倉野立人のブログです。

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コロナ対応 また迷走か ~感染者「全数把握見直し」の功罪~

2022-08-27 | 日記

コロナ禍「第7波」の伸張が止まらず、各方面で〝手詰まり感〟が蔓延する状況に陥っています。

当初は、(ほとんどの感染者が)軽症または無症状で済む→大事(おおごと)にならないままに推移し「ウィズ・コロナ」が達成できると踏んでいた関係者も、いわば「塵(ちり)も積もれば山となる」状態…たとえ軽症者であっても その数(感染者数)自体が大きく増えることで病床が圧迫されることになり、他方で 高齢者施設等でのクラスターにより、基礎疾患のある高齢者への感染は 重症化や死亡の要因にもなることとなり、いわば〝負のスパイラル〟に陥ることとなっています。

この状況(負のスパイラル)は、感染者の健康被害と平行するように 医療現場や保健(所)業務を大きく圧迫することになっており、その方面の負担軽減も焦眉の急に挙げられることとなっているのは ご案内のとおりです。

 

で…これらの厳しい状況に対応してか、さき(24日)に政府(総理)は これまで行なわれているコロナ感染者の「全数把握方法」を見直すことを表明しました。

が、この「見直し」について その前段で「自治体の判断に基づき」としたことから、見直しそものは評価されたものの、その(見直しの)結果・運用等について 自治体ごとにバラツキが出るのではないか等との疑問の声が関係者から挙げられ、結果 国(政府)は迷走することとなってしまったのです。

 

 

 

 

現在 行なわれている新規感染者の「全数把握」は、医療機関が作成した 患者の「発生届」を基(もと)に行なわれています。

コロナ感染症を管轄する「感染症法」は (新型コロナウイルスを)診断した医師に対し、すべての患者の氏名・年齢・連絡先などの情報を「発生届」として保健所に提出するよう義務づけています。

これまでも(現在も)国や自治体は この「発生届」を集計し 全国や地域ごとの感染状況を把握してきたほか、保健所などが「発生届」をもとに健康観察や入院先の調整を行なっているものです。

 

 
 
 
で、この「発生届」の提出は 国が導入した「HER-SYS(ハーシス)」と呼ばれるシステムを使用して行なわれますが、「第7波」で感染者が急増し (ハーシスへの)入力や確認の作業が医療機関や保健所の大きな業務負担となってきていました。
 
この状況に際し 医療現場からは「コロナ患者対応に集中させてほしい」と 見直しを求める声が高まっていたものです。

24日に 岸田首相は「高齢者をはじめリスクの高い人の命を守ることを最優先に考え、さらなる対策強化を指示した。」と見直しの狙いを述べ、医師による患者情報の入力を高齢者などに絞ることで「必要な診療時間を確保していく」と強調したとのことです。

但し、この 一見〝英断〟とも取れる「全数把握見直し表明」は、いわば見切り発車的な感が否めず いろんな面で矛盾や齟齬(そご)が指摘されることとなりました。

そもそも国(首相サイド)は「第7波」が下降局面に入ると見込んでいたお盆明けを念頭に、全国一律での全数把握見直しなど〝コロナ対応の一大転換〟を模索していたようです。

ところが、感染は収まるどころか 新規感染者は連日20万人台を数えるなど、その目論見(もくろみ)は ものの見事に当てが外れることとなってしまいました。

コロナ患者を一般医療(5類)に指定するなどの「ウィズコロナ」への移行は、社会経済活動を重視する首相にとって悲願であるとのことですが、今の感染拡大状況では 国民の理解を得られるハズもありません。

しかし一方で 医療現場や保健所はこれまでになく疲弊し、ある首長は「ダムが決壊しているのに、救助より 水位を測ることを優先している。」と揶揄されるなど 今の旧態依然のコロナ対応に不満が噴出、感染者把握の事務作業に費やす労力を重症化対応に振り向けるべきだという意見が 日増しに高くなっていました。

それ(声)に押される形で見直し施策を打つこととなったのですが、そのタイミングと内容が 時流に合っていないことが伝えられ、間が悪いと言わざるを得ません

一番の課題は、この見直し作業を「自治体任せ」としたことでしょう。

地域から悲鳴が上がっているとはいえ、自治体によって状況が異なり いわば「温度差」があることなどから、政府関係者の中にからは その上澄みだけを捉えて「(見直しは)やりたいところ(自治体)がやればいい」との 実に雑な判断に基づく声も出されるなどし、24日時点では 自治体の判断に基づき、把握すべき感染者の対象を、65歳以上・入院を要する人・重症リスクがありコロナの治療薬の投与や酸素投与が必要と医師が判断する人・妊婦さん等に限定できる」との〝自治体丸投げ〟で実施しようと考えたようです。

 

 

 

しかし この案に対し、本来 見直しを求めている首長からも「自治体ごとに把握基準が違えば、全体の状況が見えなくなると同時に かえって現場が混乱する。」とか「調査(把握)の対象から外れた人たちの医療費の公費負担がどうなるのか?また 現行の宿泊療養施設への入所等の現行支援の手続きをどのように行なうのか?など、ハッキリしない面が多すぎる。」との異論が出されていました。

また 医療機関からは「患者の中に多い 若い人や基礎疾患のない人でも、最初は軽症だったのにいつの間にか症状が悪化する人もいるので、届け出の対象ではない人も 健康観察そのものから外すのではなく適切なケアを行なう必要があるが、見直しになれば 「発生届」の対象外の人が自宅療養中に体調が悪化しても気付きにくくなるなどの懸念もある。見直しにより それら対象外の人は〝蚊帳の外〟に置かれることになるのか。」などの疑問の声が上げられていることが報じられていました。

 

「感染者数全数把握見直し(但し主体(責任)は自治体任せ)」の〝英断〟をしてはみたものの、あまりに多くの問題点がクローズアップされることになったことを受け、国(政府)は いわば朝令暮改のままに、この「全数把握見直し」を全国一律で行なうと方針を転換、いろんな面でボタンが掛け違ったままでの提案の軌道修正を図っていることが 併せ報じられています。

 

 

 

この「全数把握見直し」は、感染者数多発の今の状況下では 万(ばん)やむを得ない措置とも申せますが、その制度設計を 例えば自治体ごとのバラツキが生じないように勘案するなどしてゆかなければ、いま以上に(関係者は)無駄な作業を強いられることになってしまうでしょう。

これらの状況に触れ、過日 早いうちに今の検査体制の見直しを提唱していた長野市のK保健所長が「私たち関係職員は、感染者数の低減や環境改善に真に役立つのなら いかなる努力も惜しみません。ところが、現有の事務作業は どう考えても現状に為すべきものに合っていないことが残念でなりません。」と言っていたのを思い出しました。

汗をかくのは厭(いと)わないが、それが真に状況改善に結びつくものでなければ意味がない。

「現場」の悲痛な声でありました。

 

現下の、前掲の首長が嘆いた「ダムが決壊しているのに、救助より 水位を測ることを優先している。」の発言が言い当てているような現況を打破し、どの地域においても効率よく状況把握できるような「新システム」の発表が待たれるところです。

 

ただ いずれにせよ、守らなければならない第一義は「国民の健康」です。

効率・簡略主義に走った末に、一部の感染者が支援の手からこぼれる(既に そうなりかかっていますが)ことの無いよう、広く多面的に目配りをして施策展開すべきことは 言うまでもないところであります。

 

 

 

現下、長野域内においても〝高止まり状況〟が続いています。

ここ約1週間の感染状況は下記のとおり。

 

8/22日(月) 長野市におけるコロナ感染症の発生(194人/市33226~33419例)について

                              [PDFファイル]

                 ↓

https://www.city.nagano.nagano.jp/uploaded/attachment/753321.pdf

 

 

8/23日(火) 長野市におけるコロナ感染症の発生(549人/市33420~33968例)について

                              [PDFファイル]

                 ↓

https://www.city.nagano.nagano.jp/uploaded/attachment/753387.pdf

 

 

8/24日(水) 長野市におけるコロナ感染症の発生(632人/市33969~34600例)について

                              [PDFファイル]

                 ↓

https://www.city.nagano.nagano.jp/uploaded/attachment/753485.pdf

 

 

8/25日(木) 長野市におけるコロナ感染症の発生(482人/市33601~35082例)について

                              [PDFファイル]

                 ↓

https://www.city.nagano.nagano.jp/uploaded/attachment/753532.pdf

 

 

8/26日(金) 長野市におけるコロナ感染症の発生(398人/市35083~35480例)について

                              [PDFファイル]

                 ↓

https://www.city.nagano.nagano.jp/uploaded/attachment/753617.pdf

 

 

 

冒頭でも述べましたが コロナ禍〝第7波〟は、長野域内においても 当初の予想(軽症や無症状で収まる)を逸し、それでは済まないことになっており、新たな憂慮の火種となっています。

 

昨日(26日)には、長野県内で 新たに11人が死亡していたことが報じられています。

 

 

 

また 県内の療養中の人は過去最多の2万7,422人で、そのうち重症が3人・中等症が122人となっており、さらに現在(25日時点)の確保病床使用率は61,2% 6日連続で6割を超えているとのこと…この数字からも 当初の予想を超え、厳しい状況になっていることが窺(うかが)えます。

 

 

 

 

止まらない第7波・増大する関係者への負担・そして何より 今もどこかでコロナ感染症の影響で病(や)んでる人が居る。

今の第7波も、私たちの人智を超えたレベルで推移しています。

これへの対応…その殆(ほとん)どが〝後手〟に回った顛末が、またも今(第7波)でも繰り返されていることは まさに慚愧の念に堪えないところ。

この状況を挽回するべく 一日も早い適策が待たれています。