報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

通貨のもつ支配力③

2005年09月29日 18時50分10秒 | ■ドル・ユーロ・円
<居心地の悪い黒字>

ブレトンウッズ体制という万全の準備のもと、アメリカ経済は順風満帆の船出をした。しかし、あまりにも万全で、黒字が増えすぎた。増え続けるアメリカの国際収支の黒字により、ドルの流動性と貿易の拡大が阻害された。つまりアメリカの市場となるべきヨーロッパの復興が進まなかった。ドルをもっと世界に流通させなければならない。それには、アメリカの国際収支を自ら「赤字」にする必要があった。

戦後まもないころのアメリカでは、国際収支を赤字にするほどの一般消費は望めない。莫大な黒字を、短期間に赤字に転換するには、巨大な消費が必要になる。そのような巨大な消費はこの世でただひとつしかない。

戦争だ。

第二次大戦終結から、たった5年後の1960年に朝鮮戦争が勃発したのはこのためだ。「共産主義」は「脅威」ではなかった。アメリカは、単に戦争を必要としていた。「共産主義の脅威」は、アメリカ国民とアメリカ議会を納得させるために設けられた人為的な脅威にすぎない。アメリカ国民だけでなく、世界がこの幻想でしかない脅威にふりまわされることになる。

朝鮮戦争の出費によって、アメリカの国際収支は赤字になった。50年代から70年代を通じてアメリカの国際収支の赤字は、軍事支出による。アメリカは、後に金(Gold)ストックが枯渇するなどとは考えもせず、軍事支出を続けた。しかし、ベトナム戦争(1964~1973年)が泥沼化し、戦費は途方もなく拡大した。ドルは際限なく刷られ、それにともなってアメリカの金備蓄は減り続けた。ドル発行量は最大で、金準備の16倍になっていた。

1971年、ニクソン大統領は、ドルと金の交換を停止。「金ドル本位制」は崩壊する。同時に、ニクソンは、固定相場制であった世界の通貨の切り上げを要求した。変動相場制への以降である。各国の通貨は10~15%切り上げられた。これによって、戦後の通貨政策であるブレトンウッズ体制は完全に崩壊した。それは、ドルそのものの信用崩壊をも意味するはずだ。

しかし、アメリカは、これからは金の換わりにアメリカ財務省証券(アメリカ国債)と交換すると宣言した。ドルという紙切れは、いつでも金に交換できるからこそ基軸通貨と認められていたはずだ。それを、これからは、別の紙切れと交換しますと言われても、本来受け入れられるはずがない。しかし、ドル漬けになってしまった世界には選択の余地はなかった。拒否すれば、世界の通貨システムは崩壊する。

こうしてアメリカは国債の発行によって、ベトナム戦争の戦費を他国に払わせることに成功した。アメリカ国債の購入の拒否は、通貨危機につながるため、なんぴともこれを拒否できない。

かくして、世界は債務国に支配されることになった。

通貨のもつ支配力②

2005年09月28日 22時31分46秒 | ■ドル・ユーロ・円
この前、ドルの話を書いたので、もう少しドルについて述べておきたい。
今回の主役は、IMF:国際通貨基金である。IMFは日本人にはあまり馴染みのない国際機関だが、実はとても問題の多い危険な組織である。この機会に心に留めていただければと思う。


IMF:International Monetary Fund:国際通貨基金
「IMFの主な目的は、加盟国の為替政策の監視(サーベイランス)や、国際収支が著しく悪化した加盟国に対して融資を実施することなどを通じて、(1)国際貿易の促進、(2)加盟国の高水準の雇用と国民所得の増大、(3)為替の安定、などに寄与することとなっています。」(日本銀行ホームページより)
これは、あくまで建前にすぎない。

<基軸通貨ドル>

そもそも、アメリカ・ドルがいつ世界の基軸通貨となったのか。
これは、1944年まで遡る。第二次大戦中の1944年7月にアメリカのブレトンウッズに連合国45カ国の代表が参加し、IMFと世界銀行の設立が協議された。このブレトンウッズ会議で、二つの取り決めがなされた。

戦後の世界では各国通貨の切り下げ競争が起こってはならない。
貿易に利用される商用通貨は金(Gold)と結びつかなくてはならない。

つまり、「通貨の固定相場制」と「ドル金本位制」だ。
戦後、世界の金(Gold)の72%がアメリカに集中していたため、商用通貨としての用件を満たしているのはドルだけだった。つまりドルを世界の基軸通貨にすると世界が認めたわけだ。

戦後の1946年にIMFと世界銀行が正式に設立され、「ブレトンウッズ体制」がはじまる。そしてこのたった二つの規約が、今日にいたるアメリカの繁栄を約束した。第二次大戦末期の疲弊した世界は、アメリカ政府が二つの規約にこめた真の意図をまったく読めなかった。

●「ドル金本位制」の意味
「ドル金本位制」とは、簡単に言えば、イギリス・ポンドとフランス・フランを貿易から締め出し、戦前のポンド経済圏とフラン経済圏の復活を阻止することにあった。それによってヨーロッパの戦後復興を抑え、世界をアメリカ・ドルの一極経済圏にすることができる。

もし、この規約がなければ、復興をはじめたイギリスやフランスは、かつての植民地と貿易をはじめることになる。そうすると戦後の世界はドル、ポンド、フランの三つの経済圏に分かれてしまう。アメリカは戦後の世界経済を完全に支配したかったのだ。

●「通貨の固定相場制」の意味
これも、その意図は同じだ。世界の通貨を、実態よりも高く設定し固定してしまう。そのことによって、あらかじめ将来の貿易競争力を奪ってしまう。

こうして、アメリカは基軸通貨ドルを好きなだけ刷り、世界の燃料や原料を買い、アメリカの製品と農業品を世界中に売りさばき、世界の経済を独り占めしてしまった。また、世界中にドルを貸し与え、巨大な債権国となり、今日の礎を築いた。その後、まだまだ紆余曲折があるのだが、それはまたのちほど。

IMF(国際通貨基金)の設立目的とは、アメリカが戦後の世界経済を支配するため以外の何ものでもなかった。いまでも、当然IMFは存在する。戦後、世界の復興と経済状況に合わせて、IMFの役割も変化してきたが、その目的はいまも変わらない。すべては、アメリカのために。

つづく

通貨のもつ支配力①

2005年09月25日 20時37分59秒 | ■ドル・ユーロ・円
これは、あるお問い合わせにお答えして書いたものですが、せっかく書いたので、ここに掲載したいと思います。

<巨大借金国が、世界を支配する>

戦後、世界の基軸通貨がアメリカ・ドルと定められたことによって、アメリカ一国だけは好きなだけドルを刷り、モノを買えるようになりました。製品でも、原料でも、燃料でも。ここから、アメリカの超浪費文化が生まれたのだと思います。輪転機を回すだけで何でも買えるのですから。

1971年までは、ドルというのはいつでも金(ゴールド)と交換できる兌換紙幣でした(金1オンス=35ドル)。第二次大戦後、アメリカは世界の金の60%(後に72%)を保有していました。この金が、ドルに信用を与えたわけです。しかし、じゃんじゃんドルを刷りまくっているうちに、ドル発行量が金保有高を越えてしまいました。つまり、ドルに対する信用供与がなくなりはじめたわけです。世界は、急いでドルを金に換えはじめました。アメリカの金保有高は急激に減少し、あわてたニクソンは1971年、突然、金とドルの交換を停止してしまいました。世に言う、ニクソン・ショックです。

世界は大混乱しましたが、アメリカはこんな風に言いました。
”みなさん、心配はいりません。これからは、アメリカ財務省証券(アメリカ国債)とドルを交換します。これは、金と同じ価値があります”と。アメリカは、紙切れと紙切れを交換するという子供だましのような策に出たわけです。

でも、この子供だましを世界は受け入れざるを得ませんでした。なぜなら、これを受け入れなければ、いままで溜め込んだドルが、本当の「紙切れ」になるからです。

世界が、金(ゴールド)に裏打ちされたドルを信用して、貿易通貨としてどんどん溜め込んだために、ついにドルに支配されるということになったわけです。べつの言い方をすると、アメリカは世界中を、ドルでじゃぶじゃぶにすることによって、世界経済を支配してしまったということです。

アメリカがドルを刷りすぎたために、ドルというのは現在でも常に不安定な状態にあります。世界は、必死になってドルの価値を一定の水準に維持しなければなりません。日本や世界が、大量のアメリカ国債を溜め込んでいるのもそのためです。しかし、溜め込んだアメリカ国債を売るとドルがなおさら不安定になるので、売るに売れないのです。アメリカ国債というのは、すなわちアメリカの借金です。

世界一の大借金国が、世界経済を支配しているという実に奇妙なことが起こっているわけです。

<大恐慌 アメリカは怖くない?>

アメリカは世界中がドルでじゃぶじゃぶになり、ドルが不安定になることによって、たいへんな得をし続けているわけです。逆に言うと、ドルが安定するとかえって損をするということです。

このグラグラのドルが大暴落すると、世界経済は破綻します。恐怖のシナリオ、世界大恐慌です。大恐慌への恐怖によって、世界はグラグラのドルを支え続けていると言えます。

アメリカも世界大恐慌が怖くなくはないでしょうが、しかし、アメリカは決定的なダメージは受けないでしょう。アメリカというのは食料自給率が125%くらいあります。エネルギー自給率は約70%です。食料とエネルギーがあれば、持ちこたえられます。ひとまず自足的な経済を営めるわけです。大量の餓死者が出ることもないでしょう。

しかし、日本は、食料自給率40%。エネルギー自給率は4%です。日本の原油備蓄量は、170日分(国家備蓄90日、民間備蓄80日)です。世界恐慌になれば、日本は数ヶ月で都市部を中心に大量の餓死者を出すことになるでしょう。日本の政治・経済・社会は壊滅します。

ヨーロッパの食料自給率は、ヨーロッパ全体としてみるとほぼ100%だと思います。しかし、エネルギー自給率はイタリアは15%、フランス9%、ドイツ25%、とかなり厳しい。

アメリカのエネルギー自給率は70%ですが、同盟国のイギリスは102%、隣国のカナダは145%。この三国でエネルギー問題は解消されます。では、食料はというと、アメリカは125%、イギリス70%、カナダ159%。やはり、この三国で食料問題は解消できます。これにオーストラリアが加わるとさらに強力です(食料:約250%、エネルギー:217%)。

世界恐慌になっても、アメリカ・カナダ・イギリスのアングロ・サクソン同盟はしのいでいけます。ヨーロッパは、食料は問題ないにしても、エネルギーが乏しいので、食料輸送以外にエネルギーがまわせないかもしれません。中国は、いまのところ食料、エネルギーともに100%近いので、なんとかしのぐでしょう。あとロシア(食料:106%、エネルギー:160%)、インド(食料:107%、エネルギー:80%)といったところでしょうか。日本を含めたその他の国、地域は、食料があってもエネルギーがなければ輸送ができず、大量の餓死者を出し、将来的な復活能力を著しく失うことになるでしょう。食料自給率とエネルギー自給率だけで語るのは少々極端ですが、一定の目安にはなると思います。

こうした観点から見て、アメリカは余裕なのです。アメリカの放漫財政でいくらドルが不安定になっても、世界恐慌を恐れる世界が、放っておいてもドルを支えてくれる。つまり、アメリカの財政を支えてくれるということです。それに対して、ヨーロッパはドルの呪縛から逃れようと具体的に動いていると言えます。共通通貨ユーロを導入したのも、ドルの呪縛から逃れるためです。イギリスがユーロに参加しなかったのは、イギリスはヨーロッパの一員というよりも、アメリカの同盟国だからです。というより決定権のない従属国といった方が正確でしょうか。

最近、韓国や中国、ロシアは、保有外貨をドルとユーロに分けてリスクヘッジしはじめています。また、ロシアは石油決済通貨もユーロへシフトする動きがあります。我が国はというと、何にもしておりません。ただ、アメリカに従うのみです。かといって、世界恐慌になっても、助けてはもらえません。イギリスが同盟に入れるのは、エネルギー自給率102%という捧げモノを持っているからです。

ドル暴落による世界恐慌というのは、非常に現実的な脅威なのですが、これは、核戦争と同じ種類の脅威とも言えます。実際に勃発することはない、と。しかし、その現実味を帯びた「幻想的脅威」によって世界は振り回されていると言えます。

※イラクのサダム・フセインは石油決済通貨をドルからユーロにシフトしたのですが、そのこともアメリカのイラク爆撃のひとつの理由であることは、すでに世界の知るところです。イラクのユーロシフトを座視していると、他の産油国もユーロにシフトしてしまう。世界の石油決済通貨がユーロにシフトしてしまうと、当然ドルの支配力が極端に弱まります。それは、アメリカの支配力そのものが弱まることを意味します。

※食料自給率、エネルギー自給率は、統計によりかなりばらつきがあります。あくまで目安です。

姉妹

2005年09月24日 23時39分48秒 | 写真:アフガニスタン
姉妹 : カンダハール

父親に連れられて、
街頭証明写真屋さんに来た姉妹。
父親と娘さんに、”写真を撮ってもいいだろうか”とサインを送る。
あまり堅苦しく”お願い”すると仰々しくなるので、
カメラを5cmほど持ち上げて、
相手の顔を見て微笑むだけ。
いわゆるアイコンタクト。
笑顔がとどく範囲なら、世界中で通じる。



※本日は、朝から部屋の模様替え。
 いまだ、部屋の中はひっくり返ったままである。

クレバー・ハンス

2005年09月23日 22時44分28秒 | 軽い読み物
前回引用した安斎育郎立命館大学教授の本に、面白いエピソードがでていたので、ちょっとご紹介。

<クレバー・ハンス>

20世紀初頭、フォン・オステンという人が、馬にも高い知能があるに違いないと確信して、愛馬ハンス(牝馬)の訓練を決意する。(途中はすっ飛ばして)苦節二年。ハンスは、数字の加減乗除からアルファベット、分数計算、日付に時計の時刻まで表すことができるようになった。数字は、蹄を床に打ち付けて表す。蹄の一方が十の位で、もう片方が一の位。アルファベットも、Aが蹄一回、Bが二回という具合だ。質問は、計算式やアルファベットを紙に書いてハンスに見せる。

ハンスは、飼い主のオステン以外の人が質問しても正しく答えた。「クレバー・ハンス」は話題となり、科学者による調査委員会まで設立された。動物学者や心理学者が参加して調査・実験が繰り返された。結果、「トリックは絶対に存在しない」という結論に達した。

現在の動物学者や生物学者で、こんな結論を信じる人はいないだろう。ただ20世紀初頭でも、決して、科学的水準が低かったわけではない。この実験には、現代の科学者にも一定の教訓を与えるだろう。

調査委員会の結果に疑問を持ったプングストンという男が、再度ハンスをテストした。今度は、ハンスはまったく正解を出すことができなかった。

最初の調査委員会の実験と、そのあとの実験とでは、実験方法が少し違っていた。科学者の実験では、質問の内容を質問者が知っていた。プングストンの場合は、質問者も質問の内容を知らなかった。これだけの違いだ。

質問を書いた複数の紙を用意し、それをシャッフルする。質問者も質問の内容を見ないで、ハンスだけに見せる。こうするとハンス君は「1+1」という質問でも、とりとめもなく床を打ち鳴らすだけだった。

ハンスは紙に書いた数字など理解していたわけではなく、質問者を見ていたのだ。どういうことかというと、ハンスが床を打ちはじめると、質問者は「次で正解」という期待を持つ。そのとき質問者の顔や身体に微妙な変化が生じる。ハンスはそれを見分けて、床を打つのをやめるのだ。そしてニンジンを得る。ハンスを訓練したオステンは決してそれを教えたわけではない。ハンスが自分で獲得したのだ。

計算のできる動物というのは、実はこういうことなのだ。なあんだ、と思うと同時に、別の意味で、やはり動物というのはすごいものだと感心してしまう。

そして、いくら科学的方法による実験や観察であっても、どこかに実験者自身が気がつかない落とし穴が潜んでいるかもしれないという教訓も得る。政治経済的出来事や事象を観察する場合ならなおさらだ。

メディアに騙されないための指針

2005年09月22日 15時09分10秒 | ■メディア・リテラシー
これは、コメントへのお返事として書いたものですが、コメント欄だけではもったいない気がするので、若干加筆して再掲載いたします。

<メディアに騙されないための指針>

メディアのウソを見抜くというのは、簡単なことではない。僕自身が騙され続けてきた。あとになって「そうだったのか!」と悔しい思いをしたことはいくらでもある。

たとえば91年の第一次湾岸戦争時の「ナイラ証言」と「油まみれの水鳥」などは典型的な例だ。アメリカ政府もメディアも、イラク攻撃の世論作りのために露骨な捏造と情報操作をおこなった。世界が、みごとに嵌められてしまった。

「ナイラ証言」というのは、完璧な捏造であることがはっきりしている。ナイラというクウェートの少女が、米公聴会で「イラクの兵士がクウェートの産院の乳飲み子を保育器からだし、次々と床に叩きつけて殺したのを見た」と涙ながらに証言した。しかし、後にこの少女は、駐米クウェート大使の娘で、ずっとアメリカにいたことが分かった。つまり、証言は真っ赤なウソだった。この証言は、アメリカの広告代理店がシナリオを作り演出したものだった。リハーサルもきちんとしていた。もちろん、スポンサーはアメリカ政府以外にない。ただし、捏造がニューヨークタイムズで暴かれたのは、1年3ヶ月後のことだ。

この「ナイラ証言」が出るまでは、アメリカの世論は反戦が多数を占めていた。しかし、この証言で世論は一気に会戦へと転じた。周到に準備された、たったひとつの捏造が、世論を完璧に逆転させてしまった。しかも、素人の少女のウソ泣きによって。

もうひとつの「油まみれの水鳥」の映像でも、世界はまんまと騙された。フセイン大統領がわざと原油を海に流出させたという証拠はなかった。アメリカ軍の爆撃による可能性も十分考えられた。しかし、米政府はサダム・フセインの暴挙だと非難した。「油まみれの水鳥」の映像はフセインの「環境テロ」として世界を駆け巡った。「極悪フセイン」のイメージが、世界の何億という人々の脳裏に焼きついた。この原油流出の原因は、今日では米軍の爆撃であるとされている。

この二つの事例は、情報操作の典型例として、かなり広範に流布してはいるのだが、人は忘れるのが早い。そして、いまだに世界はアメリカの情報操作にまんまと振り回されている。

2003年、パウエル国務長官(当時)は、イラクの「大量破壊兵器」の確固たる証拠を持って、世界の首脳に提示して回った。日本にも来て小泉首相と会談した。小泉首相は「(大量破壊兵器の)存在を確信した」と発言した。しかし2004年に、パウエル長官は大量破壊兵器について「いかなる備蓄も見つかっておらず、この先も発見されることはないだろう」と証言した。小泉首相は、いかなる証拠によって、大量破壊兵器の存在を確信したのか。

あるいは、ジェシカ・リンチ上等兵の劇的な救出作戦も、安物の映画を模造した稚拙な演出だった。病院には、武装した人間は一人もいなかったのに、戦闘の末、救出したと宣伝された。暗視カメラによる迫真の映像だったが、リンチ上等兵の証言によってすぐにウソが露見した。

こうした過去の一連のウソから重要な教訓が得られる。つまり、
「多数のメディアが、繰り返し強調する事例はまず疑え」
ということだ。

ソビエト連邦=共産主義=世界の脅威
サダム・フセイン=大量破壊兵器=世界の脅威
タリバーン=原理主義=世界の脅威
「アル・カイーダ」=テロリスト=911、疸阻菌、ロンドン爆破=世界の脅威
・・・etc.

メディアが総出で、あたかも「既成事実」であるかのように連呼するとき、まず疑いの眼で見ることが大切だ。しかし、ことの真相をすぐに見抜くことはたいへん難しい。情報を正確に評価するのは簡単なことではない。しかし、疑いの眼で見ている限り、情報操作に振り回されることはない。メディアが大騒ぎしているときは、クールになろう。

また「感性や直感:こころの眼」もとても大切だ。「なんか怪しいな」「腑に落ちないな」という感覚は往々にして当っているものだ。ただ、そのあと理性がそれを打ち消してしまうことが多い。

安斎育郎氏(立命館大学教授)は、
『(人間は)部分の情報から全体をイメージできる』そこから思いこみが生まれだまされてしまう、と述べておられる。『(人間は)理性的だからこそだまされやすい』と。

過去の情報操作の具体的事例を知り、また、人間とはいかに騙されやすいものであるかを自覚しておくことが大切だ。

ソビエト連邦も、フセインも、タリバーンも世界の脅威ではなかった。
意図的に強調されてきたにすぎない。
「アル・カイーダ」は実際に存在するのかどうかさえ怪しい。
本当の世界の脅威とは、常套的に情報操作し、平気で他国を爆撃するアメリカ合州国自身ではないのか。


「油まみれの水鳥」について、日本のテレビ番組がそのウソを解説している。
http://www.jca.apc.org/~altmedka/TV-houdousousa.html

変わらぬNHKの体質

2005年09月21日 22時04分29秒 | □郵政民営化
20日、NHKは一連の不祥事を受けて、信頼回復に向けた経営改革の「新生プラン」を発表した。

「何人からの圧力や働きかけにも左右されることなく、放送の自主自律を貫く。」
と、最初に謳っているが、そんな建前で視聴者の信頼が回復できると思ってもらっては困る。

そもそも自らの不祥事を受けた「新生プラン」の中に、なぜ【受信料の公平負担】などという項目があるのか。NHKの信頼回復への取組みと受信料とは別の話だ。それをセットにするところに、NHKの見え透いた意図がうかがえる。

要するに、この「新生プラン」の本当の目的は、
「NHKは、信頼回復に向けて”プラン”を出したのだから、視聴者も”受信料”を払え」
ということだろう。

こういうのを大名商売というのではないのだろうか。視聴者不在の単なる建前を並べただけの「新生プラン」で、受信料を払ってもらえると本気で思っているのだろうか。失った信頼の回復とは、そんなにたやすいことではない。かえって受信料不払いが増えるだけではないだろうか。

NHKは、自らの不祥事が不払いを招いたにもかからわず、「民事手続きによる受信料の支払い督促の活用」ということまで謳っている。そしてそれを「受信料の公平負担」などという詭弁で正当化している。

NHKは勝手に電波を飛ばしておいて、契約を強要している。まるで押し売りだ。WOWWOWのように電波に”マスク”をかけることは、技術的には簡単なはずだ。それをすっ飛ばしておいて、受信料不払いを犯罪行為でもあるかのように言うのは、卑劣としか言いようがない。視聴者を恫喝しておいて、信頼回復もないものだ。

おそらく、今回の「新生プラン」の本当の目的は、NHKの念願である”法的措置”の導入にあるのだろう。本末転倒もはなはだしい。

受信料不払いは、着実に増えている。少し前まで117万件であったが、いまは130万件に達している。NHKは、なぜ受信料不払いが増えているのか、その本質に取り組もうともしないで、法的手段に訴えるぞ、と視聴者を恫喝する。NHKの姿勢は、どこかの首相と似ていなくもない。

再びメディアについて

2005年09月20日 23時28分25秒 | ■メディア・リテラシー
メディアというのは、あらゆるものから独立した不偏不党、公正中立な存在などではない。実も蓋もない言い方をすれば、しょせん民間企業なのだ。国家から独立した民間企業など存在しない。

911事件のあとアメリカのメディアは程度の差はあっても、ほとんどがブッシュ政権のスポークスマンと化した。当時の報道を振り返ってCNNのあるリポーターは「自国が攻撃されているときに、客観的な報道などできるか」と言い切った。FOXは国粋報道に徹して圧倒的な視聴率を稼いだ。これが、メディアの本質だ。普段は、不偏不党、公正中立などと権威を振りかざしていても、いざとなれば積極的に権力の広報機関となってしまう。

かつて、ニューヨークに少し滞在していたときに、ケネディ大統領暗殺30周年記念があった。そのときのNewsweek誌の表紙写真は、リー・ハーベイ・オズワルドだった。腰に拳銃、手にライフルという例の写真である。タイトルは忘れたが、「オズワルドが犯人」というようなニュアンスだった。いまどき、そんなことを真に受けるアメリカ人がいるのかと思ったが、もちろんオズワルドが犯人ではないという証拠もない。オズワルドの写真に、Newsweekという雑誌の本質が表れているなと思った。つまり、権力には決して逆らわないということだ。

今年5月、Newsweekの記事中に「グアンタナモ収容所では、コーランをトイレに流している」という記載があったため、アフガニスタンで暴動が発生するという事件があった。Newsweek誌は”匿名情報源を記事にした”として、記載内容は事実ではないと謝罪をした。これもNewsweekの姿勢を端的に物語っている。事実を再確認するよりも、問題の一番手っ取り早い解決方法を選んだ。

CNNやNewsweekなどアメリカを代表するメディアに比べれば、英国のBBCは遥かに独立心が強い。2003年5月、BBCのラジオ4のアンドリュー・ギリガン記者は、「イラクは45分間で大量破壊兵器を配備できる」という政府報告書は捏造であると報じた。この報道に激怒した英国政府は、その情報源を明らかにするようBBCに迫った。しかし、BBCはこれを拒否する。英国政府とBBCの数ヶ月間の攻防の末、政府自らが情報源と目される人物、ケリー博士の名前をメディアにリークした。その数日後ケリー博士は自殺する。結局、ギリガン記者とBBC幹部が辞職してこの件は落着した。しかし、イラクで「大量破壊兵器」そのものが存在しなかったことは、すでに周知の事実だ。

BBCは言わずと知れた英国国営放送だが、国営放送でありながら政府と真っ向から対峙して一歩も引かなかった。日本のメディアには望むべくもないが、しかし、少なくともそうしたメディアが実際に存在することを忘れてはならないと思う。

大衆紙に期待

2005年09月19日 19時51分28秒 | □郵政民営化
世界のクオリティ・マガジンと思われているNewsweek誌。
日本版の最新号の表紙は『ニッポンを変えた男』。
「・・・日本人を本当の改革に目覚めさせた男。・・・歴史は小泉首相をそう評価するはずです。」
この段階で、そんなことが言い切れるのか。単なる媚びへつらいにしか思えないのだが。アメリカの意向を忠実に実行しようとしている小泉首相を、闇雲に持ち上げているだけの、米国系マガジンとしか言いようがない。クオリティとはあまりにも程遠い。

新聞をはじめ、権威を振りかざしてきたマスメディアはふたを開けてみれば、信念もなく、ただ権威にへつらうだけの存在であることを露呈した。それに比べ、大衆紙と言われるものの方が、よほど気概も根性もあるように思える。




週間ポスト




アフガニスタン総選挙

2005年09月19日 02時07分18秒 | ●アフガニスタン05
アフガニスタンで下院と州議会の選挙が行われた。
世界のメディアは、アフガニスタン民主化の大きなステップと報道。
そして、お決まりの映像を流す。
投票用紙と投票箱。
何か特別神聖なもののようなあつかいだ。
議会制民主主義とは、
爆弾をどかどか落として、市民を殺害してでも
持ち込む価値があるものなのだろうか。

アマゾン・ドット・コムが読ませたくない本?

2005年09月17日 21時17分36秒 | □年次改革要望書
当ブログでも紹介した関岡英之氏の著書『拒否できない日本』(文春新書)という本が、アマゾン・ドット・コムで不可思議な品切れ状態が続いているという記事がでている。以前少し触れたが、いまだ同じ状態がつづいているようだ。

ZAKZAKというニュースサイトがこの件について調査している。発行元の文芸春秋社の担当者も、ZAKZAKの問い合わせがあるまで、その事実を知らなかったようだ。担当者は『アマゾンからの注文が来ていないようです。理由は分かりません』とコメントしている。

『拒否できない日本』はすでに3万8千部も売れているらしい。堅い内容の本としては、かなりの売れ行きと言える。それが、ネット書籍販売の最大手アマゾンが入荷していないというのは、確かに理解に苦しむ。アマゾンにアクセスして確かめてみると、『拒否できない日本』定価735円(税込み)の古本が1780円から1840円いう値で売られているだけだ。古本に定価の倍以上の値段を付けるというのも、理由がわからない。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166603760/249-3622962-1836336

『拒否できない日本』は、「年次改革要望書」について詳しく検証している唯一の書籍だ。日本政府が行ってきた「改革」のほとんどがこの「年次改革要望書」の中に見出される。もちろん「郵政民営化」もだ。「年次改革要望書」はアメリカの国益のために日本を改造する指示書とも言うべきものだ。

ZAKZAKの取材に対して、著者の関岡氏は『アマゾンは、私の本が読まれると、要望書の存在が広く知られ、嫌米論調を刺激することになるのを避けたいのでしょうか』と答えている。


ZAKZAK
ナゼ読めない…「アマゾン」で1年超も品切れの本
http://www.zakzak.co.jp/top/2005_09/t2005091623.html

ステゴマ

2005年09月17日 08時12分05秒 | 写真:アフガニスタン
ステゴマ : カブール

アフガニスタン国防省の衛兵。
国防省へ入るには、
二ヶ所のゲートと建物の入り口で、
すべてのカメラのシャッターを切らなければならない。
爆弾が仕掛けられていないか確認するためだ。
ステゴマになるよりはと、その場で無造作に撮った一枚。

北部同盟のマスード司令官は、
ビデオ・カメラに仕掛けられた爆弾で殺害された。
2001年の911事件の二日前だ。
「アル・カイーダ」の犯行だとされているが、
これも謎めいた事件だ。

黄昏

2005年09月16日 04時13分50秒 | 写真:アフガニスタン
黄昏 : カンダハール

9月18日は、アフガニスタンで総選挙が行われる。
国連機関や選挙に関わる外国機関は、
民主化の大きなステップとして大変に気合が入っているようだ。
しかし、当のアフガニスタン国民はというと、
関心を失っているらしい。

軍閥関係者は立候補できない規定になっているが、
兄弟や親戚を代わりに立て、
有権者をカネで買収しているという報道もある。
軍閥を立候補者から排除する作業もあまり機能していないようだ。

いまだ多量の武器を隠匿し、
麻薬栽培と密売を行っている軍閥が、
アフガニスタンの政治まで、
コントロールすることになるのだろうか。