報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

(1)一億個の地雷

2005年02月03日 19時49分31秒 | ●カンボジアの地雷
 世界に埋設されている地雷は、およそ一億個と見積もられている。
 対人地雷一個の原価は約5ドル。
 地雷除去のコストは、その10~30倍かかる。
 単純計算して50億ドルから150億ドル。
 世界が協力すれば、非現実的な数字ではない。
 1997年の対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)には、すでに世界144カ国が調印している。
 
 しかし、地雷除去というのは、地雷数やコストを計算して簡単に割り出せるようなものではない。地雷の完全な探知技術はまだ完成されていない。探知機が反応しても、実際に掘ってみると、釘や鉄片であることが多いのだ。旧式の探知機の時代は、鉄分を含んだ石にさえ反応していた。また、金属部品のほとんどないプラスチック製や陶器製の地雷もある。いまのところ、地雷撤去作業の大部分は、徒労によって成り立っている。しかし、気を抜けば事故につながる。

 残念ながら、現場の苦労や熱意とは裏腹に、地雷撤去を取り巻く環境は年々悪化している。97年のオタワ条約以降、地雷廃絶に対する国際的な関心と熱意が徐々に薄れてきている。それは毎年のように減少している支援金によく表れている。2003年のカンボジアへの支援金は1700万ドルで、前年に比べ1000万ドルも減少した。ボスニア・ヘルツェゴビナは1040万ドル(540万ドル削減)。

 決定的な地雷探知技術の開発が、進んでいないことも大きな要因だ。開発にはコストがかかる。しかも商業ベースにのるような商品でもない。そういう製品を本気で開発しようという企業は非常にすくない。
 地雷撤去の現場からは、開発にかける金があるなら、撤去現場にまわしてほしいという要望が強い。潤沢な資金のある地雷除去組織はまずない。彼らはたとえ1メートルでも前に進みたいのだ。

 さまざまな要因によって、世界の地雷撤去活動はどんどん失速している。97年のオタワ条約では、10年で埋設地雷をなくすと定め、世界が調印した。あと、2年だ。もはや条約そのものが、有名無実化しようとしている。

 実際の地雷撤去作業を見ながら、そこに一億個という数字を重ねると、本当に気が遠くなる。