laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

山あり谷ありvol2.夜の部

2012-09-02 | kabuki en dehors de Tokio

松竹座初日&二日目まとめての感想、長くなったので夜の部は別立てにしました。観想としては初日と二日目をまとめて、ってことで。

夜の部

女暫

以前玉三郎で見たときはすっとんきょうな発声がおかしくて気持ち悪くて、こりゃたまらん、だったのですが、揚幕から聞こえてくる「しばらく~しばらく~」、前回よりはずっと改善されていて、少なくとも気持ち悪くなかったです。

素襖仕立ての巴御前の姿も、以前はせっかくの美しい玉三郎台無しじゃん、と思ったのですがどこをどう変えたのか、普通に美しい。これなら玉様ファンの皆様もご満足でしょうw

しかし、昼の部の瞼の母の印象があまりに悪かったせいか、ここでも「玉三郎ってこんなに芝居下手だっけ?」とおもってしまったのも事実。
なんというかテンポと間が変。瞼の母と違って台詞が入ってないわけでもないんで、何が原因なのか。てか、もともとこんなテンポだったのかなあ。ここんとこ歌舞伎に出てないので、久しぶりにみたら違和感が強くなったってことなのか。

太刀下の善人ズwでは、秀太郎の白塗りが美しい・・・70過ぎとは思えぬ美しさ。これは女形がやる立役ならではの色気ですなあ。新悟くんも早く見習って(無理w)。その新悟くんはこちらは赤姫で、問題なくこなしてました。いろんな意味で気になる存在、進之介さんもちゃんと台詞言ってましたw。本当なら求女はこの方あたりがやれたらよかったんでしょうね。無理だろうけど。吉弥、薪車と上方ならではの人々が並び・・・
腹だし赤塗りボーイズで、一人超イケメンがいて、一瞬海老様特別出演?と思ってしまったw
んなわけはなくて、功一くんでした。似てるね。ただ、発声が苦しくて、特に台詞が常に亀蔵のあとなので、余計つらい。
これ、玉三郎の抜擢なんだろうけど、無理な抜擢はさらし者になってしまうという例のような・・・
座組が薄くてだれか抜擢しなきゃ、なら今月の名題のなかなら又之助あたりがふさわしかったのでは?

男女鯰の翫雀、七之助はなれたものだし、成田五郎の彌十郎も貫禄たっぷり。

問題は、座頭格の橋之助。玉三郎と対峙するには、大きさも格も歴然と違う。朝イチの七之助相手ですら、大きさが不足していたと思ったのだけれど、ここにきて、もう、絶対無理。まだ早い。
対面と違って動きもないわけで、ここは我當さんがやってもらえなかったものだろうか。

無理、といえば幕外の引っ込みでの舞台番勘九郎。こういう素なのか芝居なのか(芝居だけどw)わからないようなのは難しいだろうなあ、生来の愛嬌も足りないし、と思っていたら、予想よりはずっと器用にこなしていた。
七之助の汗といい、勘九郎の愛嬌といい、父親の成分が年齢とともに、息子たちにじわじわ出てきたみたいで、喜んでいいのやら哀しんでいいのやら・・・w(大分マシになったとはいえ勘三郎の過度な愛嬌は苦手)。
幕外での玉三郎は、ここはもう魅力大爆発。玉様ファンのおば様がた全員失禁wwwじゃないでしょうか。

もともと「盲目物語」の予定だったのが、勘三郎休演で急遽上演が決まったわけで、100パーセントとはいえないにしろ、とりあえずまとまっていたと思います。それより、玉三郎本人が勘九郎と襲名でやりたい、と持ち出したという瞼の母が酷すぎたのが謎ですが・・・すみません、昼の部の愚痴をいつまでも。それほどショックだったのでした。

 

口上

総勢9名のコンパクト版。進之介も竹三郎もいない。
仕切りの玉三郎が、ずっとカンペを見ているのにとちっていて・・・頭悪いんですね。

本当、ファンの方いらしたらごめんなさい。

大分前から実はそんなに感心したことはなかったんですが、今月はっきりと「苦手」つーか「へたくそ!」と見切りをつけてしまったのでした。
国の宝であろうがなんだろうが、lavieにとってはただの綺麗な大根だわ。

あ、桜姫とか、お富とか、揚巻とか特定の当たり役は本当にすばらしいので、それは除くけどね。ただそれらも実は90パーセントは綺麗綺麗でごまかされてたんじゃ?と今じゃ思いますw

 

雨乞狐

 

2005年8月勘太郎初役で大評判をとり、2006年6月博多座で楽近くに靭帯を損傷し、その後父の襲名巡業に参加できなかった、天国と地獄を両方味わった演目。
何より、たった一度の舞踊会のために振り付けされた踊りを25日踊り続ける無茶加減、しかも膝に爆弾抱えて。

贔屓としては本当は大阪に一ヶ月住み続けて毎年見守りたいくらいですわ。

浮き草とはいえ一応片足社会につながってるとそういうわけにも行かないので、これからもあほほど頻繁に通うわけですが。

うーーーーん。

正直、通う動機付けは「心配、見守り」のほうが「感動、快楽」よりは大きいかな、という印象。

勘九郎が悪いというわけでは決してなくて、狐の愛嬌はもちろんのこと、座頭の滑稽味、巫女のクールさ、ちょうちんのかわいらしさ、花嫁の可憐さ、すべて6ー7年前より格段に進歩していて、なかでも小野道風の色気はもう、これ以上、こういう静かな踊りで色気と悩みを描写できる人は今いないだろうと確信できるほどのすばらしさだったのだけれど。

2月に土蜘と鏡獅子をあそこまで深く激しく踊られたのを見てしまった後だと・・・なんというか、作品そのものが浅くて、今の勘九郎にはもはや尺足らずというか、もっとすごい作品に挑戦しているのを見たかったなあ、と思ってしまったのも事実。
あと、無駄に激しい振りなので、(セリの高さとかは7年前よりは低くしてる気がするが)、この程度の作品で怪我なんかしたら死んでも死に切れない、みたいな複雑な気持ちもあったりして。

ここら辺はディープかつ要求レベル高すぎの勘九郎ファンとしての感想でありまして。

一般的に言えばとってもわかりやすくて楽しくて弾んだ踊りを、踊りの名手が楽しそうに早替わりで踊ってくれるのだから、受けないわけはない。大拍手でぴょんぴょん花道を引っ込んでいく「勘九郎狐」はそれはそれは魅力的でした。

父親の初演のときに自分が演じたちょうちんを、今回は自分がそれも含めてやる、というあたりに勘九郎の覚悟が見られて、まあ、やれるところまでおやんなさい、と最後は思ったのでした。

ただ、この曲に関しては、そろそろ「卒業」でいいんじゃないかな。
踊ったことのない大曲なら道成寺、保名、勧進帳、船弁慶(あるけどあたしは見てない)・・・見たいものが一杯あるわさ。

はい、贅沢勘ちゃんアディクト患者のたわごとでした。

 

雁のたより

こちらのみ、二日目はパスしましたので一回しか見てません。

以前勘三郎襲名のときに藤十郎さんで拝見。それを今回翫雀さんが引き継いで。

勘三郎→勘九郎と藤十郎→翫雀ってちょっと似てる気がする。偉大すぎる親、その親にあるなんともいえない愛嬌が息子にはちょっと欠けている、その代わり品格は息子のほうに感じる。弟のほうが顔が綺麗で芸が駄目なところも似てるかw

ってことで翫雀さんは好きな役者の一人なのだけれど。

今回に関していえば、父親の色気・愛嬌を出そう出そうとしていて、ちょっと痛々しかったかな。この芝居じゃなくて、翫雀にはもっと合う役がいっぱいありそう。昼の部の豆腐買いみたいな、一つ間違うと下品になってしまう役を品格崩さずにやれるのはこの人と又五郎さんくらいのような気もするし。なまじ成駒屋の跡取りだからあまり滑稽役はやれないんだろうけど・・・

亀鶴が、襲名の時勘三郎がご馳走的にやったつっころばしの客の役で大丈夫かいな?と思ったらとても柔らかくていい味を出していて。この人は本当に器用で、器用すぎてつまらなくなっちゃってる気も。
その亀鶴が数年前にやっていた下剃奴を吉太朗がこれまた超器用にこなしていて。藤山直美の子だといわれたら信じてしまいそうなタイプだけれど、貴重な脇役として育っていって欲しい。猿弥さんみたいな感じに。
あと目に付いたのは壱太郎のお部屋様がとても綺麗だったこと。甲高い声が大分落ち着いてきて、今好きな女形の一人だなあ。

…まあありていにいえば、あと数回松竹座には行くわけですが、ほとんどパス対象の演目ではあります。別につまらなくはないんだけど、見なくても損した感がないというかw早めに美味しいものを食べたほうがお得というかw

 

松竹座昼夜見て、全体に感想は芳しくないのですが(特に女座頭)w、かといってこれからせっせと通う自分を後悔してるかと言うとまったくそうではなく、父親不在、座頭不調、こういう逆境でもきちんと芝居をし、浅い演目なりに、眼一杯踊っている勘九郎そのものは本当に敬服に値しますし、こういう経験は絶対将来またまたプラスに働くに違いないと思っていますので、できるだけ、彼の演じる、踊る姿をたくさん見ておきたいという気持ちに、一ミリもブレはないのでした。www

 

 

 

 

 

 

 

 


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