ゆるゆる素浪人の「気まぐれ日誌」~ 自己満足とボケ防止に、人生の雑記帳~  

そういう意味で老人の書いた「狼の遠吠え」、いや「犬の遠吠え」と思い、軽い気持で読んで頂けば有り難いです。

「インターネット随想」(22) 精神異常者の対応と消費増税法案衆議院で可決

2012-06-27 00:00:00 | エッセー

日本の将来を決める消費増税法案は25日の衆院本会議で、

民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決され、衆議院を通過した。

結果は賛成363票、反対96票で、うち民主党からの反対票は57票にも達した。

 

今後は参議院に送られ法案は審議されることになるが、

そう簡単には成立は難しく、まだひと山もふた山も在りそうだ。

ちなみに成立すると現在5%の消費税率は2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げられる。

もし野田総理が消費増税案を成立させれば、かってこのブログで詠んだ、

●野田総理 消費増税 名を残す

●タダの人 思っていたら 迷(名)総理   に成るかもしれない。

さて今回の「インターネット随想」ですが、

駆け出しの頃に経験した「精神異常者の対応」の話である。

 

一人の若いヤクザ風の大男が、研究室にやってきた。

「先生、薬の試験してくれよ」実に乱暴な言葉づかいである。

「薬の試験といっても色々な成分があるので」おそるおそる言いかけると、

その男は急に大声で机をたたきながら、

「わしの試験してくれんと言うのか。わしは医者に、薬で殺されかけているのじや。

だから一人や二人殺しても、どうちゆうことはないぜ」と凄んで見せる。

この時ほど度胆を抜かれたことはなかったが、

その男の顔をじっくりと度胸を決めて眺めることにした。

色黒の顔に太い眉毛、大きな口であるがどことなく締まりがなく、

目は大きく開いているものの、どんより曇っている。

少しずつ会話を進めていくうちに、この男は精神異常者ではという気がしてきた。

もしそうだとすると危険極まりない相手であり、男に従うしか方法はない。

先ずはじっくりと、男の話を聞くことにした。



「先生、わしはA病院へ行っているんだが、そこの医者はこんな薬を飲ますのじや。

この薬の名前を聞いても教えてくれんし、絶対に薬の中に石粉が混ざっているのじや。

わしの胃袋に石粉を詰めて殺そうとしているのじや」と、まあこんな話しである。

この話を聞いて男は精神異常者であることに確信を持った。

しかも少しでも逆らった話をすると大声で怒鳴られ、全く閉口した。

更に、うかつな返事も出来ず困ったが、何とか簡単な試験でこの場は切り抜けようと、

スプーンに少量の薬を乗せ燃焼実験をして見せた。

 

「このスプーンに何か残れば石粉のようなもので、残らなければ薬だけですよ」と言って、

バーナーの炎の中に入れた。

「そうや、わしも知とるが、それはケイ酸という無機成分だろう」

少し化学の知識を散らつかすのには驚いた。

しかも残留物が残れば、どのように返答しようかと思いつつ、

スプーンを焼いて見せると、男はじっと薬が燃えるのを楽しんでいる様子だった。

すると急に丁寧な言葉になり、「何処へ行っても試験してくれなんだが、

先生はほんまにええ人や」と、機嫌よく帰っていった。

 

初めのうちは、命の縮む思い出で対応していたが、

どうにか上手く片付き安堵していると、翌日、再びやってきて、

「先生、この薬に石粉が入とんと違うか?」また親しく語りかけてくる。

頭の弱い人に好かれても仕方がないが、昨日の燃焼実験を再びして見せた。

すると今度はA医院に電話をして、石粉が混ざっているかいないかを聞いてくれという。

全くバカゲタ話であるがキチガイに刃物という言葉もあるので、A医師に電話をした。


「そこへ行っていますか、その男はよく春や秋先には、発病するのです。

適当に難しい薬の名前を言って安心させてください」と言うので、

訳の分からぬ英語の名前を2~3種言った後、

「この薬には、石粉は入っていないですよね」大声で仮想問答して、電話を切った。

すると急に「A先生が薬の名前を教えるなんて、先生はたいした者だ」

と豪く感心して帰っていった。



それ以後、この厄介物の男は数回やってきて私共を手こずらせたが、

何時の日にか消息は絶え、安心して日常業務に専念できるようになった。

この種の話はバカゲタ話であるが、精神異常者の対応は初めてであり、

駆け出しの私にとっては、真剣に対応した出来事であった。 
       (○○県○○会誌、1985.6.1)

 

●「思い出の写真から」(46) 大阪万国博覧会から(昭和45年)

○米国館―アポロ司令船のコロンビア号から地球に帰還した船

○ソ連館―スプトニーク