということだ。
 石油や決済通貨、軍需は「目的」ではなく、単なる「結果」だという意見もある。しかし「結果」としてたまたまついてきたオマケにしては、あまりにもアメリカばかりが得をしていないか。

 では、911事件がなかったと考えたらどうなるだろうか。
 アフガニスタンにパイプラインを作ることはできない。
 したがって中央アジアの石油は手に入らない。
 イラクの石油は手に入らない。
 石油決済通貨はユーロのままであり、中東諸国はイラクに続いてユーロに乗り換えただろう(ロシアはとっくに石油決済通貨をユーロ建てにしている)。
 基軸通貨ドルの地位は揺らぎ、世界の経済圏をユーロと二分することになる。
 軍需産業は凋落する。
 つまり、エネルギー資源、軍需、基軸通貨ドルというアメリカの屋台骨がグラグラになるということだ。

 実に都合よく911事件は起こったと言える。

 冷戦終結による「共産主義の脅威」がなくなり世界は平和に向かって前進するかと思いきや、実に都合よく「ならず者フセイン」が出現した。そしてビン・ラディンが登場し、そして「アル・カイーダ」の文字がメディアの中で踊った。またもやアメリカが世界のリードをとり「対テロ戦争」を戦うことになった。

 戦争や紛争に突入するきっかけとなった事件はいくつもある。盧溝橋事件、パールハーバー、トンキン湾事件、911事件・・・。
 しかし、なぜか世界を平和にする事件は存在しない。
「和解、友愛、平和」は富と権力に繋がらないからだ。
 逆に「不和、憎悪、戦争」は富と権力を生む。
 思想や宗教や民族は利用されているに過ぎない。
 すべては、富と権力の問題なのだ。
 そして必要なときに必要な「事件」が必ず起こる。

< 幻想の産物、共産主義の脅威 >

 85年のゴルバチョフの登場から、ソビエトは崩壊に向かっていた。89年のポーランド、ハンガリーの民主化を皮切りにベルリンの壁が崩壊、そして、1991年「悪の帝国」ソビエト連邦は崩壊した。この一連の動きの中で、90年に第一次湾岸戦争が起こっている。これは決して偶然ではない。

 もともとイラクとアメリカとは友好関係にあった。イ・イ戦争時はアメリカはイラクを支援した。フセインとしては、クウェート侵攻に関して、アメリカからの承認を得たと考えていた。駐イラク米大使は、「イラクとクウェートの関係について、アメリカは介入する気はない」とフセインに口頭で伝えている。国際政治の世界では、これは「GO」サインと同じである。クウェートを好きにしなさい、ということだ。しかしこれは、罠だった。イラク軍がクウェートに侵攻すると、とたんにアメリカはイラクを非難し、クウェートを救うために、イラクを爆撃し多くのイラク市民を殺害した。このときもメディアを使ったディスインフォメーションが行われている。「原油まみれの水鳥」はサダムとは関係がなかった。イラク軍による保育器の赤ん坊殺しもまったくの作り話だった。
 世界中に「極悪フセイン」というイメージづけが行われた。
 湾岸戦争は、今日の「対テロ戦争」の布石だと言える。

 重要なのは、「冷戦」の終結の過程で、「ならず者フセイン」が突然クローズアップされたということだ。「悪の帝国」ソ連邦の崩壊は、アメリカにとっては悪夢だった。敵がいるからこそ、アメリカは黙っていても西側世界の覇者として君臨できた。はてしない軍拡競争で、放っておいても軍需産業は儲かった。「悪の帝国」と対抗できるスーパーパワーはアメリカしかいない。共産主義と核の脅威によって、世界はアメリカの傘下に入った。

 おかげでアメリカは毎年、巨額の財政赤字、国際収支赤字を出そうとも、世界が即座に穴埋めしてくれる。アメリカの弱体は、世界の安全の危機だからだ。アメリカは世界で唯一、赤字を気にすることなくはてしなく浪費を続けることの出来る国となった。他の国なら、とっくに国家破綻だ。アメリカは「冷戦」によって、尽きることのない鉱脈を手に入れた。

 つまり、アメリカとしては、共産主義と核の脅威を煽れば煽るほど世界を意のままに操れたのだ。実際、アメリカはソ連邦の脅威を過剰に宣伝した。赤い国からのスパイを描いた映画や小説が量産された。その中で赤い国は、極悪で冷酷で非情、しかも強力で優秀と描かれている。しかし、ソ連邦が崩壊したとき、そのあまりのあっけなさに、世界は驚嘆した。「悪の帝国」は内部から勝手に崩壊するほど脆弱だった。

 共産主義の脅威がなくなったということは、アメリカにとって富と覇権を生むあらゆる前提が崩れたことを意味する。核配備、軍事増強の必要性はもはやない。西側諸国にとっては、アメリカの庇護下に入る必要もない。「悪の帝国」の崩壊は、すなわちアメリカの富と覇権の終焉を意味した。
 アメリカは次の鉱脈を掘らねばならなかった。
 それは「ならず者フセイン」として試掘がはじまった。
 そして、ナイロビ米大使館爆破事件、タリバーンとオサマ・ビン・ラディン、911事件、アフガニスタン戦争、イラク戦争へと掘削が続いた。

<新たな鉱脈=「対テロ戦争」>

「対テロ戦争」という鉱脈は、まだまだ地中深く続いている。
 最終的には世界中が「テロ」の脅威を現実的なものと感じなければ意味がない。これから、世界各地で「テロ」が勃発する。あるいは、「テロ計画」が未然に阻止され、「テロリスト」が逮捕される。そしてかつて、世界中の人々が心の底から共産主義を恐れ、憎悪したように、「イスラム」を恐れ、憎悪するようになる。
 イスラム教徒というだけで、多くの人々が迫害される。特にアメリカやヨーロッパのイスラム教徒の移民は徹底的な迫害を受ける。そして、彼らは職を終われ、ビジネスを失い、教育の機会を奪われ、家を追われる。恒常的な暴力の脅威におびえ、生活を破壊される。彼らは追い詰められていく。その帰結は明らかだ。多くの若者が、極端な行動に移る。つまり、目には目をだ。こうして、「テロ」の悪循環がはじまる。
 すでに、ロンドンの爆弾事件では、英国のイスラム社会に対する暴力と迫害と脅迫がはじまっている。殺害事件も発生している。

 イスラム国家は、アメリカの政策に従わねば、存立できなくなる。中東諸国は、すでにアメリカの衛星国家となりはじめている。こうした国々は必要に応じて、「テロ志願者」「テロ容疑者」を供給しなければならない。
 今回のロンドン爆破事件の「実行犯」とされている人物はすべてパキスタン系英国人であり、パキスタンとアフガニスタンで訓練を受けたとされている。現在最もアメリカの影響下にあるイスラム国家はパキスタンとアフガニスタンだ。双方ともシナリオどおりの演出をしてくれるに違いない。

 ロンドン爆破事件の真相を究明する作業も大切ではある。
 しかし、911事件やロンドン爆破事件、アフガニスタン戦争、イラク戦争が何を意味するかを理解しなければ、ただの謎解きごっこに終わってしまう。

「対テロ戦争」とは、冷戦に換わる富と覇権の「鉱脈」だ。
 共産主義の脅威に踊らされ、資源や富を奪われ続けたように、いま、世界は「テロ」の脅威に踊らされている。イスラム教徒を憎み、恐れることは、自らの主権と富を投げ捨てる行為にほかならない。そしてその陰で、ごく一部の者だけが、途方もない利益を得ていくのだ。

ロンドン同時爆破事件について③

2005年07月14日 18時24分15秒 | ■対テロ戦争とは
 7月10日、米国土安全保障省のチャートフ長官が、現場も見ていないのにロンドン爆破事件について
「自爆攻撃の可能性を排除していない」
 と不自然なコメントした。
 その2日後の12日には、ロンドン警視庁は、突然実行犯4人を特定し、自爆テロの可能性が高いと発表。現時点では、もはや自爆テロと確定されている。

 アメリカのコメントというのは、なんとも効果絶大と言うしかない。

 ロンドン警視庁は、事件後たった一週間で、ほぼすべての関係者を割り出し、その足取りをつかんだことになる。あまりにも早すぎるし、あまりにも話ができすぎている。そして、不自然すぎる。そもそも、そんなに優秀なロンドン警視庁なら、爆破を事前に防げたはずだ。ほかにも優秀な諜報機関もある。
 爆破犯は、ロンドン警視庁やMI6よりもはるかに優秀な人材と高度な知識を持った連中だ。そんな組織は、世界にそんなにあるものではない。
 ちょっとパキスタンへ行って軍事訓練を受けたような若者にできる仕事ではない。

 しかし、こちらにはもはや、真相を知るすべはない。

 ひとつ言えることは、これでイギリスは大手を振って「対テロ戦争」を戦えるということだ。あるいはイギリス国民は「対テロ戦争」からもはや抜けられなくなったとも言いかえられる。

 これは、まだまだ序の口だ。
 ブッシュ大統領は、911テロのあと、
「この戦いは、5年で終わるかもしれないし、50年続くかもしれない」
 と発言している。

ロンドン同時爆破事件について②

2005年07月12日 21時29分54秒 | ■対テロ戦争とは
< 「アル・カイーダ」脱走 >

 11日、在アフガニスタン米軍当局は、バグラム空軍基地(カブール北方50km)の収容所から、アラブ「アル・カイーダ」のメンバー四人が脱走したとアナウンスした。四人の国籍は、シリア、サウジ、リビア、クウェート。現在、全力を尽くして捜索中ということだ。四人は、非常に危険な人物であるとも。

 バグラム収容所では「アル・カイーダ」やタリバーン容疑者を収容しているとされている。ということは、グアンタナモ収容所並に、警備が厳重なはずだ。そこから脱走することができるのだろうか。もちろん、バグラム収容所を実際に見たわけではないから、脱走できない、と僕が断言できるわけではない。そういうアナウンスがあったと認識するだけだ。信じる信じないは、別問題だ。

 ただ、ひとつ言えることは、実にタイミングがよい、ということだ。7日にロンドンで衝撃的な爆破事件があり、その数日後にバグラムで、危険な「アル・カイーダ」メンバーが脱走とは。
 そして、当分は、この二つの事件をめぐって世界のメディアには「al-Qaeda」の文字が飛び跳ねることだろう。

< 時限爆弾 >

 アメリカ政府の治安機関は、ロンドンの爆破事件を受けて、「自爆の可能性を排除しない」と発表した。

 ロンドンの爆破事件では、爆破当初から「時限装置」もしくは「携帯電話を使った起爆装置」が使用されたと発表されている。複数地点での爆破が、ほぼ同時刻に発生したからだ。しかし、なぜかアメリカ政府機関は、”自爆”の可能性もあると世界に示唆したいようだ。

”自爆”の場合、ほぼ同時など考えられない。もちろん全員が時計とにらめっこしながらなら可能とはいえるが、そんなことには何の意味もない。自爆の場合、もっとも効果的なタイミングで爆破できるから、そういう手段をとっているのだ。

”自爆”の場合は各自の判断で爆破すればいいが、「時限装置」の場合は、時差は禁物だ。もし仮に、5分おきにセットしたとすると、最初の爆破と最後の爆破では15分の差が出る。最初の爆発の報を受けて、避難が可能となるかもしれない。そうなると、同時爆破の心理的インパクトはほとんどなくなる。
 事件を報じるメディアが、たとえば、こう表記したとする。
「ロンドンで同時爆破テロ、二発は難を逃れる」
 人の心理というのは、とても微妙なものだ。失われた命よりも、救われた命があることに安堵する。そして、犯人に対して、怒りよりも勝利感を持つ。この場合、爆破は「失敗」と言えるだろう。
複数の時限爆弾の場合、絶対失敗しない条件は、同時爆破以外ない。
 ロンドンの同時爆破事件が、”自爆”である可能性は、まずない。
 では、なぜアメリカ政府機関は、わざわざ「自爆の可能性を排除しない」と発表したのだろうか。

 いまや、テロ=自爆=「アル・カイーダ」。
 という固定観念が完璧にできあがっている。
 しかし、今回は、時限装置もしくはモバイル起爆だ。おそらく世界中で、「なぜ自爆ではないのか?」と考えている人は多いはずだ。アメリカ政府の「自爆の可能性を排除しない」という不自然な発言の意図は、犯行はあくまで「アル・カイーダ」である、という印象を強めたいからではないのだろうか。

 爆破事件があるたびに、不可解な事例が出てくる。
 しかし、ひとつ言えることは、ロンドンの爆弾は、少なくとも「命が惜しい人」が計画実行したということだ。

< 平時に戻ろう >

 いまイギリス政府は、ロンドン市民にこう呼びかけている。
「仕事に戻り、普通の生活にもどろう」と。
 同時爆破事件から、まだ一週間も経っていないのに。

 犯人は、まだ特定されてもいないし、自爆で死んだわけでもない。もちろん、逮捕されてもいない。いまだ、ロンドンに潜んでいるかもしれないし、爆薬を貯蔵しているかもしれない。もしかすると、次の攻撃の準備が出来ているかもしれない。様々な可能性が考えられる。本来、市民は十分警戒し、出来る限り外出は避けるべき時期なのだ。
 にもかかわらず、「普通の生活に戻ろう」?
 あまりにも、早すぎはしないだろうか。
 しかし、どこかで聞いた台詞だ。

 911テロのあと、ブッシュ大統領は国民にこう呼びかけた。
「いつまでも悲しんでいては、テロリストの思うつぼだ。さあ、平時に戻ろう」と。

 そんな発言をして、もし次の攻撃が発生したら、大統領弾劾だろう。次の攻撃はないことを確信していなければ、そんな発言はできないのではないだろうか。
 そして、トニー・ブレアー首相も、さらなる攻撃などないことを知っているのかも知れない。

ロンドン同時爆破事件について①

2005年07月11日 21時13分54秒 | ■対テロ戦争とは
 七日、ロンドンで、同時多発的に爆弾が炸裂した。
 そして世界中のメディアには「アル・カイーダ」の文字がおどった
「犯行声明」もインターネット上に掲載されたようだ。
 しかし、インターネット上の犯行声明で「アル・カイーダ」だと断定できるのだろうか。そんなものが何かの証拠になるのだろうか。

 犯行声明を掲載することなど、犯人でなくてもできる。ひとつの爆弾事件に、複数の違った組織から犯行声明が出されることさえある。人の”手柄”を横取りすることもできるし、責任を他者に擦り付けることもできる。
 アフガニスタンで発生している爆破、銃撃、誘拐の三割は、軍閥によるものだという分析がある。しかし、爆破や襲撃があると、所在不明のタリバーンのスポークスマンが衛星電話で犯行声明を伝えるのが、パターン化している。しかし、のちに軍閥の仕業であることが判明した事件はいくつもある。タリバーンは何にでも声明を出すのか、それとも、タリバーン以外の人物が勝手に声明をだしているのか。真相は闇の中だ。

 ロンドンの同時爆破事件では、まだ「アル・カイーダ」だという証拠はどこにもない時点で、世界中のメディアは「アル・カイーダ」だと印象付けるような報道をしている。いったい、何を持って「アル・カイーダ」の犯行だと確信しているのだろうか。

 世界は、「アル・カイーダ」の存在を、揺るぎない事実として受け取っている。その頂点にオサマ・ビン・ラディンという男が立っているということも。しかし、僕は「アル・カイーダ」なる組織が本当に存在するという証拠など、いまだ見たことがない。オサマ・ビン・ラディンがそのリーダーであるという証拠も。不鮮明な映像と音声のビデオなど、証拠にはならない。そんなものいまや高校生でも作れる。

「アル・カイーダ」のメンバーとされる男が逮捕されたという報道はときおり目にするが、以後その男の消息はぱったりと消える。メディアも後追い取材をしない。
 グアンタナモ収容所も、あまりにも内情が秘匿され、我々にはいったい誰が収監され、そこで何が行われているのか皆目わからない。グアンタナモが問題にされるたびに、メディアは、
「アル・カイーダとタリバーンが収監されているグアンタナモ収容所」
 と表記する。
 世界中の人々の脳裏には「アル・カイーダ」の存在が印象付けられる。あるいは、「16名の無実が判明し釈放」と報じられれば、”残りは「アル・カイーダ」である”と世界は思う。収監されている全員が、市民であったとしてもだ。我々には、一切がわからないのだ。

「アル・カイーダ」など存在しないと言っているのではない。存在を証明する”証拠”を見たことがない、と言っているのだ。我々が触れているのは、漠然とした”根拠”にすぎない。決して”証拠”ではない。

 アメリカがイラク戦争に突入する前に、コリン・パウエル国務長官(当時)は、世界をまわり「大量破壊兵器の存在を証明する”証拠”」を持参してまわった。日本にも来た。小泉首相は「(大量破壊兵器が)あると確信した」と述べ、アメリカのイラク攻撃に賛同し、かつ自衛隊をイラクに派遣した。しかし、ご存知のように、現在に至るまでイラクの大量破壊兵器の存在を証明する一片の証拠も出ていない。
 昨年の9月13日に、パウエル長官は「(イラクの大量破壊兵器の)いかなる備蓄も発見されておらず、われわれが発見することはないだろう」と白状した。彼は、最初から大量破壊兵器などないことを知っていたのだ。
 では、小泉首相はいったいどんな”証拠”をパウエル前長官から示されたのか、ぜひ、お聞きしたいものだ。

 要するに、アメリカが”ある”と言ったものは疑ってはいけない。
 アメリカのすることを邪魔してはいけない。
 そういうことなのだ。
 証拠もへったくれもない世界なのだ。

 いま「アル・カイーダ」が、もし存在しないとしたら、あらゆる前提が崩れてしまう。「アル・カイーダ」という組織は存在しなければならないから、存在しているだけではないのだろうか。
「大量破壊兵器」のように。

 ロンドンの爆破事件で、得をするのはいったい誰だろうか。

歴史的愚挙、郵政民営化法案

2005年07月10日 14時24分29秒 | □郵政民営化
 7月5日、郵政民営化法案が、たった5票差で衆議院本会議を通過した。
 自民党から51人の造反者を出したことは明るいニュースと言える(反対37、欠席・棄権14)。利権が絡んでいる者もいるかもしれないが、小泉首相の恫喝に屈せず反対票を投じたことは、たいへん評価できる。
 5票差ということは、もはや小泉勢力はグラグラの氷の上に立っていると言うこともできる。しかし、グラグラでも、次の参議院を通過すれば、郵政民営化法案は成立してしまう。

 もし法案が成立し、「郵貯」「簡保」が民営化されれば、間違いなくアメリカ資本に乗っ取られる。そして国民の富350兆円は、アメリカ企業を潤し、アメリカの金持ちへの減税の補填をし、アメリカ人の浪費を助け、そしてアメリカの戦争を支える。郵政民営化は、破綻した国家アメリカを益するだけで、日本国民には百害あって一利もない。そもそもこの「郵政民営化」は、1995年にアメリカの要求ではじまったものだ。アメリカ政府が、日本国民のことを考えて「郵政民営化」を要求するだろうか。考えなくてもわかることだ。

 そんな郵政民営化法案を、小泉首相、竹中郵政民営化担当相はなりふりかまわず成立させようとしている。なぜなら、これさえ成立させてしまえば、彼らはアメリカから絶対的な信任を得、権力と富を約束されるからだ。アメリカにとってこれまでのところ小泉首相は、たいへんな優等生と言える。あるいは忠実な僕とも。これほどアメリカの意向に忠実な首相はいままでいなかった。しかし、どんなに忠実であっても「成果」を持ってこなければ、ただの忠犬にすぎない。小泉首相は、必死になって「成果」を積み上げているところだ。その中でも、「郵政民営化」は肝心要の「本丸」だ。

 だから小泉首相は反対派議員を潰すため、平気で恫喝を行った。除名する、党籍を剥奪する、衆院を解散する、など。
 恫喝は、ある意味では成功したし、別の意味では失敗した。
 確かに、5票差でも衆議院は通過した。しかし、欠席・棄権は14。つまり、実質的には小泉勢力は負けているのだ。自民党を「ぶっ潰す」どころか、すでに自分の尻に火がついている。そんな小泉政権を、御用マスメディアはいまだに支えようとしている。国民へ目を向けない政権とマスメディア。「ぶっ潰す」べきは、小泉政権であり、御用マスメディアだ。

 小泉首相は、造反者は除名、党籍剥奪と脅していたが、おそらく実際にはできない。51名を除名すれば、除名者は民主党と手を結ぶことになる。そうなれば自公連合は衆院で少数派になる。自分の首を絞めるようなものだ。ブラッフだったとバレれば、次の参議院では誰も恫喝など恐れなくなる。すでに、小泉政権は氷の上でグラグラになっている。

 しかし、御用マスメディアのでたらめな報道のせいで、日本国民は「郵政民営化」の重大性に気づいていない。郵政民営化法案は、参議院で否決されなければならない。
 でなければ、日本は、政治的にも、経済的にも、アメリカの属国になってしまう。すでにほぼ属国状態ではあるが。なんとしても、郵貯・簡保の350兆円を守らなくてはならない。郵貯・簡保が公的機関であるかぎり、絶対に乗っ取られることはないのだから。

 参議院で否決される可能性は高い。
 しかし、予断は許されない。
 なんといっても小泉首相のバックには、ブッシュ大統領が付いているのだ。たいした基盤もなく、人間的魅力もない小泉首相がここまで好き勝手をしてこれたのも、ひとえにブッシュ大統領あってのことだ。郵政民営化は、ブッシュ、小泉両氏にとっての「本丸」だ。この正念場を迎えて、とんでもない隠しだまを出さないとも限らない。

 郵政民営化は「安保条約」や「バブル」を超える歴史的愚挙だ。
「安保条約」で日本は独立国であることを放棄した。
意図的な「バブル」で90年代を丸々棒に振った。
そして「郵政民営化」が実現すれば、日本は未来を失う。

地雷撤去現場

2005年07月08日 23時41分05秒 | 写真:アフガニスタン
朝5時、カンダハールの郊外をバイクで案内してもらっていたとき、地雷撤去現場に出くわした。飛込みではあるが、取材を申し込むと、快く応じてもらえた。
その場で取材申請書に記入。
それから、万が一の場合の、血液型を訊かれた。













ここには、日本の援助で浄水場が造られる。
それほど多くの地雷は埋まっていないという。
しかし、存在する以上全区画を「掃除」しなければならない。</di















案内の隊員について歩きはじめると、
「3メートル離れて着いてきてください」
と言われた。
地雷原での心得は、万が一の場合でも、被害を最小単位に抑えるということだ。

















いま思えば、カンボジアでは防爆ジャケットもヘルメットもしていなかった。カンボジアに埋設されている地雷は古いタイプのものが多い。
しかし、アフガニスタンではタリバーンが政権をとる1996年まで全土で地雷が埋設されていた。それだけ地雷の性能も向上している。つまり、探知が難しいのだ。
カンボジアでは、金属探知機で探知した後、すぐに足を踏み入れた。






アフガニスタンでは、金属反応が出なくても、すべての区画を掘り起こす。それが絶対確実な探知方法だが、カンボジアに比べると、同じ広さの区画を「掃除」する時間は何倍にもなる。



























この広大な地域を、手作業で全面「一皮」剥かなければならない。
いつものことだが、考えただけでこちらの気が遠くなる。



地雷撤去、七つ道具。
とてもシンプルだ。



















飛込み取材であるにもかかわらず、地雷原の中まで案内してもらえた。
安全のため、撮影もこのままのスタイルで行わなければならない。
バイザー越しに一眼レフカメラを操作。
画角がさっぱりわからない。
デジタルカメラも液晶面がまったく見えない。



</CENTE 5月とはいえ、日が高くなるにつれ、気温は急速に上昇した。
日を遮るものは何も無い。
防爆ジャケットは意外にも非常に軽い素材で作られていた。
しかし、暑い。
ヘルメットやバイザーの中も、すぐに温度が上昇した。
この状態で、極度に緊張を強いられる作業をするというのは、並大抵ではない。
この日の作業は、朝5時から昼12時までだった。
素人目に見ても、それ以降の気温上昇下で作業をするのは危険すぎる。














DAFA(Demining Agency for Afghanistan )
アフガニスタンの埋設地雷は、推定1000万個。
すべての地雷を撤去する費用は2億ドル。

DAFA隊員の給与は、月100ドル。
「作業の困難さと危険度を考えると、とても割りに合わない」
と隊長は語る。
作業の危険に加えて、アフガニスタンではDAFA隊員が、
反政府勢力のターゲットとして殺害されるという事件も発生している。
この日の帰り道も、わざわざ遠回りをして帰った。

被災地復興とは

2005年07月04日 22時47分01秒 | ●津波後のピピ島
 津波以後、被災地域の観光業の状況は少しずつ好転していた。
 ほんの少しずつではあるが。
 4月3日、ハジャイ国際空港で爆弾事件が発生した。
 そして、すべてを白紙に戻してしまった。

 プーケット、パンガー、クラビ(ピピ島含む)の三地域を合わせた収益は60%減少している。プーケットのホテル業の客室の稼動率は年間を通して70~80%だったが、いまでは20%ほどだ。
 観光業者にとっては、何とか観光客に戻ってきて欲しい、と祈る思いに違いない。しかし、地域行政当局は冷静に事態を分析している。

 プーケットの行政機関は、当分は観光客は戻ってこないと推測している。その理由として「観光客、特にアジアの観光客は、観光気分を損なう被災地域を訪れることを好まない。また、そうした被災地域を訪れると、後に不幸に見舞われると信じている」と分析している。観光とはすなわち、日常生活から離れ、心を開放し、晴れ晴れとした気分を楽しむためのものだ。「観光に来ることが、一番の復興援助」と言われても、アタマで理解しても、ココロは到底着いてこない。

 行政機関は、地域経済が観光業にだけ依存していたために、経済的打撃を深刻化させたことを反省している。プーケットの雇用の80%が観光業に従事していた。モノカルチャーは、順調なときは大きな利益をもたらすが、不測の事態が発生すると大打撃を受ける。コーヒー生産にだけ依存していたかつてのブラジルは、コーヒー豆の価格が低落しただけで国家的経済危機に陥った。プーケットの行政当局は、今後は、様々なビジネスモデルを開発することを検討している。

 現在、検討されているのが、プーケットを東南アジアにおける国際的な教育研究のハブにするという案だ。観光マネジメント、海洋科学、IT、音楽などだ。特に観光マネジメントに関しては、すでに多くのノウハウが蓄積されている。様々なマネジメントに習熟したワーカーも豊富だ。
 こうしたプランの実現には、時間を必要とする。しかし、いつ戻ってくるとも知れない観光客を待っているような余裕もないのだ。観光業とはある意味で、夢を売るビジネスだ。観光客はもはや戻らないかもしれない。ならば出来るだけ早く方向転換することこそが、地元住民の生活を復興することになる。
 タイ行政当局は、被災から多くのものを学び、それを未来に生かす理知を備えていると感じる。プーケットを東南アジアの教育研究のハブにするという案は、観光復建よりも、はるかに夢があるのではないだろうか。

 タイのビーチリゾートは、莫大な収益を地元にもたらしていたことは事実だ。しかし、大きな収益をもたらしていた大観光地だからといって、もとに戻すことが必ずしも正しい選択とは言えない。観光開発には必然的に自然環境の破壊が伴う。水質汚染による生態系への影響なども発生する。観光開発が進めば進むほど、破壊と汚染も進む。そして、いつしか観光客からそっぽを向かれるかもしれない。観光地の復興、開発とは、様々な矛盾を含んでいる。
 いま、タイの津波被災地域の海は、汚染の原因(観光客)が減少し、昔の姿を取り戻し始めている。

 被災地域が、新たな姿で早急に復興することを心から祈りたい。

Return to Paradise

2005年07月03日 14時19分32秒 | ●津波後のピピ島
僕がピピ島に着いた日は、"Return to Paradise"という復興促進の催し物が開催されていた。
タイで津波被害に遭ったのは、ほとんどがリゾート地であったため、
ピピ島に限らず、各地で復興に向けた催し物が行われている。


ピピのメインビーチであるローダラム湾では、
ツーリストが数十人ほどいるだけだった。
かつて、ローダラム湾は世界有数の賑やかなビーチだった。
ビーチの人口密度もかなり高かった。
「ピピも寂しくなったもんだ」
それがピピ島第一歩の感想だった。
しかし、実はこれでも特別大賑わいだったのだ。



















































翌日からは、数組がビーチにいる程度だった。
これが、現在のピピの本当の姿だった。




























瓦礫は、まだいたるところにある。












































観光業に必要な基本インフラは、ほぼ揃っている。
ピピを訪れても不便を感じることはない。







































しかし、本格的な復旧はまだまだこれからになる。










































そして、自然はあくまでも美しい。










































津波の破壊力

2005年07月02日 17時26分49秒 | ●津波後のピピ島

津波被害は、ローダラム湾とトンサイ湾に挟まれた、くびれた部分に集中した。
この部分だけが平野部をなしている。
ピピ島のその他の地域は、山岳部をなしている。

津波は、南西の方角、つまり地図上で左下から押し寄せたと思われる。
そのため”ひょうたんの底”の部分が津波の勢いを、ある程度かわしたのではないかと考えられる。
トンサイ湾側の海岸線は大きな被害は受けなかった。

津波の力は、明らかにローダラム湾からトンサイ湾に向かって抜けた。
ただし、トンサイ湾側からもある程度の力を持った波はきたようだ。
”両側から、津波の挟みうちに遭った”という報告もある。

トンサイ湾からローダラム湾側をのぞむ。
このくびれの部分は、海抜ゼロメートルの平地である。


平野部は、ほとんどが更地と化した。






残骸がなければ、もともとそういう風景であったように見える。


砂地に点在するタイル面で、かつてそこに建物があったことがわかる。


トンサイ湾の波打ち際に建つ建物。
トンサイ湾側からの波は、それほど大きな破壊力は持っていなかった。


ピピ島に押し寄せた津波は、3mから6mと推測されている。ここでは二階の天井までとどいている。


きゃしゃな建物だが、なんとか持ちこたえた。


逆に、鉄筋コンクリートであるにもかかわらず、梁まで崩れた建物。


内部の壁も、打ち抜かれている。


前部は完全に剥ぎ取られた。



津波の流れをかたどっているようにも思える。


平野部のほぼ中心位置。


長屋式の建物の壁がすべて打ち抜かれている。
ローダラム湾に正対しているため、まともに津波の圧力を受けた。
この建物の右側半分は、完全になくなっていた。


二階屋根の破壊は、おそらく倒れてきた椰子の木によるものと思われる。


おそらく椰子の倒壊による屋根の穴。


壁を打ち抜き、反対側に突き抜けている。


内部の仕切り壁も、破壊されている。


これが水の力による結果とは、にわかには信じられない。
あとから人の手によって、壁は撤去されたのではないかとさえ思った。
津波の破壊力というのは、瞬間的なものではなく、持続的で強力である。


高級ホテル「PhiPhi Marina Resort」。
ローダラム湾の波打ち際に建っている。
一階はほぼ全滅。ところによっては、二階の部屋まで津波が突き抜けている。



鉄筋コンクリートの頑丈な建物だが、いくつかの部屋は津波が突き抜けている。


ホテルの裏には、高床式の高級バンガロー群が建っていたが、いまは何もない。


きゃしゃな造りの民家だが、ある程度の高さがあったため、
津波の力にかろうじて持ち堪えた。
背後の山の斜面のバンガロー群はほぼ無傷だ。