SakuraとRenのイギリスライフ

美味しいものとお散歩が大好きな二人ののんびりな日常 in イギリス

菊池馨実〔編著〕『自立支援と社会保障』(日本加除出版、2008年)

2009年06月12日 | 
こんにちは、Renです。
あ、僕(Ren)が投稿するときは文字を青くして、Sakuraが投稿したり、二人で投稿したりするときとは一目で区別できるようにしようかなと思っていますので、今後はご挨拶を失礼することがある可能性もあります。どうかお含みおきくださいませ。

昨日はSakuraが音楽のことを書いてたので、今日は僕が自分の趣味の本の話題をしようかなと思います。
読み終わった本すべてをここに書く予定はないけれど、「お、これは!!」って思った本があったら、どんどんここでご紹介していこうかなと思っています。

さて、今日は菊池馨実〔編著〕『自立支援と社会保障――主体性を尊重する福祉、医療、所得保障を求めて――』(日本加除出版、2008年)を取り上げようかなと思います。
(ちなみに、「日本加除出版」という出版社さんはこの本で初めて知りました。日本加除出版さん、すみません。)


本書は、最近の社会保障法制度の改革で「自立支援」がキーワードの一つになっていることに注目し、この「自立保障」の観点から社会保障各分野の諸制度を論じたものです。
編著者の菊池馨実さんの「はしがき」に本書の性格が分かりやすくまとめられているので少し引用すると、

「本書は、主に社会保障法学を専攻分野とする法律学研究者と社会保障政策の立案に携わっている実務家が中心となって、今日における論争的概念である自立ないし自立支援を軸として、制度横断的にわが国社会保障法制の現状と課題、将来のあるべき方向性などを明らかにすることを目的として編まれたものである」

「本書は、単に自立支援の観点からみた社会保障というテーマに関連する研究論文集を目指したものではない。最近の社会保障をめぐる理論動向や、制度改革の動向を網羅するとともに、可能な範囲で制度(改革)の概略的な説明を付すことにより、いわばテキストブックとしての性格をもたせることも意図している」(p.ii)


とのことです。

具体的には、第1部の総論で、「自立支援」がキーワードとなった背景や、そこにおける(あるいは、あるべき)「自立」の内容、自立支援のための政策手法などが語られ、それを踏まえて(必ずしも「自立」等の概念の内実についてすべての執筆者にコンセンサスがあるわけではないのだけれど)、第2部の各論で子育ての支援や生活保護、障害者福祉、高齢者、医療・介護といった諸制度が「自立支援」の観点から論じられます。
各章の概要や意義については「本書の構成」(pp.v-xiv)でとても分かりやすくまとまっているので興味のある方はそこをご参照ください。

第1章で西村淳さんが示しているところによれば、日本の社会保障の歴史は、

第1期(1973年の福祉元年まで):社会保障制度の整備の時期、
第2期(1985年頃の老人保健・基礎年金制度の創設まで):社会保障の再編と適正化の時期、
第3期(現在まで):微調整と行き詰まりの時期

を経てきて、いまや「社会保障制度改革の技術的な解決法よりも、社会保障の展望をひらくための新たな理念が求められ」るようになった。(以上につき、本書の2-4頁参照。)
その「新たな理念」として注目されるようになったのが「自立支援」ということになるのだろうけれど、そういう意味でそれは十分な議論・検討を経て、満を持して登場したような概念ではなくて、慌てて登場した(あるいは、要請された)という側面もあるのではないかとも思えるのだけれど、でも、僕はこれからの社会保障制度のキーワードの一つとして「自立支援」という概念を導き入れるということは、極めて適切なことだと思っています。
しかし、「自立支援」をキーワードに社会保障の諸制度を本格的に論じる書物というのは、これまでおそらく本書を措いてあまりなかったのではないでしょうか。(もし違っていたらごめんなさい。)
そういう意味で、本書は画期的だと思うし、読んでいて大きな知的刺激を受けることができました。

本書においては、執筆者は共通して、自立を単に「経済的自立」のみとして見るのではなくて、「身体的自立」や「精神的自立」等、多層的なものとして捉えていて、また、自立をただの「状態」として見るのではなく、「自律」に向かう指向性、「自律」の獲得過程として捉える議論(明示的には、終章(菊池馨実)、第三章(尾形健))もあり、僕の「自立支援」に対する視野がぐぐんと広がりました。
各論における諸制度の「自立支援」の観点からの解説も分かりやすくて、また、新しい視点をたくさん教えられて、大変勉強になりました。
知的にわくわくできて、また、大変勉強にもなって、読むことができて本当に良かったと思えた、素晴らしい本でした。

ちなみに、本書と執筆者が一部重なる方々が旬報社より『希望の社会保障改革』という本を最近出しているみたいで、おそらく本書の議論の問題関心とも重なるところが結構ありそうなので、近いうちに読んでみようかなと思っています。
早く読んでみたいのだけど、果たしてSakuraから購入の許可を得られるかどうか・・・。(←おねだり)

(投稿者:Ren)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
これこれ (Sakura)
2009-06-17 18:57:12
もう~ほんとに本が好きなんだから・・・キリがないじゃないの(笑)
でもRenに本を与えないと、しぼんでしまいそうだから、、買ってきていいよ!
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わーい (Ren)
2009-06-17 21:05:14
ありがとうーー!!
早速アマゾンさんで注文しちゃった(笑)
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