倉野立人のブログです。

日々の思いを、訥々と。

「季節の風物詩」のこれから

2022-08-21 | 日記

お盆の前の某日、公私共にお世話になるNさん(川中島駅前/本町区(もとまちく)在住)のお宅へ伺い お茶などいただいている際、Nさんが天井を見上げながら言(ご)ちておられました。

「今年の駅前盆踊りも コロナのせいで中止だなぁ・・・。」

 

これまでも 本ブログでもお伝えしていますが、こちらのNさんが住まわれる本町区は ムラを挙げてのイベントごとが非常に活発に行なわれており、例えば夏のこの時期(お盆期間)は JR川中島駅前の広場を会場にし「盆踊り」が開催されているのです。

 

 

 

地域の夏の風物詩にも位置づけられた「盆踊り」では、地区在住の住民の方々はもとより お盆に合わせて帰省した方々もこぞって駅前に足を運び、櫓(やぐら)を囲んで輪になって 老いも若きも楽しく盆踊りを楽しんでおられます。

 

 

 

櫓(やぐら)の周囲、広場の環内には 水菓子などの屋台も出され、皆は和気あいあいのうちに楽しい時間を共有します。

祭りのフィナーレには 参加者が大きな輪を成し、手に手に花火を持ってご先祖を迎え(送り) お盆の行事ともしているのです。

 

 

 

お盆の時期に 駅前広場に集う人は、この「盆踊り」をつうじて〝夏〟を実感し〝季節〟を実感する機会としているのです。

そして何より 行事(盆踊り)の主催者(愛好会)の方々こそが、イベントの運営を通じて横の連携を深め 踊りの輪に参加した方々の笑顔に触れて達成感を得ておられるのでした。

 

 

ところが…そんな季節の風物詩の佳き積み重ねに水を差したのが、なにいう「コロナ禍」でありました。

2020年の1月 横浜港に停泊した豪華客船に端を発した新型コロナウィルス禍は、無尽蔵の拡大をみせるうちに ほぼ全ての社会活動を停止に追い込んでいったのでした。

 

地域における〝季節の風物詩〟の中止を残念がるNさんは、それでも「今の 行事の中止判断、オレは至極やむを得ないことだと思っている。こんな感染状況の中でイベントを強行するなど とんでもない話しだ。オレは「長野びんずる」だって再開には反対だった。」と話されたうえで「これから ウチらの「盆踊り」のような地域の行事は、一体どうなってしまうんだろう…。」と 真顔で心配されていました。

「行事は「継続」され続けてこそ意味があるし、ウチらのような主催者も 行事が毎年に亘って実行されることで「機運」が維持されて、継続した開催のための「人材」も育ってゆくもの。これが何年にも亘って開催されないとなると、何というかモチベーション自体が下がってしまい いざ再開となったときも「ヨシ やるぞ!」といった雰囲気にならなくなってしまうんじゃないか…。」と憂慮の思いを吐露されていたのが印象的でありました。

 

 

で この数日後、NHKで「コロナ禍の夏祭り~伝統を絶やさないために~」の特集が放映され、奇しくも さきのNさんの述懐と重ね合わさったものでした。

 

 

 

特集は「コロナ禍の終わりが見通せない中 各地で長年続けられてきた祭りや行事・郷土芸能を残すにはどうすればよいのか。夏祭りを中心に考えてみたいと思います。」としたうえで始まりました。

「長引くコロナ禍は、夏祭りに限らず、さまざまな郷土芸能に影響を及ぼしています。」とのこと、Nさんらが行なうムラの祭りに限らず 地域の大祭までもがコロナ禍の影響を受けていることが伝えられていました。

専門家の指摘によると、コロナ禍によってさまざまな形で「簡素化」が進んでいるということです。

作りものを小さくする・松明の数を減らす・子どもを参加させない などといった変更が各地で見られるとしたうえで、今後 こうした一時的な変更が固定化され、姿が変わってしまうおそれがあると危惧しています。

各地の郷土芸能は 過疎化や少子高齢化などによる担い手不足が以前から深刻な課題となっていますが、コロナ禍によってこの流れが一層進み 行事そのものが無くなってしまったり、形を大きく変えたりしてしまうことが現実味を帯びてきているのとのことでした。

 

 

 

こうした厳しい状況は、地域で活動を続けている団体を対象にしたアンケート調査からも伺い知ることができるとのこと。

群馬県教育文化事業団が 今年1月に行なった調査結果によると、行事の開催における新型コロナウイルスの影響は、92%が「ある」と答えています。

「影響がある」「どちらかといえば影響がある」と答えた団体に複数回答で具体例を尋ねたところ「祭り行事の縮小、延期・中止」が95%「集まりや練習機会の減少・中止」が75%などとなっています。

そのうえで 今後の見通しについては「今は活動を中断しているが、再開したい」が49%と約半数を占めたものの「現時点では活動しているが、今後はかなり厳しい」が19%「活動を中断しており、再開の可能性がない」も4%あり、困難に直面している団体が少なくないことが浮き彫りになったそうです。

また 自由記述では「現状では動くことができず、若い世代の人たちへの伝承ができないことが重要な課題です。」とか「高齢化も相まって継承意識の低下が心配です。」といった切実な声が寄せられているとされていました。

 


                     

そのうえで専門家は コロナ禍が3年目に入ったことを踏まえ「この「3年」という月日が 伝統を継承するうえでの「岐路」になりかねない。」と指摘していました。

例えば小学校の高学年で踊りなどを学ぶ地域で3年間それができないと、その学年の児童は身につける機会がないまま小学校を卒業することになる…それだけに、速やかに対策をとることが必要です。

▽当事者どうしでつながりを保ち、継承が難しくなったところは声をあげる。

▽行政や関係団体は必要な支援がないか目配りする。

▽工夫や改善策が功を奏したところは、それを広く公開し、成功事例として共有する。

このような取り組みが、今こそ求められている、としたうえで「郷土芸能や地域の祭りは 地域の人々の長年にわたる営みを今に伝える文化財として貴重なだけでなく、地域社会をつなぐ場としても大きな役割を果たしています。今も収束が見通せないコロナ禍の中、伝統行事について 如何(いか)に「灯火(ともしび)」を消さないように努めてゆけるかが問われています。」と結んでいました。

 

コロナ禍は、実にさまざまな方面に影響を及ぼしながら 今も拡大を続けています。

そんな中「季節の風物詩」や「伝統行事」をどう継続してゆくか…今まで見えてこなかった課題を改めて見せつけられた感でありました。

 

 

 

 

 

 

◇長野市コロナ報告

8月21日(日)、長野市内で新たなコロナ陽性感染者の発生が報告されています。

「夏休み・お盆感染」があったと思ったら、今度は「学校再開・児童生徒感染」が始まってしまいました。

学校などから家庭にウィルスを持ち帰り、そこからの家族間クラスターの可能性が高くなるかもしれず…いずれにしても油断できない時期が続きます。

 

 

8/21日(日) 長野市におけるコロナ感染症の発生(480人/市32746~33225例)について

                              [PDFファイル]

                 ↓

https://www.city.nagano.nagano.jp/uploaded/attachment/753306.pdf