報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

(3)CMAC ; Cambodian Mine Action Center

2005年02月05日 17時34分09秒 | ●カンボジアの地雷
【CMAC;シーマック】
カンボジアの地雷除去の中心となっているのはCMAC(シーマック;Cambodian Mine Action Centre)というカンボジアの政府機関だ。1992年に国連によって設立され訓練されたあと、カンボジア政府が引き継いでいる。熟成されたすぐれた組織という定評がある。CMACの他にイギリスのHALO Trust とドイツのMAGというNGOグループもカンボジアでの地雷撤去を行っている。
写真は、CMACのバッタンバン支部。

【サンプル】
写真は、掘り出された地雷のサンプル。左はロシア製のPMN-2。カンボジアにもっとも多い地雷のひとつである。足の踝までを破壊するが、無数の破片はさらに上部まで食い込むため、手術によって膝から下を切断することが多い。
奥の円筒形のものは地表に仕掛け、ワイヤーを張る。ワイヤーに引っかかると爆発する。
地雷の種類は300種類以上もある。地雷除去を行うには、すべてのタイプ・種類を把握していなければならない。地雷以外にも無数の不発弾も発見される。砲弾、榴弾、迫撃砲弾などに対する知識も必要となる。

【地雷汚染地区】
カンボジアの地雷は、米軍、クメール・ルージュ(ポルポト軍)、ベトナム軍によって埋設された。そのためカンボジアの埋設地雷は米国製、中国製、ロシア製が混在している。
クメール・ルージュ(ポルポト派)の拠点であったタイやラオスの国境地域に特に集中している。アンコール・ワット近くの広いエリアにも集中しているが、アンコール・ワット周辺はすでに除去済み。安心して観光できる。

【地雷撤去現場】
CMACバッタンバン支部の重点除去エリア、サムロット。バッタンバンから車で約2時間。地図の最も地雷の集中している真っ赤なエリアのど真ん中である。
この地雷原には多くの人が住んでいる。大部分は、タイで難民生活をしていた人々だ。地雷の存在は十分認識しているが、ようやく故国に還り、安定した生活を求め、危険を承知で土地を開墾している。そのため、地雷による被害があとを絶たない。


【作業計画】
地雷撤去の作業計画を説明するCMAC隊員。
CMACは熟成された組織として評価が高い。非常に効率よく作業が進められている。隊員は約3000名。
1993年から2003年の10年間で、18万個の対人地雷、3500個の対戦車地雷、75万個の不発弾を処理した。
ただし、1000万個と推計される地雷を処理するには、資金も人員も十分とは言えない。国際的関心は低下する一方だ。






【金属探知機】
あくまで「金属」探知機であって、「地雷」探知機ではない。
そのためあらゆる金属に反応する。一個の地雷を発見するまでに、100個から300個の金属片を掘り出すとも言われる。しかし、それでも探知機の性能は格段に良くなったという。旧式の探知機は、鉄分を含んだ石にまで反応していた。感度がよければいいというものではない。

【爆破処理跡】
対戦車地雷を爆破した痕。
発見された地雷は爆破処理される。
対戦車地雷は、100kgから300kgの加重で爆発する。加重は地雷敷設時に調節される。戦車を破壊する量の火薬であるため、一般車両が踏めばひとたまりもない。






【地雷探知要員】
実際の探知作業中は、安全のため20メートル以内に近づいて撮影することは許可されない。
作業員同士も20メートル以上離れて作業する。









【RPG7弾頭】
地雷以外にも、RPG7(肩付け式ロケット弾)の弾頭なども仕掛け地雷として利用される。
この弾頭はすでに破損しているが、筒の部分には推進薬が入っているので、あとで爆破処理される。






【地雷原】
道路下の広いエリア一帯を探知する。
金属探知機で一回に探知する面積はわずか50センチ四方。
金属探知機を振りながら、歩くということはしない。
下草が生い茂っているので、まず草刈要員が50センチ四方の草を刈り、次に探知要員がその部分を探知する。それから、また50センチ四方を刈る。それの繰り返しだ。草を刈っている間、探知要員は20メートル離れる。探知している間、草刈要員も20メートル離れる。事故に遭った場合、被害を最小限に抑えるためだ。取材した99年の時点で、いまだ事故は一件もないということだった。

【Danger Mine】
地雷の危険地帯をしめす「Danger Mine」の看板。
カンボジアでは、この看板をデザインしたTシャツも売られている。観光客に人気であるが、地雷に対する関心を喚起する一助に、ぜひ一枚。


【注意場所】
一見ただのゴミだが、こうしたところに仕掛け地雷が隠されていることもある。
うかつには片付けられない。怪しいものはすべて疑うのが基本。








【地雷原に住む】
CMACが来る前から、ここを開墾している人は多い。
タイの難民キャンプから、晴れて故国に還ってきた人々だ。
生活の糧を得るために、危険を承知で土地を開墾している。
子供の犠牲も多い。