くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

またひとつ遠くなる未来

2011-07-23 15:47:06 | つれづれなるまま
7月21日、スペースシャトル「アトランティス」が地球に帰還し、
30年間にわたるアメリカのスペースシャトル計画は完全に終了しました。

1969年、初めて人類が月面に降り立った時の興奮を憶えていない私にとっては、
1981年のスペースシャトルの有人初帰還が、宇宙開発史における鮮烈な記憶です。

それまでの使い捨ての宇宙船ではなく、
何度も地球と宇宙を行き来できる有翼往還機の実用化は、
これから誰もが気軽に宇宙に行けるSF漫画のような時代の到来を感じさせ、
テレビで生中継されるシャトルの初帰還に胸をわくわくさせたものです。

「まるで平和の象徴である白い鳩のように、
 いま、スペースシャトル「コロンビア号」が地上に舞い降りようとしています。」
そう中継したアナウンサーの言葉が、いまも記憶に残っています。

当然、技術開発は更に進み、打ち上げ時に必要な補助ロケットも不要となって、
水平離着陸の有翼宇宙往還機が、これからの時代の主流になるものと思っていました。
21世紀には、普通の人でも旅客機に乗るように宇宙に行ける時代が来ると。

しかし、残念ながらそうはなりませんでした。
有翼宇宙往還機の開発と運用には、あまりにも莫大な費用がかかりすぎるためだそうです。

機体の翼は、大気圏内を飛行するためだけにあります。
大気のない宇宙空間では、その大きな主翼も垂直尾翼も、何の役にもたちません。
一方で翼があるということは、それだけ事故や故障の確率が高くなります。
そして安全のための研究開発費や整備費用には、莫大なお金がかかります。

つまり、大気圏内でしか使わないものをつけておくのは、
事故や故障が起きる確率を高くするだけだし、
そのためにお金をかけるのは不経済であるという理由です。
また、無人で打ち上げることが可能な物資のために、
人間と同等の安全対策費をかけることは、合理的ではないと判断されたようです。

実際、2003年に大気圏へ再突入したコロンビアが空中分解した事故は、
打ち上げ時にロケットから剥落した断熱材が、翼にあたって損傷させたことが原因でした。
翼のない使い捨てロケットなら発生しなかった事故でした。

宇宙開発では、ソビエトが一番乗りで宇宙へ人類を送り出し、
アメリカが月面着陸でこれを巻き返し、さらにスペースシャトルで主導権を握ると思われましたが、
当面はロシアの有人ロケットソユーズに主役の座を譲る形となりました。

スペースシャトル計画が終了し、
アメリカは次の有人宇宙船の開発を従来のカプセル型に決めました。
民間企業でもスペースプレーンの構想もあるようですが、実用化の目処は立っていません。

宇宙空港からスペースプレーンに搭乗した人々が宇宙観光に飛び立ってゆく。
スペースシャトルの退役によって、そんな夢のある未来がまた遠のいた気がします。

ちなみに、スペースシャトル「アトランティス」が最後の帰還を果たした7月21日は、
奇しくも42年前、人類が初めて月に降り立った記念すべきその日でした。


ちょっと違うんじゃない?

2011-07-21 23:44:55 | つれづれなるまま
久しぶりに東電の関連会社に勤める知人に会ったところ、
「東電からの仕事が減って、給料が下がった」と嘆いていました。

「給料」と言っても「月収」ではなく「年収」ベースです。
毎月の給料は変わらず、ボーナスが10%~15%カットされたそうです。
給与体系が変わったわけではないので、それほど深刻な状況ではありません。
喉もと過ぎれば(東電のほとぼりが冷めれば)、また元に戻るはずです。

その知人が、
「東電は、役員報酬が高すぎだと言われるが、
 トヨタやソニーなどと比べても、決して高すぎるというわけではない」
などと言います。

しかし、これには思わず反論です。

トヨタやソニーなど、多くの一般企業の役員報酬は、
激しい価格競争を勝ち抜いて得られた利益から出されたものです。

電力会社は一般企業と異なり、消費者には選択肢のない独占企業です。
私たちは「1キロワット1000円で買え」と言われても、買わざるを得ません。
貧乏人だから安い電気を買うということができません。

つまり役員報酬の意味合いが、一般企業とはまるで違うのです。

本来であれば、公益事業も公務員と同じです。
役員や職員は公益のために身を尽くすべき立場です。
それが一方的な独占商売であげた利益で潤ってどうするのか!

これが、一般庶民の正直な気持ちだったのではないのでしょうか。


みんな嘘つき

2011-07-19 22:39:58 | つれづれなるまま
昨夜のテレビ朝日の「たけしのTVタックル」のせいではないでしょうが、
最近、会社の節電に対する社員の反論が激しくなってきました。

「節電は原発を推進するための、経済産業省と東電の情報操作である」
「東電が発表する電力供給力は操作されており、本当はもっと余裕がある」
「電気製品に影響がない程度に電力の質(周波数の安定など)を落とせば、
 日本の電力供給力は現在でも充分である」 などなど。

こぞって週刊誌やテレビなどのマスコミが騒ぎ立てるため、
これを聞きかじった社員が、会社の節電対策に噛みつきます。

結局、何が正しいのか、誰にもわかりません。
政府や東電の言うことをまるっきり信用しているわけではありませんが、
それ以上にマスコミの報道が100%正しいとも思ってもいません。

たぶんどちらの言葉の中にも嘘があり、どちらの言葉の中にも真実があると思います。
これが上手な嘘のつき方、つまりホンモノの嘘つきというやつなのでしょう。



在宅勤務所感

2011-07-18 21:32:00 | つれづれなるまま
巷には、今夏の節電対策のために在宅勤務を実施している会社もあるとか。

私が勤務する会社でも、在宅勤務は節電対策の候補にあがったものの、
結局、誰かが打ち合わせなどで出社すれば節電効果はなく、
また、在宅勤務時の電気代は会社が負担(補助)してくれるのか、
などといった意見も出て却下となりました。

7月12日の毎日新聞では、
サマータイムは帰宅後の家庭の電力消費が増加し、
節電には逆効果であるという産総研の分析結果が報道されていました。
在宅勤務が増えると、同じようなことが言えるかもしれません。

勤務時間をずらしたり、勤務場所を変えたりするのではなく、
結局、使わないのが一番確実な節電ということでしょうか。

この三連休、仕事を家に持ち帰りました。
しかし、毎度の事ながら、まるでやる気がおきません。
出社の前日にようやく切羽つまってやっつけるのが常です。

いつもこんな調子ですから、
在宅勤務なんか導入されたら、きちんと仕事をする自信などまるでありません。
「電気は使うし、仕事はしない」最悪な状況に陥るのは間違いありません。

自宅で仕事ができるという人、心の底から尊敬します。


「中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!」

2011-07-17 23:59:59 | 書籍の紹介
会社にユニフォームを納入している衣料品会社が、
製品の値上げの要望書を持ってきました。

値上げ幅は、現価格の10%~20%。
理由は原料価格と製造している中国の人件費の高騰だそうです。
すでにその会社では、中国での生産に見切りをつけ、
工場をタイやヴェトナムへ移転させる計画が動き始めているといいます。

ただ、品質や縫製技術など、
中国で何年もかけ、ようやく日本国内でも通用するレベルにまで達したのに、
また別の国で一からやり直しだと思うと、なんだかがっくりする・・・
そのようなことを来社した営業担当者が言っていました。

日本を始めとする世界中の企業が、
中国に設備投資をしたのは、製品を安く製造できるからに他なりません。
言い換えれば、安くない中国製品は誰も買わないということになります。

そんなことがあった先週ですが、
偶然というか、たまたまこんな本を読んでいました。

「中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!」 三橋貴明 著 / ワック㈱ 刊 

本書では、「日本経済は中国なしでは成り立たない」という、
マスコミや一部の経済評論家の論調について、
大きく次の三つについて、具体的な数字で検証しています。

1)中国への輸出がなくなったら、日本経済は大打撃を受けるのか?
2)中国からの輸入がなくなったら、我々の生活や経済は大変なことになるのか?
3)中国へのこれまでの多大な設備投資がご破算になると、日本は大損害を被るのか?

細かい数字は転記しませんが、
2009年の対中国・香港向け輸出額は、日本のGDPのわずか2.79%。
例えれば年間500万円の利益をあげている会社が、
顧客の一社が倒産して14万円の売上が減少したこととほぼ同じです。

また、中国は世界人口の5分の1を占め、
経済発展とともに、新しいマーケットとして有望だとする意見もあります。
しかし、いまの中国の格差社会と政治体制下においては、
今後中国国民の多くが、日本のように中産階級になるなどということはありえません。

逆に、中国からの輸入については、日本のGDPの2.44%。
しかも農産物や安価な工業製品が多く、中国製でなければだめというものはありません。
日本の産業の根幹をなす石油などの鉱物性資源のほとんどは、
中東などの中国以外の国から輸入されています。

そして中国への投資残高は、日本のGDPの約1%。
もし日本が中国内の資産を接収されるなどして失ったとしても、
損害には違いありませんが、日本経済が破綻するほどの影響ではありません。

そして何より、「世界の工場」を自負している中国自身が、
資本財(原料や半製品・キーパーツなど)を輸入し、
国内の工場で最終消費財(完成品)にして輸出するという産業構造になっています。
日本は中国製品の輸入国であると同時に、このキーパーツの輸出大国であり、
日本との輸出入が滞ったら、一番に困るのが中国なのです。

前述の衣料品メーカーにとっては、
中国はもはや魅力的な生産拠点ではなくなったようです。

マスコミはあいかわらず、
中国への「依存」「依存」と書き立て、中国の顔色ばかりを気にしますが、
実際の現場では、この衣料品メーカーのように、中国脱却に動き始めているのかも知れません。