倉野立人のブログです。

日々の思いを、訥々と。

鉄路の安全保障

2022-08-02 | 日記

識者のIさんと意見を交わす機会があり、話しは「鉄路」に及びました。

「鉄路」いわゆる鉄道路線については、わが国においては JRを初め「不採算路線」が常態化しているところであり、各地で(鉄路の)存続の是非について議論が起こっているのは ご案内のとおりです。

そのような厳しい状況を踏まえ Iさんは「鉄路の維持には この際「防衛費」を充(あ)てるべきじゃないか。」と 独特の見解を述べておられます。

 

例えばJR北海道。広大な圏域内での人や物資の移動に「鉄路」は欠かせぬ存在ですが、実際の収支は非常に厳しいことが伝えられています。

 

 

 

JR北海道による2021年度の線区別収支によると、営業収益が459億8,600万円だったのに対し 営業損失は実に790億600万円。

その現状については、北海道新幹線を含む全線が赤字路線となっているとのことです。

また、サービス業の健全化の指標に用いられる 100円の収入を得るために必要な経費(営業係数)は、(100円を稼ぐために)155円から 地域によっては(100円を稼ぐために)1,000円も経費がかかる路線もあるとのことです。

 

 

 

また、長野県内においても然り。

例えば、さきには 松本と新潟県の糸魚川を結ぶ「大糸線」について、JR西日本が 管轄する南小谷以北の35キロ区間の収支を公表したのですが、その累積赤字は2020年度までの3年間の平均で 年間で約6億円に上ることが報告されています。

1km当たりの1日の平均乗客数を表す「輸送密度」は 2020年度で50人と、1987年度の1/20に減っていることも併せ報告され、いわゆる〝負のスパイラル〟に陥っていることが実感されたところです。

 

 

 

かかる現状について Iさんは、厳しい認識を共有したうえで「わが国の鉄道路線の内需逼迫(利用者減少)と、一方で高齢化が進行する中、特に国(政府・政治家)は「鉄路の安全保障」を真剣に考えるべきときに来ているのではないか。」と強調し「この際は、日本(国民)の安全を守るために支弁するとされる「防衛費」を 鉄路の維持に遣(つか)うべき。」との見解を示しておられました。

Iさん曰く「大陸を有する国家(国域)において「鉄路」は欠かざる輸送手段。それは 平時の人や物資の輸送に併せ、有事の際にも 人員や軍需物資の大量輸送の面で非常に有効かつ重要なインフラに位置づけられている。わが国おいては まさに北海道がこの事例が当てはまるだろうね。

そのうえで、今 とりわけ北海道の鉄路が全線赤字の危機に瀕しており、この状況を何とかしなければならなず、そこにこそ「防衛費」を支弁すべきではないかと思うんだ。

但し このこと(鉄路維持への防衛費の支弁)は、何も軍需的な目的での話しじゃない。

要は、将来に亘って国民の生活安全(この場合は〝移動手段〟)を守ること、これは立派な「安全保障理論」であり、国家としてもその維持のための相当の予算を割(さ)いてもバチは当たらないんじゃないか。

で、そのため(鉄路の安全保障)には〝国防の原資〟である防衛費を充てることも念頭に置くべき。戦闘機1機が約120億円(しかも恒常的な維持費が相当額かかり続ける)予算の支弁に比(ひ)せば、鉄路の維持に その一部でも充当することは、わが国の安全保障に叶うものとして国民理解も得られると思う。」と 穏やかに、しかし力を込めて話してくださいました。

 

「鉄路の維持に防衛費を」この 一見には荒唐無稽(こうとうむけい)に映る考え方は、しかしながら「鉄路安全保障」の観点からすれば、究極の〝縦割り排除〟の斬新な考え方であると思います。

それだけ 現下わが国は総体的に危機的状況に陥っていること、それを乗り切るためには 旧態依然の考えから脱却し、今まででは考えも及ばない視点で事(こと)に臨むべきことを示唆してくれた感の「鉄路の安全保障理論」でありました。