要となる智を継ぐもの

株式投資についてつらつらと書くブログ(走り書き)。誤字脱字錯誤に計算間違い多数。補正・修正は読み手側でしてください。

バフェットの凄い所は投資じゃないのではないだろうか?

2010-12-24 10:53:22 | 投資日記
前のエントリーに続いてもう一つ。バフェットは本当に投資上手なのだろうか…?それを補足する上で一つ良いサンプルがあるのを思い出した。何かの本で読んだのだが、下記の記事がそれだ。


ある経営者(以下、彼)がバークシャ―に身売りをする交渉に行った。
交渉は和やかにスタートした。話を進める中、バフェットは彼にこう言った。

バ:「買収価格は利益の10倍位が相場ですよ。」
彼:「なるほど、良い値ですね。」
バ:「じゃあ10倍で!交渉は成立です!」
彼:「え、ちょっとまった!」
バ:「良いって言ったじゃないですか、もう1セントも値上げさせませんよ!」

本題に入る。利益の10倍ってどうよ?PERで言ったらPER10倍だよね。これ、安いの?安いけど、直利ベースで10%が良い所じゃないか?そんなに成長性(+収益性)があるビジネスでもない限り、この値段で買ってバークシャ―の途方もない利回りを達成できるとは考えにくい。

また、シーズキャンディーに関しては確かに割安だっただろうが、世間で言われるほどの奇跡的な投資だったのだろうか?購入時PER6倍だったので、その点は割安だ。また当該企業は今や買収時価格と同額を年間リターンで出すほどだ。

素晴らしい!と言いたいのだが、買収から今までの累積インフレを考えると、どうだろう?1972年からだから30年‐40年分のインフレをたっぷり含んだこのこの水準は、むしろ低いのではないか?

事実、1970-1990年当たりのインフレ率は物凄い事になっている。これを含めて考えると上記期間の平均インフレ率は軽く5%を超えてくる。それを踏まえて考えると、累積インフレ率(物価上昇率)は5.5倍。逆に言えば、5.5倍を割引いて考えなければ実質値は算出出来ない。とすると、だ。実質利益成長率は6/5.5となり、殆ど変わらない事になる。(当該企業のキャンディーの販売数量と整合性がある。キャンディーの過去35年間の販売数量の伸び率は年率2%だった。売上規模そのものは2倍程度になったと言える。利益水準が実質値ではむしろ落ちてるっぽいが、実際に落ちているのか、誤差なのかは不明。少なくとも、大した投資では無かったと思われる。)

後、ネットジェッツは赤字続きだし、7賢人と称されていた企業軍(ロシア系家具屋とか)は赤字スレスレとも聞いている。本当に彼は皆が言うような偉大な投資家であり経営者なのだろうか?私にはそうは思えない。少なくとも投資の面で言えば、グレアムの方が優れていると思う。

上記のように、投資家としての彼は正直、見かけ倒しだと思う。少なくとも世間で言うほど、彼の投資実績は凄くない。と言うか、別に彼で無くても同程度のリターンは誰でも出せたはず(例えばコカコーラの96%は彼以外が株主)。グレアム的な投資論を精通し、それを実行する人間がいたのであれば、タイミングを計ってやれば同じようなリターンは出せたと思われるし、彼が投資している会社レベルの企業であれば、市場を探せば少なからず、幾つかは出てくると思う。

むしろ、彼は偉大な投資家と言うよりは、偉大な実務家と言ったほうが良いと思う。
具体的に言えば、下記がそれだ。

①巨大なフロート(準備金)を使った低リスク下での大規模なレバレッジ投資スキームの保有
②企業を子会社化する事による、時価会計の回避と資本政策の掌握
③自己ブランドを高め低価格での買収を実行
④ハサウェイを投資会社として資金の入出力の管理を実行


①、彼は保険子会社を通して5-7兆円のフロートを実質保有している。この金は保険における振込と支払の時間的差が産んだ物であり、比較的長期的な投資にも使える。彼の部下が優秀だからか分からないが、とにかく、低コストで調達できるレバレッジ用資金と言って良い。数兆を低コストで調達できるのでかなりレバレッジを掛けられる。バークシャ―の資産と同程度のフロートなのでレバレッジ2倍程度はいける。単純な話、リターンを2倍に引き上げられる。

②、企業を子会社化する事で時価会計から逃れられる(よね?違ってたら御免)。彼の手紙を見る限り、投資成績の計算方法は時価ベースではなく、あくまでも資本ベースである。で、リターンは資本の増加率である。こう言った土台を持たせることでかなり安定した運用成績を実現出来る。変な話、子会社群が赤字さえ出さなければ投資はマイナスにはならない。この手法は上記のフロートを運用する際にかなり高い安定性とか信用を持たせていると思う。と言うか、持たせざるを得なかったのかもしれない。いずれにしろ、市場由来のマイナスによる追証的な資本の強制引き揚げから、逃れられる。

また、資本政策の掌握は大きい。利益が出たら即還元しろとのお達しを子会社経営者に通達している事からも分かる。また成長に対する資金提供も殊更厳しく、かなり稟議が通らなく、経営者が身銭を切って投資をし、成功したら会社がその投資を買い取るみたいな事もしているとの話もある。

資本政策を抑える事で、PERをそのまま利益に直結できる。よくバリュー投資家がやる「仮にPER5倍の企業がもし、利益を全額還元されたら…20%のリターンだ!」と言うのを、マジでやっているのがバフェットだと言える。

③バフェットブランドはかなり高価だろう。会社を安値で売ってでも彼の傘下に入りたがる経営者も結構いると聞く。また彼自身、そのブランドを保持する事に凄い執着しているし、実際、世間の評価を損なわないよう万全の行動をしていると何かで読んだ(どの本かは忘れた)。

④ハサウェイは強力な資本自己増殖スキームそのものだろう。還元一切無し、利益を全額再投資。これを長期に渡り行っている。消費一切無しの完全投資。これを半世紀も行う。この点で普通の投資スキームと一線を画す。複利の効果は皆さんご承知の通り。

そこそこの良い賭けが出来る企業をそのブランド力を持って定期的に揃え、低コストでレバレッジ投資を行い、資本に対する投資額を嵩上げし、投資先からリターンを100%吸出し、株主には還元せず、100%投資を行い、それを何十年も続ける。また、市場的な不確定性を取り除く為、資本ベースでの計上を行い、安定的にビジネスが成り立っているように対面的に繕う。

とてもシンプルながら完成された投資スキームだと思う。
勿論、目的は「資本の自己増殖」を究極なレベルまで引き上げる事だろう。

バフェットは投資家と言うよりは、商社マン的仕組み作りの人じゃないか?と思う。
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