<居心地の悪い黒字>
ブレトンウッズ体制という万全の準備のもと、アメリカ経済は順風満帆の船出をした。しかし、あまりにも万全で、黒字が増えすぎた。増え続けるアメリカの国際収支の黒字により、ドルの流動性と貿易の拡大が阻害された。つまりアメリカの市場となるべきヨーロッパの復興が進まなかった。ドルをもっと世界に流通させなければならない。それには、アメリカの国際収支を自ら「赤字」にする必要があった。
戦後まもないころのアメリカでは、国際収支を赤字にするほどの一般消費は望めない。莫大な黒字を、短期間に赤字に転換するには、巨大な消費が必要になる。そのような巨大な消費はこの世でただひとつしかない。
戦争だ。
第二次大戦終結から、たった5年後の1960年に朝鮮戦争が勃発したのはこのためだ。「共産主義」は「脅威」ではなかった。アメリカは、単に戦争を必要としていた。「共産主義の脅威」は、アメリカ国民とアメリカ議会を納得させるために設けられた人為的な脅威にすぎない。アメリカ国民だけでなく、世界がこの幻想でしかない脅威にふりまわされることになる。
朝鮮戦争の出費によって、アメリカの国際収支は赤字になった。50年代から70年代を通じてアメリカの国際収支の赤字は、軍事支出による。アメリカは、後に金(Gold)ストックが枯渇するなどとは考えもせず、軍事支出を続けた。しかし、ベトナム戦争(1964~1973年)が泥沼化し、戦費は途方もなく拡大した。ドルは際限なく刷られ、それにともなってアメリカの金備蓄は減り続けた。ドル発行量は最大で、金準備の16倍になっていた。
1971年、ニクソン大統領は、ドルと金の交換を停止。「金ドル本位制」は崩壊する。同時に、ニクソンは、固定相場制であった世界の通貨の切り上げを要求した。変動相場制への以降である。各国の通貨は10~15%切り上げられた。これによって、戦後の通貨政策であるブレトンウッズ体制は完全に崩壊した。それは、ドルそのものの信用崩壊をも意味するはずだ。
しかし、アメリカは、これからは金の換わりにアメリカ財務省証券(アメリカ国債)と交換すると宣言した。ドルという紙切れは、いつでも金に交換できるからこそ基軸通貨と認められていたはずだ。それを、これからは、別の紙切れと交換しますと言われても、本来受け入れられるはずがない。しかし、ドル漬けになってしまった世界には選択の余地はなかった。拒否すれば、世界の通貨システムは崩壊する。
こうしてアメリカは国債の発行によって、ベトナム戦争の戦費を他国に払わせることに成功した。アメリカ国債の購入の拒否は、通貨危機につながるため、なんぴともこれを拒否できない。
かくして、世界は債務国に支配されることになった。
ブレトンウッズ体制という万全の準備のもと、アメリカ経済は順風満帆の船出をした。しかし、あまりにも万全で、黒字が増えすぎた。増え続けるアメリカの国際収支の黒字により、ドルの流動性と貿易の拡大が阻害された。つまりアメリカの市場となるべきヨーロッパの復興が進まなかった。ドルをもっと世界に流通させなければならない。それには、アメリカの国際収支を自ら「赤字」にする必要があった。
戦後まもないころのアメリカでは、国際収支を赤字にするほどの一般消費は望めない。莫大な黒字を、短期間に赤字に転換するには、巨大な消費が必要になる。そのような巨大な消費はこの世でただひとつしかない。
戦争だ。
第二次大戦終結から、たった5年後の1960年に朝鮮戦争が勃発したのはこのためだ。「共産主義」は「脅威」ではなかった。アメリカは、単に戦争を必要としていた。「共産主義の脅威」は、アメリカ国民とアメリカ議会を納得させるために設けられた人為的な脅威にすぎない。アメリカ国民だけでなく、世界がこの幻想でしかない脅威にふりまわされることになる。
朝鮮戦争の出費によって、アメリカの国際収支は赤字になった。50年代から70年代を通じてアメリカの国際収支の赤字は、軍事支出による。アメリカは、後に金(Gold)ストックが枯渇するなどとは考えもせず、軍事支出を続けた。しかし、ベトナム戦争(1964~1973年)が泥沼化し、戦費は途方もなく拡大した。ドルは際限なく刷られ、それにともなってアメリカの金備蓄は減り続けた。ドル発行量は最大で、金準備の16倍になっていた。
1971年、ニクソン大統領は、ドルと金の交換を停止。「金ドル本位制」は崩壊する。同時に、ニクソンは、固定相場制であった世界の通貨の切り上げを要求した。変動相場制への以降である。各国の通貨は10~15%切り上げられた。これによって、戦後の通貨政策であるブレトンウッズ体制は完全に崩壊した。それは、ドルそのものの信用崩壊をも意味するはずだ。
しかし、アメリカは、これからは金の換わりにアメリカ財務省証券(アメリカ国債)と交換すると宣言した。ドルという紙切れは、いつでも金に交換できるからこそ基軸通貨と認められていたはずだ。それを、これからは、別の紙切れと交換しますと言われても、本来受け入れられるはずがない。しかし、ドル漬けになってしまった世界には選択の余地はなかった。拒否すれば、世界の通貨システムは崩壊する。
こうしてアメリカは国債の発行によって、ベトナム戦争の戦費を他国に払わせることに成功した。アメリカ国債の購入の拒否は、通貨危機につながるため、なんぴともこれを拒否できない。
かくして、世界は債務国に支配されることになった。